さて、本日は一時期日本でもニュースになっていた、韓国による原潜保有に関する動向を扱っていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
現在韓国では、トランプ大統領との首脳会談で原潜の保有が可能になったという件が話題になっているが、実はアメリカの思惑と韓国の思惑には相当な齟齬があり、実際には本当に保有できるのかには疑問符が付く。
また、韓国側の思惑には大きなハードルがあり、韓国は過去に核開発を行おうとした件や、IAEAへの報告義務のあるウラン濃縮を無断で行ったという過去があり、これが原因で韓国のウラン濃縮には制限があり、韓国内建造の妨げになっている。
さらに韓国は、報道によれば過去に他国の技術を盗む・または無断利用しそれを「独自技術」として世界に売りこみビジネスをしてきた事例があるため、これをアメリカ側に見透かされ、自国建造にストップがかかっている可能性もある。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:韓国の思惑
韓国の原潜保有の件なのですが、以下にあるように
韓国国家安保室長 原潜は「国内での建造が前提」
聯合ニュース 2025.11.14
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20251114002000882
【ソウル
聯合ニュース】韓国の魏聖洛(ウィ・ソン
ラク)国家安保室長は14日の記者会見で、米国との関税・安全保障分野の交渉結果をまとめた「共同ファクトシート」に盛り込まれた韓国の
原子力潜水艦導入について、「韓国で建造することを前提に両国の議論が行われた」と述べ、事実上、韓国で建造する計画を明らかにした。
魏氏は「この事案を巡る議論は最初から最後まで韓国で建造することを前提に進められた」として、「原潜を米国で建造する案は取り上げられなかった」と述べた。
トランプ米大統領は自身のSNSに韓国の原潜は米フィラデルフィア州の造船所で建造すると投稿していた。
魏氏によると、李在明(イ・ジェミョン)大統領は先の首脳会談でトランプ大統領に対し、「われわれがここ(韓国)で建造する」と言及したという。
魏氏は原潜の建造場所に関する問題は解決したとの見解を示し、「作業には協業が必要だし、米国に支援を求める可能性もあるが、韓国で建造する」と改めて強調した。
ファクトシートには原潜について、「米国は韓国が原子力潜水艦を建造することを承認した。米国はこの造船事業の要件を進展させるため、燃料調達を含め韓国と緊密に協力していく」との文言が盛り込まれた。
政府の公式の立場として「韓国で建造することを前提」と明言しており、トランプ大統領の「韓国の原潜は米フィラデルフィア州の造船所で建造する」という思惑とはかなりの隔たりがあり、現在でもこの件は隔たりが解消されていません。
また、韓国政府の発表ではあたかも交渉の余地があるかのような印象を受けますが、アメリカ側の考えははっきりしており
韓米共同ファクトシートに「韓国内で原潜建造」言及なし
朝鮮日報 2025/11/17
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/11/17/2025111780034.html
困難な追加交渉が予想される安全保障分野
李在明(イ・ジェミョン)大統領は14日、韓米間の合意事項を盛り込んだ「ジョイント・ファクトシート(Joint Fact Sheet/共同説明資料)」を発表し「ウラン濃縮と使用済み核燃料再処理の権利拡大について米国政府の支持を確保することに成功した」と語った。ファクトシートには、米国が韓国の原子力潜水艦建造を承認したという内容も含まれていた。韓国の宿願だった濃縮・再処理の権利確保と原潜建造を米国が支持するという立場が初めて文書化されたのだ。ただし、この発表では大枠の合意だけが盛り込まれたにとどまり、具体的な案は含まれず、難しい追加交渉が予想される。
【グラフィック】韓米ファクトシートの安保分野の主要事項
■韓米原子力協定の改訂は不確実
原子力協定について、韓米ファクトシートには「米国は韓米原子力協定に符合し、米国の法的要件を順守する範囲内で、韓国の平和的利用のための民間ウラン濃縮および使用済み核燃料再処理に帰結する手続きを支持する」という記述があるだけだ。(1)韓米原子力協定に符合(2)米国の法的要件の順守(3)平和的利用というただし書きが付いている内容だ。
