さて、本日は一連のCPTPPの件での韓国の反応が、価値観の違いから日本側の問題意識と全くかみ合っていない件について扱っていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらど
う思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
先日韓国がCPTPPへの参加を表明したが、この件に関して日本側は事実上殆ど取り合っておらず、台湾やイギリスと違い「話を進めていない」という段階として、また政府としても「高いレベルを完全に満たす用意ができているか、まずは見極める必要がある」とコメントするにとどまっている。
また韓国では、宣言はしたが実際には国内ですら意見の取りまとめができておらず、更には日本との間にも解決しなければいけない貿易問題が多数存在しており、感情的な理由により問題解決のめどすら立っていない。
しかも韓国側は日本が韓国の加入に消極的な理由を「歴史問題」と考えているが、実際には「韓国側が約束を守らない事」を日本側が問題視しており、双方の価値観の違いから根本的に問題意識の共有すらできていない、典型的な価値観対立が根本にある事がわかる。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
1:韓国のCPTPP加入宣言
まずはこちらの記事から
韓国、CPTPP加入に向けた準備開始
REUTERS 2021年12月13日
https://jp.reuters.com/article/southkorea-cptpp-idJPKBN2IS054
[ソウル 13日 ロイター] - 韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)企画財政相は13日、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加入に向けた準備を始めると明らかにした。
同相は首都ソウルで開かれた政策会合で、CPTPP加入に向け、さまざまな利害関係者との協議に基づいて関連手続きを開始すると述べた。
CPTPPは、カナダ、オーストラリア、ブルネイ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポールを結ぶ自由貿易協定。
12月13日の事なのですが、韓国が正式にCPTPPへの加入に向けた準備を始めると公式発表しました。
韓国は実のところ丁度1年前に
文大統領、米日中心のCPTPP加入を検討…「バイデン・モード」に転換
朝鮮日報 2020/12/09
https://web.archive.org/web/20201208223917/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/12/09/2020120980002.html
カーボンニュートラル、韓日関係融和メッセージ…バイデン当選人の政策に従う動き
来年初めの韓米首脳会談も推進
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が米国の大統領選挙で当選したバイデン氏の「コード(政治的理念や傾向)合わせ」に力を入れている。最近になって文大統領が「韓国版ニューディール」など経済政策を理由に連日強調する「炭素中立(カーボンニュートラル)」「環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加盟」などを打ち出した背景にも、バイデン氏と呼吸を合わせたい考えが根底にあるとの見方だ。韓日関係を巡る突然の融和メッセージも同じ流れの中にある。
バイデン氏はトランプ大統領が離脱した「パリ協定(地球温暖化防止の国際的枠組み)」への加盟を明言しており、ケリー元国務長官など大物を気候変動特使に任命するなど、環境問題にも力を入れている。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)によって中国がアジア・太平洋地域における経済版図拡大に乗り出す中、バイデン氏は直ちに「中国ではなく米国がルールを設定しなければならない」と対抗する意向を明確にした。トランプ大統領が脱退したTPP(環太平洋連携協定)に復帰するとの見方も出ている。
