さて、本日はメディアでは「進展があったかのような続報」が次々と出て来るにも関わらず、実態として全く進展のない徴用工問題の現状について書いていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
現在、韓国政府や日韓のメディアのいくつかから、徴用工問題について「ある程度の絞り込みができた」「日本からの前向きな変化があった」という内容が出てきており、一見すると何かしらの進展があったかのように見える。
しかし実際には、これは単なる言葉遊びにすぎず、元々日本側が問題にしているのは「韓国側の要求が1965年の請求権協定違反」であるからという「一点」のみであり、この一点のみが当初からの「唯一の」問題の論点となっている。
そしてこの件での最大の問題は、すでにこの問題が韓国内で「政争の道具」になっており、少しでも「日本寄り」と取られると野党が韓国人の民族主義を煽り攻撃するため、最早日本とは無関係なところで問題が独り歩きしてしまっている事にある。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:問題解決に進展?
まずはこちらの記事から
徴用賠償問題解決策 「前より絞られた」=韓国外交部
聯合ニュース 2022.11.29
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221129003400882
【ソウル
聯合ニュース】韓国外交部の当局者は29日、日本による植民地時代に徴用された韓国人被害者への賠償問題を巡り、「韓日間で(以前よりも)もう少し具体的な解決策について協議が行われている」とし、「前より絞られたのは事実」と明らかにした。
ただ、「現時点では特別な解決策と関連し、何を重点的に議論しているかについて話すのは難しい」とし、具体的な内容については明らかにしなかった。
カンボジアのプノンペンで今月13日に開かれた首脳会談に続き、24日には東京で局長級協議が開かれるなど、韓日間で徴用問題を巡る緊密な協議が続いている。
「絞られた案」は韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」が両国の企業などから寄付金を募り賠償金を肩代わりする案が骨子になるとみられる。
財団などの第三者が債務者の債務を引き受けるものの債務者の損害賠償責任は残る「併存的債務引受」が方法として挙がっているが、これを実施するうえで債権者(被害者)の同意が必要か否かについては、法的解釈が専門家の間でも異なっているという。
また、被害者側は財団など第三者が肩代わりするとしても、日本企業側の謝罪や寄付金の拠出などが必要という立場で、日本はこれに呼応するという明確な態度を示しておらず、この溝を埋めるのが鍵となる。
外交部で対日関係などを担当するアジア太平洋局の局長に先ごろ就任した徐旻廷(ソ・ミンジョン)氏は来月7日に被害者側の関係者と面談する予定だ。
外交部当局者は「多様な方法で被害者側や支援団体、専門家などと意思疎通を続けていく」と話した。
外交部の任洙ソク(イム・スソク)報道官は定例記者会見で、「被害者の意見を最大限に傾聴しながら両国にとって最も合理的な解決策を講じるために外交的努力を続けていく」と強調した。
多国間会議に合わせ韓日首脳会談が2回開かれ、10年以上途絶えている日本との首脳シャトル外交の早期再開の可能性も取り沙汰されているものの、外交部は「まだ具体的な計画はない」としている。
任氏は「首脳間のシャトル外交が復活することへの期待が高まっているのは事実」としながらも「シャトル外交復活に向けた外交当局間の協議と意思疎通は続けられる」と説明した。
先月末の記事なのですが、韓国政府が「前より絞られたのは事実」と見解を示しており、また「被害者側は財団など第三者が肩代わりするとしても、日本企業側の謝罪や寄付金の拠出などが必要という立場で、日本はこれに呼応するという明確な態度を示しておらず、この溝を埋めるのが鍵となる」と書かれている事から、何かしら進展があったかのように読めます。
また次の記事を読むと
韓日首脳「強制徴用の早期解決」で意見一致
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.14 06:44