現行の韓米原子力協定は、韓国の使用済み核燃料再処理を禁止している。20%未満にとどまる低濃度のウラン濃縮は米国の事前同意があれば可能だが、米国の消極的態度のせいで、これを議論するための韓米原子力高官級委員会すら、2018年以降は開催されていない。安全保障分野のある専門家は「現行協定に合わせようと思ったら、使用済み核燃料の再処理はできず、ウラン濃縮も制限される。実際にこれを許容する意思が米国側にあるのかどうか未知数」と指摘した。
(後略)
ファクトシートには「米国は韓米原子力協定に符合し、米国の法的要件を順守する範囲内で、韓国の平和的利用のための民間ウラン濃縮および使用済み核燃料再処理に帰結する手続きを支持する」と書かれていると説明されています。
これは2015年に改訂された米韓原子力協定に沿ったウラン濃縮のみを認めるというものであり、韓国側の求める韓国内での原潜建造と自前の燃料調達に関し、アメリカ側は原則認めるつもりはない可能性が高いという事を意味しています。
記事では「韓米原子力協定の改訂は不確実」と書かれてはいますが、そもそもこの協定を改定あるいは追記するのであれば、米議会の承認手続きが必要になるため、仮にトランプ大統領の意向として韓国内での建造を容認しても、それで通るようなものではありません。
また、他にも韓国側の思惑とは異なる部分があり
米海軍作戦部長「韓国の原潜は対中抑止力となり得る」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2025.11.17 06:40
https://japanese.joins.com/JArticle/341067
米軍の高位当局者が、韓国政府が導入を推進中の
原子力推進潜水艦(原潜)が対中牽制に活用され得るとの見解を公式に示した。
米海軍作戦部長(4つ星大将)のダリル・コードル氏は14日、「(韓国が導入する)その潜水艦が中国を抑止する(counter)ために活用されるというのは自然な予測(natural expectation)だ」と述べた。13日に訪韓したコードル氏は、韓米首脳会談の成果物である共同説明資料(ジョイント・ファクトシート)が公開された直後、ソウルのグランドハイアットホテルで行われたメディア懇談会で、「韓国も中国への懸念を相当部分共有していると考える」とし、このように述べた。
彼は特に、映画『スパイダーマン』の「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というセリフを引用しながら、「韓国はいずれ原潜を世界的に運用する責任を負うようになり、地域中心の海軍ではなく世界的な海軍へと飛躍する過程になる」と見通した。韓国が原潜を保有すれば、韓半島(朝鮮半島)周辺だけではなく遠洋でも作戦を展開しなければならないという意味で、事実上、中国に関する共同対応に乗り出すべきだという立場を示唆したものとみられる。
ただしコードル氏は、「韓国が自国の主権資産である艦艇を、自国の国益に応じてどのように運用しようとも、米国がその部分に関与したり制限したりする事案ではない」とも述べた。また「韓国が原潜を自国周辺海域で運用し、その環境で米国がともに行動することも十分に可能だ」とも述べた。韓国内で米軍艦を建造することについては、「規制のために複雑ではあるが、私はこの問題を継続して検討すべきという立場だ」と明らかにした。
(後略)
関連記事
リチャード・ハース氏「韓国は、中国に関連するあらゆる状況で潜在的役割を果たすべきだ」[2025中央フォーラム]
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2025.11.19 15:04
https://japanese.joins.com/JArticle/341217
中国国営メディア「韓国、原潜で危険に陥るかも」遠回しに警告
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2025.11.19 07:43
https://japanese.joins.com/JArticle/341185
記事では米海軍作戦部長が「韓国の原潜は対中抑止力となり得る」と公式見解を述べており、そもそも韓国に原潜を保有させる動機を中国の抑止目的と明言しているのですが、独自の燃料調達も、韓国内での建造も許可しないとなると、アメリカの意向を無視した運用は不可能という事になります。
しかし韓国は、台湾有事等への介入に消極的であることから、この問題がクリアできない限り、韓国側の想定する原潜の所有や運用方法はかなり厳しいという事になります。
2:韓国に制限が多い原因
