さて、本日は一連の徴用工問題の「解決」の件について書いていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
[ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
現在、韓国が一連の徴用工問題に関連し1965年の日韓請求権協定に沿う形の解決案を提示、日本側もそれを受け入れ「解決する」という流れになってきており、これで一応の決着となることが見込まれている。
<ただし、決着がついたとしても韓国との間で歴史問題が以後もくすぶり続けることがほぼ確定しており、その原因として韓国側が「日韓併合は違法」という主張を続け、そこに「道徳的優位性」を持とうとしている事が挙げられる。
そしてもう一つ、彼らには「プマシ」と呼ばれる概念があり、これにより韓国側は韓国側が日本の要求を聞いたことに対する「見返り」を求めてきており、これが原因を日本に転嫁させさらなる問題を引き起こす原因になり得るため、その点だけ注意が必要になる。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:問題が解決に向かう?
まずはこちらの記事から
徴用問題 「肩代わり」骨子の解決策発表へ=日本「未来基金」参加
聯合ニュース 2023.03.05
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230305001500882
【ソウル
聯合ニュース】日本による徴用被害者への賠償問題をめぐり、韓国政府は6日に傘下財団が日本の被告企業の賠償金を肩代わりする解決策を正式に発表する。
2018年に韓国大法院(最高裁)が賠償命令を確定して以来、両国の最大の懸案となっている同問題を韓国主導で解決するとの「決断」と評価され、解決の糸口となるか注目される。
骨子となるのは政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が財源を確保し、大法院の賠償確定判決を受けた被害者に日本の被告企業(日本製鉄・三菱重工業)の代わりに賠償金を支払う方式になるとみられる。
発表は朴振(パク・ジン)外交部長官が行うとされる。
賠償金の財源は、1965年の韓日請求権協定に基づいて日本から支払われた資金で設立された鉄鋼大手のポスコなど韓国企業が拠出する方法で確保するとみられる。
賠償確定判決を受けた被害者は15人で、賠償金は遅延利息を含め約40億ウォン(約4億2000万円)とされる。
被告企業の日本製鉄と三菱重工業は賠償金の拠出には参加しないようだ。賠償金の拠出に参加すれば、韓国大法院の判決を受け入れることになるため、日本側が交渉過程で慎重な姿勢を崩さなかったからだ。
韓国が賠償金を肩代わりする解決策を正式に発表すれば、日本政府は日本企業の財団への寄付を認める方針との日本メディアの報道も出ている。
被告企業は賠償金の拠出には参加しないものの、両国企業が「未来志向的」趣旨で別の基金を創設する案も公表される見通しだ。
両国を代表する経済団体の全国経済人連合会(全経連)と経団連を通じて「未来青年基金(仮称)」を共同で創設する案が暫定決定したとされる。日本製鉄と三菱重工業も全経連に加盟している。
韓国政府は日本企業が両国の未来に向け自発的に寄与できる分野であるだけに、被告企業の「誠意ある呼応」を期待している。
韓国政府が解決策を発表した後に、岸田文雄首相は、植民地支配への「痛切な反省と心からのおわび」を記した1998年の韓日共同宣言を継承するとの立場を表明する見通しだ。
ただ、岸田政権が新たな謝罪をするのではなく、従来の謝罪を再確認する方式であるため、被害者が納得するかどうかは未知数だ。
徴用問題が解決局面に入れば、同問題が発端となった韓国に対する日本の輸出規制や終了通知の効力停止状態にある軍事情報包括保護協定(GSOMIA)なども正常化に向かうとみられる。
両国政府は今月下旬に予想される尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪日などを機に、こうした両国の懸案の包括的解決を推進すると予想される。
記事によると、一連の徴用工問題に関して、1:韓国政府が財団を設立し、ポスコなどの韓国企業が資金を出すことで賠償を肩代わりする、2:三菱や日本製鉄など、「告訴」されている企業は財団に参加しない、3:2が成り立つ前提であれば1への日本企業の参加を認める、4:「未来青年基金(仮称)」を日韓共同で設立し、三菱と日本製鉄はこちらに参加する。
上記のような提案が韓国側より出され、日本はそれを受け入れるという事が発表されました。
この件なのですが、反対している人も多いようですが、私は慰安婦合意の時と同じく賛成です。
なぜかといえば、確かに韓国側が協定違反をしたことが最大の問題であり原因ですが、日本側が歴史問題で曖昧な態度や価値観の違いを理解せずいい加減な態度を長年取り続けてきたことも、一連の問題の遠因であるため、財団や基金への参加は慰安合意の10億円と同じく、「高い授業料」と解釈もできるからです。
そしてもう一つ重要なのが、一連の慰安婦合意も韓国側は事実上有名無実化しましたが、アメリカやEU諸国が解決の「証人」となり評価したことで、以後日本にとって慰安婦問題は一切外交上の負担になっていません。
そして今回も以下のように
バイデン大統領「韓日の発表、同盟間協力・パートナーシップの新たな幕開け」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.06 14:42
https://japanese.joins.com/JArticle/301702
バイデン
米大統領が6日(現地時間)、韓国政府の
日帝強占期徴用賠償問題解決策に関連し、韓日関係の「新たな幕開け」と明らかにした。
バイデン大統領はこの日、声明を発表し、「今日の韓国と日本の発表は、米国の最も近い同盟間の協力とパートナーシップの新たな幕開けだ」とし「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と岸田文雄首相は歴史的な外相談話を通じて、より安全かつ安心できる、より繁栄する両国の未来を築くための重要な一歩を踏み出した」と評価した。