https://japanese.joins.com/JArticle/29767
東南アジア諸国連合(
ASEAN)首脳会議(サミット)参加のために
カンボジア・
プノンペンを訪れた韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が13日、
岸田文雄首相と韓日首脳会談を行った。今年9月に米国ニューヨーク国連総会への出席を機に略式会談を行って以来約2カ月ぶりだ。
韓国大統領室はこの日、報道資料を通じて「13日午後、岸田首相と韓日首脳会談を行った」とし「会議開始に先立ち、岸田首相は梨泰院(イテウォン)事故に関連し、遺族と韓国国民に対して哀悼の意を表明し、尹大統領も2人の日本人犠牲者に対して弔意を表した」と明らかにした。
韓日首脳は北朝鮮のミサイル挑発に対する韓日米共助を中心に両国間の最大の懸案である歴史問題に対して議論を行った。このため会談は当初予定していた30分を越えて45分間続いた。
会談を終えた後、大統領室は「両首脳が北朝鮮の弾道ミサイル発射に対して、韓半島(朝鮮半島)はもちろん、北東アジアおよび国際社会の平和と安全を脅かす深刻かつ重大な挑発行為として強力に糾弾した」とし「北朝鮮の核・ミサイルプログラムに対応する次元で国連安保理レベルの対応と韓日米安保協力強化に向けて協力していくことで意見を一致させた」と伝えた。
歴史問題に関しては「両首脳は両国間の懸案に関連し、外交当局間で活発な疎通が行われていることを評価し、早期解決に向けて今回も協議していくことにした」とし「最近、両国の人的交流が急速に回復していることを歓迎し、両国国民間の人的交流拡大に対する期待を表明した」と明らかにした。これに関しては「両首脳が今後も首脳間の疎通を続けていくことにした」と付け加えた。
岸田首相も韓日首脳会談直後に記者団と会い、「旧朝鮮半島出身労働者(強制徴用労働者)問題に対しては、ニューヨークでの私と尹大統領の指示を受けて外交当局間の協議が加速していることを踏まえ、懸案の早期解決を図ることで改めて一致した」と述べた。
韓日両国が尖鋭な懸案を抱えているにもかかわらず会談が実現した背景について、外交界からは「北朝鮮の核・ミサイル挑発に対応するための韓日米の共同対応を強化しなければならないという共感が決定的な役割を果たした」という観測が出ている。大統領室高位関係者も前日に記者団と会い「度重なる北朝鮮の挑発で緊張が高まっている」とし「このような安全保障懸案が韓日間の懸案解決に先立ち、韓日米安保協力に向けた一種の推動役を果たした」と話した。韓日両国がこれまで関係正常化の障害物としてみなしてきた歴史問題の解決に先立ち、北朝鮮脅威にまず対応することで共感したという意味だと解釈することができる。
岸田首相は北朝鮮に対する共助強化とともに尹大統領が今月11日に発表した「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」について説明したことに関連し、日本も来年春までに新たな「自由で開かれたインド太平洋計画」を発表する予定だと明らかにした。
最初の記事より2週間ほど前の記事なのですが、そのなかで日韓首脳会談に関連し「ニューヨークでの私と尹大統領の指示を受けて外交当局間の協議が加速していることを踏まえ、懸案の早期解決を図ることで改めて一致した」という岸田首相の発言を引用しており、やはり何か進展があったように読めます。
そして次の記事では
韓日首脳「元徴用工問題を早急に解決」、国民的共感がカギだ
東亜日報 November. 15, 2022
https://www.donga.com/jp/List/article/all/20221115/3763540/1
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と日本の
岸田文雄首相が13日、
カンボジアで首脳会談を行い、元徴用工問題の早急な解決に向けて引き続き協議していくことで合意した。両首脳が就任後、正式に会談を行ったのは初めて。岸田氏は会談後、記者会見で、「旧
朝鮮半島出身労働者問題については、懸案の早期解決を図ることで改めて一致をした」と説明した。
