さて、本日は一連の日韓首脳会談後に様々な論調がメディアネット等で出てきていますが、私が確認する限りでは語られていない問題があるので、その件について扱っていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
現在、韓国では尹大統領が率先し関係改善を訴えており、諸問題に対しても「いつも通りの韓国の言い分」ではなく、国際法に沿った論調を展開しているため、日本国内でもかなり高い評価をするメディア報道が多くなっている。
しかし調べてみると、韓国内において尹政権は様々な歴史問題に「触れない」ように動いており、言及しているのは日韓請求権問題の件に関してのみで、他の部分にはほとんど言及しておらず、「先送り」のような状態になっている。
ここには朱子学的な「徳治」の考え方が深く関わっており、韓国においては法の上位に「徳」が存在しており、この「徳=正しさ」であるため、私たちの考えるような国際法的な視点で説明しても世論が納得しないという問題がある。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:日本では好印象
まずはこちらの記事から
尹大統領「反日で政治的利益得ようとする勢力存在」 外交巡る批判に反論
聯合ニュース 2023.03.21
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230321001600882
【ソウル
聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は21日の
閣議で、韓日関係について、「一方がより多くのことを得るともう一方がその分を失う
ゼロサム関係ではない」として、「韓日は共に努力し、共に多くのことを得るウィンウィンの関係になり得るし、必ずそうなるべきだ」との認識を示した。そのうえで、「われわれの社会には排他的な
民族主義と
反日を叫び、政治的な利益を得ようとする勢力が存在する」と指摘した。16日に行った韓日首脳会談を「屈従外交」などと批判する野党などをけん制する発言とみられる。尹大統領は「日本はすでに数十回にわたって歴史問題について反省と謝罪を表明した」とも述べた。
閣議では韓日関係を「宿命の隣人関係」とし、「わが政府は正しい方向に進んでいると確信している」と強調した。
また、「存在すら不透明になった韓日関係の正常化を悩んできた。出口のない迷路に閉じ込められた気分だった」と振り返った。
文在寅(ムン・ジェイン)前政権については「泥沼に陥った韓日関係をそのまま放置した」として、「私も目の前の政治的な利益のため、楽な道を選び、史上最悪の韓日関係を放置する大統領になることもできた」と言及。「昨今の厳しい国際情勢を後回しにし、私まで敵対的な民族主義と反日感情を刺激し、国内政治に活用しようとすることは、大統領としての責務を放棄することだと考えた」と述べた。
政府が発表した徴用問題の解決策に関しては、「1965年の韓日国交正常化協定と2018年の大法院(最高裁)判決の折衷案」として、「被害者と遺族の痛みが癒やされるよう最善を尽くす」と強調した。
関連記事
【社説】大統領の韓日関係説明…双方向疎通ならもっと良かっただろう
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.22 12:01
https://japanese.joins.com/JArticle/302354
尹大統領が閣議で国民向けの見解を示し「われわれの社会には排他的な民族主義と反日を叫び、政治的な利益を得ようとする勢力が存在する」と発言、日本に責任転嫁したり安易な「どっちもどっち論」に持っていかず、関係悪化の原因が「韓国内にある」と認め、そのうえで問題解決にあたったとしています。
また日韓請求権協定に触れている事もポイントです。
そして次の記事を読むと
韓国の輸出優遇国に日本復帰、尹大統領が指示…関係改善加速に意欲
読売新聞 2023/03/22
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230322-OYT1T50040/
【ソウル=上杉洋司】韓国の 尹錫悦 大統領は21日、日韓双方が輸出手続きを簡略化する優遇国(ホワイト国)から外している問題で、韓国が先行して日本の優遇国復帰に向けた法的手続きに着手するよう担当閣僚に指示した。日韓関係の改善を加速させたいとの意欲の表れとみられる。
国務会議で明らかにした。テレビで生中継された冒頭発言は、韓国メディアによると過去最長の約23分と異例の長さで、大半が日韓関係についてだった。尹氏は、米中対立や北朝鮮の核の脅威などにより「韓日協力の必要性が高まっている」と強調し、「共に利益を得るウィンウィンの関係にしなければならない」と訴えた。
最大の懸案である元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題については、韓国政府が1965年の日韓請求権・経済協力協定で、「国民の個人請求権を一括で代理して日本から支援金を受け取った」と説明。韓国の財団が、被告の日本企業の賠償金相当額を支払う解決策について、「65年の合意と、(日本企業に賠償を命じた)2018年の大法院(最高裁)判決を両立させる折衷案だ」として理解を求めた。
日本側の「謝罪」を巡っては、1998年の日韓共同宣言などを例に「日本は数十回にわたって歴史問題で反省と謝罪を表明している」と述べた。
尹氏は、日韓が「関係正常化と発展を妨げる問題を取り除く努力を、それぞれがしなければならない」と強調。「韓国が先に動けば、日本も呼応するだろう」とし、日本の今後の対応に期待をにじませた。
22日の読売新聞による、先ほど取り上げた閣議での発言に関する記事で、尹大統領が「国民の個人請求権を一括で代理して日本から支援金を受け取った」と説明したと書かれており、尹政権がこれまでの韓国の政権とは違うという事を記事にしています。
※これに関して、同様の内容を伝える韓国メディアの記事では「国民の個人請求権を一括で代理して日本から支援金を受け取った」という部分が書かれておらず、ネットに該当の動画もないため、私が確認した範囲では該当部分が読売記事以外に見つからなかったという事を指摘しておきます。
