さて、本日は先日の日米韓首脳会談での安保問題に関連した内容を扱っていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
先日の日米韓首脳会談で安保問題に進展があり、東アジアの安保危機に対し、日米韓が連携して対応していくという決定があり、韓国側も「現実優先」の外交方針を打ち出し、歴史問題で余計な対立を行わない事を明言した。
しかし実際には、韓国側は会談後帰国するとこの3国連携に含みを持たせ、日米との認識に隔たりがある事や、そのほかにも歴史問題などが韓国で再発する事への危惧など、不安定要素が大きい。
韓国側のこの態度は、「反日だから」というよりも、経済で対中依存が強い事が大きく影響しており、今後はいかに韓国に安易な裏切りや手のひら返しをさせないかが重要になってくる。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:日米韓安保
まず今回の事例を紹介する前に、東アジア情勢と安保問題に関する私の考えを書きます。
韓国との安保連携に関しては、否定的な意見の人がかなりの数いるのは把握していますし、その原因が「韓国が約束を守らない」ことや、日本に対して敵対的である事、また中国に対してどっちつかずの態度をとっている事などが原因であることはわかります。
しかしそのうえでも、無暗に友好や交流をする必要はないが、安保連携は必要であると考えています。
その理由に関して、地政学や以前も少し説明したリデルハートの「間接的アプローチ戦略」などが関係はしていますが、その辺りの話は分かりにくいですし、私も専門的にそのあたりを掘り下げたことは無いので、もっとシンプルな理由を説明します。
まず重要なこととして、日本は竹島問題で韓国と領土紛争を抱えていますが、実はこの問題に隠れてあまり目立ちませんが、韓国との間で海底資源を巡る領有権問題も抱えています。
参考記事
【萬物相】韓日の油田開発競争
朝鮮日報 2022/01/23
https://web.archive.org/web/20220124092747/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/01/21/2022012180052.html
韓国周辺の大陸棚海域
聯合ニュース 2012/12/28
https://jp.yna.co.kr/view/GYH20121228000400882
ここで重要になるのは「もし韓国が中国側へ行ったらどうなるか」で、その場合中国は確実にこの問題に干渉してくる(中国も韓国も国際的に一般的である中間線説ではなく、「大陸棚の延長説」を主張しているため)ことになるので、五島列島や宇治群島周辺、場合によってはトカラ列島や奄美群島周辺などで、現在中国が尖閣周辺で行っているのと同様の示威行動を行う恐れが大きいです。
そうなった場合日本の被害は計り知れないため、韓国が中国陣営になるという前提は日本にとって絶対にあってはならない事になるわけです。
では、「韓国との軍事連携はアメリカにすべて任せ、日本はノータッチでいればいい」という態度はどうかといえば、それも問題があります。
なぜかといえば、それはつまり国際社会から「日本が対北・対中連携で非協力的」というメッセージになるため、むしろ日本が国際連携を乱す元凶とされてしまう上に、中国はそこを狙って重点的に工作してくるからです。
なので、韓国との安保連携を拒否する選択肢は、日本に最初からないというのが私の考えです。
ちなみに、「韓国は必ず裏切るから信用できない」は国際社会では通用しません。
背景こそ違いますが国際社会では「裏切りそうな相手でも安全保障で連携する」は別に珍しくなく、むしろ「どうやって裏切りを阻止するか」こそが外交とされているからです。
対中関連では、アフリカやオセアニア、中南米諸国がいい例でしょう。
「裏切りそうだから連携しない」など言い訳にもならないわけです。
この前提のうえで以下の記事を
米NSC「韓日米『1カ国に対する挑戦はすべてへの挑戦』と理解」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.08.22 16:57
https://japanese.joins.com/JArticle/308107
18日の韓日米首脳会談で採択したコミットメントと関連し、キャンベル米
国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官は21日、「3カ国がそれぞれ署名した自発的措置で、文書を注意深く読んでみれば3カ国のうち1カ国に対する挑戦はわれわれすべてに対する挑戦という理解に基づいていると考える」と話した。キャンベル調整官はこの日米