両首脳が9月に米ニューヨークで略式会談を行った時も、元徴用工問題が議論された。しかし、日本政府は会談を「懇談」と格下げし、意味を与えなかった。一方、今回の会談では両首脳が公式に元徴用工問題の解決に意欲を示し、今後の実務交渉に力が加わる条件が整えられた。尹政権は発足後、韓日関係の改善に力を入れており、元徴用工問題に対して強硬一辺倒だった日本側の気流も少しずつ変化している。
だからといって、同問題に対する日本の態度が根本的に変化したと見ることはできない。両国間には日本製鉄などの企業が元徴用工らに直接賠償する代わりに民間財団で基金を設けて支給する案が議論されている。元徴用工らは、基金助成の過程に企業が参加し、強制徴用について謝罪しなければこの案を受け入れることはできないとしている。しかし、企業らは基金を出すことにも難色を示しているという。また、松野博和官房長官は14日、元徴用工問題に「わが国の一貫した立場に基づき韓国と緊密に意思疎通を図る」と明らかにした。依然として問題解決の責任を韓国に転嫁しているのだ。
このような状況にもかかわらず、韓国政府は年内に元徴用工問題で合意点を見出すという目標を掲げ、協議を進める方針だ。しかし、韓国政府だけが急いだからといってできる問題ではない。元徴用工らが納得し、国民が共感できる案を講じることがこの問題の解決の鍵だ。そのためには、賠償金の財源調達に日本企業の参加、半導体素材などの輸出規制強化の解除など、日本側が最低限の誠意を先に見せなければならない。韓日関係改善のスピードに劣らず、過程と内容が重要であることを政府は看過してはならない。
カンボジアで開催されたASEANサミットで行われた日韓首脳会談において、同じく岸田首相から、「旧朝鮮半島出身労働者問題については、懸案の早期解決を図ることで改めて一致をした」というコメントがされており、東亜日報では「元徴用工問題に対して強硬一辺倒だった日本側の気流も少しずつ変化している」と書かれています。
しかしその後、「松野博和官房長官は14日、元徴用工問題に「わが国の一貫した立場に基づき韓国と緊密に意思疎通を図る」と明らかにした。依然として問題解決の責任を韓国に転嫁しているのだ」と書いているのですが、この一貫した立場とは「協定で解決済み」という以前からの日本側のスタンスの事です。
しかもその後、記事では「賠償金の財源調達に日本企業の参加、半導体素材などの輸出規制強化の解除など、日本側が最低限の誠意を先に見せなければならない」と書いており、実のところ「尹政権当初」から何も変わっていない事がわかります。
2:元から問題は一つ
そして重要なのは、韓国側はあたかも話し合いで「問題点が絞られた」「日本にも一定の歩み寄りがあった」かのように書いていますが、これは典型的な外華内貧であるという事です。
外華内貧の関連記事
韓国は「名分」社会 - 日韓問題(初心者向け)
動画
【ゆっくり解説】韓国社会と外華内貧 - ニコニコ動画
【ゆっくり解説】韓国社会と外華内貧 - YouTube
以前から指摘しているので大筋の説明に留めますが、元々請求権問題に関しては、日本側が「被徴用韓国人の未収金」と「被徴用者の被害」の個別補償を韓国側に提案したところ、韓国側が一括での支払いを要求し、それで協定が成立したにも関わらず、韓国政府が一括で受け取った資金を個人に殆ど支払わなかったことが原因です。
関連記事
「韓国政府、韓日会談で個別請求権放棄」
朝鮮日報 2004/09/17
https://web.archive.org/web/20040923181057/http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/09/17/20040917000026.html
韓国政府の「解説書」入手!やっぱりおかしい大法院判決
FNN 2019年2月4日
https://www.fnn.jp/articles/-/8723
しかも以下の記事にもあるように
韓日局長が東京で協議 徴用問題巡り日本の呼応措置を集中議論
聯合ニュース 2022.12.26
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221226003700882
【東京
聯合ニュース】韓国と日本の外交当局は26日、日本による植民地時代の徴用被害者への賠償問題の解決策を模索するため、東京で局長級協議を行った。
協議には韓国外交部の徐旻廷(ソ・ミンジョン)アジア太平洋局長と日本外務省の船越健裕アジア大洋州局長が出席した。