尹大統領「反日を叫んで政治的利益得ようとする勢力がある」「韓日関係の放置は責務放棄だ」
朝鮮日報 2023/03/22
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/03/22/2023032280072.html
「韓日関係、過去を乗り越えなくては」…韓国大統領、23分間国民を説得(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.22 09:23
https://japanese.joins.com/JArticle/302327
2023年3月23日23:05追記
韓国側でソースが見つかり、比較的尹政権に好意的な読売と、明確に尹政権と敵対しているハンギョレで書かれている事から、間接的ながら事実と判断しました。
尹大統領の「国務会議発言」詳しく見てみると…「歴史を『都合よく』こじつけた」
ハンギョレ新聞 2023-03-23
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/46272.html
専門家ら、尹大統領の国務会議での発言を批判
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が21日の国会議で行った、「国民向け談話」を連想させる韓日首脳会談関連発言がさらなる波紋を広げている。尹大統領が対日外交政策の基調の裏付けるために言及した国内外の事例について、専門家たちは「常識的で論理的な整合性が必要だが、無理にこじつけた印象を拭えない」と評した。
本紙の取材によると、韓国政府の強制動員解決策(第三者弁済案)と関連し、「1965年の韓日基本条約と請求権協定では、韓国政府が国民の個人請求権を一括代理して日本の支援金を受け取ることになっている」という前日の尹大統領の発言は事実と異なる。慶北大学法科大学院のキム・チャンロク教授は22日、「(当時)韓日会談の過程で、韓国人被害者個人に(支援金を)直接支給するという日本側の提案に対し、韓国側が後続措置は自国で行うという趣旨で対応した記録はあるが、基本条約と請求権協定のどこにもそのような文言はない。さらに重要なのは2018年に行われた最高裁(大法院)判決が明確に宣言したように、強制動員の慰謝料請求権は請求権協定の適用対象ではない点だ」とし、「全く関連性のない二つを結び付けた」と指摘した。
尹大統領が中日国交正常化の過程で中国の周恩来首相が「戦争賠償要求を放棄する」と述べた点を強調したのも、論点とかけ離れた事例だ。聖公会大学のヤン・ギホ教授(日本学)は「中国は『戦争犠牲者が流した血に値段をつけることはできない』とし、日本政府を対象にした賠償権を放棄したものの、国交正常化以降30年以上にわたり、莫大な規模の円借款支援を受けた」と指摘した。さらに中国側は個人の賠償権まで放棄したわけではなかった。中国の強制動員被害者たちは日本の西松建設を相手取って損害賠償請求訴訟を起こし、2007年に日本最高裁で敗訴した。ところが、中国政府がこれに強く抗議し、中国内で反日世論が沸き上がったことで、加害企業が強制動員被害者に直接謝罪し「和解金」を支給した。
尹大統領が「過去を乗り越えなければならない」根拠として示したドイツとフランスの「和解」も、韓日関係の現実に背を向けた発言だという批判が出ている。徹底した反省に基づいてナチスの残滓の清算に乗り出したドイツと、謝罪と反省を口にしながらも、ともすれば植民地支配の不法性まで否定する日本を一緒くたにすることはできないためだ。イ・スフン元駐日大使は「ドイツは首相が変わる度に謝罪やお詫び、反省の意を表明し、犠牲者たちのために参拝する。また『記憶・責任・未来』財団を作り天文学的な資金を費やして被害者に対する賠償と名誉回復事業などを行っている」と語った。
イ元大使は「尹大統領が継承すると言う『金大中-小渕宣言(韓日パートナーシップ宣言)』(1998年)の核心は、日本が過去を直視し責任を認め謝罪したうえで、未来志向の韓日関係を築いていくこと」にあるとしたうえで、「今のように『過去の直視』という一軸を崩して、宣言を継承するというのは辻褄が合わない」と語った。キム・ジュンヒョン元国立外交院長は「尹大統領が自分の『決断』だと強調しし対日外交政策の方向を決めておきながら、いちいち説明を続けること自体が国民的共感を得られていないことを自ら認めたもの」だと指摘した。
チョン・インファン、シン・ヒョンチョル記者
また次の朝日新聞の記事では
(天声人語)日韓首脳会談
朝日新聞 2023年3月18日
https://www.asahi.com/articles/DA3S15584428.html
木曽義仲が
倶利伽羅(くりから)峠で奇襲をかけた。「平家うしろをかへり見ければ、(源氏の)白旗、雲のごとくさしあげたり」と
平家物語は描く。
源平合戦のころから、競い合うのは「赤と白」に決まっている。これがお隣の韓国では「青と白」だというから面白い。
運動会では「青勝て、白勝て」となるそうだ。ならば色の感覚が全く異なるかといえば、真っ赤の嘘はそのまま通じる言い回しだ、と渡辺吉鎔著「韓国言語風景」にあった、似ているが違う、違うが似ている、というのが日韓の間柄なのだろう。その複雑さがあだになったか、両国の外交はここ数年、戦後最悪とまで言われてきた。
ようやく訪れた変化である、尹錫悦大統領を招いて、日韓の首脳会談が久しぶりに開かれた、岸田首相の握手には、一気に春を迎えたかのような趣があった。
一応の解決を見た徴用工問題は、韓国内では反発が強いとも聞く。両国が政治決着したのも、中国や北朝鮮などの周辺の安全保障リスクが高まっているのが理由の一つだろう、吹き付ける風は穏やかではないが、今は進展を期待したい。
首脳同士のシャトル外交の再開も決まった、もっとも東京銀座辺りではコロナ禍を超え、あちらの国の言葉を再び耳にする機会が再び増えている。2月の訪日外国人客で最も多かったのは韓国の人だった、「同じ釜の飯を食う」という慣用句も、じつは両国共通だそうだ。シャトル外交にまさるとも劣らぬ交流を、こちらはこちらで進めていこう。
(※紙面からの書き起こしなので間違い等あるかもしれません)
日韓には違う部分も同じ部分もあるとしたうえで、一連の日韓首脳会談に対する好意的評価と、シャトル外交復活を歓迎しています。
