さて、本日は最近輸出優遇措置問題ばかりなので、少し違う内容について書いていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由
注意
・このブロマガは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブロマガのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらど
う思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
衛正斥邪とは、原理主義的に朱子学のみを重視、華夷秩序における攘夷的な排外思想と朱子学における理気二元論を絶対的なものとし、異なる考えの一切を認めず排除する、李朝末期に先鋭化した思想。
この衛正斥邪の思想は現在の韓国にも深く浸透しており、これが民族主義の先鋭化や日本との様々な問題にも影響を与えており、「現実よりもかくあるべき姿」を優先する彼らの行動原理の根幹となっている。
そして衛正斥邪の思想を最も体現したのが現在の文在寅政権であり、この政権の行う政策や言動を観察すると、李朝末期の衛正斥邪思想との類似点が次々とみつかる。
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1:衛正斥邪思想
まずはこちらの記事から
【コラム】文在寅政権にみる「衛正斥邪」思想
朝鮮日報 2018/01/28
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今至る所で起きている国政の混乱を一言で言えば「逆走」だ。国家運営に正解はない。だが、試行錯誤の末、世界が同意するようになった最低限のルールはある。文在寅(ムン・ジェイン)政権はその道を逆走している。市場を敵に回し、企業を締め上げ、政府組織を拡大しようとしている。カネを稼ぐことよりも消費、パイを広げることよりも分配、未来よりも過去を重視する。「これが国なのか」という実存的疑問が飛び出すのもそのためだ。
リベラル・左派は本来そういうものだと言う人もいる。しかし、世の中の左派が全て反市場、反企業というわけではない。ドイツの労働市場を改革したのは、シュレーダー左派政権だった。英労働党は「第3の道」を掲げ、実用路線を歩んだ。国益追求に関する限り、左右の区別はあいまいになったのが現代政治だ。欧州式市民主義の政党までもが市場と競争の価値を認めて久しい。そうした意味で文在寅政権は独特だ。実用主義が大勢となっている先進国では珍しい理念型の政権だからだ。
韓国の左派のルーツを19世紀の「衛正斥邪派」に求める試みがある。峨山政策研究院の咸在鳳(ハム・ジェボン)院長が代表格だ。咸院長は著書の中で興味深い理論を展開した。左派の根底に性理学の理想形を追い求める衛正斥邪思想があるとの指摘だ。それが学問的に検証された理論かどうかはここでは論じない。しかし、双方には驚くべき類似性がある。150年の間を置いて、まるで並行宇宙が登場したかのようだ。
言うなれば理念傾向がそうだ。19世紀の衛正斥邪派は精神優位の観念論だった。精神力さえあれば、外国勢力の武力にも打ち勝てると言った。21世紀の左派は理想主義的だ。現実の論理よりも理念的価値に対する執着が強い。衛正斥邪派は富国強兵を拒否した。貧しくても王道政治が実現できれば十分だと言った。左派は分配を重視する。あまり成長できなくても、皆が豊かに暮らすことが優先だという。衛正斥邪派は農本社会(農業中心の社会)を、左派は労働中心の世の中を夢見る。いずれも素朴で人間的だが、国力を育むことには関心が薄い。
衛正斥邪思想は鎖国につながった。左派の視角も外より内側に向いている。グローバルコンセンサスよりも国内の論理を優先する。衛正斥邪派は力による国際政治を否定した。左派は米国主導の秩序に拒否感を示す。同盟よりも民族共同体が重要だという。衛正斥邪は反欧州・親中論だった。左派もまた反米・親中に近い。
衛正斥邪派は士農工商の世界観を持つ。カネを稼ぐ商売人を見下す。21世紀の左派は企業を評価しようとしない。企業の国富創出機能を過小評価する傾向がある。衛正斥邪派は学識に優れて礼節がある「ソンビ」と呼ばれた階層による下への啓蒙を重視する。左派は政府の主導的役割を好む。「大きな政府」が民間をリードすべきだと考える。