国務省がアジア圏のメディアを対象に設けた3カ国首脳会談と関連したデジタル会見で、「これが重要な認識だ。われわれはこの認識を基に前進するだろう」としながらこのように説明した。
コミットメントは、3カ国共同の利益と安全保障に影響を及ぼす地域の挑戦、挑発及び脅威に対する3カ国の対応を連携させるため、3カ国の政府が相互に迅速な形で協議することを約束する内容で、今回の首脳会談の成果文書のうち最も注目を集めた文書だった。ただし「3カ国は、安全保障上の利益又は主権を堅持するため、全ての適切な行動をとる自由を保持する」という前提を入れ。同盟公約や集団防衛公約のような「義務」とは異なる「約束」であることを明確にした。これは3カ国が安全保障協議体をめぐり「北大西洋条約機構(NATO)式の軍事同盟に進化しようとするもの」という中国の反発などを考慮してレベル調節をしたものという観測が出ている。
NATOを結束させる核心条項であるNATO憲章第5条は「加盟国のうち1カ国が攻撃を受ければ加盟国全体に対する侵攻と見なして集団で対応する」とされている。キャンベル調整官のこの日の発言は、3カ国協議の公約の精神がNATO式多国間相互防衛条約までではないが韓日米3カ国が域内外で危機が発生したり3カ国のうち1カ国でも安全保障上の脅威を受ける場合には互いに速やかに協議するという共通の認識に基づいたことを強調したと分析される。彼は特に「北東アジアで、地球上で最も重要な2つのパートナー(韓日)がわれわれとさらに緊密に協力しており前例のない3カ国協力計画に専念している」とした。
キャンベル調整官はまた「われわれが今後取る最善の措置は3カ国の参加に対する各国政府の約束を履行しさらに深い関係を構築するためにわれわれが用意した一連のイニシアチブに基づいて行動すること」としながら3カ国協力制度化案の実践的履行を強調した。
◇「中国狙ったものでない…自ら保護しようとする措置」
この日の会見でキャンベル調整官は、「米国が意図的にアジアの国同士の対立を刺激しているのではないか」という中国人記者の問いに「私は習近平中国国家主席がウクライナ侵攻に対しロシアを確固として支持し、民間支援を提供し、技術などその他対ロシア関係を強化することにした決断が懸念を呼び起こしたと考える」と答えた。続けて「このような措置は北東アジア諸国を不安にさせ、同じ考えを持つ国々の建設的協力の熱望を呼び起こした」と話した。ただ「韓日米が中国を狙った措置を取っているとは思わない。ますます不確実になる世界で自らを保護するための措置」と説明した。
これと関連して米国務省のクリテンブリンク次官補(東アジア・太平洋担当)は「今回の首脳会談でバイデン米大統領の明示的発言を見れば今回の会議は中国に関することがすべてではない。(米国が)世界で最も近い2つの同盟国である韓国、日本との共同の利益と価値に対する肯定的議題に関することだった」とした。
今回の首脳会談を通じて3カ国協力水準が大きく跳躍したという評価が出ている中で、キャンベル調整官とクリテンブリンク次官補もそれぞれ「3カ国協力を北東アジア外交の構造に含ませたもので、それ自体も重要だが歴史的脈絡から見ると相当な成果だ」「域内と世界の平和と安全保障、経済と開発協力において非常に大きな意味がある」と評した。
毎年1回以上行うことにした3カ国首脳会談の次期開催と関連しキャンベル調整官は「2024年にわれわれが一緒に会えるという希望と期待を持っている」と話した。その上で「韓国と日本がともに関心を表明し開催意思を明らかにしてきたと話すのが公平なようだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も韓国開催について明確に話したが、われわれはこれを高く評価しまた適切だと考える」と付け加えた。
18日の日米韓首脳会談に関連し、アメリカが「3カ国がそれぞれ署名した自発的措置で、文書を注意深く読んでみれば3カ国のうち1カ国に対する挑戦はわれわれすべてに対する挑戦という理解に基づいていると考える」という認識を示しました。
これはつまり、もし中国側が尖閣諸島を手に入れようと実力行使に出た場合、日米だけではなく韓国も何らかの形で軍事的な協力をするという事です。
また次の記事を読むと
【社説】新たなレベルへの韓日米協力の拡大を強調した光復節記念演説
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.08.16 12:05
https://japanese.joins.com/JArticle/307872
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨日、