続いて「(米国政府は)韓国と日本の指導者への支援を継続する」とし「米韓日3カ国の関係を引き続き強化していくことを期待する」と述べた。
ブリンケン米国務長官もこの日、韓日間の徴用賠償問題の解決策について「歴史的な発表」とし、歓迎の意を表した。
徴用問題解決策の提示に…EU「韓日関係改善・未来志向的努力を歓迎する」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.07 10:02
https://japanese.joins.com/JArticle/301731
欧州連合(EU)が6日(現地時間)、韓国政府が
日帝強占期徴用問題の解決策を提示したことに対して歓迎の立場を明らかにした。
欧州対外行動庁(EEAS)はこの日、報道官名義の声明を出し、「韓国と日本の2国間関係を改善し、未来志向的な関係を構築するための努力の一環として今日発表された重要な措置を歓迎する」と明らかにした。
続いて「韓国と日本はEUに極めて重要であり、戦略的に似た立場の国」とし「韓日両国の緊密な協力は国際秩序に基盤を置く規範を強化し、自由で開かれたインド太平洋地域を促進するうえで核心軸」と強調した。似た立場の国(Likeminded Group、LMG)とは普遍的価値と国際規範を共有する国を意味する。
韓国政府はこの日、徴用被害者に対して日本被告企業の代わりに「日帝強制動員被害者支援財団」が設立した基金で判決金と遅延利子を支払うと公式発表した。
2018年に韓国大法院(最高裁)で賠償責任が認められた日本の被告企業(日本製鉄と三菱重工業)の基金参加は実現しなかった。その代わり韓国の全国経済人連合会(全経連)と日本経済団体連合会(経団連)など両国の経済界が共同で設立する「未来青年基金」(仮称)に参加する案などが検討されている。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこの日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相との定例会議で「未来志向的な韓日関係に進むための決断だ」と話した。
アメリカとEUが「解決」を「歓迎」して既成事実化している事から、今後韓国側が今回の「解決」を反故にしたとしても、それが日本の負担となることは無く、韓国政府が民間団体等を通じて行うプロパガンダ活動も意味をなさなくなるからです。
つまり、流れ的に2015年末の慰安婦合意と全く同じ構図にできたので、「これまでの長年の日本の不手際をこれで帳消しにできる効果がある」というのが私の考えです。
以後はラムザイヤー論文と同じ手法で、韓国側のプロパガンダを学術的な面からも切り崩していけばいいだけです。
勿論、以下にあるように
徴用解決策機に「韓日・韓米安保協力の強化検討」 哨戒機問題は「無関係」=韓国国防部
聯合ニュース 2023.03.07
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230307002100882
【ソウル
聯合ニュース】韓国国防部は7日、徴用賠償問題を巡る韓国政府の解決策発表を機に、韓日・韓米の安全保障協力の強化策を検討すると発表した。一方、
韓国海軍の
駆逐艦が日本の
海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされる問題が未解決となっていることに関しては、「徴用問題と関係がない」として一線を引いた。
同部のチョン・ハギュ報道官はこの日の定例会見で、「軍の立場は従来から変わっておらず、今後望ましい解決策を模索する必要がある」と述べた。
哨戒機問題は2018年12月20日、朝鮮半島東の東海で遭難した北朝鮮漁船を捜索していた韓国海軍の艦艇が、接近した海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射したと日本側が主張して浮上した。韓国海軍はレーダーの照射はなく、哨戒機が艦艇付近で威嚇飛行を行ったと反論し、両者の主張は平行線をたどったままだ。
昨年9月にソウルで開かれた韓日国防次官会談の終了後、申範澈(シン・ボムチョル)国防部次官は「両国国防当局間の協力・発展のため、(哨戒機問題の)解決の必要性に共感し、問題を実務レベルで議論することを決めた」と述べていた。
韓国高官がIAEA事務局長と会談 福島汚染水放出巡り徹底検討要請
聯合ニュース 2023.03.08
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230308001200882
【ソウル
聯合ニュース】韓国外交部は8日、李度勲(イ・ドフン)同部第2次官が
オーストリアで7日(現地時間)に
国際原子力機関(
IAEA)のグロッシ事務局長と会談し、日本による
東京電力福島第1
原発の処理済み汚染水の海洋放出、
北朝鮮の核活動の動向などを巡り協議したと発表した。
李氏は汚染水に関し、科学に基づき日本の海洋放出計画に対する徹底した安全性の検討を継続するようIAEAに求めた。また、IAEAの活動の透明性向上などのため、韓国の専門機関と研究所が引き続きIAEAの活動に加われるよう協力を要請した。
IAEAが実施中の汚染水の検証活動について、韓国を含め太平洋の島国などの利害関係国とさらに積極的に意思疎通を図ってほしいとも求めた。
北朝鮮の核問題を巡っては、IAEAが核活動のモニタリングを続け、北朝鮮核問題に対する国際社会の警戒心を高めることに寄与していると評価した。
グロッシ氏は北朝鮮核問題に対する国際社会の憂慮に全面的に共感すると応じ、IAEAは北朝鮮の核の検証準備態勢を徹底して維持していると説明した。
李氏は6日(現地時間)にオーストリアでIAEAの定例理事会に出席した。福島第1原発の汚染水の海洋放出に関し、科学的、客観的な観点で安全に、かつ国際法と国際基準に沿って処理されるべきだとする韓国政府の立場を表明し、日本側の責任ある対応を求めた。