韓日外交当局の局長級協議は先月24日に東京で開かれて以来約1カ月ぶり。両氏は徴用被害者への賠償問題をはじめ、韓日間の懸案について議論した。
賠償問題の解決策を巡っては、韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」が韓国企業など民間から寄付金を募って財源をつくり、日本企業の賠償金を肩代わりする案が取り沙汰されている。
韓国政府は日本企業の謝罪や財源への参加など「誠意ある呼応」が必要との立場だが、日本政府は1965年に締結された請求権協定で解決済みとの立場を崩していない。
韓国外交部の当局者は協議後、記者団に「(日本企業の)謝罪と(財源への)寄与という誠意ある呼応措置について(日本側と)集中的に議論した」と明らかにした。謝罪と財源への寄与のうち、どちらに重きを置いているかの質問には「日本企業の寄与と謝罪に同じ重みを置き、日本側の誠意ある呼応を引き出すため交渉している」として、「原則的に被告企業の寄与を話し合っている」と述べた。
だが、日本側は被告企業の財源への参加を巡り、韓国の裁判所による賠償判決は国際法違反という立場と食い違うため、強い拒否感を示しているようだ。
同当局者は徴用被害者側が記者会見を開き、韓国企業の寄付だけで財源を確保し、被害者に賠償金の代わりに弁済する案を政府から通知されたと明らかにしたことに関しては、「決まっていない」と反論した。また、「われわれが解決策を発表すれば日本側からも誠意ある呼応措置があると思う」とし、「(韓国と日本が)同時に合意文として発表するものではなく、われわれが解決策を発表した後、日本が誠意ある措置を発表する形になるのではないかと思う」と説明した。
解決策を発表する時期については、「予断できない」と述べた。年内の発表は事実上困難になったとみられる。
一方、支援財団が賠償金を肩代わりするために定款の変更を推進していることが明らかになり、韓国政府が構想している解決策が事実上まとまったとの観測が出ている。財団は21日に理事会を開いて関連問題を議論し、近く行政安全部に定款変更の承認を申請する予定だ。来週中には承認を得られるよう推進する計画という。ただ、財団側は定款の変更推進は外交部の要請ではなく、「事前準備」のために進めていると説明した。
韓国側は「「日帝強制動員被害者支援財団」が韓国企業など民間から寄付金を募って財源をつくり、日本企業の賠償金を肩代わりする」という案を日本側に提示しており、日本側が大筋で『この案』には同意しています。
なせなら日本が支払った資金を韓国政府が個人に殆ど支払わなかったのが大本の原因であり、この問題は「韓国の国内問題」なわけですから、解決は韓国内で完結しなければいけないからです。
しかし記事では、「日本側は被告企業の財源への参加を巡り、韓国の裁判所による賠償判決は国際法違反という立場と食い違うため、強い拒否感を示しているようだ」と書いている通り、本来韓国内で解決すべき問題に「日本企業の参加」を求めており、実のところ以前から問題点はこの1点のみなのです。
そしてさらに問題なのが、次の記事にあるように
「韓国企業の寄付金で強制動員補償? 加害者を排除した恥辱的方策」
ハンギョレ新聞 2022-12-27
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/45504.html
強制動員被害者支援団体、会見で政府推進案に反対を表明
日帝強制動員被害者の支援団体が、強制動員企業の賠償金の財源を国内の企業による寄付金で確保しようという韓国政府の推進案に対し、反対を表明した。
日帝強制動員市民の会、民族問題研究所、被害者代理人団は26日、ソウルと光州(クァンジュ)で記者会見を行い、「強制動員問題に対する韓国政府の有力な案について、先週外交部から聞いた」とし、反対する立場を明らかにした。
同団体が公開した韓国政府の有力案は、行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団が韓国企業から寄付を集め、それを財源とし、訴訟で勝訴の確定している被害者に対して日本企業が支払うべき賠償金を支払うというのが骨子だ。実際に日帝強制動員被害者支援財団の定款に記されている目的事業には「被害者への補償および返済」が追加され、行政安全部の承認だけが残っている。
