さて、本日は「序列社会」であり「普遍的正しさ」という概念が存在する韓国で発生する社会対立について書いていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
韓国では現在様々な社会対立が発生しており、政治の世界でも与野党による支持者まで巻き込んだ泥沼な対立があると同時に、与党内、野党内でも内部対立が発生している状態となっている。
また、社会対立も激化し、特に男女対立は大統領選挙や国会議員選挙にまで影響を与える状況になってきており、「誰もが自身の正しさを疑わない社会」であるために、双方がマウント取りのための侮辱合戦をするような状況になっている。
こうしたことは、「絶対的な正しさでは自身の正しさを証明できない」事が関係しており、対立が起きた場合に自身の正しさを具体的に証明できないため、双方ともマウント合戦となり、「負けた方が間違いとなる」社会だからこその問題といえ、このことは現在の日韓問題にも影響を与えている。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
1:複雑化する政治対立
現在韓国では与党となった「国民の力」が、野党となった「共に民主党」の与党時代の問題行為や犯罪を暴き、与野党対立が激化しているわけですが、実はそれだけではありません。
まずはこちらの記事から
韓国与野党の重鎮議員、党員資格停止の李俊錫代表を批判「子どもの意地悪」「卑怯だ」
朝鮮日報 2022/07/09
https://web.archive.org/web/20220719132807/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/09/2022070980020.html
韓国の
保守系与党「国民の力」の倫理委員会が8日、李俊錫(イ・ジュンソク)代表に対し「党員資格6カ月停止」の厳しい懲戒を下した。同党の李在五(イ・ジェオ)常任顧問と革新系最大野党「共に
民主党」のイ・サンミン議員は、懲戒決定に先立ち、李代表について「分別がない」「卑怯だ」と批判した。
李常任顧問は今月7日、CBSラジオの番組『一発勝負』に出演し、「私は『李俊錫代表は大統領選挙でも勝ち、地方選挙でも勝って、大きな功績を挙げた。将帥は大きな功績を挙げた時に退いてこそ未来がある。政権も変わったのだから、新しい酒は新しい袋に入れるべき』と(助言)した」「こういう風にしてさえいれば、こんなめちゃくちゃなことにもならず、李俊錫は大人物、本物の指導者になっていた」と語った。さらに、懲戒決定にもかかわらず李代表はポストから退きそうにないという展望について「子どもが意地悪なことをしているみたい」と発言した。
また李常任顧問は、李代表が尹核関(尹錫悦〈ユン・ソンニョル〉大統領の核心関係者)と対立していることを巡り、「分別がないからそうなる」とし、「尹核関など大したことないと思っているのかもしれないが、大統領の気持ちはそうではない。大統領が李俊錫をもはや信用しないのか、尹核関をもはや信用しないのか。それで全くの見当違いになってる、今」と指摘した。
同じく『一発勝負』に出演したイ議員は、李代表の『7億ウォン投資誘致覚書」について「最も意味のある資料」だとし、「7億ウォンをどこかに誘致したいというのなら立派な話で、美談じゃないか。表彰状をあげるべきだろうが、それをなぜ覚書にしたか?」「極めて異例で、おかしい。明らかに何かぴんと来るものがある」と語った。
またイ議員は「大統領選挙、地方選挙がちょうど終わって、選挙も勝ったし。まさにそのとき、(李代表は)別の名目で辞めるべきだった。こうして政治的に解決すべきだった」とも語った。
チョン・チェビン記者
「国民の力」内でも対立が発生しており、こちらの記事では30代で「国民の力」の党首となった李俊錫代表が、党内からの収賄疑惑告発で党員資格の停止処分を受け、党内の有力者から「尹錫悦大統領の側近と対立しているからこうなった」という趣旨の批判を受けたという記事です。
ではその発端となった事件とは何かというと
韓国最大野党に内紛、党代表が大統領選から手を引く
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.12.22 08:18
https://japanese.joins.com/JArticle/285913
尋常でなかった韓国最大野党・国民の力の内紛が大統領選挙を78日後に控えてまた爆発した。中央
選挙対策委員会の趙修真(チョ・
スジン)公報団長と対立した李俊錫(イ・ジュンソク)代表が21日、「すべての選対委の職責から降りる。少しの未練もない」と宣言した。常任選対委員長と広報メディア本部長から退くということだ。趙団長もこの日晩、選対委副委員長・公報団長から退くと述べた。それでも李代表が翻意する可能性は低いという見方が多い。
李代表が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領候補との3日の「蔚山(ウルサン)会合」で葛藤を解消してから18日ぶりに浮上した悪材料だ。党内では「絆創膏1枚だけを貼って傷を放置したことで生じた予想された惨事」(重鎮議員)という反応が出ている。今後、劇的な反転の可能性を排除することはできないが、尹錫悦候補の選対委は発足から半月でメガトン級の台風を迎えることになった。
李代表はこの日午後、国会で開いた記者会見で、直接的な導火線となった趙団長との対立について「選対委構成員が常任選対委員長の指示に従う必要がないというのならば、これは選対委の存在を否定することだ」と述べた。続いて「(趙団長が)これを正す積極的な行為をせず、むしろ代表を嘲弄するユーチューブ映像をメディア関係者に送ったことを確認した瞬間、決心がついた」と話した。
2人は前日の選対委非公開会議で「尹核関(尹候補側の核心関係者)報道を整理すべき」(李代表)、「私は候補の言葉だけを聞く」(趙団長)として正面から対立した。その後、趙団長が李代表を誹謗するユーチューブ映像リンクを周囲の人たちと共有した事実が明らかになり、対立は激化した。趙団長が一部の取材陣に送った映像リンクは「李俊錫がとんでもない理由で勝手な行動! 精神的健康が憂慮される! 今からでも辞任させるべき! それがだめなら答えは弾劾!」と題したユーチューバー「目撃者K」の映像だった。趙団長は前日夜、「謝罪する」というコメントをフェイスブックに載せたが、李代表は「謝罪らしくない謝罪を見てあきれた」と不快感を表した。
