さて、本日は韓国を観察していると度々見かける「真相究明」という単語の独特さについて書いていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
韓国を観察していると、何かしら事件等が起きるたびに「真相究明」を求める声が挙がるという特徴があり、これに関して「韓国の儒教文化では、「過去にさかのぼった正義と正統性」が非常に重要」と説明されている。
しかし実際には、社会的な信用という概念が定着していないうえに、「自身の絶対的正しさ」を疑わない価値観があるため、「自身の正しさを押し通し」「相手の序列(正しさ)を下げる」目的で「真相究明」という単語が使われることが多い。
このため、韓国では事件等が起きたときに他者の序列を下げマウントを取る目的で「真相究明」という主張を行う事が多々あり、日本との歴史問題もその延長としてみたほうが良い。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:真相究明
まずはこちらの記事から
「韓国が歴史問題にあんなにしつこい」深い理由 在日が証言!「水に流せない」のはなぜか?
東洋経済 2022/08/02
https://toyokeizai.net/articles/-/607372
(前略)
たとえば日韓両国の報道番組や政治家の発言でよく使われる単語の違いにも、「
儒教道徳」の特徴が表れるのだ。
儒教国家がこだわる「過去の真相究明」
韓国の報道を見ていると「真相究明」という単語がやたらと登場する。
何十年も前の事件にさかのぼって「真相究明が求められている」などとやっているのを見ると、「長い年月をかけて調査したあとに、いまさらどんな真相があるのだろう」と不思議に思ってしまうことも少なくない。
これは、別に日本との間の歴史に絡む問題だけでなく、やれセウォル号事件の真相究明、やれ光州事件の真相究明、少し前ではバレーボール選手や芸能人の小学校時代や中学校時代のいじめ(人気ガールズユニット、セラフィムのガラムが最近の事例)などなど、過去にさかのぼった「真相究明」という単語が、それはそれは頻繁に出てくるのだ。
たとえば韓国ドラマを観ていても、廃位した妃を何代もあとに復位させたりしていたことが見て取れるが、この伝統はいまも脈々と受け継がれている。
北朝鮮でも金正恩(キム ジョン ウン)氏が金正日(キム ジョン イル)総書記の跡継ぎに決まると、本来は金正日総書記の「愛人」であったその母・高容姫(コ ヨン ヒ)の偉人化キャンペーンが行われ神格化が始まった。
現代韓国政治を見ても少し前まで、左派政権が右派勢力の正統性を攻撃するために、いまになってかつての「親日派(戦前の植民地支配に協力した人々の意味)」の墓を掘り起こす法案を論議したり、何代もさかのぼって財産を没収したりする。
韓国の儒教文化では、「過去にさかのぼった正義と正統性」が非常に重要なのである。
(中略)
https://toyokeizai.net/articles/-/607372?page=5
これまで述べてきたように、朝鮮半島の伝統的儒教文化では「道徳的正しさ」にこだわる。そして「本来あるべき論」を求め、過去にさかのぼって「歴史をあるべきものに戻す」という傾向が極めて強い。
ただ念のため再度強調するが、現代の個人レベルではまったくそうではない人もたくさんいる。儒教嫌いを公言している韓国人の若者も少なくない。
しかし政治といった比較的高齢世代が多く、「民族的記憶」や「民族的アイデンティティー」で集団意思決定がされる場になると、この儒教文化がいまだに色濃く影響するのである。
「真相究明の国」vs.「水に流す国」が争うと…
この「過去にさかのぼったしつこさ」は、ひとえにその「先祖の魂は不滅」という儒教的死生観も一因であるように思われる。
実際のところ韓国では、下手したら死後も責任を問う傾向が強い。たとえば韓国ドラマでも日常生活でも「最後まで責任を問う」という言葉が頻繁に出てくる。現代の政治家でも、相手方に対し「墓を掘り起こして処罰」みたいな言葉を使ったりもする。