文大統領は8日、「貿易の日」の記念メッセージの中で、炭素中立とCPTPP問題の双方に言及した。文大統領は「炭素中立は逆らうことのできない呼吸だ」として「われわれも『2050年の炭素中立実現』という大胆な目標に向けて進んでいる」と述べた。文大統領は市場の大変革についても強調し「先月最終署名した世界最大規模の多国間FTA(自由貿易協定)であるRCEPを皮切りに、CPTPPへの加盟も引き続き検討していきたい」との考えも示した。
文大統領は昨年の徴用判決や輸出規制によって悪化した韓日関係に関するメッセージにも力を入れている。バイデン氏はインド・太平洋地域における中国に対するけん制や北朝鮮の核問題に対処するため、韓米日による協力を重視しているからだ。
文大統領はこれら一連の「コード合わせ」を基盤に、来年の初めにはバイデン氏との首脳会談を実現させ、前のトランプ大統領が行った「トップダウン式」の米朝関係および南北関係改善への協力を求めるとみられる。しかしバイデン政権は北朝鮮の核問題においては実務交渉や核申告・検証の原則を強調している。
鄭佑相(チョン・ウサン)記者
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韓国政府、CPTPPへの加盟は米国の復帰より早ければ早いほど有利と判断 : 経済 : hankyoreh japan
文在寅大統領が「加入を検討」と発言しており、この当時は韓国で「バイデン政権になればアメリカがCPTPPに復帰する」という観測があったため、それに合わせての発言であったことがわかります。
また次の記事にあるように
韓国政府「TPP加盟を積極検討」 中台の申請で戦略的関心高まる
聯合ニュース 2021.10.07
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20211007002900882
【ソウル
聯合ニュース】韓国政府は7日、環太平洋
経済連携協定(TPP)加盟に関する製造業界との懇談会を開いた。産業通商資源部によると、同部の田允鍾(チョン・ユンジョン)通商交渉室長は冒頭、「中国と台湾の加盟申請によりTPPへの戦略的関心がこれまで以上に高まっている」としながら、「製造業の供給網(
サプライチェーン)高度化、アジア・太平洋地域の通商秩序におけるリーダーシップ確保の観点から、韓国もTPP加盟をより積極的に検討する必要がある」と述べた。
懇談会に参加した製造業関係者らは、TPPへの加盟はメキシコとの自由貿易協定(FTA)締結に匹敵する効果が見込める上、ベトナムやマレーシアといった「新南方市場」の拡大により製造業界の輸出にも役立つと評価した。
TPPは2018年12月に発効し、現在は日本やオーストラリア、メキシコなど11カ国が加盟している。中国と台湾が先月に相次いで加盟を申請したことで、アジア・太平洋地域の通商環境が急変しようとしている。
韓国政府はTPP加盟に対する各業界の意見取りまとめを続ける。14日には半導体、バイオ、デジタル業界などを対象にTPPに関する懇談会を開く予定だ。
元々韓国は「CPTPPの前身であるTPPに中国包囲網の意図があった」事から、参加を見送っていたという事情があったわけですが、今年に入りアメリカはむしろCPTPP加入に積極的ではないばかりか、中国が参加を表明したことが後押ししたことがわかります。
このことから、韓国側は元々参加の意図はあったが、米中の顔色を伺いどうするかを決めかねていたというのが実態のようです。
2:韓国の実情
こうした背景を見ると、韓国側では問題が米中対立にあり、その問題がクリアできたから今回参加を表明したかのように見えますが、実態はかなり事情が違います。
どういうことかというと、次の記事にもあるように
韓国政府 今月末にもTPP加盟可否決定へ
聯合ニュース 2021.10.18
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20211018000600882
【ワシントン
聯合ニュース】韓国政府が早ければ今月末にも環太平洋
経済連携協定(TPP)に加盟するか否かを決定する。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官が主要20カ国・地域(G20)
財務相・
中央銀行総裁会議出席のため訪れていた米ワシントンで14日(現地時間)に行った記者会見で明らかにした。
洪氏は「TPP加盟時に国内の制度改善が避けられない部分があるが、過去2年間、官庁間で検討し、可能な限り改善を行ってきた」とし、「企画財政部長官としては加盟申請をすべきとの立場だが、産業通商資源部、農林畜産食品部、外交部、国家安全保障会議(NSC)との調整が必要だ」と説明した。