光復節(
解放記念日)の慶祝式で未来志向的な韓日関係に焦点を当てた両国の安全保障・経済協力を強調した。「日本は今や我々と普遍的価値を共有し、共同の利益を追求するパートナー」と述べた。「力を合わせて進むべき隣人」(昨年
光復節)から「普遍的価値を共有し協力するパートナー」(今年3月1日)を経て「共同の利益を追求するパートナー」に拡張したわけだ。その間、
シャトル外交が復元されるなど韓日関係は正常化の軌道に入った。
米中覇権競争とロシア・ウクライナ戦争など新冷戦構図が固まる現実で韓日、韓米の安全保障上の協力の重要性はいくら強調しても過言ではない。そのような意味で尹大統領は、北朝鮮の核とミサイルという実体的脅威を遮断するための韓日米3カ国間の緊密な偵察資産の協力と北朝鮮の核とミサイル情報のリアルタイムでの共有の必要性に重点を置いた。日本が国連軍司令部に提供する後方基地7カ所の役割論も喚起した。横田空軍基地と横須賀海軍基地などは韓半島(朝鮮半島)の有事の際、直ちに増員戦力を展開する。尹大統領は「北朝鮮の南侵を遮断する最大の抑制要因」と意味を与えた。もちろん、経済回復に向けた両国間の素材・部品・装備産業とサプライチェーン協力も切実な時点だ。
この日の祝辞は18日(現地時間)、米キャンプデービッド韓日首脳会議を3日後に控えた時点で出た。尹大統領は韓日協力を基盤に3国協力の新しい道しるべになると自信を示した。今回の訪米を機に、3国首脳会議と合同軍事演習の定例化が実現する可能性もある。共同声明(statement)とは別に、さらに高いレベルの「キャンプデービッド原則(principle)」を発表する案も検討されている。これが実現すれば、日・米・豪・印の4カ国安保協議体「クアッド」を超える新しい協議体に進む画期的な転機になる。
ただ、歴史問題や汚染水の放出問題は今回言及されなかった。尹大統領が「反日感情」という負担にも「現実優先」の外交方向を設定したが、一般国民の間では不十分だという見方が少なくない。批判の世論を落ち着かせ、未来に向かって進むべきだという点を説得する過程が抜けたのは残念だ。汚染水放出問題は国際機関の判断とは別に、国民が安心するまで韓日両国が協力しなければならない。過去の歴史に対しても、日本政府が前向きで大勝的な姿勢を示す時だ。そのようなことから、岸田文雄首相や閣僚、議員が昨日、再び靖国神社に玉串料を奉納し、参拝したのは非常に残念なことだった。
また尹大統領は「共産全体主義を盲従し、操作扇動で世論を歪曲し、社会をかく乱させる反国家勢力が依然として横行している」と述べた。「民主主義運動家、人権活動家、進歩主義行動家に偽装し、破倫的(反倫理的)な工作を事としてきた」とも述べた。野党は「政府に批判的な野党や市民社会、マスコミをまとめて罵倒する極右ユーチューバーのような独り言」と強く反発した。国権を失った傷を癒やし、国民の統合を導くべき光復節の祝辞で大統領が戦闘的な言葉で分裂を助長するという批判を浴びるのは決して望ましくない。
話しは前後しますが、韓国の尹大統領が8月15日の演説で「日本は今や我々と普遍的価値を共有し、共同の利益を追求するパートナー」「日本が国連軍司令部に提供する後方基地7カ所の役割論」等の内容を発表しています。
首脳会談の場合、事前に事務方が内容の調整を行い、ある程度枠組みが決まったうえで会談を行い公式発表をするというのが一般的ですから、この尹大統領の演説は18日の首脳会談後にアメリカ側の発表した内容を踏まえての事になるわけです。
このことから、「対中」とは明言されていませんが、実質的に日米韓は対中・対北で軍事的な連携を行うと正式に決定した事がわかります。
2:どっちつかず
しかし実際には、韓国はまだ曖昧な態度を取り続けています。
「いつでも何でも」韓日米協力新たな枠組み作った
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.08.21 07:14
https://japanese.joins.com/JArticle/308003
北朝鮮の
金正恩(
キム・ジョンウン)国務委員長が昨年から韓国をターゲットとした戦術核開発に熱を上げ本心は「韓米離間」にある。
「米国がソウルを守るためにサンフランシスコを危険に陥れるだろうか」という古くからの質問を再び取り出して同盟の間を引き離そうとするものだ。
キャンプ・デービッドで18日に開かれた首脳会談で採択された「韓日米協議に対するコミットメント」で3カ国首脳は金委員長に「引き離す隙はない」と明確に答えた。