被害者支援団体などは「日本の被告企業による謝罪や拠出がないだけでなく、日本の他の企業の拠出さえない、日本を免責する案」だと批判した。また「被害者を支援するために設立された支援財団と被害者が争うという、あきれた状況を迎えることになるだろう」と指摘した。続けて「韓国政府は日本が最も望む、被害者の意思などは排除して彼らの債務を一方的に消滅させるやり方で進んでいる」、「韓国政府がこの有力案を最終案として確定し発表するという愚かなことは、あってはならない」と主張した。
日帝強制動員市民の会のイ・グゴン理事長は「法的責任を取るべき日本の加害企業を除外し、被害国の企業に資金を寄付させて代わりに後始末させようとする、恥辱的な方策」だとし「戦犯企業の謝罪と賠償もないごまかしを推し進めてはならない」と述べた。
ヨ・ウンテクさんら4人の強制動員被害者は、日本製鉄(旧新日鐵住金)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、2018年10月30日に最高裁の勝訴判決を勝ち取っており、ヤン・クムドクさん(93)、キム・ソンジュさん(93)ら5人(生存2人)も2018年11月に最高裁で日本企業に被害者1人当たり1億~1億5000万ウォンの賠償を命じる判決を勝ち取っているが、日本企業は賠償していない。
チョン・デハ記者
いわゆる徴用工裁判の原告側が「韓国の企業による寄付金」を賠償金に充てようという動きに反対し、「日本企業に賠償させろ」と要求しているため、話がそこから一歩も進まなくなっているのです。
ここで重要なのは、先ほど言及した「韓国政府が受け取った資金」がどこへ行ったかで、当時韓国政府は受け取った資金を鉄道や高速道路、ポスコなどの韓国企業のインフラ整備などに充てており、経済発展に使用しているのです。
つまり、個人補償用に受け取った資金を韓国全体の経済発展のために使用してしまったので、その恩恵を受けた企業から寄付を募って補償に充てようというのが、韓国側の当初の方針であったのですが、原告たちがそれに猛反対して「日本企業に支払わせろ」と言い出したため、問題がこじれにこじれたわけです。
そして興味深いのは、記事でも書かれているように、この原告側の訴えに「民族問題研究所」という組織が関わっている事です。
過去記事や動画でも説明していますが、この組織はいわゆる「魔女狩り法」である親日派財産没収法に深く関わっているうえに、設立メンバーには北朝鮮の工作員が関わっていたという疑惑がもたれているのです。
韓国の親日派財産没収法のとんでもなさとその背景 - 日韓問題(初心者向け)
【日韓問題】韓国の親日派財産没収法 前編 - 日韓問題(初心者向け)
【日韓問題】韓国の親日派財産没収法 後編 - 日韓問題(初心者向け)
つまり、徴用工問題とは韓国側が協定を履行するかどうかの問題であり、韓国内にそれを反故にさせようとする勢力が存在しており、またその背後に北朝鮮が見え隠れするというのが実態なのです。
3:問題の政争化
そしてこの問題を韓国内で更にややこしくしているのが、朝鮮伝統の「政争」です。
以前も何度か説明したことなので大幅に端折りますが、朝鮮は「政争の国」であり、何百年も派閥に分かれて内向きの勢力争いとしての政争を繰り返してきた国です。
参考記事
【噴水台】礼訟論争
中央日報 2004.08.02
https://japanese.joins.com/JArticle/54432
そして多分に漏れずこの徴用工問題も「政争化」しており、以下にあるように
叙勲頓挫の徴用被害者「気分が悪い」 支援団体も非難=韓国
聯合ニュース 2022.12.08
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221208005000882
【光州
聯合ニュース】日本による植民地時代の徴用被害者、梁錦徳(ヤン・クムドク)さんは8日、自身が国家
人権委員会から叙勲対象者に推薦されたにもかかわらず、外交部にストップをかけられ、事実上、受章が頓挫(とんざ)したことについて、「章をもらえると言われ気分が良かったが、どうして改めてくれないと言われるのかわからない」とし、「気分が悪い」と話した。
徴用被害者らの支援団体も「人権賞まで日本の顔色をうかがわなければならないのか」と非難する声明を出した。