また、「(加盟に関連し)代案がいくつかあるが10月25日に開かれる対外経済長官会議で決定するしかない」との見方を示した上で、「加盟するか否か、加盟するならいつ申請するのかまでを含めた決定は10月末または11月初めには下さなければならない」と述べた。
実は韓国は10月の時点で、「決定は10月末または11月初めには下さなければならない」としていたわけですが、10月も11月も先延ばしになり続け、結局12月も半ばになって表明したという背景があり、文大統領の発言から見ると決定まで1年もかかっていた事がわかります。
ここには様々な問題があったことが原因としてあるわけですが、まずは韓国の農業団体が反対していた事が挙げられます。
韓国経済副首相「TPP世論取りまとめ」…決定は次期政権に先送り
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.12.14 06:41
https://japanese.joins.com/JArticle/285648
韓国政府が環太平洋
経済連携協定(TPP)加盟に向けた本格的な世論取りまとめの手続きを始める。
洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官は13日に開かれた対外経済長官会議で、「TPP加盟を本格推進するため多様な利害関係者との社会的議論を基に関連手続きを開始する」と明らかにした。これまでTPP議論に消極的だった韓国政府が関連世論の取りまとめを始めたのは加盟に向けた一歩を踏み出したものと評価できる。
TPPは日本、オーストラリア、カナダなどアジア・太平洋地域の11カ国が参加する巨大自由貿易協定(FTA)だ。世界の国内総生産(GDP)の13.5%と世界の貿易の15%を占める。もともとTPPは米国、日本、オーストラリアなど12カ国で交渉に入ったが、米トランプ政権が2017年に離脱を宣言し日本の主導により残り11カ国が2018年3月に協定を公式妥結した。加盟を天秤にかけた韓国は米国が抜け傍観姿勢を維持した。だが中国が9月16日にTPP加盟申請をしたのに続き、台湾も同月23日に加盟申請書を出したことで状況が急変した。
通商で遅れていた中国と台湾が並んで加盟申請をすると、韓国も加盟をこれ以上遅らせることはできないという共感が形成された。これまで中国の牽制により通商で頭角を表わすことができなかった台湾がTPP加盟に成功するならば、韓国の輸出企業には大きな脅威になる恐れがあるとの分析も出ている
どうにかTPP議論を始めたが、韓国政府の立場は加盟申請ではなく「世論取りまとめ」にとどまっており残念との評価が出ている。TPPは加盟国全体の同意を受けなければ加盟できず、申請しても加盟できるかは不透明だ。また、英国に続き中国と台湾まですでに加盟を申請しており、順番が回ってくるまでは最小2~3年は待たなければならない。
韓国政府が決定的な瞬間に手を引いたのは農業界の反対のためだ。TPPの貿易規範は自由貿易協定(WTO)だけでなくすでに締結した他の個別のFTAより強い。韓国総合農業団体協議会は13日、「TPP加盟は韓国の農業、さらには食糧主権放棄と変わらない」とした。
ソウル大学国際学科のアン・ドックン教授は「実際に大きな意味がない加盟申請すら政府ができないのは大統領選挙を控えて世論の顔色をうかがったもの」と話した。
一方、日本メディアによると、日本政府関係者はこの日、韓国のTPP加盟には日本国民の理解も必要だとし、徴用工問題と食品輸入規制などさまざまな懸案があると言及した。
この記事にもあるように、実は韓国内で農業団体が加入に反発しており、宣言はしたが世論の取りまとめなどは事実上次の政権に丸投げしたという状態であることが書かれています。
また次の記事によると
農業界が反対したTPPに加盟の意向表明、韓国経済副首相が「社会的論議に着手」と言及するも記者説明を省略した理由とは
朝鮮日報 2021/12/14
https://web.archive.org/web/20211214001811/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2021/12/14/2021121480010.html
韓国が環太平洋連携協定(TPP)への加盟意向を正式に表明した。TPPは全世界の貿易額の15%に相当する貿易取引について、加盟国間の関税を撤廃する大規模な
自由貿易協定(
FTA)だ。韓国の輸出額にTPP加盟11カ国が占める割合は23.2%に達する。