李代表の不満は単に趙団長だけでなく「尹核関」と呼ばれる尹候補の側近と尹候補に向けられているという解釈もある。この日の会見で李代表は尹候補に対する感情を隠さなかった。「尹候補とこの問題で意思疎通をしたのか」という取材陣の質問に対し、「趙団長が候補の意に従うといったが、このように事態が膨らむまで趙団長が候補と相談したのか、また候補がどういう趣旨で命令したのかが気にかかる」と答えた。「事前に尹候補に退く意向を伝えたのか」という質問に、李代表は「していない。私の去就表明は候補と相談せずに決めることができる」と述べた。
◆国民の力内部「大統領選を目前に党内権力争いに没頭」
李代表は尹候補のリーダーシップについて「候補には言及しない」としながらも「選挙で良い結果を得ることができなければ私は代表として相当な不名誉となるが、無限の責任は候補にある」と述べた。また、この日午後9時過ぎにフェイスブックに「核関が強く望むように李俊錫は選挙から手を切る。(毒がある)フグは慎重に扱うべきだと繰り返し話しても、フグをそのままミキサーにかけてしまう状況になった」というコメントし、露骨に「尹核関」を狙った。
党内部では「膿んでいた『李俊錫・金鍾仁(キム・ジョンイン)-尹候補側近』の対立構図が破裂した」(党関係者)という分析が出てきた。蔚山(ウルサン)会合は弥縫策にすぎずに選対委内部の葛藤は続いていたという見方だ。国民の力のある関係者は「最近、李代表が『選対委は規模ばかりが膨らんで衆口ふさぎ難しだ。大統領選挙をする状況でない』という憂慮を周囲に何度か明らかにしていた」とし「趙団長の去就と関係なく辞任したのは趙団長ではなく尹候補の側近を狙ったものだ」と伝えた。
李代表の辞任を「選対委内の本格的な権力争いを知らせる信号弾」(イ・ジェクム韓国外大政治学科教授)とみる人も多い。この日、金鍾仁党総括選対委員長は李代表を妙に支持した。金委員長は「李代表と趙団長に事態を最小化してほしいとお願いした」としながらも「選対委の運営をこのまま進めていくことはできない。運営の邪魔になる人は果敢に(整理)するしかない」と述べた。選対委のある関係者は「李代表の辞任と金委員長の発言で尹候補の側近をこの機会に取り除くという意志が感じられた」と話した。
野党では李代表に対して「党内の葛藤を率先して調整すべき代表が葛藤を深める軽率な行動を繰り返している」という批判も出ている。尹候補のリーダーシップを責める声も少なくない。李代表の党務拒否事態に続いて、またも状況を軽視したという指摘だ。尹候補は李俊錫-趙修真の対立について「政治をすればお互い考えが異なることもある。それが民主主義」「システムの問題というよりも偶然に生じたことなので、当事者間で誤解を解けばよいのでは」という認識を示した。金委員長はこの日午後、ラジオ番組のインタビューで尹候補が選対委の葛藤をついて「それが民主主義」と述べたことについて、「その言葉がむしろ李代表をさらに刺激したのではないかと思う」と話した。
党内外の視線は今回も尹候補に向かっている。尹候補が今回の件をきっかけに選対委にメスを入れるという見方が多い。選対委の関係者は「少なくとも本部長級の人たちが連帯責任を取って辞表を出す形で収拾する可能性がある」と話した。金委員長とぎこちない関係の金秉準(キム・ビョンジュン)党常任選対委員長の去就表明の可能性に対する言及もあった。匿名を求めた国民の力議員は中央日報との電話で「与党は内輪もめがあっても問題が発生すれば戦略的に一つになるが、我々は大統領選を目の前にして内部権力争いに没頭している」と指摘した。党指導部総辞職の声も出てきた。国民の力の朴洙ヨン(パク・スヨン)議員はフェイスブックで「国民に申し訳なく、恥ずかしい。みじめだ。全党大会で選出された党代表を含む最高委員の辞任を求める」と書いた。
趙団長はこの日、李代表の選対委職辞任会見から4時間後の午後8時ごろ、フェイスブックに「私はこの時間を最後に中央選対委副委員長と公報団長から退く。国民と党員に心から申し訳なく思う」というコメントを載せた。
去年の年末の事なのですが、李俊錫代表が尹錫悦氏と党内の勢力争いを巡って対立、李代表の選対委職辞任という状況にまで発展するという事件が発生したのですが、この背景には尹氏が「政権交代をしなければいけないので仕方がなく国民の力に入党した」といった趣旨の発言をしたことと、元々年齢が序列に重要な意味を持つ韓国社会で、若い李俊錫代表の態度が反発を受けたという事も関係しています。
そしてこの件は年明けに一応の手打ちとなり和解したかに見えたのですが、
【記者手帳】37歳韓国与党代表と62歳国会副議長の聞くに堪えない非難合戦
朝鮮日報 2022/06/09
https://web.archive.org/web/20220609032125/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/06/09/2022060980062.html
与党国民の力の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会副議長(62)と李俊錫(イ・ジュンソク)代表(37)が「犬の鳴き声」「計略」「後頭部」などといった露骨な表現で連日論争を展開している。発端は鄭副議長が6日に
フェイスブックに投稿した文章だった。鄭副議長は李代表の
ウクライナ訪問と革新委員会設置などを批判し、「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に役立つ与党の役割を考えるのが先決だ」と主張した。鄭副議長は李代表の出国まで何も言わなかったが、
ウクライナに到着すると、「自分勝手な政治をしている」と指摘した。これに対し、李代表は
フェイスブックに「どのみち汽車は行く」と投稿した。金泳三(キム・ヨンサム)元大統領の「犬が吠えても汽車は行く」という発言を引用し、自分の信念に従って行動する意向を表明したものだったが、鄭副議長の批判を「犬が吠える」と皮肉ったものと受け止められた。
その後、2人はメディアのインタビューやフェイスブックを通じ、3日連続で舌戦を続けた。 鄭副議長が8日、「どこでこんな悪い計略を学んだのか」「先輩の懸念を『犬の鳴き声』と見なす無鉄砲さはどこから生まれたのか」と述べたと思えば、李代表は「後頭部を殴ろうと待ち構えているのが正しい政治なのか」と反論した。李代表は7日、フェイスブックにウクライナ議員から受け取った返礼品の写真を掲載し、「育毛マッサージ棒に似ている」と表現したが、鄭副議長が5年前に「保守存立の役に立たない人間は育毛マッサージ棒で後頭部をかち割ってしまわなければならない」と発言したことを念頭に置いたものだったとメディアのインタビューで明かした。