ではなぜ、米韓原子力協定という制限があり、韓国の思惑通りにいかないのかといえば、そもそもこの協定が1970年代に締結された理由にあります。
韓国核武装「890計画」の幻
Newsweek 2023年2月27日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100962_1.php
(一部抜粋)
韓国の核に対する野望が大問題になったのは74年だ。この年、米情報機関は韓国の核活動を示す証拠の収集を始めた。その数は増える一方で、計画に歯止めをかけなければ、80年までに
核兵器を
保有する可能性があるとみられた。
燃料物質の再処理施設の導入に向け、韓国がフランスと交渉しているとの情報もアメリカはつかんだ。実現すれば、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す活動に使用されかねない。韓国は原子炉購入をめぐってカナダとも交渉していた。
米政府は75年2月までに、単独行動と多国間協調行動を通じて、韓国の機密技術・機器へのアクセスを阻止することを検討していた。核開発能力だけでなく、ミサイル技術の向上も韓国の目的だと、米情報機関は報告していた。
同年8月頃には、リチャード・スナイダー米駐韓大使が韓国政府を相手に、フランスとの取引を中止するよう説得していた。国際的な再処理施設の設立を、共同で模索するのが最も賢明な策だとの主張だった。だが、韓国側は「学習ツール」としてフランスの施設が欲しいと反発し、スナイダーの発言に「驚いた様子」だったという。
契約解消は「不可能」と主張する韓国は、フランスとの取引を認め、必要に応じて査察を行うようアメリカに求めた。既に75年9月には、韓国中西部の大田で施設の建設が始まっていたとされる。
日本と異なる「差別的」扱いにも韓国はいら立っていた。当時、日本はフランスから、はるかに大規模な再処理施設の導入を進めていた。それなのに、なぜ韓国は駄目なのか。
日本は「DMZに位置していない」と、スナイダーは指摘した。韓国の場合は、米政府は中国やソ連、北朝鮮の反応を考慮する必要があった。
実を結ばなかった野心
米政府は譲らなかった。圧力を強めるなか、フランスとの契約を解消した際にアメリカが提供する用意がある核援助について、韓国が「具体的情報」を求めたのは75年12月頃だ。平和的核協力のために人材を派遣するというのが、米政府の立場だった。
カナダも韓国に対する説得努力を拡大していた。再処理施設を建設しないとの保証がなければ、原子炉は売却できないという主張は、最終的に奏功した。76年1月、両国は合意を締結。その中で、韓国は「再処理施設の取得を進めていない」と保証した。
朴は76年末までに「890」計画を中止したようだが、核兵器・核物質に関する研究はその後も続いたとされる。しかし、核への野心が実を結ぶことはなかった。78年までに、アメリカは韓国への再処理技術の提供を阻止する体制をつくり上げ、韓国は自前の施設を建設するしかなくなった。軍事クーデターで権力を握り、80年に韓国大統領に就任した全斗煥(チョン・ドゥファン)はアメリカの支持を取り付けるため、独自の核・ミサイル開発計画を完全に放棄した。
韓国の核開発問題は81年には沈静化した。同年、米大統領に就任したロナルド・レーガンは、韓国の核研究の民生転換と引き換えに、在韓米軍の規模を維持すると公約した。
朴正煕政権が1970年代に「890計画」と呼ばれる核開発計画を始動し、これを察知したアメリカがこの動きを監視、プルトニウム抽出に繋がるフランスやカナダとの再処理施設・原子炉の導入交渉をストップさせたという経緯があります。
この過程で、韓国によるプルトニウム抽出を制限する「米韓原子力協定」が締結されたという背景があるわけです。
つまり、韓国も北朝鮮と同じく核武装をしようとしていたが、アメリカの説得により断念したという事が、この制限の理由というわけです。
また他にも
韓国の未申告実験
東奥日報/共同通信 2004年9月13日
https://www.toonippo.co.jp/ud/encyclopedia/5a43113877656186d2470000
韓国科学技術省傘下の韓国
原子力研究所で2000年に行われたレーザー分離法によるウラン濃縮と1982年に行われた
プルトニウム抽出、さらに80年代に3施設で行われたウラン転換実験の3件。韓国政府はウラン転換を除く2件は
国際原子力機関(
IAEA)に未申告で実施されたことを既に認めた。しかし、一部研究者による科学実験と強調して「秘密裏の核開発」との疑惑を全面否定している。(共同)