ところが、韓国政府は「巨大FTA」への加盟推進を宣言しながら、事前説明といった過程を省き、疑念を生じさせた。13日にCPP加盟方針を正式に表明した洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官も「社会的論議を始める」と言いながら、加盟の必要性に関する記者説明を省略した。
韓国政府周辺からはTPP加盟に関する政府内の意見対立が十分に調整されておらず、記者説明を行えなかったとの見方がある。また、一部からは韓国政府が文在寅(ムン・ジェイン)大統領のオーストラリア公式訪問に合わせ、目立つ形でTPP加盟推進を表明したのではないかという批判が出ている。
政府高官は14日、「外交部、産業通商資源部などTPP加盟に関係する官庁間の意見調整が不足しているのは事実だ」とした上で、「各官庁の実務者が定期的に集まり、協議を進めていると聞いている」と話した。
韓国のTPP加盟にはデリケートな問題が多い。まず、米中による立場の差だ。米国はかつてTPPを主導したが、トランプ政権発足後に離脱した。現在中国は米国の後釜に座ろうとしている。韓国では農業界による加盟反対論が根強い。製造業、サービス業、農業など各産業の担当官庁間の意見も激しく対立することが避けられない。
それでも韓国政府はTPP加盟を推進するに先立ち、国民に対する説明会やメディア向けの記者説明を一切開かなかった。政府は洪副首相が13日午前、政府ソウル庁舎で開かれた対外経済閣僚会議に先立ち、簡単に言及する方式でTPP加盟を公式表明した。洪副首相は交通整理ができていない政府の内部事情を意識したかのように、「アジア太平洋地域の経済秩序の変化が活発に起きている。これ以上官庁間の協議にばかり留まっているのは困難な状況だ」と述べた。
韓国は2013年から8年間にわたり、TPP加盟を検討してきたが、実行には移さなかった。現政権発足後もTPPは政権の主な関心事ではなかった。韓国政府がTPP加盟問題を表面化させたのは、9月に中国によるTPP加盟推進が伝えられてからだ。それ以降、韓国はTPP加盟手続きの着手が秒読みに入ったかのように行動した。
洪副首相は10月14日、主要20カ国・地域(G20)財務相会議に出席するため、米ワシントンを訪問した際、記者団に対し、「もう時間がない。『加盟するかしないか、するならばいつなのか』まで含めた決定を10月末から11月初めに下さなければならない。決定は土壇場に来ている」と発言した。
その後、韓国政府はTPP加盟の是非を協議するはずだった対外経済閣僚会議を2回延期。11月からは「TPP」という用語自体に言及しなかった。そのたびに政府は「官庁間で調整すべき争点が残っている」と説明した。そんな政府が今回突然TPP加盟手続きに入ると公式表明した格好だ。
こうした状況について、産業界の一部からはTPPに関する議論を先送りしてきた政府が文在寅大統領のオーストラリア公式訪問に合わせ、これ見よがしに発表したのではないかとする批判の声が上がった。洪副首相の発表があった日、文大統領はキャンベラでモリソン首相と会談した。席上、モリソン首相は「韓国が近くTPPに加盟する予定だ。とても歓迎したい」と述べた。オーストラリアは日本とともにTPPを率いている国だ。
TPP加盟に一貫して反対してきた農業界の重鎮は「FTAを巡る官庁間の意見対立はきょうに始まったことではないではないか。官庁間の協議にばかり留まっているわけにいかないのならば、もっと早く(加盟協議に)突入すべきだった。大統領のオーストラリア訪問に合わせ、政治的発表を行ったという印象をぬぐえない」と話した。
世宗=チョン・ジュンボム記者
文政権が経済界との意見のすり合わせを一切せず、文大統領のオーストラリア訪問に合わせた政治的パフォーマンスでしかなかったと書かれており、韓国側ではあたかも日本側さえどうにかできれば加入できるかのような話が出てきていますが、実際にはそもそも韓国内で話が進むかどうかさえ怪しい状態であることがわかります。
そしてこの件自体も日本とは無関係ではなく、たとえば次の記事にあるように
ぐずぐずしている時に虚を突いた中国と台湾、韓国もTPP加入するか
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.10.21 09:35
https://japanese.joins.com/JArticle/284060
「もう時間がない。『加入する、しない、するならいつする』まで含んだ決定は10月末か11月初めには出さなければならない。決定大詰めに来ている」。