公約は「共同の利益と安保に影響を及ぼす地域的挑戦、挑発、威嚇に対して3カ国が速やかに協議する」と規定したが、バイデン米大統領は共同記者会見でこれを「域内に危機が発生したりわれわれのうちどこかひとつの国でも影響を受けるたびに(whenever)」「危機の根源が何であれ関係なく(whatever source it occurs)」などと表現した。
金委員長は戦術核完成を通じて韓米同盟のジレンマを加重させようとしたが、今回の首脳会談を通じて戦術核が韓国だけの心配事でなく韓日米いずれにも脅威になったのだ。
公約文書で▽挑戦▽挑発▽威嚇など協議を稼動できる危機の種類を多様に規定したのも目につく。これは北朝鮮の戦術核だけでなく南シナ海や台湾海峡での武力衝突なども協議対象にできるという意だ。
これと関連し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は「3カ国共同の利害を脅かす域内で緊急な懸案が発生した場合、速やかに協議して対応するための疎通チャンネルを設けることにした」と説明した。「共同の利害」は文書にある表現だが、バイデン大統領が使った「どこかひとつの国でも影響を受けるたびに」とは温度差も感じられるのが事実だ。
韓国としては中国との関係を考慮しなければならないだけでなく、南シナ海や台湾海峡での衝突状況で韓国政府が介入するかのように見えることに対し国民的共感が大きく形成されていないためだ。それでも3カ国の安保協力の範囲拡大は必然的というのが外交界の支配的な見方だ。
◇来年上半期に韓国で2回目の首脳会談推進
残された課題は今回の合意の持続可能性だ。バイデン大統領は「われわれは首脳クラスだけでなく関連するすべての閣僚が定期的に会うことにした。いまこの瞬間から、今年だけではなく、来年だけでもなく、永遠にだ」と力を込めて話した。3カ国が今回協力の新たなページを開いただけにこれを永続的に続けていくという意志を表明したのだ。
もちろん現在これに対する3カ国首脳の意志は確かだ。だが今後各国の国内政治が変数となる。米国の場合、在韓米軍撤収を常にちらつかせていた同盟軽視主義者のトランプ前大統領が2024年の大統領選挙で当選する場合、キャンプ・デービッド精神が生き残れるかについて疑問を提起する見方が多い。
国内政治からは韓国も自由でない。極端な二極化で政権が交代するたびに前政権の外交的成果を消すことが日常になったのが韓国政治の現実であるためだ。実際に文在寅(ムン・ジェイン)政権は韓日間の国際法的約束である軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄まで試みた。
来年上半期に韓国で2度目の韓日米首脳会談開催が推進されるのはこうした政治的変数の影響を受ける前に最大限戻すのが難しい水準で協力を制度化するためだ。大統領室関係者は「尹大統領の提案を3カ国が協議する過程がともなうだろう」と予想する。
やはり核心は3カ国協力で最も弱い部分である韓日関係という指摘も出る。18日の共同記者会見で岸田首相は「日本の日韓関係に対する思いをしっかり理解していただけるよう努力を続けていきたい」と話した。どうにか一歩を踏み出した韓日米3カ国安保協力の新時代に向けて日本が「日本の思い」をより積極的に示す必要がある理由だ。
こちらの記事によると、アメリカ側の「3カ国のうち1カ国に対する挑戦はわれわれすべてに対する挑戦という理解」という考えとは裏腹に、尹大統領は「3カ国共同の利害を脅かす域内で緊急な懸案が発生した場合、速やかに協議して対応するための疎通チャンネルを設けることにした」と、「対応する」のではなく「協議を行う」としており、いきなり態度が後退しているのです。
またこちらの記事では
韓米日会談で「拡大抑止」は議論せず、「日本がNCG参加拒否のため」
東亜日報 August. 21, 2023
https://www.donga.com/jp/List/article/all/20230821/4371004/1
「アジア内の武力衝突は(韓米日)公式同盟につながる可能性がある。いかなる
潜在的な侵略国も韓米日の強力な対応可能性を考慮しないわけにはいかないだろう」(米ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長のパトリック・クローニン氏)
「韓国が日本の安全保障問題にまで貢献する状況に入った」(魏聖洛元駐ロシア大使)
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とバイデン米大統領、岸田文雄首相は、米大統領山荘のキャンプデービッドで開かれた3ヵ国首脳会議で、「キャンプデービッド原則」、「キャンプデービッド精神」だけでなく、「3ヵ国協議に対する約束」を採択した。このような成果を導き出した今回の首脳会議について、韓米日の専門家らは、「3ヵ国安全保障協力の制度化」などを核心成果として評価した。ただし、韓国が日本の敏感な安全保障問題まで関与する可能性が高まったため、これに対する韓国内の世論の収斂と合意が必要だと提言した。一部では、韓国が対中関係の悪化を意識しなければならない「安保ジレンマ」に陥ったという懸念も提起された。