国家人権委員会は9日に開催される「2022年人権の日」記念式で徴用被害者の権利回復運動に寄与したとして、梁さんに国民勲章を授与する案を推進した。だが、外交部が「関係省庁による事前協議が必要」としたため、今週開催された閣議の議題に上らず、9日の式典での授与は難しくなった。
団体側は「最終推薦対象者が通常手続きである閣議を経ずに(受章が)霧散したケースは今回が初めて」と指摘した。また梁さんの受章が頓挫したのは、外交部が「事前協議が必要な事案」とする意見を提出したのが決定的な理由とし、「これが低姿勢外交、屈辱外交でなければ何か」と強く非難した。
梁さんは大法院(最高裁)が2018年11月に徴用被害者に対する三菱重工業の損害賠償責任を認める判決を出した裁判の原告の1人。三菱重工側が賠償の履行を拒んだため同社の韓国内資産の現金化が進められている。
徴用工裁判の原告を韓国の国家人権委員会が、叙勲対象に指名しようとして韓国政府や外交部と対立、叙勲候補から取り消すと支援団体が加わって騒動になっています。
外交問題になっている対象を「叙勲対象」にする「政治問題化」が起きているという事です。
更に次の記事を読むと
韓国最大野党代表「日本に低姿勢になるべきでない」 徴用問題の解決策巡り
聯合ニュース 2022.12.28
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221228002000882
【ソウル
聯合ニュース】韓国最大野党「共に
民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は28日、南西部・光州を訪れ、日本による植民地時代の徴用被害者の梁錦徳(ヤン・クムドク)さんと面会した。その後に同市で開いた党最高委員会会議で、李氏は韓国政府が日本と議論している徴用被害者への賠償問題の解決策を巡り「日本に対して堂々とすべきだ。低姿勢の屈従外交をしてはいけないという国民の指摘を痛感してほしい」と政府に促した。
賠償問題の解決策を巡っては、韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」が韓国企業など民間から寄付金を募って財源をつくり、梁さんら原告に対する日本企業の賠償を肩代わりする案が取り沙汰されている。
李氏は「梁さんは、金のために闘っているわけではないのに当事者でもない韓国企業がなぜ賠償責任を負うのかと強い口調で話していた」と伝え、財団による肩代わりは「被害者が加害者に責任を取れと言っているところに通りがかった人が財布を出して『いくら必要か』といっているようなもの。まるで金の問題であるかのように被害者を侮辱する振る舞いだ」と批判した。
事実上「韓国企業による寄付での補償」という形に動こうとしていた韓国政府に対して、韓国最大野党代表である李在明氏が、「日本に対して堂々とすべきだ。低姿勢の屈従外交をしてはいけないという国民の指摘を痛感してほしい」と政争化を仕掛けて国民を煽っており、問題が韓国内でさらに複雑化しています。
しかも李在明氏の場合、以前から指摘しているように北朝鮮を巡る汚職問題に関与している疑惑がもたれている人物です。
梨泰院事故と韓国的価値観(政治編) - 日韓問題(初心者向け)
更には、自身が保有していたサッカークラブに関する汚職疑惑もあり、この件では
韓国最大野党代表 検察の出頭要請拒否
聯合ニュース 2022.12.26
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221226004500882
【ソウル
聯合ニュース】韓国革新系最大野党「共に
民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は26日、記者団に対し、自身が京畿道
城南市の市長だった当時にオーナーを務めていたプロサッカークラブ、城南FCへの寄付金を巡る疑惑に絡み、水原地検城南
支部から事情聴取のための出頭要請があったことについて「嫌疑なしで
終結した事件」とし、「検察の態度は納得しがたいが、(聴取には)堂々と臨む」と述べた。
ただ、検察が指定した28日については、「すでに決まった日程などがあり本会議が予定されているため(出頭は)難しい」とし「今後可能な日時や調査方式について弁護士を通じて協議して決める」と説明した。