環太平洋経済連携協定(TPP)加入に対する韓国政府の決定が迫っている。14日に洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は米ワシントンDCで行われた主要20カ国(G20)財務相会議後の記者懇談会でTPP加入について近く決めると話した。また、18日に開かれた第1回対外経済安保戦略会議でも「TPP加入の経済的・戦略的価値と敏感分野の被害など懸念要因の点検などに対し総合的に調整する予定だ」としながら加入検討を公式化した。
◇日本主導のTPP加入先送り
TPPは日本、オーストラリア、カナダなどアジア太平洋地域の11カ国が参加する大規模自由貿易協定(FTA)だ。世界の国内総生産(GDP)の13.5%と世界の貿易の15%を占める。もともとTPPは2005年6月にニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4カ国で始まった多国間FTAのTPPが始まりだ。その後、米国、日本、オーストラリアなど参加国が増え12カ国が交渉に入った。だが保護貿易主義を掲げた米トランプ政権が2017年にTPP離脱を宣言し、日本の主導で残る11カ国が2018年3月に新たなTPP(CPTTP)を正式に妥結した。
韓国もこれまで加入について天秤にかけてきた。だが米国が離脱したことから傍観姿勢を維持した。協定締結当時、韓国はTPP11カ国のうち日本とメキシコを除く9カ国とすでにFTAを締結しており、TPP加入は事実上日本と追加でFTA協定を結ぶ効果しかなかったためだ。日本は自動車と農畜水産物分野で韓国より優位で、FTAを結ぶのはむしろ損害という分析が多かった。
◇中国と台湾が加入申請で虚を突く
だが韓国政府が最近立場を変えた理由は中国と台湾のためだ。中国は先月16日にTPP加入を申請した。中国の牽制で加入できなかった台湾も同時加入を狙って23日に申請書を出した。TPPはもともと米国と日本が主導し中国を排除する性格が強かった。だが米国が抜け中国が入る隙ができた。TPPに加入するには参加国すべての同意が必要だ。このためどうせ加入するならば、参加国がさらに増える前に加入するのが有利だ。特に韓国にとって最大の輸出相手国であり輸入相手国である中国がTPPに先に加入すれば韓国はさらに不利な条件を甘受して加入することになるかもしれない。
中国よりも大きな脅威は台湾だ。これまで台湾は中国に妨げられ主要国とのFTA加入がほとんどできなかった。だがTPP加入に成功するならば、通商舞台に本格的に登場できる。台湾はITを中心に韓国と主力産業分野が重なる。実際に台湾は中国より加入の可能性も高い。TPPを主導する日本が台湾と半導体サプライチェーン同盟を強化しているからだ。中国はTPPの高い加入基準をクリアするのは容易でないという評価が多い。
ソウル大学国際大学院国際学科のアン・ドックン教授は「これまで台湾は中国の牽制により通商で出遅れていたが、その恩恵を韓国企業が享受した。台湾がTPPに加入すれば他の国と追加でFTAを結ぶ可能性が大きく、韓国企業に大きな脅威になるだろう」と話す。
◇農業界の反発が関門
TPP加入の必要性は大きくなったが難関はある。まず農業界の反発が大きい。TPPに入れば韓国より進んでいると評価される日本産の農畜水産物輸入が本格化する可能性がある。
また、TPP貿易規範が自由貿易協定(WTO)とすでに締結したFTAより強いという点も負担だ。例えば現在韓国政府は病害虫が流入する恐れがあるとの理由で外国産のリンゴ、ナシ、モモなどを輸入していない。だがTPPの動植物衛生検疫措置(SPS)は「国」や「地域」ではなく、同じ生物保安体系を適用する農場単位で「区画化」されている。韓国政府がもし病害虫などを理由に輸入を防ぐならば、TPPでは特定の国や地域の農産物すべてではなく、問題になる農場だけ禁止しなければならない。この場合海外の農畜水産物輸入が増える恐れがある。また、公共機関の輸出補助金支給も即時中断される可能性が高い。
韓国農業経営者中央会は「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の国会批准を控え農村現場の不安が増加している状況でTPP加入を宣言するのは農業放棄、さらに進んで食料主権の放棄と見なすほかない。対政府闘争を展開していく計画だ」と反発した。
韓国政府関係者は「農業界の反発などを考慮すれば実際の加入まではまだ超えるべき山がたくさん残っている」としながらも、「ただ申請をしても国会批准まで最小2~3年はかかり、また必ず加入できるものでもないので申請書程度は提出しても良いのではないか」と話している。