日本のような「武士の情け」はなく、責任追及はちょっとやそっと、死んだくらいでは終わらない。儒教の世界では、「死後もその魂はこの世に長らく存在しつづける」と考えられていた。
そして、儒教文化にのっとり、先祖の功徳や罪状は後世の子孫にも引き継がれるので、「悪いことをしたのだから、罪を徹底的に償うべきだ」というように、子々孫々の代まで徹底追及してくる。
このように、過去にさかのぼり徹底的に責任追及する儒教文化が、「死ねば皆、天に行く」という仏教的な思想や、「過去を水に流す」武士道の思想と対立すると、双方の違和感につながるのだ。
そんな文化の違いがあるなか、「真相究明の国」vs.「水に流す国」が争えば必然的に、
「なぜ、そう曖昧にして簡単に忘れるのだ!」という韓国の怒り
「いつまで過去にこだわっているんだ!」という日本の怒り
にそれぞれつながり、まさに「イマここ」状態なわけである。
なおこのコラムを書いている今も、韓国新政府が「徴用工問題の解決は、日本側の誠意も必要」とメディアに向け語っていた。
「法的に払ったやろ!」などの建前的アプローチではなく、感情がこもっているかどうかが、何をするにしても韓国側にとっては重要だと考えているのである。
韓国との歴史問題について、在日韓国人が解説をしている記事なのですが、そのなかで韓国では「何十年も前の事件にさかのぼっての真相究明」という事が度々行われていると書かれています。
その理由として、「韓国の儒教文化では、「過去にさかのぼった正義と正統性」が非常に重要」と説明されており、「本来あるべき論を求め、過去にさかのぼって歴史をあるべきものに戻す」という考え方に基いているとしています。
そして「儒教文化にのっとり、先祖の功徳や罪状は後世の子孫にも引き継がれるので、「悪いことをしたのだから、罪を徹底的に償うべきだ」というように、子々孫々の代まで徹底追及してくる」という考え方が歴史問題の背景にあると説明されています。
この件に関してなのですが、確かに建前としてはそういう考え方もあるのでしょうが、実際の使われ方はかなり異なっています。
例えば次の事例
故イ・ソンギュンさん事件の真相究明要求へ ポン・ジュノ監督や俳優仲間ら=韓国
聯合ニュース 2024.01.09
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20240109001300882
【ソウル
聯合ニュース】違法薬物を使用した容疑で警察の取り調べを受けていた韓国の人気俳優イ・ソンギュンさんの突然の死に対し、映画監督の
ポン・ジュノ氏ら文化芸術関係者が真相究明を求める声明を発表する。
韓国映画監督組合や韓国マネジメント連合、釜山国際映画祭、女性映画人の集まりなど映画・文化関連団体でつくる「文化芸術人連帯会議(仮称)」が9日、ソウル市内で12日に記者会見を開くと明らかにした。
文化芸術人連帯会議は声明を通じ、イさんの事件について捜査当局の徹底した真相究明を求めるとともに、報道倫理に外れた記事の削除や文化芸術関係者の人権保護のため関連法令の改正も要求する予定だ。連帯会議は「イ・ソンギュンさんの惜しまれる死に向き合い、二度とこうしたことが繰り返されてはならないという思いで一致した」と説明した。
12日の記者会見には、米アカデミー賞作品賞などを受賞し、イさんら出演者の名前を世界的に知らしめた映画「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督をはじめ、イ・ウォンテ監督、歌手のユン・ジョンシンさん、俳優のチェ・ドンムンさんらが出席する予定。
イ・ソンギュンさんは昨年10月、違法薬物を使用した容疑で取り調べを受けていることが明らかになった。警察に出頭して3回目の取り調べを受けた数日後の12月27日、ソウル市内の駐車場に止めた車の中から遺体で見つかった。
警察の捜査はイさんをさらし者にするかのようだったという批判を浴び、一部メディアの報道の在り方も問題視されるなどした。