レーダー照射問題や福島原発の処理水問題等、まだまだ問題は山積みですが、この辺りに関しては「安易に日本が譲歩する」という、過去の日本のような態度を取らない限りは問題の悪化もしようがないので、適切な対応ができれば問題がありません。
ですので、中国による台湾有事が現実化してきたうえに、北朝鮮が核の先制使用を宣言するという、東アジア情勢がかなり不安定化してきた状況において、韓国との米軍を介した軍事的な連携は必要であるため、今後日本政府が韓国に対する対応を誤らない限りは、現状これが最も「妥当」な落としどころであると私は考えています。
2:「歴史問題」の解決には繋がらない
ただし、今回の件はあくまで韓国にこれ以上日米韓の軍事的足並みを乱す勝手をさせないための措置であり、いわゆる「歴史問題」の解決自体には一切寄与しないという事が重要です。
日本のメディアなどでは、この件を歓迎する論調であれ警戒する論調であれ、この辺りを分けて考えていないところが多く、肯定派はこれで歴史問題が解決したかのように、警戒派は「また韓国が反故にする」事を危惧しています。
しかし、先ほども書いたように「韓国はまた反故にする」という意見に関しては慰安婦合意と同じく、韓国が何をしたところで、既にアメリカやEUという第三国立ち合いで「解決」が宣言された以上、今後韓国が何をしたところで全くの無意味です。
次に「歓迎派」の主張するように、「これで歴史問題が解決した」と考えるのも、それはそれで間違いです。
なぜかというと、次の記事を読んでもらうと
韓国世論の64.2%「徴用工問題、日本の謝罪を前提にすべきだ」
KOREA WAVE 2023 年 3月 6日
https://koreawave.jp/%e9%9f%93%e5%9b%bd%e4%b8%96%e8%ab%96%e3%81%ae64-2%ef%bc%85%e3%80%8c%e5%be%b4%e7%94%a8%e5%b7%a5%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%80%81%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e8%ac%9d%e7%bd%aa%e3%82%92%e5%89%8d%e6%8f%90/
韓国政府による元徴用工訴訟問題の解決策発表に先立ち、
世論調査機関エムブレインパブリックがnews1の依頼を受けて3~4日、韓国国内の
世論調査を実施したところ、64.2%が「日本の謝罪など歴史の究明を前提にすべきだ」と回答した。
調査は全国18歳以上の男女1007人を対象に実施した。
「日本の謝罪が前提」と答えたのは、60歳未満のすべての年齢層。特に、特に40代は82.6%に上り、最も高い割合となった。地域別では光州(クァンジュ)や全羅道(チョルラド)が81.0%と最も高く、大邱(テグ)や慶尚北道(キョンサンブクド)は55.2%にとどまった。
一方、「関係改善が先」と答えたのは30.9%にとどまり、「知らない」「無回答」は4.9%だった。年齢層では60代以上の51.8%が「関係改善が先」と答えている。
(c)news1
こちらの記事にあるように、韓国人の6割超が「日本の謝罪など歴史の究明を前提にすべきだ」と考えていると書かれています。
ではこの「歴史の究明」とは何かと言う事になるのですが、次の朝日新聞の記事を読むとわかります。
(社説)徴用工問題の「解決」 日韓の協調こそ時代の要請
朝日新聞 2023年3月7日
https://www.asahi.com/articles/DA3S15574286.html
民主主義の価値を共有し、地域の安全に共に責任を負う隣国同士が反目し、首脳同士の行き来すらままならない――。この異常な停滞を打開する出発点としたい。
4年以上にわたり、日本と韓国の正常な外交関係を阻んできた徴用工問題が政治決着した。裁判で敗訴した日本企業の賠償分を、韓国側の財団が肩代わりする解決策を、韓国政府がきのう発表した。
過去の植民地支配をめぐる認識の差が対立の根にある。だが解決まで時間を費やしたのは、相互理解よりも不信をあおってきた両国の政治に責任がある。
■尹政権の重い決断
傷ついた市民感情が癒えるには時間がかかるだろう。だからこそ歴史を謙虚に見つめ、対話と協力こそが互いの利益にかなうことを示し続ける政治の努力が、これからも欠かせない。
日本は戦時中、労働力不足を補うため、朝鮮半島から多くの人々を動員した。当事者らの訴えで、韓国大法院(最高裁)は2018年、不法な植民地支配下での反人道的な違法行為だったとして、日本企業に賠償を命じる判決を確定させた。
日本政府は、1965年の日韓請求権協定で賠償問題は法的に解決済みとの立場をとり、当時の文在寅(ムンジェイン)政権に善処を求めたが、交渉の土台となる解決案は示されなかった。
差し押さえられた日本企業の資産の現金化も迫る中、昨年発足した尹錫悦(ユンソンニョル)政権が韓国の財団を活用する方策を打ち出した。司法判断を尊重しつつ、決定的な関係悪化の回避を試みた重い決断を支持したい。
日韓の戦後を振り返れば、国交正常化の際に植民地支配の法的位置づけで合意に至らず、1910年の日韓併合条約などを「もはや無効」とあいまいにした経緯がある。あえて玉虫色にすることで互恵の歩みを深め、ともに成長を遂げた道程を、改めて思い起こしたい。
財団への被告企業の参加や謝罪表明をかたくなに拒んできた日本側も、最後にはわずかに歩み寄った。日韓の経済団体は今後、次世代を支援する事業に着手するとみられる。日本企業が自由意思で財団に寄付すれば、反発がくすぶる韓国社会の受け止めも和らぐことだろう。
一方、岸田首相はきのう、過去への反省や謝罪を表明した歴代政権の談話を「全体として継承している」と語った。談話の趣旨が真に守られるのか、今後の言動を注視したい。
日本政府は大法院判決を国際法違反と批判してきたが、人権の普遍性を重視する潮流は強まっている。徴用工らの被害の事実は、日本の裁判所も認めていることを忘れてはなるまい。
■禍根残す内向き政治
さらに問うべきは、事態をこじらせた政治の責任だ。