鄭副議長は同党の最多選(5選)議員であり、李代表よりも25歳年上の先輩だ。年齢を盾にする行動を若い世代がどれほど嫌っているのか分からないようだ。 李代表も30代の政治家である以前に、国政の一軸を担う与党代表だ。同党の重鎮である国会副議長を「降伏」させようと休む間もなく追い込む姿からは、その職位の重さが感じられない。
李代表がウクライナに滞在中、側近は「李代表は未明にも国内の政治状況を注視している」と話した。鄭副議長も8日午前2時50分に記者の取材に答える携帯メールを送ってきた。鄭副議長と李代表はいずれも眠れない夜を過ごしたようだ。李代表は9日夕に帰国する。二人が面と向かって話し合うことを期待したい。
キム・スンジェ記者
今年の6月に李俊錫代表がほぼ独断でウクライナを訪問、文政権時代の「新北方政策」に関連し、当時野党だった「国民の力」内でもその恩恵を受けていた議員たちがいたようで、党の重鎮の怒りを買い、非難合戦に発展するという事態になります。
その結果、李俊錫代表は収賄疑惑とそれに関連した性接待疑惑を党内から告発され、最初の記事のように党代表でありながら党員資格を停止という事態になったわけです。
またこうした内紛は野党の「共に民主党」でも発生しており、
「防弾代表」への疑念が深まる中、民主党代表選立候補を宣言した李在明氏
東亜日報 July. 18, 2022
https://www.donga.com/jp/List/article/all/20220718/3517672/1
最大野党「共に
民主党」の李在明(イ・ジェミョン)議員が17日、8月28日の全党大会で党代表選挙に出馬することを宣言した。3月9日の大統領選の敗北から約4ヵ月、6月1日の仁川桂陽(インチョン・ケヤン)乙
補欠選挙の当選から約1ヵ月半経った。李氏は記者会見で、「勝つ
民主党を作る」とし、「国民が『もういい』と言うまで、党を除いて全てを変える」と述べた。全党大会では、李氏と97世代(1990年代大学入学、70年代生まれ)、非明(李在明)系が次期党代表をめぐって激しく対立する見通しだ。
これに先立ち、全党大会のルールをめぐる議論で、親明(李在明)系の要求の多くが貫徹された。予備選挙のカットオフで、親明系が求めた「世論調査30%」ルールが含まれ、党代表権限の縮小を求める非明系の主張は拒否された。このため党内外では、先の大統領選で党の候補となり大衆の認知度が高い李氏の大勢論が確認されたのではないかという観測が流れている。
全党大会は、大統領選挙と地方選挙の連敗のドロ沼から抜け出し、新たな「共に民主党」に生まれ変わる舞台にならなければならない。しかし、全党大会が李在明大勢論に流れれば、すべての問題が「李在明か、そうでないか」に埋もれる可能性が高い。世論を冷遇したファンダム政治と理念過剰政治を克服する激しい刷新議論は期待できないだろう。李氏も「理念と陣営に閉じこもった政争政治を排撃せよ」と言ったので、まずこの議論の糸口を見出さなければならない。
党内では、李氏が選挙の連敗に責任を負う十分な熟考の時間もなく党代表に挑戦したことを懸念する声も出ている。李氏が司法リスクを回避するために党代表への挑戦を急いだのではないかということだ。党代表が司法リスクを回避するために党の力を集中するなら、「防弾代表」になるほかない。このような状況で、同党が国民生活と党の改革に国民が納得する成果を上げられるかは疑問だ。
李氏の党代表出馬をめぐって、同党は今、親明系と非明系に分裂した状態だ。オン・オフラインでは、毎日のように激しい攻防が繰り広げられている。心理的分党状態を呈している。対立の原因は、党代表が持つ公認権だ。このような状況では、誰が党代表になっても統合の政治を実現することは難しいだろう。党内派閥の対立も整理できず、与野党協治、国民統合を語ることができるだろうか。このような懸念を払拭するためにも、李氏は公正性が担保された公認システムの構築を模索しなければならない。
尹氏と大統領選で争った李在明氏が党代表選に出馬を表明、このことが党内で「親明系と非明系に分裂した状態」になったという記事です。
元々大統領選敗北後すぐに総括常任選挙対策委員長に就任し国会議員再補選に出馬、「警察からの捜査を議員特権で回避するつもりだ」と批判されていたにも関わらず議員に当選、しかも同時に行われた地方選は共に民主党の敗北で終わったことから、党内で李氏の責任論が噴出したという背景があります。
その結果次の記事にあるように
文前大統領、「あのクズ(李在明)のせいで復活した国民のお荷物クズ」ツイートに「いいね」
朝鮮日報 2022/06/02
https://web.archive.org/web/20220602012024/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/06/02/2022060280034.html
文在寅(
ムン・ジェイン)前大統領が1日、「あのクズのせいで復活した『クッチム』のクズたち」という
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(
SNS)「
ツイッター」の投稿に「いいね」をクリックしていたことが分かった。これは6月1日の第8回全国同時地方選挙(
統一地方選挙)・国会議員補選で共に
民主党が惨敗すると予想される状況に関する投稿で、「あのクズ」とは李在明(イ・ジェミョン)共に
民主党常任顧問・国会議員補選仁川市桂陽区乙選挙区候補者を指すものと見られる。「クッチム(国民のお荷物)」は共に
民主党寄りのネットユーザーたちが与党・国民の力をさげすんで呼ぶ時の表現だ。
文前大統領は同日、ツイッターでネットユーザーA氏が書いた「同感です。あのクズのせいで復活したクッチムのクズたちのせいかと思われます」という投稿に「いいね」をクリックした。A氏はツイッターで「文在寅大統領様が大好きで、愛しています」とプロフィールに書いている「親文系(文前大統領寄り)」ネットユーザーだ。
A氏の投稿は、別のネットユーザーB氏が書いた「投票しながらこんなに腹が立ったのは初めてだ。前の京畿道知事、大統領選挙時はこれほど腹が立つことはなかったが、李在明というクズのせいで、いったいこれはどういうことなんだ?」という書き込みにコメントを付ける形で掲載されたものだ。同日午後11時現在、A氏とB氏のツイッター投稿文は削除されている。
文前大統領は先月23日、慶尚南道金海市進永邑烽下村で行われた故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の13周忌追悼式で李在明氏に会った。文前大統領はこの時、「もしかしたら使うことがあるかもしれないので写真を撮ろう」と言って、李在明氏と手をつないで写真を撮った。
