さて、本日は日韓関係にも深く影響を与えている韓国の歴史観の問題について扱っていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
一連の日本による「反撃能力防衛3文書」に関して、最も大きく反応したのは、中国やロシアや北朝鮮ではなく、この3か国より遥かに影響がないはずの韓国であり、メディアによっては北朝鮮によるドローンの領空侵犯よりも危機を煽っていた。
また、これが対北朝鮮や中国を想定している事を十分に理解している韓国のいわゆる便宜上の「保守系メディア」でさえ「日本からの侵略」を警戒するかのような論調が飛び出してきており、韓国と韓国以外で東アジアの安保問題に対する見え方が大きく異なっている事がわかる。
これには韓国の歴史観や歴史教育が深く関係しており、韓国の歴史教育や研究は、学術的な掘り下げよりも政治的な脚色を優先し、政治的に関心の高いものほど「脚色」の度合いが強く、それ以外は「ただ浅い」という特徴があるためプロパガンダ色が強く、私たちとは全く異なる視点で世界を認識している事が関係している。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:中露北より警戒
まずはこちらの記事から
「侵攻用」のトマホークミサイルに5億円投入…日本の狙いは
ハンギョレ新聞 2023-01-07
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/45574.html
この記事では、日本によるトマホークミサイル配備について書かれているのですが、「日本が「反撃」のためにトマホークミサイルを発射すれば、彼らは当然にも先制攻撃が始まったと判断するだろう。急いで反撃するに違いない」と、「発射準備が始まている=相手に攻撃意思がある」という段階で、日本側は事前に「攻撃意図が探知された場合に反撃する」と予告しているにも関わらず、「彼らは当然にも先制攻撃が始まったと判断するだろう」とまるで日本が攻撃を仕掛けるかのように書いています。
相手側の「発射準備段階」という「直接的な攻撃意志※」が無視されているわけです。
※元々日本側の意図は北朝鮮が「先制核攻撃」をできる法整備をしたからこそのこの措置です。
参考記事
通常兵器による攻撃が差し迫る兆候が見えただけで…北「自動的に即時核攻撃」
朝鮮日報 2022/09/12
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/09/13/2022091380435.html
※この「即時核攻撃可能」とした法整備の危険なところは、記事でもあるように、実際に相手の具体的攻撃意図が観測できなくとも、「(主観的に)そう見えただけ」で先制核攻撃が可能としている事です。
記事中でのミサイル発射に関する因果関係がおかしい事を差し置いても、日本を敵国であるかのように見ている事がわかります。
また次の記事を読むと
[寄稿] 朝鮮総督の「聖戦」と日本の「反撃能力」
ハンギョレ新聞 2022-12-28
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/45506.html
こちらは過去記事などでも何度か紹介したことのある、北朝鮮と非常に深いつながりのある「民族問題研究所」の研究員の記事ではあるのですが、まるで日本が朝鮮半島を侵略するために「反撃能力」を持とうとしているかのように書かれています。
また次の東亜日報の記事では
安倍参拝する日の若者が私たちの相手だ [特派員コラム/イ・サンフン]
東亜日報(韓国語) 2022-09-28
https://www.donga.com/news/article/all/20220927/115687139/1
先ほどのハンギョレ程露骨ではないですが、日本の憲法改正議論や歴史観、安倍元首相を支持する若い世代などにはっきりと警戒感を持つ論調となっており、韓国内において日本の憲法改正が北朝鮮や中国の脅威を意識した問題であるという事が殆ど考慮されていません。
彼らが意識しているのは、「韓国の正しい歴史観を受け入れない日本を警戒すべき」という内容が主流であることがわかります。
これら記事から解るのは、韓国内には「今現在の東アジアの安保問題」よりも、日本との歴史観論争の方が重要であると考えている人達が無視できない程いるという事がわかります。
ハンギョレ新聞と東亜日報はどちらも全国紙であり、また東亜日報は韓国で新聞売り上げ2位の地位にある事から、「それだけこの論調に需要がある」事がわかるからです。
※余談になりますが、韓国で日本の朝日新聞や毎日新聞のような、「国益と対立する他国視点」の論調の記事を書いた場合、ほぼ確実に官民挙げてつぶされます。
2:程度の差
またこの件は、「東アジアの安保問題と繋がっている」という認識を強く持っている朝鮮日報などでも、程度の差こそあれ観察できます。
次の記事を読むと
【コラム】韓国が日本の「反撃能力」ばかり警戒して見逃していること
朝鮮日報 2023/01/01
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/12/28/2022122880106.html