共に民主党では、検察による出頭要請は李氏を辱めるためとの見方が強いため、「調査方式を協議する」と発表することで書面での調査などを要求する可能性を残したものとみられる。
側近が逮捕されているうえに、本人が検察からの出頭要請を拒否するという事態になっており、李氏側はこの件を「尹政権による政治的捜査だ」と批判しているため、問題を有耶無耶にするために徴用工問題をカウンターとして使い、政争化しているのが明白なのです。
つまり、韓国では野党代表が「自身の保身のため」に問題を悪化させる言動を行い世論を煽っている事になるわけです。
これが本来「双方合意の上で結ばれた協定を守る」というただ単純な話が、こじれにこじれた外交問題となっている原因の一つです。
しかも尹政権にしても、問題を把握しながらこの状態で「日本企業の賠償への参加」を求めて韓国の内政問題の解決を日本に丸投げしようとしているうえに、日本のいくつかのメディアがあたかも「ボールは日本にある」かのように印象操作する記事を書いているというのが、現在の徴用工問題の実態です。
お知らせ
年末年始について
「日韓問題初心者向け」は2022年12月28日を今年最後の更新として、2023年1月4日お休みし、再開は2023年1月11日を予定しています。
「暇つぶしにどうぞ」は、2022年12月26日を今年最後の更新とし、2023年1月2日をお休みし、再開は2023年1月9日を予定しています。
動画は、2022年12月25日を今年最後の更新とし、2022年1月1日をお休みし、再開は2023年1月8日を予定しています。
それでは皆様、よいお年を。
お知らせ。
転載について
・個人の利用であれば、一般的に「引用」とされる範囲での転載は自由にしてもらってかまいません、報告も必要ありません。
・企業・団体等が「転載」する場合は私の方へ事前連絡いただき、許可を取ってから行ってください。
・イデオロギー色の強い団体等に関しては、理由の如何に関わらず「転載は原則禁止」とさせていただきます。
もしよかったらクリックをお願いします。
blog.with2.net
以下は当ブログのお勧め記事です、もしよかったらこちらもどうぞ。
韓国人が日本人から嫌われる根本的原因 - 日韓問題(初心者向け)
【韓国起源説】日本人の反論は韓国人に通じない - 日韓問題(初心者向け)
日本人と韓国人とでは「約束・契約」の概念が全く違う - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題(初心者向け)の方針について色々 - 日韓問題(初心者向け)
【河野談話】韓国政府が自爆しました - 日韓問題(初心者向け)
フランスのJapan Expoから韓国がいなくならない原因 - 日韓問題(初心者向け)
「Japan Expoに寄生しないで独自のコリアエキスポやればいいのに」→過去にやった事があります - 日韓問題(初心者向け)
韓国人の差別意識の特徴とタイの嫌韓 - 日韓問題(初心者向け)
嫌韓の出発点、2002年日韓共催ワールドカップで何が起きたのか - 日韓問題(初心者向け)
嫌韓を「排外主義者=ネトウヨ」と考える人達に対する考察をしてみた - 日韓問題(初心者向け)
「韓国に対して謝罪すれば解決する」は大きな間違い - 日韓問題(初心者向け)
韓国視点から見たヘイトスピーチ - 日韓問題(初心者向け)
メアリー・スーとネトウヨ論 - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題とイデオロギー論争 - 日韓問題(初心者向け)
韓国では異論が徹底的に排除される - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題基礎知識簡易版まとめ 前編 - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題基礎知識簡易版まとめ 後編 - 日韓問題(初心者向け)
初心者でも解る韓国対策 - 日韓問題(初心者向け)
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
【再現】2002年日韓ワールドカップ Public Viewing in 国立競技場 - 日韓問題(初心者向け)
徴用工裁判問題まとめ - 日韓問題(初心者向け)
慰安婦問題で重要な事 - 日韓問題(初心者向け)
動画版マイリスト
番外編マイリスト