一時期有名になった韓国映画「パラサイト」の俳優に麻薬使用疑惑が起こり、警察の取り調べを受けたわけですが、その過程でいくつかのメディアから実質的な犯罪者扱いを受け、警察の3回目の聴取の後に自殺してしまったという事件がありました。
その件で監督や映画関係者が団体を作り、「イさんの事件について捜査当局の徹底した真相究明を求めるとともに、報道倫理に外れた記事の削除や文化芸術関係者の人権保護のため関連法令の改正も要求する予定」なのだそうです。
この件で彼らが「真相究明」を求めているのは、まず警察が検査で陰性だったにも関わらず聴取を続けた事、いくつかのメディアが犯罪者扱いをする報道をしていた件などについてです。
問題は、実際に問題であったのはメディア報道だけであり、そもそもなぜ警察が検査での陰性結果後も聴取を続けていたのかなどは、しっかりと司法関係者が調査しなければ分からないことなのですが、彼らは警察に問題があったという前提で「真相究明」を迫っているのです。
またさらに、この件では韓国最大野党「共に民主党」が、検察と政権への批判に利用しており、映画関係者の動きと連動する「政争」となっている事です。
関連記事
俳優イ・ソンギュンさんの死を検察のせいにする韓国野党
朝鮮日報 2023/12/29
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/12/29/2023122980036.html
つまり、真相究明の名を借りた政治活動というわけです。
2:主観の正義
このことから解るのは、彼らの行っている「正義の追求」というものが、以前から説明しているように極めて主観的なものであることと関係しています。
彼ら独特の価値観では、自身が常に「普遍的正しさ」を選択しており、間違う事がないという「前提」で思考する独特の正しさの概念を持っています。
※独特の正しさの概念
彼らの正しさの概念は独特であり、根拠を必要としない。
また「この世には最初から一つの正しさが存在する」と考えられており、自分はその正しさを常に選択していると考える傾向にある。
そして正しさ同士がぶつかった場合には、(曲解でも捏造でもその件と全く関係なくともなんでもいいので)相手の劣等性を指摘する事でそれを自己の正しさの担保とする。
また相手の劣等性を指摘した時点で自身が指摘された問題は相手の問題にすり替わる。
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - ニコニコ動画
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - YouTube
関連記事
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
このため、彼らは自身の正しさが実現しない場合、それは他者が何かしらの不正を行っているからだと考えるわけですが、元々「本貫」と呼ばれる地縁や血縁でつながった狭いコミュニティーでしか「信用」が成り立たない韓国社会では、その影響で疑心暗鬼が起きやすい社会となっています。
結果どうなるかというと、次の事例のように
被害者や警察をさげすむ「韓国・犯罪加害者家族」掲示板…反発する読者 vs 擁護する運営者
KOREA WAVE 2023 年 6月 30日
https://koreawave.jp/%e8%a2%ab%e5%ae%b3%e8%80%85%e3%82%84%e8%ad%a6%e5%af%9f%e3%83%bb%e6%a4%9c%e5%af%9f%e3%82%92%e4%be%ae%e8%94%91%e3%81%99%e3%82%8b%e9%9f%93%e5%9b%bd%e3%81%ae%e3%80%8c%e7%8a%af%e7%bd%aa%e5%8a%a0%e5%ae%b3/
韓国で、収監されている犯罪加害者の家族らが情報をやり取りするオンラインコミュニティ「オク(獄)パラジカフェ」が問題視されている。被害者や捜査機関を侮辱するような表現が散見され、そうした書き込みがキャプチャーされて