大法院判決後も解決案を示さない韓国側にいらだった安倍政権は、韓国への輸出規制強化に乗り出した。表向きは徴用工問題との関連を否定したが、報復措置にほかならない。日本製品の不買運動が起き、日韓企業に多大な損失を負わせた。
根本にある懸案が政治決着をみたいま、日本政府は速やかに措置を撤回すべきだ。
安倍氏が2015年に出した戦後70年談話も、過去への反省を示した村山談話や小泉談話を「引き継ぐ」としたものの、当の日本が植民地支配の加害者であるという視点が希薄で、韓国側の不信感は深かった。
一方、韓国の文・前政権の独善的な姿勢にも大きな問題があった。前任の朴槿恵(パククネ)政権が日本と結んだ慰安婦合意を、国内の保守勢力批判に政治利用し、形骸化させた。慰安婦問題に続き、徴用工問題でも「被害者中心主義」を唱え、原告らに寄り添う姿勢を強調したが、支持基盤の反発を恐れて解決に汗を流す姿勢は見せなかった。
「対抗措置」の応酬が示したのは、いったん政治が自制を忘れて強硬策にカジを切れば、民意も引きずられ、修復がより困難になることだ。反省し、今後の外交の教訓とすべきだ。
■相互信頼につなげよ
北朝鮮の核・ミサイル開発や深まる米中対立など、日韓を取り巻く国際情勢は厳しさを増している。少子高齢化や格差問題など、国内的にも共通課題は数多い。日韓が協調して取り組むべき分野は広がるばかりだ。首脳が行き来するシャトル外交の復活が望まれる。
領有権を争う竹島や、佐渡金山遺跡(新潟県)の世界文化遺産登録をめぐる問題など、残る懸案も少なくない。徴用工問題の妥結を相互信頼へとつなげ、ねばり強く解決してほしい。
過去の日本の植民地支配をめぐる歴史認識も、落ち着いた環境で互いの溝を埋めていく地道な取り組みが必要だ。
新型コロナの水際対策が緩和されたのに伴い、日韓双方で隣国を訪れる観光客が急増している。人の往来と交流は国同士の理解を深める基盤だ。政治がそれに水を差すのではなく、後押しすることを期待する。
記事では日韓併合が違法か合法かについて、「過去の日本の植民地支配をめぐる歴史認識も、落ち着いた環境で互いの溝を埋めていく地道な取り組みが必要だ」と、あたかも双方の言い分が同等であるかのように書かれており、一連の徴用工問題最大の争点がここにある事がわかります。
これは徴用工問題に限らず、竹島問題や慰安婦問題、軍艦島(端島)や佐渡金山を巡るユネスコ登録での問題などでもいえることですが、彼らは「日韓併合が違法なのだから、併合時代に日本が行った行い全てが不当で違法である」という考え方を前提にしているのです。
しかし以前から何度も説明しているように、日韓併合は「当時としては合法」という事が、学術的にも国際法的にも2001年の時点で「韓国政府が資金を出した国際学術会議」において結論付けられています。
参考動画
【ゆっくり解説】日韓併合はなぜ合法? part1/2 - ニコニコ動画
【ゆっくり解説】日韓併合はなぜ合法? part1/2 - YouTube
しかも、現在韓国や韓国の支援者たちが主張している違法論は、たとえば以下の法政大学のページに書かれているような
2018年韓国大法院判決が問う植民地支配責任――論点のすり替えによって隠された本質―
東アジア平和協力センター/立命館大学 12,21 2020
https://www.ritsumei.ac.jp/research/ceapc/insight/detail/?id=78
(一部抜粋)
2.2018年大法院判決が問う植民地支配責任
2018年大法院判決の主柱は、「日本政府の韓半島に対する不法な植民支配(判決の表現)」とする規範的判断である。これは韓国憲法(国内法)の解釈から導かれた。筆者は、その論旨を国際法の視点から考察し、『「徴用工問題」とは何か?――韓国大法院判決が問うもの』(明石書店、2019年)を出版した。判決文を熟読すれば、大法院がこの「不法な植民支配」という判断を大前提としてほとんどすべての重要な判断を導き出していることがわかる。
注目すべき最大の論点は、大法院判決の主柱である植民地支配の不法性判断である。判決は、それを基礎にして、なぜ被告企業に責任があるのかを詳しく説明している。判決は、「不法な植民支配」下で、侵略戦争と密接にかかわる強制動員の被害者が被った人道に反する不法行為を認定し、その責任を引き受けるべきだ、と日本企業に問いかけている。だから、この「不法な植民支配」という主柱を除いてしまっては、大法院の判断の本質を理解できなくなる。大法院判決が植民地支配責任の履行をこそ求めていることに注目すべきなのである。
ところが、日本では、大韓帝国は、1910年8月の韓国併合条約によって大日本帝国に合法的に併合され、植民地となったとされてきた。佐藤栄作首相(当時)は、日韓基本条約(1965年)等に関する国会審議の際、併合条約について「対等の立場で、また自由意思でこの条約が締結された、かように思っております」と答弁した(衆議院特別委員会1965年11月5日)。日本政府のこの法的な立場は、日韓交渉の間も同じだったし、それ以後も今日まで変更されていない。
しかし、大法院判決の判断は、佐藤首相答弁と矛盾する。これに何の反論もしなければ、「不法な植民支配」とする判決の判断について日本政府が(黙示の)承認をしたと解釈されかねない。それにもかかわらず、なぜ安倍政権は、大法院判決が問いかけている「不法な植民支配」とする判断に沈黙し続けているのだろうか。
3.論点のすり替え
安倍首相は、原告側が被告企業の資産を差し押さえたことに対して、「極めて遺憾。政府として深刻に受けとめている」と語り、判決を「国際法に照らして、ありえない判決」と批判し(朝日新聞デジタル2019年1月6日)、韓国側が1965年請求権協定によって解決済みの問題を蒸し返していることが国際法違反だと示唆した。この論理によると、韓国の国際法違反によって日本が被害を受けている、と韓国を非難したことになる。
だが、大法院判決が問いかけている被害加害関係は、逆である。判決によれば、被害者は、日本による「不法な植民支配」の下で日本加害企業による強制動員によって重大な人身被害を加えられた韓国人であり、「不法な植民支配」による被害については日本が日韓交渉に際して否認し協議に応じなかったので、1965年協定では解決していない、と判断している。