韓国内で「日本は自動車と農畜水産物分野で韓国より優位で、FTAを結ぶのはむしろ損害という分析が多かった」と書かれています。
元々韓国は日本製品にかなりの関税をかけており、そうして韓国内の産業を育ててきたという背景があるため、韓国内で日本製品の関税撤廃をする事への抵抗感が非常に強く、韓国で日本の農産物の盗用が続いているのも、関税障壁があるため事実上日本の農産物が出回っていなかったからという背景があるわけです。
また韓国は「放射能汚染」を理由に日本の水産物の輸入を事実上禁止していますが、この件も問題になります。
なぜかといえば、WTOの事例では「韓国が危険があるかもしれないと独自に判断する事自体は問題がない」という判断が下されただけで、そもそも韓国側は危険性を科学的に証明できたわけではないのです。
しかしCPTTPの場合、これを客観的に証明できない限り公平な貿易とはならないため、韓国側は「危険性の客観的な証明」をしなければいけないわけですが、それが全くできていません。
参考記事
韓国のCPTPP加入推進に日本官僚「日本国民の理解も必要」 | Joongang Ilbo | 中央日報
また、同じく加入を申請している台湾やイギリスは日本の水産物の輸入解禁を検討しているわけですから、韓国側がそれをせずに加入することは殆ど不可能に近く、この辺りもハードルとなっている事がわかります。
なぜなら一連の福島原発処理水問題でもわかるように、韓国側はこれを「感情的な問題」としてしまっているからです。
3:問題意識の共有ができていない
ここまででもかなり問題なのですが、実のところ韓国のCPTPP加入にはもっと大きな問題が存在しています。
次のこちらの記事を見てもらうとわかりやすいですが
韓国のCPTPP加入推進に日本官僚「日本国民の理解も必要」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.12.14 06:50
https://japanese.joins.com/JArticle/285649
韓国が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に加入するという意思を明らかにしたことに対して、主導国の日本では慎重な見解が出ていると13日、日本メディアが伝えた。
共同通信によると、日本政府関係者はこの日、韓国のCPTPP加入問題に対して「自由貿易を巡るTPPの高水準なルールを満たせるかどうか見極める必要がある」と明らかにした。この関係者は続いて、韓国のCPTPP加入には日本国民の理解も必要だとしながら徴用工問題や日本産食品の輸入規制など「日韓間にはいろいろな懸案事項がある」と言及した。
日本政府の公式の見解ではなく政府関係者の発言だが、強制徴用や慰安婦問題など韓日間の葛藤懸案がCPTPP加入に関連する可能性があることを表わした発言として注目される。
CPTPPへの加入は主導国である日本を含めた既存11加盟国の賛成を得てはじめて承認される。共同通信は韓国の加入について「旧日本軍の元従軍慰安婦や元徴用工などの歴史問題に加え、東日本大震災後の水産物の輸入規制などで関係悪化が続いてきた日本をはじめ、加盟国の対応が今後の焦点となる」と分析した。
だが、貿易と関係のない歴史葛藤を理由に日本が韓国の加入を防ぐことは難しいという分析もある。東京のある外交消息筋は「日本が解決の難しい歴史的問題を加入条件として掲げる場合、国際社会の批判を受けることが明らかなため、そのような可能性は少ない」としながらも「貿易問題に関連し、福島産水産物に対する輸入規制撤廃などを要求することはできるだろう」と述べた。
この日、日本経済新聞は韓国政府がCPTPP加入に向けて国内手続きに着手したと報じながら「高い水準の市場開放が要求されるTPPでは産業界や農業団体からの反発も予想され、加盟国との交渉も難航が予想される」と展望した。
産経新聞もこれについて「韓国は日本といわゆる徴用工訴訟や慰安婦問題で関係が悪化している上、東京電力福島第1原発事故以来、水産物の輸入規制を続けている」としながら「TPPには食品輸入を不当に制限しないよう求める条文があり、議論となる可能性が高い」と報じた。
記事では「日本が解決の難しい歴史的問題を加入条件として掲げる場合、国際社会の批判を受けることが明らかなため、そのような可能性は少ない」と書かれています。
つまり韓国側は、日本との間で徴用工問題や慰安婦問題などの「歴史問題」があるため、日本側が渋っているのだと考えているのです。