SNSなどで拡散している。
オクパラジは「牢獄の囚人に差し入れをして世話をすること」を意味する。問題の書き込みを列挙すると――。
「弟が性犯罪で収監された」という男性。「弟が悪いのは事実だ。未成年者への性犯罪であり、確かにひどいことをした。でも、一人暮らしの大人の男の家に来て、『ベッドに横になれ』と言ったら横になった。それもまともじゃない。そんな娘の側も、しっかり教育すべきだ」
同様の罪で息子が収監されたという男性。「息子は検事から13年を求刑された。パンツの上からチューしたらしい。4歳くらいの被害女児が法廷で答えた『はい』『いいえ』によって『セクハラ』が追加され、求刑が決められた。5年の実刑は言い渡されそう。本当に悲しくてどう生きるべきか。目の前が真っ暗だ」
別の投稿者。「打ち明ける場所がなく、このカフェを訪ねた。何年も経ったが悪夢だ。警察を信じるな。検察も信じるな。道であいつらに会ったら、おかしくなりそう。罪のない人に容疑をかぶせるため、小説を書くやつら」
(後略)
記事では、犯罪の加害者の家族が情報をやり取りするコミュニティーが存在しており、警察や被害者に対して逆恨みや侮辱等を行っているという記事です。
そしてこうしたコミュニティーでも「被害者にも問題があった」「警察の捜査に疑問がある」等の疑惑が提示され、コミュニティー内で情報の共有とエコーチャンバーが起きている事が分かります。
また次の事例では
苗・種子転売で私服肥やす…韓国・農協幹部、通報した職員にロープの写真「自殺してやる」
KOREA WAVE 2023 年 11月 10日
https://koreawave.jp/%e8%8b%97%e3%83%bb%e7%a8%ae%e5%ad%90%e8%bb%a2%e5%a3%b2%e3%81%a7%e7%a7%81%e6%9c%8d%e8%82%a5%e3%82%84%e3%81%99%e9%9f%93%e5%9b%bd%e3%83%bb%e8%be%b2%e5%8d%94%e5%b9%b9%e9%83%a8%e3%80%81%e9%80%9a/
韓国
全羅北道(チョルラプクト)のある農協が揺れている。常務クラスの幹部が部下の職員に不当業務などを指示したとして、雇用
労働省に通報されたためだ。
部下の職員は2021年、農協で育苗事業を進めていたところ、当時の事業責任者だったこの幹部から、数百万ウォン(1ウォン=約0.1円)相当の苗・種子を横領するよう指示された。その転売代金を職員の父親名義の口座に入れて管理し、幹部の必要に応じて出金して渡す役割を担ったという。職員は不本意ながらこの指示に従いつつ「自身も処罰対象になりかねない」ことを理解していた。
こうしたなか、この幹部による職場内いじめが発覚し、農協中央会が監査に入った。職員はこれを機に、幹部に「正常な業務をしたい」と訴えたが、黙殺されたという。
結局、職員は横領の件を自ら農協に申告した。これによって監査が入り、横領の事実が明らかになった。幹部もこれを認め、着服した金額を返還した。
監査の過程で、幹部は職員に「自殺をする」と訴え、首を吊るすロープの写真をメールで送りつけたという。職員は心理的負担と苦痛により、幹部から“2次被害”を受けたと訴えている。
韓国の農協幹部が横領を行っており、その片棒を担がされパワハラにあっていた職員が、問題を告発したところ、幹部がその職員に「自殺する」といって首を吊るすロープの写真を送ってきたという事例です。
この事例の場合は、内部告発を行った社員を幹部が逆恨みし、ある種の脅迫を行ったという事例です。
また次の事例では
「なぜ私は希望する病院に無料搬送してもらえないのか」 共に民主・李在明代表のヘリ転院に抗議相次ぐ
朝鮮日報 2024/01/09
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2024/01/09/2024010980038.html
救急医学医師会会長がコメント