ところが、安倍首相は、判決の主柱である「不法な植民支配」という判断に一言も触れず、「論点のすり替え」によって、1965年日韓請求権協定だけに衆人の注目を集める対応をした。この高度のPR作戦によって、植民地支配責任の問題は巧妙に隠蔽されてしまった。その結果、被害加害関係が逆転するというパラダイムシフトが起きた。日本は、国際法違反の被害者としてふるまい、韓国を加害者に仕立て上げて非難するという離れ業に成功した。結局、日本が不法な植民地支配の加害者であって、韓国の強制動員被害者のヒューマンライツ侵害こそが核心の問題なのだという、ことの真相が隠蔽されてしまったのである。
4.国際法学からも植民地支配は不法
「不法な植民支配」という結論を導いた大法院による憲法解釈は、韓国の国内法の問題である。しかし、日韓の国際関係が紛争の場になった場合は、国際法上の解釈が問題となり、法の平面が異なる。そこで、国際法上も日本による韓国の植民地支配は不法だったのだろうかという問題を検討する必要がある。
筆者は、『歴史認識と日韓の「和解」への道』(日本評論社、2019年)を出版して、1905年11月17日付の「日韓協約」とされている条約は実際には「存在しない」ことを論証した。
この発見は、どのような派生効果を生むだろうか。読者には衝撃的かも知れないが、論理的には以下の2点が言えると、筆者は考えている。
不存在の「日韓協約」を根拠として、大韓帝国が「自由意思」に基づいて合法的に日本による保護国(実質的な植民地)となったとされてきたが、この「日韓協約」が存在しない以上、大韓帝国の条約締結権者の「自由意思」によらない保護国化であり、不法な支配(武力による強制的占領)と評価される。
不存在の「日韓協約」により創設された「統監」は、不法な存在であった。その不法な統監(寺内)が大日本帝国を代表して署名し、且つ大韓帝国政府を指揮して署名させた1910年併合条約は、双方代理により制定された。そればかりか、大韓帝国側の批准もなかった。結局、併合条約は無効だったと評価されるべきである。そうすると、大法院判決による「不法な植民支配」との憲法判断は、国際法学の立場からも裏付けられたことになる。
2001年のハーバード大学主催の国際学術会議において、「当時該当する国際法が存在しない(該当する国際法の登場は第一次大戦後)」「併合条約に国王の署名や批准がなかったことについても、国際法上必ずしも必要なも のではない」「自分で生きていけない国について周辺の国が国際的秩序の観点からその国を 取り込むということは当時よくあったことで、日韓併合条約は国際法上は不法なものではなかった」として否定された内容そのものです。
参照
英の学者ら「日韓併合不法論」支持せず 韓国主張崩れる
産経新聞 2001.11.27
https://web.archive.org/web/20050924085456/http://toron.pepper.jp/jp/20cf/heigou/sankei.html
第3回韓国併合再検討国際会議 : 「合法・違法」を超えて
木村幹 神戸大学 2002-06
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/90000398.pdf#search='%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E7%9A%84%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B3%95%E7%9A%84%E8%A6%B3%E7%82%B9%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%9F%93%E5%9B%BD%E4%BD%B5%E5%90%88%E5%86%8D%E6%A4%9C%E8%A8%8E'
そして過去動画では
1:日韓併合があった1910年以前に違法とする「国際法上の線引き」が存在することを証明する
2:17世紀のヴェストファーレン体制から続く「二国間あるいは多国間で結ばれた条約や協定、または慣習法」という国際法の根本原理そのものを変更する
3:上記2つとは全く異なる画期的な法解釈をする
4:韓国が批准しているすべての条約や協定を放棄して、「今後韓国はあらゆる国際法に従わない」と宣言する
上記どれかでしかこれを覆すことはできないと指摘しました。
しかし韓国や韓国の支持者たちは、こうした国際法に基づいた解釈を無視して、当時否定された内容と全く同じ内容の「違法論」を繰り返しているわけです。
つまり、違法性を証明できていないにも関わらず、「違法だ」と主張し、それを前提に韓国人の多くは「日本の謝罪など歴史の究明を前提にすべきだ」と考え、しかも韓国を支持する人々はこの態度に同調し、異論を無視し続けているというのが現状なのです。
なので「歴史問題の解決」などできるわけがないのです。
何を言っても、韓国人やその支持者達は異論を無視して「違法だ」と主張し続けているのですから、そもそも「対話不能」なのです。
ですので、韓国側は最初の方で書いたように、今後この問題を外交問題化する事はできませんが、問題そのものは継続されることになるわけですし、「韓国の若い世代は変わった」という最近の主張も、まるで実態を見ていないという事になります。
今回の「決着」とはあくまで外交紛争の政治的決着であり、それ以上でも以下でもないともいえます。
3:今後注意すべきこと
そしてここからは、上記を踏まえたうえで今後日本が最も警戒し注意しないといけない事を書きます。
それは韓国の「プマシ」という概念です。
これは「プム=手間」「アシ=交換」、意味としては手間のかかることを交換する、つまり一種の共助の事で、日本における田植え、屋根葺きなど一時に多大な労力を要する際におこなう共同労働「結」と例えられることの多い概念です。
しかし実態としては日本の「結」よりももっと広範な概念なうえに、以前紹介した「朝鮮における信頼の断絶」と「疑似的信頼関係を構築するため(日本人から見た)パーソナルスペースへどんどん入り込んでくる態度」などと深く関係した概念です。