これなのですが、韓国側は大きな勘違いをしています。
韓国側は「日韓の歴史観の違いが原因」と想定しているわけですが、日本側は「国家間の条約や協定、合意を韓国が簡単に反故にしてしまう」事を問題にしているのです。
2015年末の慰安婦合意はもちろんの事ですが、徴用工問題にしても
日本の「韓国バッシング」が深刻 訪日の野党議員
聨合ニュース 2019.05.29
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190529001700882
【東京
聯合ニュース】韓国国会外交統一委員会の尹相現(ユン・サンヒョン)委員長(最大野党・
自由韓国党所属)は29日、東京で韓国人特派員と懇談し、
自民党の
渡辺美樹参院議員(
参院外交防衛委員長)と会談した内容などを伝えた。
尹氏は韓日関係の改善を模索するため、野党議員4人とともに前日から東京を訪れていた。韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた強制徴用訴訟問題で韓日関係が過去最悪の状況にあると指摘しながら、日本の「韓国バッシング」が深刻だと述べた。
尹氏は、日本の国会は徴用訴訟を巡り日本が要請した仲裁委員会の開催を韓国は受け入れるべきだというムードだったとし、韓国がこの要請を拒めば来月28~29日に大阪で開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた韓日首脳会談の開催はないという話を聞いたと伝えた。
強制徴用訴訟と関連し、日本政府は徴用被害者への賠償問題は1965年の韓日請求権協定で解決済みとの立場で、韓国大法院の判決の履行を拒んだまま、今月20日に第三国の委員を交えた仲裁委の設置を韓国政府に要請した。
請求権協定によると、仲裁手続きの要請があれば韓日両国が1人ずつ委員を選任し、その後に双方の合意により第三国の委員1人を指名することになっている。ただ、韓国政府は日本の仲裁委設置要請に慎重な姿勢を崩していない。
尹氏は、日本の著名なジャーナリストらに話を聞くと、徴用訴訟に関して国際司法裁判所(ICJ)の判断を受けるのが望ましいという一致した意見があったと伝えた。日本に来てみると、韓国国内で感じているよりも両国関係が悪化していることを実感したとし、「韓国政府も日本政府も、先に手を差し出して問題を解決しようという意思がない」と述べた。
また、渡辺氏との会談について、日本側から3~4人が同席すると聞いていたが「1人で現れた」と述べ、外交の現場で日本側の「韓国バッシング」を痛感したと語った。懇談に同席した自由韓国党の兪奇濬(ユ・ギジュン)議員は、日本でこれほどの冷遇は初めてだと伝えた。
大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)
外務省 令和元年7月19日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005119.html
(一部抜粋)
第三条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は,まず,外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1の規定により解決することができなかつた紛争は,いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と,こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし,第三の仲裁委員は,両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき,又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは,仲裁委員会は,両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は,この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。
以前から指摘しているように、本来請求権協定を締結した両国どちらかに何らかの不服があった場合、両国と第三国からなる「仲裁委員会」を設置し問題解決にあたる事が、1965年に締結された請求権協定で取り決められ、日韓双方が批准しています。