地域医師会の批判声明も相次ぐ
韓国最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の襲撃事件以降、医療対応関連の後遺症が続いている。救急医療現場では李在明代表事件後、医療従事者に対して「私はなぜ希望する病院に無料で救急移送(転院のための搬送)できないのか」という抗議が増えたとのことだ。地域医療関係者の間では、共に民主党の対応を糾弾する声が相次いでいる。
大韓応急医学医師会のイ・ヒョンミン会長は8日、本紙に「救急医療システムは患者本人が望む通りにすべてできるシステムではなく、どの国にもそのようなケースはない。先週、このようなこと(李在明代表襲撃事件と移送)があって以降、患者が自身の希望する病院に119システムを使って無料で移送を要請するケースがあったとの情報が寄せられている」と述べた。
その上で、「現在いる地域で救急対処・治療が十分可能なのに、ソウルの大型病院や地縁のある病院に行きたいという要求は常にあった」としながらも、「ところが、『ある人は絶対に必要だった状況ではなかったのにもかかわらず、望み通りになった』というメッセージが発せられたため、患者の怒りの指数が増し、できないことに対する不満を医療従事者にぶつけるようになった。以前は患者たちが不満として話して済ませていたことだが、今は患者と医療従事者が衝突するような形になり(確執の)度合いが高まった」と語った。
(中略)
働く人々のための匿名制インターネット・コミュニティー・サイト「ブラインド」にも、「李在明のように『ソウルに転院するから救急車を呼んでほしい』という患者の説得は難しい」というタイトルの投稿が4日に掲載された。医師を名乗るこの投稿者は「急性胆のう炎で手術する患者がソウルの病院に行くことを希望したため転院依頼書を書いた。その患者に『救急車を呼んでほしい』と言われ、『ダメだ』と説得するのに疲れ果てた。李在明は本当に悪い先例を残した。しばらくの間、ソウルに転院するために救急車を使いたいという人々を説得することになると思うと、ため息しか出ない」と書いた。
チェ・ヘスン記者
先日襲撃を受け怪我をした、韓国最大野党「共に民主党」代表の李在明氏が、本来であれば最初に運び込まれた釜山の総合病院で治療を受けるはずであるにも関わらず、ドクターヘリでソウルの病院へと向かい治療をうけたとして、批判されていることを伝える記事です。
ここで問題となるのが、李在明氏の行いは、本来ドクターヘリが必要であった人がその機会を失った可能性もあったので、批判されて当然ではあるのですが、この件があって以来韓国の病院では「必然性のない転院」依頼が多数出て来るようになり、多くの人が同じ特権を要求し出したという事です。
「そうした行いはよくない」ではなく、「李在明がやったのであれば自分も同じ待遇をしろ」という要求が増えたという事で、彼らの「自己の正しさ」というものがどんな性質なのかがよく分かる事例です。
ここまででわかるように、韓国社会では多くの人が「自己の正しさ」を押し通そうとして、社会的なトラブルが頻発しているという事です。
3:「真相究明」の実態
韓国社会における「真相究明」というのは、この延長線上にあります。
どういうことかというと、これまで紹介してきたように、「自己の正しさ」を信じて疑わない多くの韓国人は、それが実現できていないことに不満を持ち、その原因を他者に転嫁する事例が度々起きています。
この「転嫁」こそが「真相究明」の実態です。
自身は正しい事をしているのだから、本来であれば「正しい結果」が出るにもかかわらず、それができていないため、「できていない事の真相究明」を要求するのです。
それが他者の共感を呼ばないただの個人や少数者の主張であれば、先ほど挙げたような小さな問題で終わるわけですが、多数の共感を得るとそれがかなり大きな動きになります。
たとえば2014年に発生したセウォル号事故の事例では
セウォル号惨事を反政府扇動に悪用する勢力
東亜日報 April. 23, 2014