上記「疑似的な信頼関係構築」では、お互いに迷惑をかけたり無理を通したりすることで「こんなに相手に負担をかけられるのだ」という事を信頼の担保とし、それを継続させ続けることが人間関係を円滑に進める手段となっているわけですが、プマシとは相手の無理を断らず聞くことで、次に自分も同じく相手に無理を聞いてもらう「予約」をしたことになるという概念です。
実は、今回の徴用工問題を巡る韓国側の一連の反応を見ていて、私が真っ先に頭に浮かべたのがこの概念です。
次の記事を読むと
尹大統領は「強制徴用」被害者に配慮し、日本をもっと引き出せ
東亜日報 March. 08, 2023
https://www.donga.com/jp/List/article/all/20230308/4006471/1
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は7日の
閣議で、政府の元徴用工賠償問題の解決策と関連し、「被害者の立場を尊重しつつ、韓日両国の共同利益と未来発展に合致する方法を模索した結果」とし、韓日の未来志向的な協力に向けた大乗的な決断であることを強調した。しかし、「強制徴用」被害者や市民団体、野党議員らは緊急時局宣言を通じて政府の解決策の無効化を主張し、署名運動と糾弾集会を開催すると明らかにした。
政府の第三者弁済の解決策は、日本側の及び腰の対応、被害者と野党の激しい反発など、あらゆる論争を十分に覚悟して出した結論だろう。これには、政府内の否定的なムードにもかかわらず、これ以上先送りにしてはならないという尹大統領の強い意志が大きく作用したという。政府は、北朝鮮の高まる核の脅威に対して、韓米日、韓日の協力が切実な状況であり、もはや韓日の対立を放置してはならないという戦略的判断によるものだと強調している。
このような韓国の先制的な解決策の提示に日本側が示した反応は残念極まりない。直接の謝罪と賠償を排除した迂回的な措置だけを主張する日本側に対し、政府は最後まで誠意ある政治的決断を訴えたが、日本はいかなる追加の譲歩もしなかった。そのような日本側の態度のために、韓国国民の間では「政府が急ぎすぎたのではないか」という疑問の声が上がり、被害者らが「物乞いした金は受け取らない」と反発するのも当然だった。
しかし、政府が強調したように、今回の解決策の提示は問題解決の終わりではなく始まりだ。韓日の歴史問題の葛藤を後にして、関係正常化に向けた長く困難な過程に入ったにすぎない。激しい論争と反発の中で出発したため、粘り強く繊細な努力が必要だ。何よりも被害者の反発を和らげ、理解を求めるための努力をなおざりにしてはならない。不幸な歴史が残した傷とわだかまりは簡単に癒すことはできない。反発が大きければ大きいほど、一層の配慮が必要だ。
さらに政府は、日本側が前向きな対応に出るよう誘導しなければならない。政府は今月中旬の尹大統領の訪日と来月の米国国賓訪問、5月の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)の出席を機に、日本側にも真摯な態度変化があることを期待している。今こそ、被害者と国民の心を癒す真の外交力を発揮する時だ。
韓国内で今回の件に対する反発が広がっている件に関し、「今回の解決策の提示は問題解決の終わりではなく始まりだ。韓日の歴史問題の葛藤を後にして、関係正常化に向けた長く困難な過程に入ったにすぎない」「日本側が前向きな対応に出るよう誘導しなければならない」と書いています。
つまり、韓国人達は今回の件を「解決」とは考えておらず、「まだ続きがある」と考えているのです。
また次の記事では
韓国政府 「徴用」解決策を発表=財団が肩代わり
聯合ニュース 2023.03.06
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230306003000882
【ソウル
聯合ニュース】韓国政府は6日、日本による徴用被害者への賠償問題をめぐり、2018年の韓国大法院(
最高裁)の判決で勝訴が確定した被害者に対し、政府傘下の財団が日本の被告企業の賠償を肩代わりして支払うことを正式に発表した。朴振(パク・ジン)外交部長官が記者会見を開き、政府の解決策を発表した。ただ、日本の被告企業が賠償に参加しない方式であるため、「中途半端な解決策」という声も上がる。一部被害者は強く反発している。
政府は国内の意見の取りまとめや日本との協議結果などを基にこのように決定したという。朴氏は「行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団が徴用被害者と遺族の支援、被害救済の一環として、18年に大法院で確定した3件の判決の原告に判決金(賠償金)および遅延利息を支給する予定だ」と説明した。現在係争中の別の徴用関連訴訟で原告が勝訴した場合も、財団が原告に賠償金と遅延利息を支給する。
必要な財源については「民間の自発的な寄与などを通じて用意し、今後、財団の目的事業に関して用いることができる財源を拡充していく」と述べた。財団は今年1月に、定款に記載される目的事業に「日帝の国外強制徴用被害者と遺族に対する被害補償および弁済」を追加している。
「民間の自発的な寄与」に関してはまず、1965年の韓日請求権協定に基づいて日本から支払われた資金で設立された、鉄鋼大手ポスコをはじめとする韓国企業16社程度が自発的な寄付として資金を拠出するとみられる。
18年に大法院で賠償命令が確定したのは3件の訴訟。原告は日本製鉄、広島と名古屋の三菱重工業で働かされた被害者ら計15人だった。これとは別に、大法院の判決を待つ9件を含め、韓国の裁判所では多数の徴用関連訴訟が行われている。
一部の被害者はこれまで韓国政府傘下財団による賠償肩代わり案に強く反発してきた。政府の正式発表でも被告企業の資金拠出は盛り込まれておらず、批判の声が相次ぐ見通しだ。