そして次の記事では
【日韓首脳会談】尹錫悦大統領が最初に読売新聞のインタビューを受けた重大な意味
デイリー新潮 2023年03月21日
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03210700/?all=1
“
朝日新聞とは違う”との立場を示した尹政権
韓国の尹錫悦大統領の初訪日と日韓首脳会談(3月16、17日)は、日韓関係に新たな歴史を開いた。しかし、日本は尹大統領のメンツに配慮する対応を取らなかった。それでも、日韓関係を回復させた尹大統領は、岸田文雄首相よりも信念ある指導者で、勇気ある法律家だった。日本には「メンツ」と「大義名分」が、政治生命に決定的影響を与える「韓国政治最大の価値」である、との認識がなかった。
尹大統領は、訪日直前に初のインタビュー相手として読売新聞を選んだ。これは、日本の新聞の歴史では初めての大事件であった。ほとんどの大統領が、朝日新聞とのインタビューだったからだ。
これは“朝日新聞の韓国報道を評価しない”という尹政権の立場の表明であると同時に、朝日新聞の権威の失墜を意味する。朝日新聞は報道や社説で左派の文在寅政権に近い姿勢を、慰安婦問題や元徴用工判決では判決に好意的な理解を示したと、尹政権は判断したのだ。
尹大統領は民主主義についての理解が“朝日新聞とは違う”との立場を示した、と見ていい。朝日新聞は文在寅政権の「最高裁判決を尊重する」と法解釈を大きく報じ、批判しなかった。しかし、読売新聞は違う立場だった。尹大統領は、文在寅政権の立場や政策を民主主義とは認めなかった。
尹大統領は首脳会談後の記者会見で「2018年の韓国最高裁の元徴用工判決は、韓国政府とは違う立場」と述べた。これは“国際条約・協定が国内法に優先する”という一般的な法解釈と民主主義理解を示している。
韓国最高裁の判決は、元徴用工への慰謝料支払いの「違法性」について法的な事実認定をせず、「1910年の日韓併合」を根拠にした。この法解釈と事実認定を、法律家としての尹大統領は「間違いだ」と考えているという。朝日新聞にこうした法解釈はなかった。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03210700/?all=1&page=2
危険を知りながら日韓関係改善に取り組む尹大統領
また尹大統領に近い高官によると、尹大統領は日本政府と日本国民の「反韓感情」の存在と、慰安婦問題での朝日新聞の「誤報」事件も十分に理解した。徴用工訴訟判決について記者会見で、尹大統領は「1965年の日韓協定については、韓国政府の財政で処理するとの立場で一貫している」と述べた。
尹大統領は自身の外交・内政政策について「自由、人権、法治」を強調した。これは、大統領選挙の公約である「民主主義の確立」に基づく政策で、日本との協力と米韓同盟を強化する方針だ。中国とは“安全保障問題では距離を置く”という立場を示した。
この尹大統領の発言を、韓国に批判的な佐藤正久・参議院議員は「驚いた、我々の立場と同じだ」とテレビで発言した。「韓国政府傘下の財団が元徴用工への支払いを行い、日本企業には求償権を行使しない」と明言したからだ。それなら、もう少し好意的なサービスをしてもよかったのに。
尹大統領が当選前から「日韓関係改善」を掲げ、取り組んできた事実を、自民党政治家はあまり理解していなかったようだ。尹大統領は、国民の反発を受け支持率が下がる「日韓関係改善」を「国益のため」と明言した。
その意味で、尹大統領は「知日派」である。韓国における「親日」への攻撃は、政治家抹殺を意味する。その危険性を知りながら日韓関係改善に取り組んだ「勇気と知性」を、日本政府と政治家は理解していない。「知日派」を大切にしない対応は、「日本に好意的な人々を、日本は大切にしない」との教訓を韓国民に残す。
これまでの日韓外交でも、日本政府は「反日派」の学者や政治家を日本に招待したが、「知日派」への対応は必ずしも温かくなかった。
日本では高い評価を受けた尹大統領だが、首脳会談に対する韓国民の評価は低い。直後の世論調査で支持率は1%下がった。これは、韓国のマスコミが一致して「岸田首相から謝罪の言葉がなかった」との見出しで報道したからだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03210700/?all=1&page=3
次回の首脳会談は尹大統領のメンツを立てる番に
実は、韓国のマスコミと国民には、天皇と首相がこれまで何度も「謝罪」を表明した過去についての記憶がない。韓国の新聞・テレビがそれを報じないから、「徴用工問題での謝罪」が一般国民の感情になっている。
岸田首相はこの問題について「歴代内閣の立場を引き継いでいる」と述べた。「立場」とは、過去の歴史について「お詫びの気持ち」を表明したという事実だ。この際に「歴代内閣の『おわび(謝罪)』を引き継いでいる」と述べれば、尹大統領のメンツも保たれ韓国メディアも「謝罪を確認した」と報じただろうが、岸田首相の発言に尹大統領のメンツを立てる配慮と韓国マスコミへの意識はなかった。
とにかく「謝罪」はもちろん「おわび」の言葉も使いたくないという、日本政府や自民党保守派議員の意向がにじみ出ていた。尹大統領にとっては、やや「メンツ」を失った訪日結果であった。
日韓首脳は共に酒豪として知られる。会食後の二次会では、尹大統領が好きなエビス・ビールと日韓の焼酎を飲み交わし、信頼を深めた。ビールに焼酎を混ぜる韓国式の「爆弾酒」も飲み交わした。
東京での日韓首脳会談では、尹大統領が岸田首相のメンツを立てた。ソウルで行われる次回の首脳会談は、岸田首相が尹大統領のメンツと大義名分を立てる番にしてほしい。
慶応義塾大学で17日に行われた尹大統領の講演では、学生との質疑応答の際に、取材記者たちが会場から出された。誰の意向かわからないが、民主主義と学問の自由の否定と批判される。大学に恥をかかせた。
前半は「韓国の大統領が朝日新聞ではなく読売新聞のインタビューを受けた」という件に関して書いており、残りは尹政権が「これまでの韓国の政権とどう違うのか」という事を好意的に書いています。