https://web.archive.org/web/20230101005700/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/12/28/2022122880106.html
東アジアの安保問題が重要であることを認識しながらも、「日本が直ちに韓半島に進軍するかのように誇張して排斥するのではなく」「もし日本が不純な野心を持っているならば、米国というテコを活用して挫折させることができる」と、普通に考えれば考慮する意味すらないようなことをわざわざ書いています。
私達の一般的な国際関係の認識で考えれば、日本が朝鮮半島に対して軍事侵攻をするメリットなど存在しないことははっきりしているのですが、韓国社会ではまるで異なった認識を持っているという事です。
また次の記事を読むと
北朝鮮がICBMエンジンテストした日…日本「敵攻撃能力」保有宣言
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.12.17 09:38
https://japanese.joins.com/JArticle/298899
参考記事
日本「有事の際韓半島に反撃」に韓国「同意求めよ」…カギは米国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.12.20 08:15
https://japanese.joins.com/JArticle/298971
(一部抜粋)
このような立場の違いと関連し、外交界では「憲法により北朝鮮を韓国の領土と見なす韓国と、南北を別個の実体とみる日本の認識の違いが現れたもの」という分析が出ている。元外交部高位当局者は「1965年の韓日基本条約締結時から『韓国政府が韓半島における唯一の合法政府』(第3条)という部分の解釈をめぐり両国間に立場の違いがあった。北朝鮮を韓国と別の国と認識してきた日本の立場では北朝鮮の攻撃が現実化した時に自らの判断により反撃する権利があるという主張を展開することができる」と話した。
日本の敵基地攻撃能力に関連し、北朝鮮を攻撃できるとした件に対し、韓国外交部(日本の外務省に相当)が「韓半島(朝鮮半島)を対象にする反撃能力行使のように我々の国益に重大な影響を及ぼす事案は韓国との緊密な事前協議と同意が必要だ」「日本が専守防衛概念を変更せずに反撃能力行使が可能だという点に注目する」と不快感を示しています。
この件も実際かなり不可解で、韓国は90年代の国連加入に際して、事実上北朝鮮を別の国として受け入れることで南北同時加入をしており、その後の韓国の歴代政権でも、また現在の尹錫悦政権でも、「韓国領の不法占拠者」として北を扱わず、別国家として扱っています。
実際、韓国が朝鮮戦争の休戦協定に参加しなかったのは「北は韓国領を不法占拠しているだけでであり、参加すれば別の国と認めてしまうから」という建前があったわけですが
韓国国防部「北が先に挑発、相応の措置…停戦協定違反でない」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.01.09 11:54
https://japanese.joins.com/JArticle/299690
ここで書かれている「停戦協定」とは文脈から「朝鮮戦争休戦協定」のことなのですが、現在は見てのようにその存在自体を認めており、これは韓国が北朝鮮を別の国と認識している事を証明しています。
にもかかわらず、韓国側は「朝鮮半島全体が韓国領であり、日本が韓国領に攻撃を加えるのならば韓国の許可が必要である」と主張しているわけです。
しかもアメリカはこの件で「北朝鮮への攻撃に対して韓国の許可は必要ない」とコメントしているにも関わらず、以下にあるように
日本の反撃能力 野党批判踏まえ「事前協議や同意必要」=韓国大統領室
聯合ニュース 2022.12.19
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221219004100882
日本の安保政策巡り米と議論中 韓国当局者
聯合ニュース 2023.01.05
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230105001600882
米国元高官「日本の反撃行使、韓国のいかなる許可も不要」…米国防省系媒体に答える
KOREA ECONOMICS 2022年12月19日
https://korea-economics.jp/posts/22121901/
「韓国との事前協議が必要」と繰り返しているうえに、今年に入っても同じ主張を繰り返し、なんとかアメリカの同意を得ようと交渉しているようなのです。
韓国側の主張は、国際連合憲章第51条で定められた、国際法上の固有の権利である自衛権の否定になるため、アメリカが首を縦に振るわけがないのですが。
国際連合憲章第51条
第51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
3:なぜ頑なか
ではなぜ韓国はここまで頑なで実際の国際情勢を無視しているかというと、以下の記事にヒントがあります。