朴氏は「被害者の苦しみと痛みを記憶し、未来の世代に発展的に継承していくため、被害者の追悼と教育、調査・研究事業などに内実を伴わせ、拡大していくための方策づくりを積極的に進める計画だ」と述べた。また韓日両国の関係について「1998年10月に発表された『21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ共同宣言』を発展的に継承し、過去の不幸な歴史を克服し、和解と善隣友好協力に立脚した未来志向的な関係を発展させていくためにともに努力することを願う」と強調した。
政府の解決策については「1965年の韓日国交正常化以降、構築してきた両国間の緊密な友好協力関係を土台に、この先の韓日関係を未来志向的により高い次元に発展させていくという意志を持っている」と強調。政府は徴用被害者の苦しみに深く共感し、被害者と遺族の痛みを癒せるよう最大限努力していくと言明した。
朴氏は被告の日本企業が参加しない「中途半端な解決策」との批判について「同意しない」として、「コップに例えると、コップに水が半分以上は入ったと思う。今後続く日本の誠意ある呼応によってコップはさらに満たされると期待する」と述べた。
韓国の外交部長官が、「コップに例えると、コップに水が半分以上は入ったと思う。今後続く日本の誠意ある呼応によってコップはさらに満たされると期待する」と述べており、こちらでも「決着」ではなく「続きがある」としている態度が、韓国政府の公式見解であることがわかります。
今回の件に関して、「韓国は変わった」「これからの韓国は以前と違う」と主張している人達は、このことを見逃しているかあるいは無視して見ないようにしています。
ではこの「日本の前向きな対応」とは何かというと
韓国政府「政治的決断」 徴用解決策速度戦…被害者説得、日本企業の賠償参加が宿題
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.07 07:45
https://japanese.joins.com/JArticle/301718
日帝強占期の
朝鮮人強制徴用被害をめぐる20年余りの法的葛藤が一段落した。韓国政府が司法・外交・政治などの争点と葛藤が複合的に絡んだ強制徴用問題の解決策を推進できたのは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の強い意志が反映された結果だ。尹大統領は参謀が強制徴用解決策に伴う政治的リスクを提起するたびに「いつかしなければならず、誰かがしなければならなければ、いま私がする」と語った。
ただ、今回の徴用解決策は議論開始と交渉、結果発表のすべてを韓国政府が主導する格好になった。政府は国内の意見聴取および対日交渉初期から「最大公約数解決策」を念頭に置いた。解決策の優先適用対象となる15人の被害者全員を満足させることができなくても、最大多数が受け入れる解決策を導き出すという趣旨だった。日本被告企業の直接賠償と謝罪を要求し、第三者弁済案を拒否する被害者の意見も忠実に聞いたというのが政府の説明だ。先月28日に朴振(パク・ジン)外交部長官と強制徴用被害者・遺族との面談の席で多くの被害者は出どころと関係なく早期賠償を希望するという意見を陳述した。
柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商部長官は「文在寅(ムン・ジェイン)政権当時に大法院が韓日請求権協定に対する我々の立場と正反対の判決をしたため、我々が問題を作って我々が解決するというぎこちない状況になってしまった」とし「これ以上先送りせず、いかなる形であっても繕うべきという政治的決断と見なければいけない」と述べた。
政府のジレンマは2018年の大法院(最高裁)判決を尊重しながらもこれを迂回する解決策を推進しなければならないところにある。この過程で苦労が伴う。賠償金を肩代わりするという支援財団とこれを受け取らないという被害者の間の立場の違いが平行線をたどれば、解決策の完結性に疑問が生じる。韓日の神経戦が韓国国内の争いに新たに展開する可能性がある。
日本被告企業の賠償参加など日本の追加呼応がなければ「日本との交渉で何を得たのか」という批判が強まるしかない。「迅速な決断」が「拙速な判断」に変わるかもしれない状況だ。この日、韓国の解決策発表後、日本政府や被告企業が取った措置を見ると、「請求権協定ですべて解決済み」という従来の立場から一歩も抜け出していない。日本の追加の呼応を楽観できる状況ではない。
申ガク秀(シン・ガクス)元駐日大使は「過去の問題を解決して韓日両国が未来に進むためには加害者と被害者の協力が重要だ」とし「そのような意味で日本がより積極的な呼応と前向きな措置に出なければいけない」と述べた。
第三者弁済という解決策が強制徴用問題の解決という「完全燃焼」につながるためには前提条件が必要だ。まず確定判決を受けた15人の被害者全員が支援財団から支払われる賠償金を受領しなければならない。一部の被害者が受領しない場合、少なくとも裁判所供託などの手続きを通じて法律的にも賠償手続きを終えなければならない。問題は一部の被害者が賠償金受領はもちろん裁判所供託にも反対しているという点だ。特に被害者側の法律代理人団は政府が供託に出る場合、供託無効訴訟など法的対応を検討している。
求償権も徴用解決策の完結性を脅かしかねない。求償権を請求する場合、日本被告企業はまた賠償金を支払わなければならない状況に置かれ、問題は原点に回帰する。被害者と日本被告企業間の民事紛争が支援財団と日本被告企業間の葛藤に移転されるだけだ。
記事で書かれているように、代位弁済に三菱や日本製鉄が加わる事を、韓国側は「日本側の誠意ある呼応」と考え、今後も日本に対してこの要求をし続けていくと主張しているわけです。
当たり前の事ですが、これを(政治的な)決着と考える日本や、それを歓迎したアメリカやEUとの間に、この件に関する大きな隔たりがある事がわかります。
要するに、韓国人達は問題を振り出しに戻してしまっているのです。
これが今回の件における「プマシ」です。
韓国人達からしてみれば、代位弁済自体がかなり無理を通した日本側からのお願いという考え方です。
なぜかといえば、先ほど書いたように韓国では「日韓併合は違法」という事になっている以上、代位弁済方式は「日本が反省していない」ということに他ならないからです。