IAEA、17日以降に韓国の核物質実験を査察
東亜日報 September. 14, 2004
https://www.donga.com/jp/article/all/20040914/282909/1
国際原子力機関(
IAEA)は、韓国に近く査察団を送り1980年代以降の
プルトニウム抽出とウラン分離、天然ウランの金属ウラン転換などの核物質関連実験に対して調査活動を行なうと、
IAEA関係者が13日、明らかにした。
このため、現在進行中の定期理事会が終わる17日以降、査察団が派遣されるものと見える。
査察団は、韓国で1980年代に入って数回実施された核物質関連実験に関与した科学者たちをインタビューする一方、韓国政府が関わったかどうかも調査する模様だ。
IAEAのエルバラダイ事務総長は、理事会で、「IAEAは韓国ですべきことが多く、調査結果は11月に開かれる第四半期(10〜12月)の定期理事会に報告する」と述べた。
日本の細田博之官房長官は14日、「韓国が1980年代にIAEAに未申告の施設でウラン転換実験を実施したことが事実なら、大変遺憾なことだ」と述べた。
細田官房長官は同日、記者会見で「(韓国が)関連情報について隣国の日本にも当然詳細な説明をするものと考え、北朝鮮核問題解決のための6者協議でも必要な対応をするものとみている」と話した。
韓国は80年代と2000年代にも「ウラン濃縮」「プルトニウム抽出」「ウラン転換実験」などを行っており、2004年にIAEAの査察を受けるという事態になっており、このことも当然アメリカによる韓国への疑惑に繋がったという背景があります。
また、この件は日本とも無関係ではなく
<日本の核技術>流出、初確認 韓国で資料押収 IAEA、04年査察
毎日新聞 2015/11/4
https://mainichi.jp/articles/20151104/org/00m/030/009000c
国際原子力機関(
IAEA)が2004年夏に韓国の極秘ウラン濃縮実験施設を査察した際、日本が開発した濃縮技術の特許に関する資料を押収していたことが
毎日新聞の取材で分かった。
IAEAのオリ・ハイノネン元事務次長が明らかにした。査察では、この特許に基づいた機器も見つかった。欧米主要国では、
核兵器開発につながる技術は情報公開を限定する措置が取られているが、日本では、特許出願で詳細な技術情報が公開される。特許制度の不備により、軍事転用可能な核技術が他国で利用されていることが初めて明らかになった。
ハイノネン元次長によると、日本の濃縮技術情報は、IAEAが韓国中部の大田にある「韓国原子力研究所」を査察した際に見つけた。日本の電力各社が中心となり1987年に設立した「レーザー濃縮技術研究組合」が開発したレーザー濃縮法と呼ばれる技術の特許に関する資料だった。
ウランなど核物質を使う実験を行うには、事前にIAEAに届け出る必要があるが、韓国はこれを怠り、04年8月に自主的に申告。IAEAの査察で極秘実験が裏付けられた。
IAEAによると、韓国は00年1〜3月に少なくとも3回、極秘のレーザー濃縮実験を実施し0・2グラムの濃縮ウランを製造した。濃縮度は最高77%に達した。ただ、ウラン(広島)型核兵器の製造には濃縮度が90%以上のウラン25キロが必要で、実験は小規模な実験室レベルにとどまった。
レーザー濃縮技術研究組合は、93年から02年までレーザー濃縮法など計187件の特許を出願し、技術情報が公開された。韓国は、こうした日本の核技術情報などを入手し、極秘実験していた可能性がある。
(後略)
関連記事
〈2〉 韓国の未申告レーザーウラン濃縮実験と我が国特許法制上の問題
─やはり拡散していた我が国特許出願公開情報─
CISTEC Journal 2016.1 No.161
https://www.cistec.or.jp/service/daigaku/data/1601-05_tokusyuu02.pdf
こちらの記事にあるように、2004年のIAEAによる査察で判明したこととして、当時韓国が行ったウラン濃縮には、日本の特許制度により公開されていた情報から入手しており、安全保障の観点から日本にも落ち度があったとはいえ、韓国は日本の技術で核開発をしようとしていたという事になります。
こうした背景から、米韓原子力協定が必要であり、2015年に一部が改訂されてはいますが、原則的に韓国はウラン濃縮に制限がある状態というわけです。