そして興味深いのが、「元徴用工への慰謝料支払いの「違法性」について法的な事実認定をせず、「1910年の日韓併合」を根拠にした。この法解釈と事実認定を、法律家としての尹大統領は「間違いだ」と考えているという」と書かれている事です。
※これが事実であればかなりの進展なのですが、実のところこれに関しても新潮のこの記事以外に確認できず、確実な情報元が見当たりません。
こうした記事を見る限りでは、日本で尹政権を好意的に評価している記事があり、なかには不確かな情報もありますが、私の確認した範囲では「問題の原因が韓国内にある」としている事と「日本はもう何度も謝罪している」「請求権協定で日本の個別補償提案を韓国が断り一括で受け取った」という3点を明言している事が「前向きな内容」として確実です。
2:実態は違う
「問題の原因が韓国内にある」という事と、「もう日本は何度も謝罪している」「請求権協定で日本の個別補償提案を韓国が断り一括で受け取った」という3点を認めている事に関して、これまでの韓国の態度を見ると相当大きな進展ではあるのですが、ではこれが今後日本と韓国の間で歴史問題の再発にならない保証になるかといえばそれは違います。
かなり好意的に評価しても「尹政権末期まではこのスタンスが続く可能性が高い」「その後どうなるかは不明」程度の評価しかできません。
そしてここで重要なのが、この判断は「韓国最大野党「共に民主党」が尹政権の解決案に反対し、それを政治的に扇動しているから」が主な理由ではないという事です。
関係はしてくるでしょうが、私はこれが大きな要素とは考えていません。
では何が問題なのかというと
韓国外交部 慰安婦問題「韓日会談で議論せず」=政治争点化に懸念
聯合ニュース 2023.03.20
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230320005200882
【ソウル
聯合ニュース】韓国外交部の当局者は20日、先ごろ開かれた韓日首脳会談で日本の
岸田文雄首相が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対し、旧日本軍の
慰安婦問題を巡る2015年の韓日合意の履行や韓国が実施している
福島県産
水産物の禁輸措置の撤廃を求めたとする日本メディアの報道に関連し、事実かどうかを巡って「国内で政治的争点にするのは望ましくない」との立場を明らかにした。
同当局者は首脳会談の具体的内容については明らかにできないことを了承してほしいとし、「相手国の首脳の発言内容を明らかにしないのは外交の慣例上当然のこと」と説明した。
そのうえで慰安婦問題や独島問題が今回の会談で「議論されていない」との立場を改めて確認し、「主なテーマは徴用問題をはじめ、未来指向的に韓日関係を発展させる方策に関するものだった」と繰り返し強調した。
また「韓日間の諸般の懸案については、これまで堅持してきたわれわれの立場に従い、積極的に対応していく」と説明した。
慰安婦合意については「両国間の公式合意として尊重し、『被害者の名誉・尊厳の回復および心の傷の治癒』という合意の精神に基づき両国が知恵を集めていくことを期待する」と話した。
韓国大統領室「独島・慰安婦言及の日本報道、事実ではない…遺憾表明」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.21 06:54
https://japanese.joins.com/JArticle/302263
韓国大統領室は20日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪日当時、両国間の敏感な問題である「独島(トクド、日本名・
竹島)・
慰安婦合意」への言及があったという日本メディアの報道に対して、再度否定しつつ遺憾の意を表した。
大統領室高位関係者はこの日午後、龍山(ヨンサン)大統領室庁舎で記者団と会って「韓日首脳会談が終わり、全く根拠がないか歪曲(わいきょく)された報道が日本から出たことに関し、外交当局で遺憾を表明して再発防止を呼びかけたものと理解している」と述べた。
あわせて「首脳間でやり取りされた対話は公開しないのが原則」としながら「一部の(日本)メディアが全く事実と関係のない歪曲報道をしても、日本政府が公開しないものと理解している」と説明した。
一方、尹大統領の訪日期間、日本の政治家の一部が面会の席で水産物輸入再開に関連して言及したことを巡り、高位関係者は「韓日首脳会談でどのようなことを話したかについては公開できない」としながら「政府の立場は明確だ。国民の健康を脅かすものならば受け入れることはできない」と明らかにした。
ただし「科学的数値が出てきても、国民が実際に安全だと感じてこそ措置を実施することができる」とし「国際原子力機関(IAEA)の調査に韓国人専門家が含まれるなど科学的・情操的に(国民が)受け入れやすい次元でアプローチしていく」と説明した。
続いて「BSE(牛海綿状脳症)問題があったときも、疑われる場合には米国産牛肉を食べなかった」とし「米国の人々も、在米同胞も、観光客も(米国産牛肉を)食べても問題がなさそうだから食べてもいいかもしれない』と、自然に解決していった」と説明した。また「韓日間の交流が増えて日本の人々が多く(韓国に)来て、問題がなければ科学的に正しいから実際に正しいのだと(思えるまで)時間が必要だ」と強調した。
韓国は2011年福島原子力発電所事故以降、福島を含めて周辺8県のすべての魚種の水産物輸入を全面的に禁止した。農産物に関連しては、コメやキノコ類など14県27品目の輸入が禁止された状態だ。
首脳会談後にNHK含む日本の複数のメディアから、会談で「慰安婦合意」「竹島問題」「処理水問題」等の話があったという報道があると、それを韓国政府が大慌てで否定し釈明に走ったのです。
まず処理水問題に関しては、以前から書いているように、処理水放出が韓国に何の影響も与えないことが、韓国の学会発表で何度も行われています。
参考記事
福島汚染水の海洋放出 放射性物質濃度は10年で「10万分の1」上昇=韓国学会
聯合ニュース 2023.02.16
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230216001800882
また慰安婦問題に関しては、
慰安婦合意:「最終的かつ不可逆的」明言、韓国は対日カード失う懸念も