しかし韓国側はこの取り決めを完全に無視し、日本側の仲裁委設置要求を拒否したという経緯があり、これは明確な国際法違反なのです。
また次の記事にあるように
自民党の佐藤外交部会長「韓国のTPP加盟検討は厚顔無恥」
ハンギョレ新聞 2021-12-14
http://japan.hani.co.kr/arti/international/41980.html
13日、自身の
ツイッターで主張
「日本などが反対なら、加盟交渉に入れない」
一部は事実と明らかに異なる主張
自民党の佐藤正久外交部会長が、韓国政府が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加盟を進める方針を明らかにしたことに対し、「厚顔無恥」という反応を示した。佐藤会長は日本の対韓強硬政策を主導してきた代表的な右翼政治家だ。
佐藤会長は13日、自身のツイッターで「韓国の現政権は厚顔無恥! TPP加盟申請の前に、日本指摘の輸出管理の是正が先」と主張した。さらに「TPPは高い水準の経済ルール同盟、かつ日本含む批准国8カ国の一カ国でも反対なら、加盟交渉に入れない。国内の運用体制の整備が先だ。呆れる」という反応を示した。
韓国の加盟推進決定について日本で意見を述べるのは当然だが、佐藤会長の同日の指摘は様々な面で間違っている点が多い。佐藤会長が言及した「国内運用体制を整備するのが先」というのは、2019年7月に日本が韓国をホワイト国(現グループA)から排除する際、その根拠として挙げた内容を意味するものとみられる。日本の経済産業省は2019年7月1日の報道資料で韓国に対する輸出規制強化の措置を発表し、「大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあった」と指摘した。
その後、韓国政府は対外貿易法を改正し、産業通商資源部内に局長級の貿易安全保障政策官を新設するなど、日本が不十分だと主張している事案に対する補完作業を終えた。にもかかわらず、日本が輸出規制措置を原状回復しなかったため、昨年6月、日本を国際貿易機関(WTO)紛争解決手続きに従って提訴した経緯がある。
佐藤会長はこれまで、様々な席で韓国に対する強硬策を主導してきた。最近のキム・チャンリョン警察庁長官の独島(日本名・竹島)訪問については、先月24日に「具体的にどういう対抗措置があるのか考えるチームを作りたい」と述べ、記者団に対し、国際司法裁判所(ICJ)に独島問題を付託するのも選択肢の一つという認識を示した。
キル・ユンヒョン記者
自民党の佐藤外交部会長が「韓国のTPP加盟検討は厚顔無恥」とコメントしており、その理由を一連の韓国に対する輸出優遇解除の件で、韓国側にまだ不備があるといった趣旨の発言をしています。
韓国側は「既に問題は解決した」と言っていますが、それにも関わらずいまだ「日本の不当な輸出規制」という主張を続けているうえに、佐藤議員の話の様子ではまだ輸出入管理不備の問題は解決していません。
つまり「やった」と宣言しただけで実態としてはできていないという事になります。
そもそも、人員の問題がある以上、新規に人材教育からしないといけないわけですから、1年や2年で解決するような問題ではないのです。
だからこそ、日本側としては協定や合意などの契約を韓国側が極めて軽く扱う態度を取っているため、CPTTPに関しても「韓国の態度を信用できない」という事になります。
しかし、過去に何度も指摘したように韓国社会は日本と「約束の概念」が大幅に異なっているため、「約束を守る事」の価値がまるで異なっています。
参考記事
日本人と韓国人とでは「約束・契約」の概念が全く違う - 日韓問題(初心者向け)
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
そのため、日本側が「何を問題としているのか」がまるで解らず、その結果「きっと日本側は歴史観の対立をCPTTPに持ち込んでいるのだ」と認識してしまっており、日本との間で問題意識の共有すらできていない状態になっているわけです。
今回書いたように、一連のCPTTPを巡る日韓の問題は、日韓双方の価値観の違いが引き起こした典型的な事例という事になるわけです。
双方が「歴史問題に原因がある」と認識してはいますが、その「理由」がまるで違い、話がかみ合っているようで全くかみ合っていないのです。
韓国側は「日本との歴史問題以外にハードルはない」と考えていますが、そんな簡単な話ではないわけです。
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