左派が衛正斥邪思想をベンチマーキングしたわけではないだろう。双方を結ぶ歴史的な関わりも見えてこない。それでも表に出た特性は驚くほど似ている。衛正斥邪派は純粋な憂国の念に満ちていた。今の左派が国を思う心も本音だろう。しかし、冷酷な現実で支配階層の純粋さは報われない。かえって国益を損ねる場合が多い。
朝鮮が衛正斥邪だったとすれば、日本には尊皇攘夷派がいた。国情は異なるが、目標は同じだった。西洋の野蛮人を追い出そうというものだった。しかし、歩んだ道は正反対だ。日本は国を門戸を急激に開いた。外国勢力を追い出すために外国から学ぼうとした。ものすごい反転、それこそ逆転の発想だった。
その後、尊王攘夷派は変身を繰り返し、日本の主流勢力となった。戦後70年を支配した自民党政権のルーツが尊皇攘夷派だ。彼らの特技は常識を覆す柔軟性だ。あれほど「鬼畜米英」を叫んでいながら、戦争に負けたら、ためらいもなく「親米」に転じた。不倶戴天の敵だった米国的秩序に自ら組み入れられた。現代日本をつくったもう一つの反転だった。
今の安倍政権は明治維新(1868年)の継承者を自称する。「トランプの犬」という皮肉もお構いなしだ。世界の大勢に日本は追従し、韓国は抵抗しようとする。日本は新富国強兵を急ぎ、韓国は21世紀型の衛正斥邪派が権力を握った。新たな「衛正斥邪VS尊皇攘夷」の構図が形成されている。
100年余り前、韓国と日本の国家運営を分けたのは、支配層の真逆の選択だった。再び不吉な予感がするのをどうすることもできない。
朴正薫(パク・ジョンフン)論説委員
記事では、朱子学や性理学において理想形とされた衛正斥邪思想が文在寅政権の行動原理だとしており、その類似性を指摘しているわけですが、興味深いのは最後に書かれている「新たな「衛正斥邪VS尊皇攘夷」の構図が形成されている」という部分です。
過去記事「韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない?」で書いたように、彼らは実態よりも理気二元論に基づく「正しさ」を重視するわけですが、実はこの記事の最後の部分の論調にこの特徴が見て取れます。
どういう事かといえば、そもそも現在の日本に一般的な概念としての攘夷思想などほぼ存在していません。
何より安倍政権はこの記事の書かれた2018年1月時点を見ても、観光客誘致と外国からの労働力誘致に力を入れており、外国勢力を「夷狄」として排除し民族的な純潔を守ろうとする考え方とは正反対です。
ではなぜこんな「分析」が行われているかといえば、以前の記事で書いた「理気二元論」がこの記事を書いた記者にも影響を与えているからです。
どういう事かといえば、「自分は常に最初から存在する正しさを選択している」、つまり物理現象である「気」の上位概念の「理」を知っているので正しいのは自分であり、安倍政権も文政権も間違っている、なので安倍政権にも「間違っている理由」があるはずなので、「衛正斥邪VS尊皇攘夷」が正しい構図であるとなるわけです。
つまり、帰納的に現実に存在する前提から結論を導き出すのではなく、「自分は正しい」という前提から演繹的に結論を導き出しているというわけです。
結果この記事は、文政権の衛正斥邪思想を批判しながら、記者自身もこの思想の前提となっている理気二元論による思考で結論を出すという、非常に興味深い内容になっているわけです。
また視点を変えると、この朱子学や性理学に基づく考え方は彼らの行動原理に深く影響を与えており、日本人の考え方との間に大きな齟齬があることがわかります。
彼らは現実よりも「理念」のほうが重要なのです。
2019年7月18日追記
コメントでもご指摘があった通り、記事を誤読していたため修正し、新たに書き直しました。
記事では衛正斥邪という概念について書かれているわけですが、これが何かといえば李朝末期に儒教朱子学や性理学を原理主義的に絶対視し、現実よりも理気二元論における「かくあるべき姿」を、また対外的には排外主義や民族主義を重視し、異なる意見を「邪教」「邪説」として排除、それによって朝鮮の伝統的な社会制度と華夷秩序を守ろうという考え方です。