朝鮮日報 2015/12/29
https://web.archive.org/web/20151229005907/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/29/2015122900646_2.html
(一部抜粋)
さらに大きな問題は、日本の「責任」に関する言及から慰安婦動員の「強制性」が脱落したことだ。岸田外相は「軍の関与」とだけ語った。外交筋は「日本の国家的、法的責任が問題となるのは、慰安婦の強制動員にもかかわらず、その部分が不十分だ。日本が痛感する責任が結局は『道徳的』な見地だと言っても反論できなくなるのではないか」と指摘した。安倍首相が表明した「おわびと反省」も過去の日本の内閣談話や慰安婦被害者に送ったおわびの書簡の内容と同じで、前進したと評価するのは難しそうだ。韓国政府筋は「右翼傾向の安倍政権を相手にこれだけの表現を引き出したことは評価に値する」と述べた。
日韓両外相共同記者発表
外務省 平成27年12月28日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html
(一部抜粋)
(2)韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。
韓国側の慰安婦の定義は「軍や国の命令で軍人や官憲が行った直接的連行」であり、この定義を慰安婦合意で封じられたことが最も問題視されているうえに、合意に「日本大使館前の慰安婦像への対処」が約束されています、この状態は国際法違反だからです。
また竹島問題も、過去動画で説明したように国際法上明確に日本領であり、韓国側の主張は過去に根拠付きで否定された内容を繰り返しているだけです。
【ゆっくり解説】竹島はなぜ日本領?
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38024274
YouTube版
https://youtu.be/KJQBQmvSAiY
【ゆっくり解説】日韓併合はなぜ合法? part1/2
https://www.nicovideo.jp/watch/sm37651726
YouTube版
https://youtu.be/WIR6Zs36Ks8
これら3つの事例は、国際法の観点から見れば「韓国側が圧倒的に不利」であるのは確実で、韓国が対処すべきことなのですが、韓国の世論の大多数はこうした件で一切の譲歩を認めていないので、強硬に出れば日本との関係がまたぎくしゃくし、逆に日本に歩み寄れば国内で猛反発を受けることになるため、「逃げるしかない」わけです。
また徴用工問題に関しても
徴用解決策発表3日後に日本外相が強制労働否定発言 韓国が抗議
聯合ニュース 2023.03.21
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230321004800882
【ソウル
聯合ニュース】韓国政府が徴用賠償問題の解決策を発表した3日後に日本の
林芳正外相が国会の委員会で「強制労働はなかった」とする内容の答弁をしたことを巡り、韓国政府が抗議していたことが分かった。朴振(パク・ジン)外交部長官が21日の国会外交統一委員会で明らかにした。
林氏の発言に対し、外交ルートを通じて抗議し遺憾の意を伝えたという。
朴氏は林氏の発言について、「強制労働に関する条約上、強制労働はなかったと話したものと私は承知している」とし、「日本なりの非常に狭い法律的な考えかもしれないが、韓国としてはそれを絶対に理解することはできず、受け入れられない」と強調した。
また抗議に対する日本側の反応については、具体的に明らかにすることはできないとし、「日本の国内政治的な状況も関連があると思う」と説明した。
林氏は9日の衆院安全保障委員会で、強制労働という表現は「適切ではない」などと発言した。
林芳正外相が「強制労働はなかった」という趣旨の発言をすると、韓国政府が公式抗議を行っています。
この件でのポイントは、韓国側の「強制労働」の定義が「有刺鉄線のある強制労働施設」での労働の事であるという事です。
参考記事
韓国外交次官「世界遺産、全体の歴史が重要」…軍艦島を間接的に批判
ⓒ 中央日報日本語版2020.11.25 10:46
https://japanese.joins.com/JArticle/272667
NS-Zwangsarbeit im Erzbergwerk Rammelsberg
https://de.wikipedia.org/wiki/NS-Zwangsarbeit_im_Erzbergwerk_Rammelsberg
韓国外交部「ゴールポスト動かしたのは日本」 茂木外相の発言に反論
聯合ニュース 2021.06.01
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20210601004400882
このことから解るのは、尹政権は徴用工裁判そのものに関しては一応の決着を提案できましたが、それ以外に関しては「触れないようにして先送り」か「以前のまま」であるという事です。
日本のメディア等では、「歴史問題が解決した」かのような論調や、或いは否定的に見る場合でも「野党が反発している」事を問題視している論調が多いですが、実のところ最も大きな問題はここにあるわけです。
実際はほとんど何も変わっていないですし、尹政権は「文政権の政策を否定し、当たり障りのない程度に歩み寄っただけ」というのが実態に最も近いわけです。
3:問題の原因
ではなぜこんな状態なのかといえば、韓国が朱子学原理主義を価値観のベースに持つ社会であることが関係しています。
過去記事「韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)」や動画「【日韓問題】韓国人は記憶の改変をしているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)」でも説明したように、朝鮮は儒教朱子学における理気二元論をベースに「正しさ」が決まる社会です。
その価値観を継承している韓国でも同じで、その結果韓国において「法」とは「理」の下位分類の「気」の現象であり、法の上位概念の「理」として「徳」が存在しています。