文前大統領は自身で直接、ツイッターのアカウントを管理しているようだ。娘ダヘ氏は先日、自身のツイッター・アカウントで、文前大統領がタブレットを使って支持者たちのツイッター投稿を見ている写真を撮って掲載した。
ソン・ドクホ記者
文在寅前大統領が、この李在明氏を巡る騒動を受けてtwitterに投稿された、「あのクズのせいで復活した『クッチム※』のクズたち」という内容に「いいね」を付け、対立が現党内有力者と前大統領という構図にまで発展してしまったという事例です。
※クッチム:「共に民主党」支持者が「国民の力」をさげすんで呼ぶ時の表現
現在韓国の与野党は、与党「国民の力」が野党「共に民主党」政権時代の脱北者送還問題を巡り、人権侵害があったとして糾弾、逆に「共に民主党」側は尹錫悦大統領による「身内人事」を糾弾している状態にあるわけですが、それと同時に双方が党内でも対立を続けているという状態なわけです。
2:深刻な男女対立
韓国政界ではこのような対立が発生しているわけですが、実は社会対立もかなり深刻化しており、その中で最も深刻なのが大統領選の「裏の争点」とも言える状態だった男女対立です。
例えば最近のこちらの記事
オンラインゲームでの男女対立…セクハラされる韓国の女性たち、ハンドルネームは男性風に
朝鮮日報 2022/07/18
https://web.archive.org/web/20220718102305/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/18/2022071880004.html
嫌悪表現にあふれる「オンラインゲーム」の世界
チームで負けたら「女のせい」と非難
下ネタを聞かされたりわいせつ動画が送られてきたりすることも
ゲームの中の露出度の高い女性キャ
ラクターも
論議【韓国ジェンダーリポート2022】〈第8回〉
オンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」をプレーする大学生のノ・ソジンさん(20)は、女性であるにもかかわらず、ゲームの中では「チョ・ドクチュン」「クァク・ドゥパル」といったハンドルネームを使用し、男性になり済ましている。本当の性別が明らかになると、男性プレーヤーから悪口やセクハラじみたメッセージが送られてくるためだ。1億人を超える全世界のユーザーがランダムで5対5のチームになって対戦する同ゲームで、ノさんの戦績は、上位1%前後に値する。しかし、ノさんが女性であることをカミングアウトすると、ゲームが始まる前に男性プレーヤーたちから「ここまで上がってくるのを見ると、男たちに相当体を許してきたんだろうな」「女なら洗濯でもしてろ」などと言ってばかにされる。チームが負けると、とにかく女性プレーヤーのせいにされる。ノさんは「ひとまず女だからお前が悪い」というメッセージも送られてきたという。ノさんに自宅の住所を送り付け、会おうと誘ってくる男性もいたという。2回ゲームをすれば1回はこうしたメッセージを読む羽目になる。
一昔前までゲームといえば、若い男性たちの趣味空間だった。しかし、今は老若男女がゲームを行っている。韓国コンテンツ振興院がまとめた「2021ゲーム利用者実態調査」によると、全国民の71.3%は年に1回以上の割合でゲームを行っている。これが20代になると、ゲームをする割合が男性は96.2%、女性は74.4%にまで高まり、10代では男性の95.1%、女性の92.2%がゲームを楽しんでいる。
しかし、オンラインゲーム空間は、互いに対する人身攻撃の場と化して久しい。相手の両親の悪口を言うのも、今ではよく見掛ける行為だ。相手の年齢、出身地域、学歴、職業など全てが攻撃材料となる。これは最近人気のあるゲーム特有の競技方式のためだと指摘する意見も多い。ネットカフェ統計サイト「ザ・ログ」によると、17日現在、韓国国内のネットカフェの利用者は、「リーグ・オブ・レジェンド」と「オーバーウォッチ」というゲームを楽しむのに、全接続時間の半数(49.7%)を費やしている。ところで、この二つのゲームは互いに知らない者同士が一つのチームを組んで相手チームと対戦するものだ。そのため、戦いで負けたときは「チームの中に実力の足りない人がいた」か、「誰かがわざと敗北につながる行動をした」ために負けたと考えやすい。韓国女性政策研究院が2019年に15-17歳の男女7774人を対象に調査した結果、男子生徒の22.2%、女子生徒の7.1%が「チームが勝つためには、ゲームが下手な人に悪口や中傷罵倒を浴びせることができる」と答えた。「ゲームが下手な人は強制退出(ゲームから排除されること)させられても仕方ない」という意見に対して男子生徒の25.5%、女子生徒の14.7%が同意した。
https://web.archive.org/web/20220719014026/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/18/2022071880004_2.html
ゲームで他人に侮辱を与える文化は、10-20代を中心に女性プレーヤーが増えるにつれ、言語による性暴力といった形でも表現されている。韓国コンテンツ振興院の調査によると、ゲームユーザーの4人に1人(26.6%)は、ゲーム上でセクハラや性差別を経験した。被害者の68.6%はメモやチャットで性的表現の混じった悪口や心理的攻撃を受け、27.9%は不快感を誘発する性的描写の入った写真や動画を受け取った。26.5%は音声チャットで悪口を言われたりセクハラに近いメッセージを受け取ったりした。女性政策研究院によると、女性プレーヤーには「マイク(音声チャット)をオンにしろ。かわいいかどうか確認する」「お前はフェミニストか」といったセクハラ、性器と関連した悪口が浴びせられている。
「オーバーウォッチ」をプレーするキムさん(26)は、友人とゲームする場合を除いては音声チャットをオフにしている。自分の声が相手に伝わらないようにするため、そして男性プレーヤーたちの「わあ、女だ」という皮肉を聞かないようにするためだ。音声チャットをするときは、声を男性の声に変えてくれるアプリを使用する。