●NATO式集団安全保障同盟の進化の可能性
米ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長のパトリック・クローニン氏は、今回の首脳会議について、「北朝鮮だけでなく、インド太平洋とそれを越えた安全保障及び経済問題について韓米日が協力することを約束した」と評価した。魏聖洛(ウィ・ソンラク)元駐ロシア大使は、「3国間の安全保障協力メカニズムが初期段階で制度化された」と述べた。国立外交院のミン・ジョンフン教授も、「韓米日首脳会議を1年に1度開催するということは、(3ヵ国協力に)最優先順位を与えるということ」と強調した。
3ヵ国の安全保障協力が北大西洋条約機構(NATO)のような集団安全保障同盟に進化するという観測も流れている。米戦略国際問題研究所(CSIS)のエレン・キム上級研究員は、「短期的には北東アジアクワッド(Quad)のような役割を果たすが、今後、他の安全保障協議体と連携して米国の同盟ネットワークに進化するだろう」と見通した。ブルックス研究所のアンドリュー・ヨー韓国部長は、「合同演習や情報共有、高官級及び実務級会議の定例化などの協力レベルを考えると、現時点で(韓米日は)すでに準同盟関係にあると見るべきだ」と主張した。国立外交院のキム・ヒョンウク米州研究部長も、「インド太平洋地域でクワッドやオーカス(AUKUS)を越えること以上の合意」とし、「韓米日が米国の対外政策の核心的な多国間協議体になった」と述べた。ただし、神田外国語大学の阪田恭代教授(国際政治学)は、「これまでの歴史、韓日間の戦略環境の違いを考慮すると、3国同盟に発展することは難しい」と見通した。
●「日本の安全保障、韓国と無関係ではいられなくなる」
専門家らは、歴史問題などで敏感な韓日関係が依然として3ヵ国協力に不安な変数だと指摘した。魏氏は、「今や台湾・尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題、日本の自衛隊関連問題など、日本の(安全保障)関連事項が私たちと無関係ではなくなった」とし、「国内的に政界や国民世論はこれを受け入れる準備がまだできていないようだ。世論の収斂を通じて国内的な合意が必要だ」と述べた。米ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員も、「日本は東シナ海と台湾での中国の行動に大きな懸念を示す一方、韓国は北朝鮮の実存的な脅威に集中するなど、安全保障の優先順位に違いがある」とし、「日本に対する(韓国一部の)根深い敵意で、次期韓国政府が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の構想を廃棄し、安全保障協力を戻す可能性がある」と指摘した。
韓日関係の専門家である慶應義塾大学の小此木政夫名誉教授は、「韓国側では日本が歴史問題に積極的に対応しないという不満が残っていると思う」とし、「まだ難しい局面が何度か訪れるだろう」と見通した。
中国との対立が深まるという懸念も依然としてあった。魏氏は、「韓国は中国への依存度が高く、中国と地政学的に近い」とし、「特に、中国の役割が必須である韓半島の非核化は、韓国にとって最も切実な課題」とし、「日米と協力しながら、韓中間の特殊な利害関係まで考慮しなければならない『安保ジレンマ』の状況に陥っている」と述べた。キム教授は、「柔軟なアプローチで中国との関係も進展させなければならない」と指摘した。
申晋宇
まず、日本が「核協議グループ(NCG)」の参加を見送ったのはある意味必然です。
これは日本国内にアメリカの核兵器を持ち込む選択肢も入ることになるため、まず非核三原則を何とかしないと日本は動けないからです。
そのうえで日米韓の連携に関して、アメリカの上級研究員が、韓国側が北朝鮮問題以外に消極的な事や、「日本に対する(韓国一部の)根深い敵意で、次期韓国政府が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の構想を廃棄し、安全保障協力を戻す可能性がある」と懸念を示しています。
これはつまり、第三者の目から見ても韓国はこの安保協力を維持できるか疑問視されているという事です。
また、日本の慶應義塾大学の教授が、「韓国側では日本が歴史問題に積極的に対応しないという不満が残っていると思う」と懸念を示しています。