「短編小説みたい」 ENHYPENジェイ、韓国史けなすような発言を謝罪
朝鮮日報 2023/01/11
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/01/11/2023011180065.html
https://web.archive.org/web/20230111044004/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/01/11/2023011180065.html
クリックで展開韓国の芸能人が「ほかの国々は本当に果てしなくぐんぐん続いている。でも、韓国(の歴史)は渤海前に一度通り過ぎ、三国時代からは少しある。(三国時代の)前はどういうわけかひょいと取り過ぎてしまう。どうして早く終わったのかなと思った」と、歴史の「薄さ」を嘆き、炎上したという記事です。
これなのですが、実際韓国には歴史書が非常に乏しく種類も少なく、現存する最古の歴史書は12世紀に書かれた三国史記であり、以後の歴史書も他国に比べて相対的に少ないです。
ただし、だからといって「歴史がない」わけではなく、ちゃんと現存する史料を学術的に掘り下げればそれなりの重厚さになるはずなのですが、
先日動画にした韓国の文化財「瞻星台」の事例のように、史実や記録よりも「政治的意向」が強く反映されるため、韓国ではほとんどの事例において学術的な掘り下げというものが殆ど行われていません。
大半が「瞻星台」の事例と同じような状態なのです。
だから「情報量が多くない」「短編小説を読んでいるよう」な状態になるというわけです。
そしてここで重要なのは、この「政治的意向」が最も強く働いているのは日本関連であり、そのため以下の記事にあるように
「日本の古墳から百済の金銅冠…韓日交流は深いという事実を学んだ」
朝鮮日報 2022/12/18
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/12/16/2022121680076.html
https://web.archive.org/web/20221219022936/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/12/16/2022121680076.html
韓国の歴史は日本が関わる内容だけは相対的にかなり詳細で、しかもこの記事にあるように政治的・民族主義的意向が強く働き、とにかく「自分達が日本に全てを教えてやったのだ」という内容になっています。
つまり、日本と関わらない部分は掘り下げもなくただひたすら雑に「政治的意向」が反映されているだけですが、日本と関わる部分だけはこの記事にように非常に「濃い」肉付けがされているのです。
そしてこれは李朝末期~日韓併合時代も同じで、以下にあるように
昔のヨーロッパがみた大韓帝国末期の朝鮮は中国と日本の間に置かれた「餌食」だった
ハンギョレ新聞 2023-01-07
https://japan.hani.co.kr/arti/culture/45570.html
何が韓日の運命を分けたのか
東亜日報 December. 31, 2022
https://www.donga.com/jp/List/article/all/20221231/3862603/1
どちらの記事でも、朝鮮はただただ無垢な被害者であり、日本は邪悪な侵略者と書かれており、過去動画の「日韓併合はなぜ合法?」などで指摘したような「当時の情勢」は一切考慮されていません。
動画でも指摘しましたが、当時の朝鮮は目先の利益に右往左往し、自らで国を守ろうという意思がなかったために日清・日露戦争を引き起こす原因になったことから、国際社会から「独立国家としての能力がない」と判断された結果、日韓併合に至った経緯があります。
【ゆっくり解説】日韓併合はなぜ合法? part1/2 - ニコニコ動画
【ゆっくり解説】日韓併合はなぜ合法? part1/2 - YouTube
ですから少しでも当時の記録から「歴史の学術的な掘り下げ」を行えば、このハンギョレと東亜日報の記事のようにはならないわけですが、彼らは一切「歴史学的な掘り下げ」をせず、その部分を政治的な脚色で補っているのです。
結果、韓国の歴史は日本に関わる部分以外が非常に雑で「薄く」なり、日本と関わる部分は濃密ではあるが掘り下げは殆どないという状態になっています。
歴史というのはその国の「あり方」そのものを表す「アイデンティティー」といってもいいものであるため、彼らの国家観には歴史的アイデンティティーが著しく欠落し、そこに「政治的意向」で脚色された対日観が埋め込まれている事になります。
そのため最初の方で引用した記事のように、現在の国際情勢がまるで考慮されず、実際に直面している脅威よりも「日本の脅威を警戒する」というちぐはぐな状態になり、それが日本が韓国との間で陥っている問題となっているというわけです。
書き方を変えれば、安保問題等で韓国が差し迫った現実すら無視して日本に突っかかるのは、彼らの歴史観には「それしかない」からとも書けます。
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