また、韓国はオーストラリアによる原潜保有の事例(AUKUS)を参考に交渉を進めようとしているようですが、そもそもオーストラリアの場合、「核燃料の供給方法」は米国と英国が協力し燃料は「封印された原子炉コンパートメン(オーストラリア側でアクセスや交換ができないよう密閉された状態)」で提供されるというもので、オーストラリアは「核燃料の製造を行わない」という取り決めになっています。
つまり、将来的にオーストラリアで原潜本体の建造が複数隻行われることになりますが、原子炉は「原子炉モジュール」として、オーストラリアが関与できない形でイギリスとアメリカから供給されるという事です。
(耐用年数を終え退役する際には、このモジュールごとアメリカかイギリスに返却する事になっています。)
そもそもオーストラリアは韓国と違って核開発や極秘裏のウラン濃縮などを行った事はなく、信用度において大きな差がありますし、オーストラリアを参考に独自の燃料供給(20%以上のウラン濃縮)と自国内での原潜建造という方式を模索するのには無理があります。
参考記事
AUKUSとオーストラリアへの原潜供与:NPT下における保障措置上の課題
笹川平和財団 2022/02/04
https://www.spf.org/iina/articles/yuki_kobayashi_04.html
3:過去の問題点
また、韓国には他にも問題点があり
「ロシア、羅老号のとき韓国に先端ロケットを残していった」(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.10.29 14:02
https://japanese.joins.com/JArticle/284334
(一部抜粋)
--2013年を最後に打ち上げられた
羅老号がなぜ航宇研の倉庫にあるのか。
「これは過去羅老号の時に使った第1段地上検証用発射体(GTV)だ。当時としては初めて作る宇宙ロケット組立棟と発射台認証試験のために実際の機体がなければならなかった。このために2008年8月に真っ先にロシアから第1段地上検証用発射体を持ってきたのだ。2009年8月羅老号1回目打ち上げに先立ち、4月に最初に発射場に立ててメディアに公開したその羅老号だ」
--その時は地上検証用発射体はロケットエンジンがない状態にすると説明していなかっただろうか。
「当時は私たちもGTV第1段部にノズル程度だけをつけた模型エンジンだと思っていた。ロシアのクルニチェフもそう説明していた。だが、3回目の打ち上げまで終わって大田に持ってきて分解してみると先端多段燃焼サイクルのアンガラエンジンが完ぺきな姿で装着されていた。それを初めて見た瞬間、戦慄が全身に走った。当時は2回目の韓国型発射体(KSLV-2)ヌリ号の開発プロジェクトがすでに4年目に入っていた時だった。だが、基本設計もできておらず足踏み状態に陥っていた状態だった。その後のヌリ号75トンエンジン開発にこのアンガラロケットが多いに役立ったのは言うまでもない」 (羅老号プロジェクト当時、航宇研は米国・ロシアなど宇宙先進国は宇宙ロケットの核心であるエンジン技術は絶対に流出しないという説明と共にGTVに対して実物は全く同じだが第1段エンジンはない状態だとメディアに明らかにしていた)
--ロシアはなぜGTVに実際のエンジンをつけたままにしていたのだろうか。
「私の推定では、模型エンジンをわざわざ作るほうが面倒くさく費用も多くかかるので既成のエンジンをそのまま付けておいたようだ。このために3回目の打ち上げが終わってロシアがこのGTVを持っていこうとした時、私たちが『契約にはGTVも含まれるのではないか』と言って阻止した。そのようにしてGTVは韓国に残ったが、そのために当時クルニチェフ社の社長が解任される事件まであった。ロシアがデフォルト(債務不履行)に陥って経済的に厳しく、社会が混乱していた時だったからこのようなことが可能だったようだ」
--今までなぜこの事実が公開されなかったのか。
「あえて隠そうとしたわけではない。羅老号打ち上げ当時はそのような事実を知らず、後になって知ったが、その時は誰も大きな関心がなかった。今回のヌリ号を打ち上げが終わり、開発秘史について知りたがっているので中央日報に公開することになった」
2008年に韓国がロシアのロケット(一段目がロシア製アンガラロケット用エンジン、二段目が韓国製個体燃料ロケット)で衛星を打ち上げた際、韓国はロシアに対しだまし討ちのような形でアンガラエンジンの技術を入手し、これがのちのヌリ号のエンジンとなったわけですが、現在韓国はこれを「独自開発ロケット」とよび、商業利用などを計画しています。
また他にも
KF-X核心技術、確保難しいが「支援受けるところある」という韓国防衛事業庁