男女間の対立は、ゲームコンテンツそのものを巡っても生じている。一方では、ゲーム制作会社の役職員の大多数が男性であり、男性プレーヤーの好みに合わせて女性キャラクターを露出の激しいデザインに仕上げているという指摘が絶えない。一方、一部の「フェミニスト」や「政治的な正しさ」を追求する制作者によって、ゲームの世界観やストーリー、キャラクター性が損なわれていると主張する声もある。「男性嫌悪」の傾向があると判断される人物を探し出し、ゲームの制作会社に圧力を掛け、制作から排除することも繰り返されている。
〈特別取材チーム〉金潤徳(キム・ユンドク)週末ニュース部長、キム・ヨンジュ社会政策部次長、卞熙媛(ピョン・ヒウォン)産業部次長、キム・ギョンピル政治部記者、ユ・ジョンホン社会部記者、ユ・ジェイン社会部記者、ユン・サンジン社会部記者
韓国ではオンラインゲーム内で「相手の年齢、出身地域、学歴、職業など全てが攻撃材料となる」という状態になっており、その中でも特に女性は侮辱的な態度を取られやすいという状況になっているようです。
ここまでだと、程度の差こそあれ日本を含め他の国でもありそうな事例の延長に見えるのですが、次の記事を読むと事情がかなり変わります。
「先生はどうして髪が短いの?」…反フェミニストに攻撃される韓国の教師たち
朝鮮日報 2022/07/11
https://web.archive.org/web/20220712050114/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/11/2022071180132.html
【韓国
ジェンダーリポート2022】〈第7回〉
京畿道河南市の特性化高校(実業系)で保健の教師を務めるファン・ジョンミさん(42)は「性教育をしていると、男子生徒からたびたび『先生もフェミニストか』と聞かれる」という。ファンさんは「ある男子生徒がミニテストの答案用紙に私のことを『チャンケ(中国人を侮辱する言葉)フェミ女教師』と書き込んで返してきた」とし「とてもショックで心療内科を受診した」とつらい過去に触れた。
現場の教師たちは「男女の対立が深まりを見せる中、生徒は教師たちを『フェミニスト』『反フェミニスト』といった物差しで観察し始めた」と重苦しい教育現場に触れた。正規の教育課程に出てくる内容に対し、「特定の性に対する肩入れ」と抗議する生徒もいるという。
昨年、慶尚南道のある中学校では、『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説を読んだかどうか、教師たちに聞いて回る男子生徒がいた。同生徒は「フェミの本を読んだ教師からは学ぶべきことが何もない」とし、本を読んだと答えた教師たちの授業は全て寝て過ごしたという。同校の教師、Aさんは「最近は、極端なユーチューバーの主張をそのまま受け入れ、異性を『敵』と見なす生徒が多い。その男子生徒もそのようなケースだった」と振り返る。
仁川地域の男子中学で教師を務めるパク・チョンヒョンさん(韓国教育政策研究所副所長)は「1年生の男子生徒たちに自由討論のテーマを決めようと言ったところ、こぞって『女性家族部(日本の省庁に当たる)の廃止』を叫んだ。女性教師の前で女性の悪口を言うのもはばからない」と、眉間にしわを寄せる。女子生徒たちのジェンダーに対する感受性はより敏感だ。パク・チョンヒョンさんは「妻は女子高で国語を教えているが、詩人のシン・ドンヨプの『新しく開かれる大地』という詩の中の『鼓動する乳房を根付かせて』という表現が『女性嫌悪』に当たるとし、教科書を閉じてしまう女子生徒もいたという。男子生徒と女子生徒の間の認識がどれだけ大きく懸け離れているかを物語っている」と驚きを隠せない様子だった。
本紙が、韓国教員団体総連合会(韓国教総)と共に、小・中・高校の教師や大学教授など合わせて1755人を対象に行ったアンケート調査の結果、回答者の7人に1人(15.1%)が「ここ3年で生徒たちから性差別的な言葉を言われたことがある」と答えた。ある30代の小学校教師は「男子生徒たちから『先生はなぜ化粧をしないのか』『髪が短い理由は何なのか』と問い詰められて、戸惑った」という。また、ある中学校の教師も「生徒が『あの先生はフェミニスト』と決め付け、他の生徒たちに言いふらしているのを見た」と回答した。
生徒が教師に対して直接セクハラするケースも少なくない。京畿道地域で小学生を教えるキム・ウンヘさん(40)は「小学校高学年の男子生徒が突然私の目の前で性器を見せ、『これで僕のことを一生忘れられないだろう』と言った。女性教師に対する攻撃性をストレートに表したものだ」と回想する。
SNS(交流サイト)が普遍化したことで、教師たちはたびたび「外部からの攻撃」に苦しめられることになる。某出版会社の社会文化の教科書を共同執筆した高校教師のBさんは、チャンネル登録者数で数十万人を誇る男性ユーチューバーに取り上げられて炎上した。ユーチューバーが教科書に書かれた「性不平等」に関する記述を問題視し「フェミニストたちが作ったごみのような教科書」と非難すると、あっという間に誹謗(ひぼう)中傷のコメントが5000件も書き込まれた。Bさんは「教科書は教育部の指針にのっとって書かれているため、内容はどの出版会社も似ているにもかかわらず、文章一つ一つにけちをつけてばかにしてきた」とし「教科書には執筆陣の名前と所属の学校までが書かれており、恐ろしさを感じた」という体験談に触れた。
〈特別取材チーム〉金潤徳(キム・ユンドク)週末ニュース部長、キム・ヨンジュ社会政策部次長、卞熙媛(ピョン・ヒウォン)産業部次長、キム・ギョンピル政治部記者、ユ・ジョンホン社会部記者、ユ・ジェイン社会部記者、ユン・サンジン社会部記者
記事によると、韓国の中学校や高校で「男女の対立が深まりを見せる中、生徒は教師たちを『フェミニスト』『反フェミニスト』といった物差しで観察し始めた」という状態になっているようで、「1年生の男子生徒たちに自由討論のテーマを決めようと言ったところ、こぞって『女性家族部(日本の省庁に当たる)の廃止』を叫んだ。女性教師の前で女性の悪口を言うのもはばからない」という状態になっている中学校まであるそうです。
要するに、中高生男子の間で女性嫌悪が広がっているという事なのですが、問題は「それだけ」ではありません。
次の記事を読むと
韓国の男性嫌悪サイト、高麗大学のトイレを盗撮し画像流布
朝鮮日報 2018/05/18
https://web.archive.org/web/20180518084017/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/05/18/2018051801277.html
「盗撮には盗撮を」
歪曲された性認識、男女嫌悪サイトの応酬が犯罪に拡大