https://www.donga.com/jp/article/all/20140423/424671/1
(前略)
ネットやSNSでも、政府が遺体収容と救助を故意に遅らせているといった怪談が広まっている。
セウォル号沈没現場で1週間休まずに行方不明者の救助と犠牲者収容のために死闘を繰り広げている救助員への冒涜であり、悪意の陰謀説だ。「自主民報」のような
親北朝鮮メディアは、天安艦沈没の時と同じように、「
セウォル号の沈没は米国の潜水艦に衝突したためだ」と主張し、扇動に熱を上げている。
行方不明者の家族を利用して特定の目的を果たそうという「偽装」まで現れた。京畿道安山(キョンギド・アンサン)檀園(ダンウォン)高校の父兄会代表を装って報道機関のインタビューを受けたり、行事の進行を担ったソン・ジョングン氏は、新政治民主連合京畿道議員の次期候補に登録した政治志望生であり、父兄でも行方不明者の家族でもなかった。被害者と関係のない外部勢力が行方不明者家族の大統領府への抗議訪問を煽ったという具体的な証言も出てきた。与党セヌリ党の権恩嬉(クォン・ウンヒ)議員と一部ネットユーザーが、「密陽(ミルヤン)送電塔反対デモに参加した女性が、セウォル号惨事の現場で行方不明者の家族を装った」という誤報をSNSなどに書き込んだのも誤りだ。
警察は22日、総合編成チャネルMBNに出演し、「海洋警察が民間ダイバーの救助活動を妨害している」と虚偽の事実を流布したホン・カヘ氏に対して拘束令状を申請した。国家的、国民的惨事まで反政府扇動と対立に悪用しようとする一部勢力に振り回されないためには、メディアの役割も重要だ。怪談が足を踏み入れないよう政府も国民に正確かつ速かに事実を伝えなければならないが、メディアも正確で節度のある取材と報道をする責務がある。
こちらの事例のように、「セウォル号の沈没は米国の潜水艦に衝突したためだ」「政府が遺体収容と救助を故意に遅らせている」といった陰謀論を訴える人々が現れ、それに一部の遺族が同調したうえに、現韓国最大野党「共に民主党」の議員たちが政権批判にそれを利用し、「真相究明」を訴える動きになりました。
そしてこの動きがどんどん大きくなっていき、陰謀論が陰謀論を呼び、朴槿恵大統領弾劾の一助となったわけです。
その後
「セウォル号、潜水艦衝突など外力説の可能性は低い」…調査委員会が議決
ハンギョレ新聞 2022-06-08
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/43688.html
社惨委の調査機関である真相究明局が「外力説」報告書に記載
「可能性はあるが、明示的な証拠提示には限界」主張
全員委、外力説は総合結論ではなく小結論にのみ反映
社会的惨事特別調査委員会(社惨委)全員委員会は、セウォル号の沈没原因をめぐり数年間提起されてきた「外力説(潜水艦衝突説)」は可能性が低い、との趣旨の最終結論を下すことを決めた。
7日、社惨委全員委員会(ムン・ホスン委員長)は第152回全員委員会を行い、「(セウォル号沈没発生の)外力の可能性を調査したが証明できず、外力の可能性は非常に低いと判断する」とする総合結論を出すことを前提として、真相究明局の調査結果報告書の採択を修正のうえ議決した。セウォル号船体調査委員会は沈没原因について単一の結論が下せず、「内因説(船体内部の問題)」と「(外力説を排除しない)開かれた案」をそれぞれ記した2つの報告書を2018年7月に提出しているが、今回は潜水艦衝突などの外力説の可能性は低いと結論付けたのだ。全員委は、社惨委が調査結果報告書について諮問した大韓造船学会の検討意見と、オランダの海事研究所「マリン」のセウォル号の模型を使った実験報告書の結論を調査結果報告書に載せることを決めた。これらの専門家は、潜水艦衝突をはじめとする外力によるセウォル号沈没は不可能だとの意見を述べている。