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2015.09.25 07:51
https://japanese.joins.com/JArticle/206186
24日に国防部の記者室を訪れた
防衛事業庁の幹部は「細部項目を十分に説明できず申し訳ない」という言葉から始めた。韓国が自主的に戦闘機を開発して領空を防御するという韓国型戦闘機(KF-X)事業が、米国の核心技術移転拒否で批判を受けていることを念頭に置いた発言だ。この幹部は「25項目に関する細部項目をメディアに十分に説明できず申し訳ない」ともう一度謝罪した。
24日に国防部の記者室を訪れた防衛事業庁の幹部は「細部項目を十分に説明できず申し訳ない」という言葉から始めた。韓国が自主的に戦闘機を開発して領空を防御するという韓国型戦闘機(KF-X)事業が、米国の核心技術移転拒否で批判を受けていることを念頭に置いた発言だ。この幹部は「25項目に関する細部項目をメディアに十分に説明できず申し訳ない」ともう一度謝罪した。
国防部と防衛事業庁は8兆1547億ウォン(生産費含めて20兆ウォン以上)を投入し、2025年までに韓国型戦闘機開発を完了するという目標を設定し、事業を推進してきた。韓国はT-50超音速訓練機とFA-50軽攻撃機を開発した経験と技術を基礎に、足りない技術は米国の戦闘機製作技術を伝授するという計画だった。高性能戦闘機を購入する代わりに技術を要求する方式(折衝交易)だ。防衛事業庁当局者が述べた25種類の技術は、韓国が次期戦闘機(F-X)事業として米ロッキードマーチン社のF35を40機(7兆3000億ウォン)契約しながら移転を要求した。しかし4月、米国は25種類の技術のうち核心技術4種類は移転できないという最終通知をしてきた。
4種類の核心技術は現代戦をする戦闘機の必須要素だ。▼高性能能動電子走査式位相配列(AESA)レーダー▼悪天候でも目標物を発見できる赤外線探索および追跡装備(IRST)▼電子光学標的追跡装備(EO TGP)▼高出力電磁波で敵の電子装備を妨害する電子戦ジャマー(RF Jammer)を機体に搭載して作動させる体系統合技術。
(後略)
韓国は現在T-50と呼ばれる訓練機と、その発展形の軽戦闘機を輸出していますが、その開発過程でもアメリカとトラブルが起きており、この時韓国側はアメリカは核心技術を韓国に移転すると勝手に思い込み、その前提で話を進めようとしたという経緯があります。
結果、この記事にあるように技術移転は失敗し他国の技術で補完したのですが、エンジンはGE製、翼やアビオニクスはロッキード・マーティン製であり、韓国側はアメリカの許可を得なければT-50やその派生機を外国に販売できず、これが相当不満のようで、今回の原潜と同じような構図になっています。
また最終的に和解していますが
ウェスティングハウス、チェコが韓国の韓水原を優先入札者に選定した決定に抗議
The Korea Times(英語) Aug 27, 2024
https://www.koreatimes.co.kr/business/companies/20240827/westinghouse-protests-czech-decision-to-pick-south-koreas-khnp-as-preferred-bidder
米国の
原子力エネルギー企業は、
中欧の国
チェコ共和国に
原子力発電所2基を建設するにあたり、同国が先月韓国企業を優先入札者に選定した決定に抗議し、
チェコ共和国に控訴したと月曜日に発表した。
ウエスティングハウス・エレクトリック社は、建設プロジェクトに韓国水力原子力発電(KHNP)を選定した決定に対してチェコ独占禁止局に控訴したと発表し、知的財産権保護の主張を改めて表明した。
米企業は、KHNPのAPR1000とAPR1400の原子力発電所の設計はウェスティングハウスからライセンスを受けた第2世代システム80の技術を利用しているとしたが、KHNPは基礎技術を所有しておらず、ウェスティングハウスの同意なしに第三者に再ライセンスする権利も持っていないことを強調した。
「さらに、ウェスティングハウスだけが、その技術を輸出するために米国政府から必要な承認を得る法的権利を持っている」と同社はウェブサイトに掲載したリリースで述べた。
韓国水力原子力発電所(KHNP)が率いる韓国企業連合は先月、チェコ共和国における原子力発電所建設プロジェクトの優先入札者に指名された。同プロジェクトの事業費は約24兆ウォン(180億4000万米ドル)と推計されている。