今月15日、インターネットの男性嫌悪掲示板サイト「Womad(ウォーマッド)」に「高麗大学男子盗撮」というスレッドが立った。ある男性が公衆トイレで便器に座って用を足している画像も掲載されていた。「高麗大学の男子トイレで盗撮した○○(男性器)画像6枚と動画9本も掲載できる」という書き込みもあった。この書き込みには「高麗大学の女子トイレを撮って見つかった人、学校によく通っているね」といったコメントが次々と付けられた。
女性の体を盗撮してサイトにアップする男たちに対する報復として、「男性盗撮画像・動画」をアップしているというのだ。女性だけがメンバーになれるこのサイトには、このところ成均館大学・漢陽大学・慶煕大学などの「男子トイレ盗撮画像・動画」が一日に20件前後アップされている。今月10日に弘益大学で男性ヌードモデルの盗撮をアップした女の容疑者が検挙されて以降、こうしたことが行われているのだ。「ウォーマッド」にはこの時、「容疑者が女なので警察がすぐにつかまえた」と書き込まれた。
「男女嫌悪現象」が行き過ぎの様相を呈している。これまでも一部の男性は女性のことを「キムチ女(男性に経済的に依存する女)」「三日一(三日に一度殴らなければならない女)」「鋭敏虫(神経過敏な女)」などとののしっていた。一部の女性は男性のことを「韓男虫(韓国の男は虫)」「廃ジョシ(年を取った男)」「マンマ虫(マザコン)」などとあざ笑っていた。男性はネット掲示板「日刊ベスト貯蔵所(略称:イルベ)」などに女性をののしる書き込みをし、女性は「男性嫌悪サイト」として「ウォーマッド」「Megalia(メガリア)」などを作った。
https://web.archive.org/web/20180519222219/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/05/18/2018051801277_2.html
インターネットで繰り広げられる「言葉の応酬」が「言葉の戦争」となり、今や盗撮にまで拡大している。女性が男性を「性暴力の潜在的加害者」だとして男性を盗撮してネット上にアップしているのだ。地下鉄の向かい側に座った男性や食事をする男性を盗撮した画像、道で男性を盗撮した動画などをアップしている。
かつての男女の確執は、女性が不当な性差別を訴える過程で明らかになっていた。だが、4-5年前からは一部の男性が女性をののしる表現を作り出し、書き込み始めた。異性に対する劣等感や被害者意識、女性を対象とした犯罪などが重なり、男女間の嫌悪現象はさらに顕著になっている。「アン・イファン平等研究所」のアン・イファン代表は「現代人の怒りをコントロールする力の欠如が男女間の嫌悪にも現れ、表現がますます悪くなっている。性差別という重要な議論のテーマは消え、嫌悪ばかりが残ってしまった形になっている」と語った。
警察は、今回のトイレ盗撮事件について捜査に着手した。警察関係者は「被害者が現れない限り、性犯罪として処罰するのは困難な状況だが、情報通信網法違反で処罰する余地はある」と話している。
キム・スギョン記者
関連記事
「平均的韓国男性」イラストの波紋
朝鮮日報 2018/07/29
https://web.archive.org/web/20180731022410/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/07/27/2018072701977.html
女性の側も、男性嫌悪掲示板サイトなるものまで登場し、そこで過激化した人々の言動がエスカレートしていき、とうとう「盗撮被害への報復」として、大学の男子トイレに隠しカメラを設置し、盗撮とは何の関係もない男子生徒を盗撮、それをネット上にアップするという事態になっているのです。
更には次の記事にあるように
手綱のない嫌悪社会、大韓民国
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2019.02.18 08:18
https://japanese.joins.com/JArticle/250316
昨年11月13日、ソウル舎堂洞(サダンドン)の梨水(イス)駅近くのある飲み屋。男3人と女2人の間で「チッチッポッポ(
性的少数者の侮蔑する表現)」 「メガルX(
フェミニズムサイト『メ
ガリア』ユーザーの嘲弄する言葉)」などの嫌悪発言が行き来した。言い争いは取っ組み合いにつながった。警察は5人を暴力・侮辱などの容疑で検察に送検した。「梨水駅事件」は嫌悪が、そして嫌悪に対する嫌悪が暴行という物理的衝突に広がった代表的な事例だ。
嫌悪が大韓民国を蝕んでいる。高齢化や多文化家庭の増加、性的少数者の権益拡大、女性の社会参加の増加が鮮明になった21世紀に「一緒に」ではなく反目と対立・排斥の嫌悪が社会の隅々に隠れている。嫌悪が嫌悪を生み、「極嫌(極度に嫌悪)」まで横行している。
国家人権委員会は今月12日、「韓国社会が嫌悪表現を自助浄化できる能力を喪失した」とし「嫌悪・差別対応特別推進委員会」を設置すると明らかにした。放送通信審議委員会によると、ポータルサイトに是正を要求した差別・侮辱表現は2014年705件から昨年2352件に急増した。
このような状況であるにもかかわらず、どのようなものが嫌悪表現なのかに対するはっきりした法律規定さえないのが現実だ。国立国語院標準国語大辞典では、嫌悪を「何かを嫌って憎むこと」と解説している。だが、現実ではその意味ははるかに複雑曖昧だ。人権委のキム・ジョンハク嫌悪差別対応企画団チーム長は「嫌悪問題が日増しに深刻化しているが、明確な基準さえなく混乱が深まっている」と指摘した。
法の規制装置を用意するべき政界でも特別な成果はない。差別禁止法は2006年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府当時、人権委の勧告を受けて法務部の主導で推進された。だが、キリスト教の教団が「性的指向」差別禁止項目を問題にして反対し、結局第17代国会任期満了によって廃棄された。第18代国会では魯会燦(ノ・フェチャン、2008年)、権永吉(クォン・ヨンギル、2011年)、金在ヨン(キム・ジェヨン、2012年)ら進歩政党議員が差別禁止法案を発議したが、これも廃棄された。
2016~2018年には李鍾杰(イ・ジョンゴル)・金富謙(キム・ブギョム)・鄭成湖(チョン・ソンホ)ら共に民主党議員が出した嫌悪関連法案も次々と自主撤回に追い込まれた。国会関係者は「議員が法案を発議すると、一部の層から激しい抗議が押し寄せ、説得そのものができなかったという」とし「人気内の再発議はないようだ」と話した。