これは以前も紹介した以下の記事にあるように、韓国側は未だ徴用工問題で第三者弁済に三菱や日本製鉄が参加することを望み、事実上日本に対し日韓請求権協定を自発的に反故にするよう要求している件などの事です。
関連記事
「韓日は協力パートナー」…光復節に尹大統領が異例のメッセージ、日本は応えるべきだ【8月16日付社説】
朝鮮日報 2023/08/16
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/08/16/2023081680016.html
これら内容から、安保連携は韓国が不安要素であるという事が日米の共通認識になっていると分かります。
3:ではどうするか
ここで重要なのが、韓国の態度は勿論日本との歴史問題が背景にあるのは確実ですが、実のところそれが最大の要素ではないという事です。
どういうことかというと、
韓国外相 韓米日首脳会談の結果「中国に忠実に説明」
聯合ニュース 2023.08.23
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230823004200882
【ソウル
聯合ニュース】韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官は23日、国会外交統一委員会に出席し、米ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで18日(日本時間19日)に開かれた韓米日首脳会談の結果を巡り対中関係悪化の可能性が高まったとの指摘について、「中国に対してはわれわれが気を使い安定的な(関係)管理をするために努力している」と話した。そのうえで、「会談後すぐに忠実な説明を中国側に行い、中国もその点に注目している」と説明した。
また「韓中関係は安定的に発展しなければならないのは自明なこと」と述べた。
朴氏は「北の問題を解決するために中国が担っている建設的役割が重要だ」とし「今後、中国とサプライチェーン(供給網)を安定的に管理するための対話も必要だ」と強調した。
キャンプデービッドでの会談の結果を中国側に説明した際の反応については、「中国に関してどのようなメッセージが出されるのか、かなり集中して注意していたと感じた」と伝えた。
そのうえで「韓国と中国は今後健全かつ成熟した関係を発展させていかなければならず、そのために戦略的な意思疎通を続けたいという話を(韓国政府が)した」と繰り返し強調した。
韓米日首脳共同声明で台湾問題に関し「われわれは、両岸(中国と台湾)問題の平和的な解決を促す」との内容が盛り込まれたことについては、「韓国にとっても非常に重要で国際的な関心が高いため、一般的な用語として両岸としたものであり、特別な意味はない」と述べた。
朴氏が与党「国民の力」所属議員の質疑に対し、中国とロシアに対しては韓米日会談の結果を忠実に説明したと答弁したことから、韓国政府はロシアとも意思疎通を行っているものとみられる。
一連の日米韓首脳会談に関し、韓国側は「北の問題を解決するために中国が担っている建設的役割が重要だ」「今後、中国とサプライチェーン(供給網)を安定的に管理するための対話も必要だ」としたうえで、会談の結果を「中国に忠実に説明」するとしており、かなり中国の顔色を窺っています。
これは、歴史的に朝鮮が中国を恐れているという事も関係してはいますが、最も大きな理由は以下です
韓国、半導体景気回復に遅れ…8月製造業の景況感悪化
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.08.23 11:18
https://japanese.joins.com/JArticle/308153
半導体景気の回復が遅れ、8月の製造業の景況感が悪化した。
韓国銀行が23日発表した「8月企業景気判断指数(BSI)および経済心理指数(ESI)調査結果」によると、今月製造業業況BSIは前月より5ポイント(p)低い67を記録した。今年2月(63)以来、6カ月ぶりの最低水準だ。
製造業業況BSIは5月と6月共に73を示し、7月72、8月67で2カ月連続で下がった。
BSIは現在の経営状況に対する企業家の判断と展望を土台に算出された統計だ。否定的な回答が肯定的な回答より多ければ、指数が100を下回る。
業種別に見ると半導体価格の回復遅延・受注減少の影響で電子・映像・通信装備(-8p)の景況感が悪化した。
1次金属(-12p)、化学物質・製品(-8p)も振るわなかった。1次金属は中国鉄鋼の需要不振、供給増加で価格競争力が弱まり、化学物質・製品は中国の内需回復の遅延、供給増加の懸念が高まった。