これが以前も説明した「国民情緒法」の実態なのですが、この概念があるため韓国人は「国際法」を前面に出して「韓国人の正しさ」を否定すると、「徳の低い人間が自分達を正当化するのに法を悪用している」と考えます。
関連記事
【日韓問題】韓国の国民情緒法 - 日韓問題(初心者向け)
非常に厄介な韓国人の国民情緒・民族情緒 - 日韓問題(初心者向け)
当然尹政権もこの概念に抵抗することなどできませんし、恐らくその発想自体がありません。
また次の記事を読むと
【コラム】日本の良心と知性を期待する
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.20 11:04
https://japanese.joins.com/JArticle/302240
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がすべてのカードを使った。「開門発車」という声を聞きながら
日帝徴用問題に対して「被害者支援財団を通した第
三者弁済」という解決策を急いで提示した。韓日関係の最大の障害物を解決するきっかけを作り、正常な
シャトル外交が12年ぶりに復元された。日本の
半導体素材輸出規制が解除され、
軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の完全正常化が宣言された。
ところが核心の徴用問題に対する岸田首相の直接の謝罪はなかった。被告企業も賠償には参加できないという立場だ。日本では「完勝」というが、韓国では「屈辱的な交渉」という。韓国大統領は地雷畑のまん中に立っている。
日本は韓国人がなぜ憤怒するのかを知っているのだろうか。韓国はカイロ宣言にある通り「奴隷状態」で36年を過ごした。それで敗戦国の日本を相手にした連合国講和会議の正式メンバーとして参加しようとした。臨時政府が第2次世界大戦以前から日本と戦争状態にあり、中国に日本と戦った韓国人師団があり、上海臨時政府が宣戦布告した事実を米国に伝えた。至誠天に通ず。張勉(チャン・ミョン)駐米大使は1951年1月26日、米国務長官顧問ダレスから「韓国の参加を支持する」という返答を受けた。しかし英国と日本の反対で参加48カ国から除外された。不当で悔しいことだった。
日本は1951年3月27日に講和会議の草案を受けると、緻密に準備して4月4日に米国に意見書を伝えた。戦争中の韓国では文書が実務者の机の引き出しに眠っていた。法務部の洪ジン基(ホン・ジンギ)法務局長は4月7日、日本の新聞で韓日関係条項が抜けた草案を確認した。マッカーサー最高司令官だけを信じて消極的だった李承晩(イ・スンマン)大統領を必死に動かした。参加意思と帰属財産処理問題に対する立場を表した意見書が5月初めに伝えられたが、日本より1カ月遅れた。残念なことだ。
1951年9月にサンフランシスコで調印された講和条約は、韓国を台湾と共に「日本の支配から抜け出した地域」に分類した。過去の植民地ということだ。植民地支配の不法性が認められ、謝罪と法的賠償を受けようとしていた期待は水の泡となった。さらにあきれたのは、韓国が日本の一部だったため朝鮮人の強制動員が「合法」になってしまった事実だ。深刻な傷と侮辱だった。実際、米国は日本と戦争中だった1942年から国務省極東班を運営し、敗戦国の日本を国際社会に復帰させる「寛大な平和(soft peace)」を準備していた。日本に負担となる韓国の要求を聞き入れる余地は最初からなかったはずだ。
サンフランシスコ条約調印1カ月後の1951年10月、両国は韓日協定締結のための交渉に入った。初期に日本は自国民50万人が韓国に置いて行った財産に関する権利、逆請求権を提起した。朝鮮内の日本の財産は85%だった。日本側の久保田全権代表が「植民地時代に有益なことをしただけに日本にも請求権がある」と述べると、韓国側の洪ジン基代表は「伝統の国際法に植民地から解放された国の権利が追加されるべきだ」という「解放の論理」で反論した。日本は久保田の妄言を取り消し、逆請求権の主張も撤回した。
13年8カ月後の1965年6月22日に交渉は妥結した。日本は韓国に無償で3億ドル、有償で2億ドルを援助することにした。この資金は韓国経済の発展に大きく寄与した。しかし植民地支配に対しては「すでに無効」と整理した。韓国は「最初から無効」と解釈した。日本は「今は無効だが、当時は有効で合法的だった」と国会に報告した。植民地支配に対する反省と省察はなく、韓国人には傷がもう一つ追加された。それだけに「植民地支配は不法であり、日本は徴用被害者に賠償すべき」という2018年の大法院(最高裁)判決は、日本にとって「65年体制」を揺るがすショックだったのだ。日本が徴用問題を避ける理由だ。
にもかかわらず「65年体制」は時間が経過しながら進化した。日本は50回ほどおわびをした。金大中(キム・デジュン)-小渕宣言では「日本は植民地支配により多大の損害と苦痛を与えた…痛切な反省と心からのおわびをした」と明示した。植民地支配の不法性を認めなかったが、不当だったという点は認めた。日本の良心と知性の力だ。
尹大統領は傷ついた国民感情と衝突しながらも、両国関係のために勇気ある決断をした。今は日本が応える番だ。尹錫悦解決策は文喜相(ムン・ヒサン)案と似ているが、国会の立法過程を踏まず、訴訟の対象となる。被害者の不服訴訟がすでに始まった。裁判所の判決一つで崩れる可能性がある。尹大統領は被害者を説得してなだめなければいけない。面前で非難される覚悟も必要だ。難題に直面した苦悩を国民に率直に打ち明けるのがよい。世論が反転するはずだ。
韓日は文明史的な対話を始めることが求められる。前世紀に欧州は2度の世界大戦で衝突したが、和解して経済・安全保障共同体を作った。両国も和解と共存のアジア時代を開かなければいけない。
李夏慶(イ・ハギョン)/論説委員
中央日報の論説委員が書いたコラムで、「(日本は)植民地支配に対する反省と省察がない」としており、日韓併合は違法と日本が認めていないことにかなりの不満を持っている事がわかります。
そして「「植民地支配は不法であり、日本は徴用被害者に賠償すべき」という2018年の大法院(最高裁)判決は、日本にとって「65年体制」を揺るがすショックだったのだ。日本が徴用問題を避ける理由だ」と書いていますが、これは韓国的価値観では「徳の無さを指摘され日本が動揺したのだ」と解釈している事がわかります。