ウェスティングハウスは、韓国のAPR1000原子炉がチェコ共和国に導入されれば、米国と欧州諸国の雇用喪失につながる可能性があると警告した。
「米国の技術を違法に使用することに加え、AP1000原子炉の上にAPR1000を配備すると、ウェスティングハウスの本社があるペンシルベニア州の1万5000人の雇用を含め、チェコと米国のクリーンエネルギー関連で何万人もの雇用が韓国に創出されることになる」と同社は述べた。
(後略)
関連記事
韓国のチェコへの原発輸出「50年の奴隷契約」…民主党「尹政権の疑惑究明」
ハンギョレ新聞 2025-08-19
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/54004.html
韓国はチェコに原発を輸出する際、アメリカのウェスティングハウス社製の原発技術をそのまま利用した原発を建造しようとしており、これが問題となり一時期訴訟問題にまで発展しましたが、最終的に韓国側がウェスティングハウスへの技術使用料を支払う事で決着しました。
この件では、当初韓国側はウェスティングハウス社に技術使用料を支払う必要はないというスタンスを取っていた事が大きく問題になりました。
こうした経緯から、恐らくアメリカ側は韓国に必要以上に技術を渡すことを警戒している可能性が高く、韓国側が要求する「韓国内での建造」「(原潜の燃料製造のために)日本と同等のウラン濃縮技術」を手に入れるのはかなりハードルが高いと分かります。
また、アメリカ側は最初の方で指摘したように、対中国を想定した安全保障を担うよう韓国に要求しており、これが原潜保有の条件といっても差し支えないことから、実際に韓国が原潜を手に入れられるかは未知数です。
なぜなら、明確に対中包囲網に加わることを原潜保有の条件としているようだからです。
もしよかったらクリックをお願いします
blog.with2.net
お知らせ。
転載について
・個人の利用であれば、一般的に「引用」とされる範囲での転載は自由にしてもらってかまいません、報告も必要ありません。
・企業・団体等が「転載」する場合は私の方へ事前連絡いただき、許可を取ってから行ってください。
・イデオロギー色の強い団体等に関しては、理由の如何に関わらず「転載は原則禁止」とさせていただきます。
以下は当ブロマガのお勧め記事です、もしよかったらこちらもどうぞ。
韓国人が日本人から嫌われる根本的原因 - 日韓問題(初心者向け)
【韓国起源説】日本人の反論は韓国人に通じない - 日韓問題(初心者向け)
日本人と韓国人とでは「約束・契約」の概念が全く違う - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題(初心者向け)の方針について色々 - 日韓問題(初心者向け)
【河野談話】韓国政府が自爆しました - 日韓問題(初心者向け)
フランスのJapan Expoから韓国がいなくならない原因 - 日韓問題(初心者向け)
「Japan Expoに寄生しないで独自のコリアエキスポやればいいのに」→過去にやった事があります - 日韓問題(初心者向け)
韓国人の差別意識の特徴とタイの嫌韓 - 日韓問題(初心者向け)
嫌韓の出発点、2002年日韓共催ワールドカップで何が起きたのか - 日韓問題(初心者向け)
嫌韓を「排外主義者=ネトウヨ」と考える人達に対する考察をしてみた - 日韓問題(初心者向け)
「韓国に対して謝罪すれば解決する」は大きな間違い - 日韓問題(初心者向け)
韓国視点から見たヘイトスピーチ - 日韓問題(初心者向け)
メアリー・スーとネトウヨ論 - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題とイデオロギー論争 - 日韓問題(初心者向け)
韓国では異論が徹底的に排除される - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題基礎知識簡易版まとめ 前編 - 日韓問題(初心者向け)
日韓問題基礎知識簡易版まとめ 後編 - 日韓問題(初心者向け)
初心者でも解る韓国対策 - 日韓問題(初心者向け)
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
【再現】2002年日韓ワールドカップ Public Viewing in 国立競技場 - 日韓問題(初心者向け)
徴用工裁判問題まとめ - 日韓問題(初心者向け)
慰安婦問題で重要な事 - 日韓問題(初心者向け)
動画版マイリスト
番外編マイリスト