製造業業況BSIを企業規模・形態別に見ると、大企業(-2p)と中小企業(-8p)、輸出企業(-4p)と内需企業(-5p)がいずれも下がった。
韓国銀行のファン・ヒジン統計調査チーム長は「電子・映像・通信装備業種で半導体設備、基板製造などを行う中小企業の業況BSIが大きく悪化した」と述べた。
8月の非製造業の業況BSI(75)は前月比1p下落した。
非製造業の中では前方産業の不振により需要が減少し、専門、科学・技術サービス業(-8p)の業況が悪化した。
原材料価格の上昇で住宅部門の収益性が悪化し、建設業(-3p)が下がった。海外旅行の需要増加で国内旅行の需要が減ったために芸術、スポーツ・余暇関連サービス業(-11p)の景況感も悪化した。
製造業と非製造業を総合した全産業業況BSIは、8月は71で7月に比べて3p下落した。全産業業況BSIも2カ月連続で下がった。
9月の業況に関するBSI(73)は前月と同じだった。製造業(69)と非製造業(76)はいずれも前月から変化がなかった。
ファンチーム長は展望について「景気の不確実性が大きく、中国発リスク、輸出回復遅延などによる主力事業の不振が続いている」とし、「反騰の兆しがあるかはもう少しモニタリングする必要がある」と述べた。
記事にもあるように、韓国は景気が後退し復活のめども立っていないわけですが、その最大の原因は大きすぎる中国依存にあります。
この問題は米中対立が表面化し始めた朴槿恵政権初期から言われていた事なのですが、韓国はそれにもかかわらず対中依存を拡大し続けた結果、米中対立と中国の景気後退が複合的に重なり、輸出不振がダイレクトに経済悪化に繋がっているという背景があります。
このため、なんとかして中国の御機嫌を取らないとそれこそ大不況に陥るという危機感から、コウモリ的な態度を続けているわけです。
こうした情報から、「やはり韓国との安保連携など不可能なのではないか」という懸念が出て来るのは十分わかります。
ただし、この件があるからと、最初に挙げた日本の安保問題の重大懸案が消えるわけではないという事を忘れてはいけません。
ではどうすればいいかといえば、「裏切りそう」ではなく「裏切れないようにするにはどうするか」を考えていけばいいわけです。
そして問題は、以前から説明しているように対等の概念が希薄であり、「どちらが上か下か」という序列社会である韓国に対して、融和的な態度をとり「こちらの側が信用できると知らせる」という態度は無意味という事です。
過去記事「日本と韓国では「協調」と「妥協」の意味が全く違う」で説明したように、韓国では協調の概念が希薄であり、私達の考える「協調」の場面で韓国人達が「妥協」という認識をします。
oogchib.hateblo.jp
つまり、韓国では自発的に相手と歩調を合わせようという発想がなかなか出てこないため、「仕方なくそうせざるを得ない」という状況を作り出せばいいわけです。
「協調的な態度」は韓国に対して逆効果なのです。
そのためにどうすればいいかといえば、韓国に対して「仲間である」と協調的な態度をとるのではなく、安保連携をしながらも常に「韓国は約束を守らない」という懸念を示し、「我々は疑っている」という態度をとる事です。
一見すると連携すべき側に対して逆効果のように見えますが、これまでの日韓関係ではむしろ日本側が韓国に融和的になり、韓国側の望みを聞けば聞くほど韓国側の態度がエスカレートして状況を悪化させ、逆に近年のように日本側が韓国の要求を拒否し突き放すと韓国側が歩み寄ってきたという経緯があります。
これがまさに「協調」を「妥協」と考える韓国の価値観で、こちら協調的になればなるほど、韓国側は「これくらいなら相手は妥協するのではないか」と考え要求を増やしていき、結果関係が破綻する事態になります。
そしてそのうえで、実際問題韓国でも完全に中国側につくことはデメリットしかないという考えが主流であり、韓国側の態度は中国に融和的な野党「共に民主党」であってさえ、「米中双方の美味しいとこどりをしたい」というのが本音です。
与野党どちらも「経済は中国、安保はアメリカ」という態度を取ろうとするのはそのためです。
なので、日本側が融和よりも「裏切りを警戒しているぞ」というポーズを取り続けることで、「下手なことをすれば日米側で得られる利益が何もなくなる」という危機感を持たせ、韓国側に「日米側を選択せざるを得ない」状況を作ればいいわけです。
少なくとも、アメリカはそういう方針を取っていますから、そこに日本も歩調を合わせればいいというだけなのですが。
実際問題、中国が韓国に対して「日米程甘くない」事は韓国側も解っており、選択を迫られれば日米側に行くしかないと分かっているので。
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