このように、韓国内では嫌悪表現やこれに伴う暴力などを具体的に規定して制裁する基本法さえないのが実情だ。単に障害者差別禁止法・放送法・文化基本法などが個別的に特定行為を規制しているだけだ。生涯文化研究所のキム・ヨンオク常任代表は「今までは嫌悪表現がほぼオンラインにとどまっていたが、オフラインで具体化する場合、問題がはるかに深刻化する」としながら「嫌悪が嫌悪を生む構造を食い止めるためには嫌悪規制法の制定が切実だ」と述べた。
国際社会でも人種・宗教的嫌悪や性差別などが深刻な社会イシューに浮上している。国連はすでに1966年「市民的・政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」を通じて表現の自由を保障すると同時にこれを制限できる条項を明示した。第19条は干渉されないで意見を持つ権利を保障していて、第20条は民族的・人種的・宗教的嫌悪を禁止すると規定している。
これに関連し、最も先進的な制度を運用している国の一つにドイツが挙げられる。ドイツは嫌悪関連扇動行為を刑法で処罰している。当初、反ユダヤ主義者などに対する対応次元で制定されたが、現在は広範囲に適用されている。憎悪心を扇動したり暴力的行動を助長したりする場合、5年以下の懲役に処することができる。昨年1月からはインターネットでの嫌悪表現を規制するために「SNSでの法執行改善法」が施行された。(中央SUNDAY第623号)
飲み屋で男女グループが双方を罵り合い暴力事件にまで発展、警察が出動する騒動になったという事例が紹介されており、韓国内で男女対立が収拾のつかない程に深刻化、記事では「韓国社会が嫌悪表現を自助浄化できる能力を喪失した」と書かれています。
要するに、元々男尊女卑社会であった韓国で「女性の権利運動」が行われた結果、「鶏が先か卵が先か」ということではありますが、一部の女性が言動をエスカレートさせ、それを受けて男性側も一部が過激化していき、それがいつの間にか10~30代の年齢層で社会全体にまで広がる深刻な男女対立にまで発展したというわけです。
3:0か100かの社会
こうした背景には、韓国独特の「正しさ」の概念が関わっています。
※独特の正しさの概念
彼らの正しさの概念は独特であり、根拠を必要としない。
また「この世には最初から一つの正しさが存在する」と考えられており、自分はその正しさを常に選択していると考える傾向にある。
そして正しさ同士がぶつかった場合には、(曲解でも捏造でもその件と全く関係なくともなんでもいいので)相手の劣等性を指摘する事でそれを自己の正しさの担保とする。
また相手の劣等性を指摘した時点で自身が指摘された問題は相手の問題にすり替わる。
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - ニコニコ動画
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韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
以前から説明しているように、韓国では儒教朱子学の理気二元論の影響で、「この世には最初から存在する絶対的な正しさがある」という考え方が存在しており、皆が皆「自分はこの正しさを選択している」と考える傾向にあります。
そして問題は、この「正しさ」の実態とは「その時の感情的利益」の事であり、韓国ではこれを「普遍的正しさ」と考える人が多いという事です。
ここで問題となるのが、「普遍的正しさ」というものは証明のしようがないという事です。
どういうことかとうと、絶対的に正しいという事は一切の欠点が存在しないということになるので、「なぜ正しいのか」を考える必要がなく、正しさの証明自体に意味が無いからです。
表現を変えると、「絶対的正しさ」とは「正しいから正しい」という一種の循環論法なのです。
そして誰もが「自分は正しい」と考えていれば当然対立が起きるわけですが、上記のような背景があるので「どう正しいのか」という証明を行う事で決着をつけることができません。
そのため韓国ではその代わりとして「序列が高ければ正しい」という価値観が出来上がっています。
しかし、どんな状況でも「どちらが上か下か」が最初から決まっているわけではないので、序列を決定するための作業として「相手の劣等性指摘合戦」=「ののしり合い合戦」になります。
そして負けた方は「完全降伏」して言いなりになるしかなくなるため、正しい側になるため何が何でも相手をおとしめマウントをとろうとするという状況になり、それが今回紹介したような状況を生み出しているわけです。
つまり勝者総取り、0か100かしかないマウント合戦の生存競争という事になります。
そしてこの韓国的価値観は対日関係にも影響を与えています。
次の事例にあるように
朴振韓国外相「尹大統領の韓日関係改善の意志、岸田首相に伝達」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.07.19 18:03
https://japanese.joins.com/JArticle/293356
韓国外交部の朴振(パク・チン)長官が19日に日本の
岸田文雄首相と会い、韓日関係改善に向け尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の意志と両国首脳間の
シャトル外交を復元しようというメッセージを伝達した。
朴振長官は訪日2日目となる19日午後2時15分から約20分にわたり東京の首相官邸に岸田首相を表敬訪問した。前日の林芳正外相との会談が強制徴用工問題などの懸案を議論する席だったが、この日の首相表敬訪問は尹大統領のメッセージを伝える性格が強かった。
朴長官はこの日、岸田首相との面談直後に記者らと会い、「岸田首相に尹大統領の意向を伝え、両首脳が都合の良い時期にまた会って新たな韓日関係を作っていくための良い対話をされたら良いと申し上げた」と話した。
尹大統領は朴長官を通じて伝えたメッセージで、安倍晋三元首相の死去に弔意を表すとともに、10日の参議院選挙で自民党が勝利したことを祝った。続けて「スペインでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を契機に岸田首相と何回も遭遇しながら、岸田首相を信頼できるパートナーとして、韓日両国の友好協力関係発展に向けともに努力していくことができると確信した。今回の外交部長官訪日を契機に両国関係改善と復元の流れがより加速化すると期待する」との考えを明らかにした。