しかも、実態としては韓国が1965年の請求権協定を破ったのだから、それを原状復帰させる責任は韓国側にあるわけですが、たとえば以下の記事にあるように
【時視各角】韓国の恥ずかしい過去、拙劣な隣国日本
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.08 11:43
https://japanese.joins.com/JArticle/301781
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が1日、ソウル中区(チュング)の柳寛順(ユ・グァンスン)記念館で開かれた第104周年三一節(
独立運動記念日)記念式典で記念演説をしている。[写真 大統領室]
日本側:被害者個人に対して補償してほしいという話か。
韓国側:われわれは国として請求する。個人に対しては国内で措置したい。
日本側:韓国人被害者に対してできるだけ措置しようと思うが韓国政府が具体的な調査をする用意があるのか。
韓国側:被害者に対する補償はわれわれの国内で措置する性質のことと考える。
日本側:日本援護法を援用して個人ベースで支給すれば確実になると考える。
韓国側:それをわれわれは国内措置としてわれわれの手で支給したい。
日本側:被徴用者の中には負傷者もおり、死亡者もおり、また負傷者の中でもその程度が違うはずだが、それを知らずにむやみにお金を支給することはできないのではないか。両国国民の理解を促進し国民感情を和らげるためには個人別に支給するのが良いと考える。
韓国側:補償金支給方法の問題だが、人員と金額の問題がある。とにかくその支給はわれわれ政府の手でしたい。
2004年に公開された韓日会談予備会談記録の一部だ。1961年5月10日に日本の外務省会議室で韓国側7人、日本側11人が日帝強制動員被害者補償問題を協議した。日本側は被害者に対する日本政府の個別支給を主張した。韓国側は資金をくれれば「国内問題として措置したい」と言った。結局日本が無償で提供する3億ドルに一括して盛り込むことで妥結した。そして1965年に結んだ韓日請求権協定第2条「両国は請求権問題が完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」とまとめられた。
日本政府が個別支給を主張したのは、払う金額を減らし交渉力を高めるためだったかもしれない。経済開発という課題を抱えた韓国政府は大金が切実だった。韓国政府は韓日基本条約締結から10年が過ぎた75年から77年まで強制動員死亡被害者8552人の遺族に30万ウォンを支給した。約26億ウォンが使われた。韓日国交正常化過程でその3億ドルを含め合計8億ドル(公共借款2億ドル、商業借款3億ドル)が日本から支払われた。その資金で浦項製鉄(現ポスコ)などの企業を作り、道路などのインフラを整備した。ポスコのほか韓国電力、韓国道路公社、韓国鉄道公社、韓国水資源公社、KT、KT&G、外換銀行(ハナ銀行と合併)が代表的受恵者だ。
「請求権協定は請求権項目別の金額決定ではなく政治交渉を通じて総額決定方式で妥結したため項目別受領金額を推定するのは困難だが、韓国政府は受領した無償資金のうち相当金額を強制動員被害者の救済に使うべき道義的責任があると判断される。(中略)1975年の韓国政府の補償当時に強制動員負傷者を対象から除外するなど道義的次元からみると被害者補償が不十分だった」。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2005年に「韓日会談文書公開後続対策関連官民共同委員会」が出した結論だ。その後特別法が作られ強制動員による死亡者の遺族に2000万ウォン(70年代に30万ウォンを受け取っていた場合は234万ウォン控除)、重傷者に最大2000万ウォンが支給された。大多数の負傷者が死亡していた時だった。
「ポスコの設立経緯と企業の社会倫理的責任を考慮すれば強制動員被害者と遺族に相当な努力をすることが望ましい」。2009年のソウル高裁の判決文の一部だ。日帝被害者団体会員らがポスコを相手取り起こした慰謝料請求訴訟でポスコの法的責任はないと判決し、自発的被害者支援を勧めた。他の恩恵企業、さらには韓国政府と国民にも該当するものだった。
韓国の恥ずかしい過去、過ちの認定とそれにともなう責任をどうにか避けようとする拙劣な隣国、政略的計算に汲々とした両国の政治のため強制動員問題はこじれるだけこじれた。一昨日韓国政府が国内の非難を甘受して未来に進むドアを開けた。今度は日本が変わる番だ。
イ・サンオン/論説委員
韓国側は請求権問題におけるやり取りで、「日本政府が個別支給を主張したのは、払う金額を減らし交渉力を高めるためだったかもしれない」と、問題の原因を日本に転嫁することで、自分達の「(あくまで主観的な)道徳的優位性」を手に入れているので、彼らの中では「代位弁済という日本側の無理な”プマシ”を聞いてあげた」という考えなのです。
ですので、まず韓国側が日本の「お願い」を、かなり無理を通して聞いてあげたのだから、次は日本が「韓国のお願い」を聞かなければいけない、つまり「プマシ」による「友好関係の構築」を要求しているわけです。
ですから日本としては、より一層毅然とした態度で韓国に対して「それはできない」という態度を取り続けることが重要であり、「韓国が変わった」とか「これからは友好的な関係が築ける」などとは考えてはいけないという事です。
「プマシ」ができなければ、彼らは裏切られたと考え「恨(ハン)」を蓄積し、いずれまた似たような問題を引き起こすからです。
それが慰安婦問題のように、民間団体などをつかったプロパガンダ活動になるか、或いは処理水問題など別件での工作になるか、その辺りはわかりませんが、「将来的な関係の悪化」の準備は既に整ったとみて間違いないでしょう。
アメリカやEUという第三者の立ち合いで「解決」という既成事実ができている事もあり、むしろ今後はより一層「無味乾燥」で「事務的」な態度で韓国に接する事が重要となってきます。
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