結果朝鮮は日本と違い停滞し亡国へと向かったとしているのですが、そのうえで現在の韓国の文在寅大統領達のことを、この衛正斥邪思想の体現者であるとしています。
これなのですが、文大統領や与党の「共に民主党」の人々は、公的には「リベラル」を自称しており、日本のメディアもそう報じることが多いですが、実態は以前も解説したように親北系の民族主義です。
また文政権と対立する野党の「自由韓国党」などは、便宜上「保守」と公称されていますが、実態は北朝鮮を否定する韓国単体の民族主義であり、国粋系民族主義とも呼べる集団です。
つまり韓国における右と左とは、北朝鮮の扱いが異なるために対立する民族主義者という構図なわけです。
右と左や保守と革新・リベラルが単なる「ガワ」でしかなく、本来の単語の意味としての保守や革新・リベラルではないのです。
(背景はかなり異なりますが、保守や革新・リベラルが便宜上のものでしかないという点においては日本も同じようなものですが。)
この前提を今回の件に当てはめると何もおかしな部分がなくなります。
文大統領や与党の「共に民主党」は、リベラルを自称するが実態は親北系の民族主義者でしかなく、「寛容さ」を前提とするリベラルと現在文政権が行っている排外的な「積弊清算」などは矛盾します。
しかし、彼らが先鋭的な民族主義者であると定義すれば、衛正斥邪思想そのままのような態度をとっていることに何の違和感もないわけです。
もちろん、彼らが李朝末期の両班(朝鮮の貴族階級の呼称)そのままに原理主義的に朱子学や性理学を実行しようとするスローガンを掲げたりしているわけではないですが、その考え方は過去記事「韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない?」で書いたように、彼らの社会に今も息づいているわけです。
2:韓国社会の衛正斥邪
またこの衛正斥邪思想は現在の韓国社会の中でも深く根を張っています。
例えば韓国では通年行事として行われている「日帝残滓」の排除運動などがその典型例です。
【萬物相】「大統領」はどこの国の言葉か 朝鮮日報 2019/07/14 (1/2ページ) (2/2ページ)
記事では、「国語純化運動」と称して韓国語の中にある日本語要素を排除しようとする風潮を批判する記事なのですが、この「日本語要素の排除」などは典型的な攘夷思想です。
性質としては、戦中朝日や毎日が野球の試合から英語表現を「敵性語」として排除していたのと本質的には同じです。
日本という夷狄が行ったことは全て悪なのだから、攘夷思想によってそれを排除することこそ正義と信じられているのです。
そして現在の韓国においては、この「敵性語排除」に批判的な人々は、「土着倭寇」とか「親日派」と呼ばれ、レッテル貼りを受けるわけです。
またこうした反応をする人々は一般的に年配層に多そうですが、実態は年配層ほどこの排外的な「国語純化運動」にかなり批判的です。
(かつては朴正煕政権の下、保守系がこの運動を行っていましたが、今は批判的なので)
むしろ年齢が若くなるほど民族主義的な思想に肯定的であり、積弊清算活動などを批判する記事を書く朝鮮日報は、年配層ほど支持され若い層ほど「親日派新聞」として批判する傾向にあります。
またこのような文政権の態度を批判する、年配の便宜上の保守系(国粋系民族主義)の人々の間でも実際には実態よりも「かくあるべき姿」を重視する傾向は変わらず、最近は以下のように
【コラム】日本の経済戦争の挑発、日本よりも考えてこそ勝つ(1) (2) 中央日報 2019年07月15日
一連の優遇措置解除問題に関連した記事のなかで「1995年に金泳三(キム・ヨンサム)大統領が「悪い癖を直す」と話したことで、1997年に韓国を通貨危機に追い込んだ国も日本だ。」と書いています。
なぜか韓国の通貨危機が「韓国の大統領が日本を侮辱したことで報復された結果」ということになってしまっているのです。
実態はタイを中心に始まった通貨下落を発端として起きた現象であり、そこには欧米のヘッジファンドが大きくかかわっており、その影響を大きく受けたのがタイ・インドネシア・韓国です。しかし衛正斥邪思想では自らの考えを絶対的な善としており、以前も書いたようにこの「正しさ」の実態は「その時の感情」でしかありません。