岸田首相は真摯な姿勢で尹大統領のメッセージを傾聴し、韓国と日本が今後さまざまな共通価値を基盤に良好な関係を構築して未来に向け発展していこうという意向を明らかにしたと朴長官は伝えた。
◇「強制徴用、日本の誠意ある対応期待」
今回の面談では韓日首脳会談開催とともに両国首脳間のシャトル外交復元を希望する尹大統領の立場も岸田首相に伝えられた。韓日首脳会談は2019年12月に当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と安倍首相が韓日中首脳会議を契機に会って以来開かれていない。岸田首相はこれに対し、スペインで尹大統領と良い対話をしたとし、今後こうした対話が続くよう望むと答えたという。
朴長官は韓日間の核心事案である強制徴用問題に対し「日本企業の資産現金化がなされる前に望ましい解決策を模索するため努力するという立場を岸田首相に伝え、日本側が誠意ある反応をすることを期待する」と話した。強制徴用問題を解決するためのプロセスは韓国が主導するが、日本もやはり解決策をまとめるのに呼応してほしいという趣旨だ。
韓国側は未だに徴用工問題で「日本の誠意ある対応に期待」という態度を取っています。
実態としては、1950年代から1960年代にかけての日韓国交正常化交渉において、日本側が徴用者や徴兵者への「個別補償」を提案すると、韓国側が一括補償を要求、1965年の日韓請求権協定ではこの韓国側の要求を呑む形で一括補償が支払われ、韓国側も当時「個人補償分を一括で受け取った」という認識があったにも関わらず、個人に殆ど支払わなかったことが問題の発端です。
なので、韓国側が協定で解決した問題を蒸し返し「国際法違反」の状態にあるわけですから、本来問題を解決するのは韓国側のはずです。
しかし韓国側は「日本の誠意ある態度」を要求し、事実上の譲歩を要求しています。
なぜこんなことになるかというと、正しいと決まった側が総取りする「0か100かの社会」だからです。
もし韓国政府が「自分達の非」を認めてしまうと、韓国的価値観では「自分が全否定」されて「何をされても文句の言えない序列の低い側」になってしまいます。
だから何が何でも「日本に落ち度がある」という事にしないと自己否定になってしまうのです。
韓国社会ではだからこそ誰もが「自分が正しい」と主張して対立が頻繁に起きるわけですが、韓国はこの韓国的価値観で対日外交を行っているので、「折れることができない」わけです。
しかも次の記事にあるように
日韓外相会談、韓国メディアは「日本の要求のんだだけ」と批判=ネットも「屈辱」
Record Korea 2022年7月19日
https://www.recordchina.co.jp/b897952-s39-c100-d0191.html
2022年7月19日、韓国・ノーカットニュースは、18日に行われた日韓外相会談の内容について「韓国が日本の要求をのんだだけ」と指摘した。記事によると、林芳正外相は18日、来日した韓国の朴振(パク・ジン)外相と会談を行い、元徴用工問題で日本企業の韓国内資産を現金化してはならないとの認識を共有した。朴外相は会談前から「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の日韓関係改善に対する強い意思を伝える」とし、成果を上げたい考えを示していた。韓国の外相が日本との2者会談のため東京を訪れたのは17年12月以降4年7カ月ぶりという。
韓国大法院(最高裁)は元徴用工への賠償を命じる判決を下し、その責任を履行しない日本企業の韓国内資産の売却を決定した。これに日本企業は反発しており、大法院は8月末~9月ごろに最終決定を下すとみられている。
記事は「つまり朴外相は大法院が最終判断を下す前に政治的に解決策をつくることに事実上合意したことになる」と指摘し、「迅速な日韓関係改善だけに焦点を当てているのではないか」「『韓国が先に日韓関係正常化に向けた解決策を提示するべきだ』という日本の立場を、尹政権が受け入れた形になった」などと批判している。
また「朴外相は徴用工被害者らの望みである心からの謝罪を日本から引き出せなかった。さらに、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化する代わりに日本の対韓輸出規制を撤回するよう求めたが、日本から回答は得られなかった」とし、「結局は日本の要求をのんだだけだった」と指摘している。
この記事を見た韓国のネットユーザーからは「何かをあげたら何かをもらうのが外交なのに、ただあげただけで帰ってきた。何をしに日本まで行ったのか」「韓国は被害者なのに、尹大統領就任後からずっと日本にしがみつく屈辱外交をしている。前政権と違いすぎる。プライドのない外交は外交とは言えない」「ちゃんとした歴史意識を持たない人たちが政治をするとこうなる」「本当に無能な親日政権だ」「弾劾しよう」など厳しい声が多数寄せられている。(翻訳・編集/堂本)
日韓外相会談及びワーキングディナー
7月18日午後4時頃から約2時間半、 #林外務大臣 は、訪日中の朴振(パク・チン) #韓国 外交部長官との間で会談及びワーキングディナーを行いました。
https://t.co/yF0gTuA27r pic.twitter.com/sseKwKT27U
— 外務省 (@MofaJapan_jp) July 18, 2022
少しでも日本側の要求を受け入れる態度を取ると「何かをあげたら何かをもらうのが外交なのに、ただあげただけで帰ってきた。何をしに日本まで行ったのか」「韓国は被害者なのに、尹大統領就任後からずっと日本にしがみつく屈辱外交をしている。前政権と違いすぎる。プライドのない外交は外交とは言えない」という反応を見せ「尹政権が日本に全面降伏した」と韓国世論に認識されバッシングを受けることになります。
韓国社会が常に「0か100か」なので、韓国人達は自分達の要求が100%通らなければ日本の言いなりになったことになると考えてしまうわけです。
だからといって、日本側が韓国の事情を汲んで譲歩する必然性は一切なく、韓国側が国際法に沿った態度を取ればいいだけなのですが。
※2022年7月22日追記
ただし、こうした傾向は基本的に「党派性の先鋭化」からおきるため、事象そのものが韓国固有というわけではありません。
韓国の場合には、理気二元論の考え方が価値観の根底に存在しているので、誰もが「自分は(最初から存在する)正しさを選択している」と考え党派性の先鋭化が極めて発生しやすく、それが原因で対立が起きやすいという特徴があります。
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