そのうえで、小渕・金大中宣言で「植民地支配の不法性を認めなかったが、不当だったという点は認めた。日本の良心と知性の力だ」と書いており、ここでの「良心と知性」というのが、朱子学における「徳」の事です。
そして慰安婦問題にせよ徴用工問題にせよ竹島問題にせよ、韓国の認識では「日韓併合は違法なのだから※その間に行われた行為は全て違法」という考えなのです。
※韓国では「第二次日韓協約(1905年11月17日)で外交権が奪われ日本の竹島領有に抗議できなかった」という事になっているため(日本の竹島領有宣言は1905年2月22日で時系列的におかしいですが)、これも不当と考えられています。
そのうえで次の記事を読むと
韓国外交部長官「日本の誠意ある呼応続いていくものと期待」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.03.20 06:58
https://japanese.joins.com/JArticle/302212
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の16~17日の韓日首脳会談後の影響を最小化するために韓国政府が総力対応に乗り出している。強制徴用被害者に対する韓国の「第
三者弁済」の決断にもかかわらず期待した日本の誠意ある呼応措置(首相の謝罪意思表明、日本被告企業の参加など)が今回出てこなかったことに「傾いた合意」ではないかという韓国国内世論を意識してだ。
ここに2015年の韓日慰安婦合意履行要求、独島(ドクト、日本名・竹島)領有権主張など日本の岸田文雄首相の会談当時の発言が日本メディアを通じて公開されたことも議論になっている。
韓国外交部の朴振(パク・ジン)長官は18日、KBSテレビに出演し「首脳会談で独島や慰安婦問題は議題として話し合われていない」と明らかにした。金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長も同日YTNのインタビューで「私の記憶では最近日本の当局者が韓国に独島の話をした記憶はない」と話した。
中央日報の取材を総合すると2015年の韓日慰安婦合意履行などは今回の会談の議題ではなかった。実務調整過程でも双方が立場をやりとりしたことはない。ただ、岸田首相が会談で韓国の強制徴用解決策を高く評価しながら、また別の過去史問題である2015年の韓日慰安婦合意の重要性に言及したという。韓国政府のある外交消息筋は「岸田首相の言及は韓国側に追加的な措置を要求する発言ではなく、両国が公式合意を通じて慰安婦問題が解決されたという点を再確認する水準だった」と説明した。
日本の誠意ある呼応措置がなかった点に対し韓国政府は「韓日両国の国益」「未来に向けた決断」「シャトル外交など今後の信頼回復過程で可能」という論理で対応している。
朴長官はこの日、「韓日間には今後の共同利益があり未来の発展に向け国益を創出しなければならないため、日本の誠意ある呼応が続くものと期待している」と話した。これに先立ち朴長官は今月初めの強制徴用解決策発表当時、「コップに水が半分以上注がれ、残りは日本が満たすだろう」という例えで日本の呼応を促した。
金次長も「最初のボタンははめた。日本政府は昨年5月の尹錫悦政権発足後少しずつ心を開いており新たな始まりを知らせることが今回の首脳会談」と自評した。また「韓国外交部が集計した日本の韓国に対する公式謝罪は20回を超える。信頼が積み上がるならば、日本側と国内政治でもう少し肯定的な環境が作られながら見守ってみるべきことと考える」と話した。
実際に岸田首相も同様の趣旨で言及している。16日の共同会見で「尹大統領と個人的な信頼関係を確認し、緊密に意思疎通を図っていきたい。これからひとつひとつ具体的な結果を出したい」と答えた。
問題はこうした韓国政府の努力にもかかわらず、日本側も懸念するほどである韓国国内世論を管理していけるかだ。強制徴用被害生存者3人など一部被害者の第三者弁済拒否、市民団体と野党の反発、中道層の否定的評価などがそれだ。
金次長はインタビューで強制徴用解決策に対する日本側の反応を問われ。「事実日本が驚いた。韓国国内政治が大丈夫かわからないが日本としてはこれが待ち望んだ解決策という反応だった」と伝えた。日本が望んだ解決法を出したので今後適切な呼応措置を出すだろうという意味と解釈される。朴長官は「真正性を持ってこの解決策に対して説明し理解を求める努力を持続したい」と強調した。
韓国の外交部長官が一連の徴用工問題に関して、「コップに水が半分以上注がれ、残りは日本が満たすだろう」と、事実上の追加措置を要求しており、これはこれまでの韓国側の要求から、「代位弁済への三菱や日本製鉄の実質的参加(財団への資金提供)」プラスアルファであることがわかります。
そしてそのうえで「真正性を持ってこの解決策に対して説明し理解を求める努力を持続したい」と発言しています。
この真正性という概念に関しても、過去記事や過去動画で説明していますが、「感情に依存し根拠に依存せず世界中全ての人が信じるべき正しさ」つまり韓国的正しさの事であり、また彼らは「正しさ」に根拠で反論されると理不尽と受け取ります。
関連記事
【日韓問題】韓国社会の「真正性」という概念 - 日韓問題(初心者向け)
韓国社会の「真正性」という概念 - 日韓問題(初心者向け)
※独特の正しさの概念
彼らの正しさの概念は独特であり、根拠を必要としない。
また「この世には最初から一つの正しさが存在する」と考えられており、自分はその正しさを常に選択していると考える傾向にある。
そして正しさ同士がぶつかった場合には、(曲解でも捏造でもその件と全く関係なくともなんでもいいので)相手の劣等性を指摘する事でそれを自己の正しさの担保とする。
また相手の劣等性を指摘した時点で自身が指摘された問題は相手の問題にすり替わる。
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - ニコニコ動画
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - YouTube