社惨委の調査機関である真相究明局は先月、沈没原因として外力の可能性があるとする内容を含めた調査結果報告書を全員委員会に提出したが、全員委の多数の委員は外力の可能性が低いとの趣旨で修正するよう要求していた。しかし、真相究明局はこの日も「外力の可能性はあると判断されるが、明示的証拠の提示には限界があった」と主張した。結局全員委は、大韓造船学会の意見やマリン報告書などを総合すると「外力の可能性は非常に低いと判断する」との総合結論を出すと修正のうえ、議決した。
ただし全員委は、真相究明局の結論を調査結果報告書の小結論に書き込んだうえで、総合結論には外力の可能性は低いとする全員委による最終決定を載せることにした。全員委のイ・ミン委員は「この報告書は全国民が読むべき報告書であるため、私たちが議論した内容と諮問した部分、真相究明局と論争があった部分を全て記載することが重要だ」とし、「遺族を説得し合理的な意見を記載することが調査報告書の重要な役割」だと語った。カン・ギタク委員も「総合結論は全員委の委員の議論どおりにまとめることが正しい」とし、「(真相究明局の調査官の意見を)尊重し、これを残すやり方をとることで、バランスをとることができるだろう」と述べた。
3年6カ月にわたって調査を続けてきたものの、合意されたひとつの明確な結論が下せなかったことについて、ファン・ピルギュ委員は「多くの方々が長きにわたり努力を傾けてきたが、すっきりとした結論が下せなかった部分については、委員として申し訳ないと申し上げる」と述べた。
社惨委全員委員会の委員の任期は今月10日まで。社惨委は9月10日までに総合報告書を作成し、国会と大統領に報告しなければならない。
チャン・イェジ記者
この動きは2022年まで延々と続き、上記記事あるように調査委員会が「潜水艦等の外部の力で沈没した可能性は極めて低い」という結論を出したわけですが、この結論はこれが初めてではありません。
記事でも少し書かれていますが、大韓造船学会やオランダの海事研究所が何年も前に同様の調査結果を出しているにも関わらず、それでも「潜水艦等の外部の力で沈没した」という前提での真相究明の訴えが続き、数回にわたって「結論」が出されたうえに、それでも真相究明委員会は「可能性はあるが、明示的な証拠提示には限界」と言い続け、終わりが見えないのです。
なぜなら、真相究明委員会は「沈没には何らかの政府の隠蔽がある」という結論ありきで要求を続けているからです。
また他者の劣等性から自己の優越性を導き出す彼らの価値観では、自己の正しさを証明する事と、他者の劣等性を指摘する事が同じ意味を持つため、「真相究明」というのも「自己の正しさに基く真相究明」でなければならず、結果真相究明を要求する側の意向に沿った結論が出ない限り、究明が終わる事は無いわけです。
これは対日本でも同じです。
沈黙破ったイ・ヨンスさん「30年間の成果の無視・消耗的な論争はやめよう」
ハンギョレ新聞 2020-05-14
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36620.html
今月7日、
大邱での会見以来初めて立場表明
日本に犯罪の認定と謝罪求める
「メディアの憶測・対立助長」を指摘
正義連にも事業方式の改善を要求
「誤りや過ちを克服するための過程が必要」
「韓日拙速合意の過程を公開すべき」
「両国の学生の教育・共同行動が必要」
水曜集会への不参加宣言とは“趣旨”異なる
寄付金の使途など正義記憶連帯(正義連)の活動に問題を提起した日本軍「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさん(92)が「(正義連が)出した成果を貶したり、消耗的な論争を繰り広げるのは避けるべきだ」という立場を明らかにした。今月7日に大邱で記者会見を開き、正義連の会計問題などを指摘すると共に、水曜集会への不参加を宣言して以来、初めて表明した立場である。