この事例の場合ならば、現状韓国人たちにとって日本は「絶対不変の正しさに反する不道徳な存在」と定義付けられているため、文字通り「韓国にとって悪いことが起きるのはすべて日本のせいと思考し排除につながります。
常に正しさを選択している自分達が不利益を被るのは、どんな時であろうと不道徳な行いをする他者が原因である、彼らの思考は常にここに帰結するわけです。
3:衛正斥邪思想と文在寅政権
そしてこの衛正斥邪が韓国社会において最も原理主義的に発現しているのが文在寅政権です。
これまで書いてきたように、衛正斥邪思想においては、自らは「道徳的行い」の体現者であり、夷狄は常に道徳的に劣った存在です。
だから「排除」が行われます。
【コラム】韓国と日本、その永遠の平行線(1) (2) 中央日報 2019年01月08日
記事では日本の大学教授の言葉を借りて、韓国社会を「人々の言葉と行動をひたすら道徳(最近の言葉では正義)というものさしで裁き、徹底して優劣をつける道徳還元主義が彼の言う韓国人の道徳指向性だ」と表現しています。
その根底にある道徳とは、以前から書いているように実態としては「その時の感情」でしかないわけですが、彼らの中ではそれが「この世に最初から存在する普遍的な正しさ」であり、だからこそ彼らは常に「自分は正義を実行している」と考えます。
そして記事ではそのうえで「道徳より現実を重視する日本に道徳のものさしだけ突きつけているから互いに接点を探せない。」と書いています。
つまり「道徳的に我々は正しく日本人は正しい道徳観を持っていない」、(理気二元論では人の思考も含めた実態としての物理現象を「気」、そしてその上位概念として秩序をもたらす概念を「理」としている)我々は上位概念の理を知るが、日本人は「気」しか知らず道徳観がないため対立していると考えるわけです。
参考記事
「記憶の改変」が起きているわけではない?
彼らも彼らなりに「食い違いの原因」には気が付いているのです。
そのうえで、この衛正斥邪思想に基づく理気二元論そのものの道徳観の思考をするのが文在寅政権です。
例えば以下の記事では
【コラム】弁護士の文在寅と大統領の文在寅 中央日報 2019年07月16日
文大統領が衛正斥邪思想の道徳観に基づき「正しさ」を実行した結果が一連の徴用工(募集工)問題であることがわかります。
記事では文在寅氏は大統領としての立場より弁護士としての立場を重視し、結果現実よりも「理念上の道徳観」を重視しているとしています。
また輸出優遇解除問題では、文大統領は李舜臣の「12隻の船で国を守った」という話や国債報償運動(※)などを持ちだし、民族主義を鼓舞し日本に対する排外主義を煽っていることが書かれています。
※国債報償運動
大韓帝国末期において、日本からの膨大な負債を募金活動によって返済しようとした運動。
実態は大韓帝国が考えなしに欧米列強に対し、鉄道敷設権や港湾使用権、徴税権、森林伐採権など、様々な国の資産を切り売りし、それを日本が買い戻したときに負った借金が含まれる。
結局のところ、最近の一連の騒動は視点を変えると、儒教における理気二元論的な思考を原理主義的に実行する文政権が、問題を「儒教的道徳観」そのままに解決しようとした結果、現実の国際法や慣習と衝突してしまったことで起きたわけです。
そして問題は、様々な要因からこのことが周知されておらず、問題の本来の原因を知る人々がこうした記事を書く人々や、一部の物好きな韓国ウォッチャーくらいしかいないため、原因が理念や思想の違いではなく一般的な利害関係の外交紛争に見えてしまっていることです。
しかも先ほどの記事にしても理気二元論的な思考から抜け出せず、「文在寅政権に対する不満を通商を武器に報復する安倍政権の野卑な行為は批判を受けるべきだ」と書いていることから、原因を「かくあるべき姿」に求めていることも問題の一因となっています。
問題の原因を認識しながら、朱子学や性理学的な思考から抜け出せないため、今回の輸出優遇解除の原因が、「定期協議に応じなかったこと」という、ごく単純な韓国側の落ち度にあるという結論に行き着けないのです。
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