関連記事
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
こうした事例から解ることとして、彼らは今でも基本的な思考に朱子学がベースとして存在しており、だからこその尹政権の態度というわけです。
元検察官であろうが何であろうが、韓国では「法」の上に「徳」が存在しており、法的な理屈がどうであろうとそれをそのまま実行するのは「道徳に反する」という考えが前提に存在しているというわけです。
そのため次の記事を読むと
尹大統領「恥ずかしかった」 立民「訪韓して韓国野党を説得」発言に
聯合ニュース 2023.03.22
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230322000200882
【ソウル
聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は21日の
閣議で、先の訪日時に面会した日本の野党第1党、
立憲民主党の役員から韓日関係改善のために
訪韓して韓国野党を説得すると言われたことを取り上げ、「そうした言葉を聞いて恥ずかしかった」と述べた。非公開でこう発言していたことが、
閣議出席者への取材で22日、分かった。
立憲民主党の中川正春憲法調査会会長が尹大統領にこうした意向を伝えたとされる。尹大統領の発言に関し大統領室関係者は「日本は与野党の別なく韓日関係の改善を歓迎しているが、韓国の野党は反対ばかりしている」とし、大統領が韓国の野党の姿を恥じたものだとした。
また、尹大統領は韓日関係を「それまでうまく付き合ってきた隣家が、水路をつくる問題により、互いに塀を築き始めた」と例えたという。「塀を壊さなければ双方にとって損害なのだが、そのまま放っておくべきなのか」と問い掛けた後、「相手が塀を壊すのをただ待つより自分が先に壊せば、隣家もその本気度を見て一緒に塀を崩し、そうすれば再び良い関係に戻ることができる」と述べた。
尹大統領は政府が発表した徴用賠償問題の解決策は韓国に道徳的優位性と正当性を持たせるもので、日本側の呼応を引き出すことが可能と考えているとされる。日本で来月統一地方選が終わり、岸田文雄首相が韓国を訪問する時には「手土産」があるとみているようだ。
尹大統領は「政策は一種の商品で、シンプルでなければならず、相手の立場で説明する必要がある」とも述べ、国民が受け入れやすいような働きかけが必要だと強調した。韓日関係改善の重要性を国民に伝えていくだけでなく、労働時間制度の見直し案を指した発言とみられる。
一連の問題に関して「尹大統領は政府が発表した徴用賠償問題の解決策は韓国に道徳的優位性と正当性を持たせるもので、日本側の呼応を引き出すことが可能と考えているとされる」と書かれています。
このことからも、日本側の考えるような「決着」を韓国側は一切考えておらず、朱子学の「道徳」に沿った思考で日本の「手土産」つまり「徳のある態度」を要求している事がわかるわけです。
なので、早ければ岸田首相による訪韓、遅くとも尹政権末期にはまた歴史問題が何らかの形で再燃し、以前ほどではないにせよ問題が発生するのがほぼ確実というわけです。
今回の首脳会談からはこうした情報が読み取れるわけです。
だからこそ、今後も韓国に対しては無味乾燥で事務的に、原則論を前提としたスタンスで対応する事が重要になります。
それ以外は好意であれ敵意であれ問題をこじらせるだけです。
お知らせ。
転載について
・個人の利用であれば、一般的に「引用」とされる範囲での転載は自由にしてもらってかまいません、報告も必要ありません。
・企業・団体等が「転載」する場合は私の方へ事前連絡いただき、許可を取ってから行ってください。
・イデオロギー色の強い団体等に関しては、理由の如何に関わらず「転載は原則禁止」とさせていただきます。
もしよかったらクリックをお願いします。
blog.with2.net
以下は当ブログのお勧め記事です、もしよかったらこちらもどうぞ。
韓国人が日本人から嫌われる根本的原因 - 日韓問題(初心者向け)
【韓国起源説】日本人の反論は韓国人に通じない - 日韓問題(初心者向け)
日本人と韓国人とでは「約束・契約」の概念が全く違う - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題(初心者向け)の方針について色々 - 日韓問題(初心者向け)
【河野談話】韓国政府が自爆しました - 日韓問題(初心者向け)
フランスのJapan Expoから韓国がいなくならない原因 - 日韓問題(初心者向け)
「Japan Expoに寄生しないで独自のコリアエキスポやればいいのに」→過去にやった事があります - 日韓問題(初心者向け)
韓国人の差別意識の特徴とタイの嫌韓 - 日韓問題(初心者向け)
嫌韓の出発点、2002年日韓共催ワールドカップで何が起きたのか - 日韓問題(初心者向け)
嫌韓を「排外主義者=ネトウヨ」と考える人達に対する考察をしてみた - 日韓問題(初心者向け)
「韓国に対して謝罪すれば解決する」は大きな間違い - 日韓問題(初心者向け)
韓国視点から見たヘイトスピーチ - 日韓問題(初心者向け)
メアリー・スーとネトウヨ論 - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題とイデオロギー論争 - 日韓問題(初心者向け)
韓国では異論が徹底的に排除される - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題基礎知識簡易版まとめ 前編 - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題基礎知識簡易版まとめ 後編 - 日韓問題(初心者向け)
初心者でも解る韓国対策 - 日韓問題(初心者向け)
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
【再現】2002年日韓ワールドカップ Public Viewing in 国立競技場 - 日韓問題(初心者向け)
徴用工裁判問題まとめ - 日韓問題(初心者向け)
慰安婦問題で重要な事 - 日韓問題(初心者向け)
動画版マイリスト
番外編マイリスト