イさんは13日、自分のフェイスブックに「女性人権活動家イ・ヨンス」としての立場文を掲載し、現在起きている様々な議論と今後の願いについて意見を述べた。イさんは文の冒頭で加害国である日本に対し、犯罪の認定と謝罪、真相究明と法的賠償金、再発防止のための制度的装置づくりなどを求めると共に、「これを通じて被害者の名誉と人権回復が実現しなければならない」と強調した。これまで自分をはじめ挺身隊問題対策協議会(挺対協)、正義連などが堅持してきた立場を再確認したわけだ。イさんはまた、最近メディアを中心に、共に市民党のユン・ミヒャン比例代表当選者と正義連の活動方式をめぐり様々な疑惑が持ちあがっていることについて、「既成メディアの根拠のない憶測と非難、対立助長」だと指摘した。
記者会見後に触発された論議には批判的だったが、正義連に対しては「これまで30年間、真実を明らかにするための闘争過程で現れた事業方式の誤りや過ちを克服するための過程が必要だ」と指摘した。具体的には、今の時代にふさわしい事業方式や責任ある執行過程、透明な公開を求めた。また、「朴槿恵(パク・クネ)政府当時、韓日間の拙速の合意と関連し、政府の市民に対する意見集約の過程と内容、挺対協関係者たちが政府関係者との面談の際に対話した内容など、関連内容が早めに公開され、韓国社会が信頼を取り戻さなければならない」と強調した。イさんはさらに「両国の学生に対する教育が重要だ。韓日両国の未来関係を構築していく学生同士の交流や共同行動など活動がもう少し拡大していけばと思う」と記した。「水曜集会」には直接触れなかったものの、「学生らに苦労させ、無駄にお金を使っているだけで、教育もまともに行われていない」と言い水曜集会への不参加を宣言したのとは、やや趣旨の異なる内容だ。イさんは「韓国社会共通の価値である人権と平和、和解と容赦、連帯と和合が実現することを願う」と付け加えた。
数日前には正義連を厳しく批判したイさんが今回立場を表明したことで、慰安婦問題の解決に向けて共に戦ってきた人たちの分裂への懸念は収まるものと見られる。正義連に対し、闘争過程の“過ち”を克服することを求めながらも、人権と連帯の価値を強調することで、戦争犯罪で犠牲になった女性の人権普遍的問題に取り組んできた正義連の活動を後押ししたからだ。
このため、イさんが水曜集会への不参加を宣言するなど、激しい口調で正義連を批判した背景には、正義連を根本的に否定するよりは、2015年の拙速合意やその後続いた膠着状況による心の傷や苛立ちがあったものと見られる。文在寅(ムン・ジェイン)政府は発足後、作業部会を立ち上げ、2015年合意の問題点を包括的に調査したものの、両国政府間の公式合意だったためこれを破棄して再交渉を進めるのは困難な状況が続いた。イさんと交流のあるチェ・ボンテ弁護士(大韓弁護士協会、日帝被害者人権特別委員長)は13日に行ったハンギョレとの電話インタビューで、「2015年合意以降、政府が慰安婦問題を事実上放置しているのも、イさんの怒りの原因」だとし、「30年近く争ってきたにもかかわらず、出口がまったく見えない状況に苦しんでいた」と伝えた。
キム・ソヨン記者
こちらの事例は、韓国の慰安婦団体が「犯罪の認定と謝罪、真相究明と法的賠償金、再発防止のための制度的装置づくり」の要求を日本に対して行っているという記事です。
以前から説明しているように、韓国社会における慰安婦の定義とは「軍や国の命令で、軍人や官憲が直接的に行った拉致や動員」というものであるので、その結論に沿った答えが出るまで、真相究明を続けるという意味です。
これまで書いてきたことからもわかるでしょうが、日本人の感覚での「真相究明」と彼らの想定する「真相究明」とは、根本的に意味が異なるのです。
彼らの要求する真相究明というのは、事実を明らかにすることではなく、自分達の望む結論に沿った答えを出すことなのです。
このため、歴史問題で韓国側といくら話し合いをしようと、どんな調査をしようと、彼らの結論に沿った答えが出ない限り、彼らの「真相究明」が終わることはなく、話し合い自体が全くの無意味になるという事なのです。
これは韓国のどの政治的、イデオロギー的属性を持つ人々でもおおよそ同じです。
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