日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

韓国の若い世代の考え方


さて、今回なのですが、今までこのブロマガを読まれてきた方には繰り返しとなってしまいますが、本題に入る前に今回の記事を読む上での前提を最初にいくつか書きます。


まず、今回の記事では便宜上右派左派との表記が多数出てきますが、実質的には韓国において明確な右派や左派というのは殆ど存在していません。


基本的にどちらも民族主義を土台としており、右派はどちらかといえば国粋主義的な民族主義であり、左派は親北でもあり北朝鮮も含めた民族全体の民族主義的な傾向が強く、双方は実質的に北朝鮮の扱いで対立しているという構図となります。


ですので、今回記事中では何度も右派左派という単語が出てきますが、それはあくまで便宜上そう呼称しているだけだという事に注意してください。


次に反日について。
これは過去に「日本人の考える反日と韓国人の考える反日は違う」や「「若い韓国人に反日が少ない」はある意味正しい」で書いたように、あくまで日本人の想定する反日であって、彼らはそれを反日と認識していない事、またイデオロギーを前提とした反日ではなく、韓国独特の価値観に根ざした反日であって、右傾化とか左傾化とかは『まるで関係が無い』です。


このように、今回の記事では右派左派、反日という単語がいくつも出てくるわけですが、世間一般で定義されている物とは少々定義が異なるということを知っておいてください。


また前置きが長くなってしまいましたが、やっと本題です。
最初に結論を書いてしまいますが、実は最近の韓国では既存の右派左派の対日、対米、対中、対北観では区分けする事のできない、新しい考え方が出てきており、その考え方が若い層(10~30代)を中心に大きく支持を獲得し始めてきています。
そしてそれは特に対日と対中で特徴的な傾向があります。


この事を知ってもらう上で、まずは既存の右派左派の考え方を。
韓国の右派系はいわゆる用日論を掲げており、現状「日本に謝罪ばかり求めていても前に進まない、まずは関係改善が先だ」との考え方であり、米国との関係も中国の顔色を伺いながらも親米路線を通しています。


また対中に関してなのですが、朝鮮戦争に中国が北朝鮮陣営として参戦したという背景もあり、現在親中寄りになりつつはありますが、それでも一定の距離を置き米国側にいたいと考えています。
以下の記事が解りやすいです。


朴大統領の中国・抗日式典出席問題、専門家はどう見るか
朝鮮日報 2015/08/18
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/18/2015081801072.html(リンク切れ)
http://web.archive.org/web/20150819130947/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/18/2015081801072.html(ウェブアーカイブ
-米・中専門家が提言
「日本と米国の立場を考慮し、閲兵式には出席すべきでない」
「出席しなければ訪中は無意味」

今月14日に安倍晋三首相が戦後70年談話を発表した後、外交関係者の関心は「来月3日に開かれる中国の戦勝節行事に、韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が出席するかどうか」に集まっている。本紙は17日、韓米関係や韓中関係の専門家7人に対し、朴大統領の中国戦勝節出席について意見を求めた。専門家らは、訪中そのものについてはおおむね「国益に役立つ」という立場だったが、閲兵式への出席など、各論では意見が分かれた。

 7人の専門家のうち6人は、取りあえず戦勝節の行事出席のための訪中は必要、という立場だった。韓国外国語大学のナムグン・ヨン教授だけが「行かないのが最善」という意見だった。しかし、閲兵式出席をめぐっては「懸念」の声がやや大きかった。

 韓国外交部(省に相当)次官も務めた高麗大学の金聖翰(キム・ソンハン)教授は「閲兵式出席は、日本によって悪用される余地がある」と語った。場合によっては、韓中が共同で反日戦線を組んでいると曲解されかねないのだ。ナムグン・ヨン教授も「米国が喜ぶはずがない。閲兵式への参加だけは絶対にいけない」と語った。これに対し、ソウル大学のシン・ソンホ教授は「(閲兵式にも)出席するのがいい」と語った。

 慶煕大学のチュ・ジェウ教授は、閲兵式の代わりに、今月12日に大規模な爆発事故が起きた天津を訪問する、という代案を提示した。チュ教授は「中国人民を慰労するという名分もあり、輸出用の自動車約4000台が全焼する被害を受けた現代・起亜自の状況を視察する機会にもなる」と語った。
(後略)



見ての通り、韓国の右派系の思惑としては、式典そのものには参加しても閲兵式には参加するべきではないと、それでアメリカとのバランスを取ろうとしていた事が解ります。
結果的に中国の思惑通り閲兵式にも参加となりましたが、右派系は一応距離を取りたいとの思惑があったのは確実です。


右派の傾向を並べると基本的にこうなります

対日:消極的反日
対米:消極的親米
対中:消極的親中
対北:積極的反北
(全てにおいて用日用米などの用○も加わります)


(※用日論:韓国において、最初に右派系から出てきた言葉であり、歴史問題で日本が韓国の「正しさ」を受け入れず関係が悪化している状態が続いたため、関係改善の口実として「親日ではない、日本を上手く利用するだけだ」という意味で登場した言葉。
現状は様々なところが「○○に迎合しているわけではなく、上手く利用しているだけだ」という意味で使っています。)


次に左派なのですが、左派は原則的に「日本が(韓国の望む)正しい歴史観をもって謝罪を続けるのが先だ」と考えており、政府や右派の態度は日本に迎合的だと批判しています。
また、日本やアメリカに対する考え方は以下を読むと解りやすいです。


[インタビュー]韓米日の三角安保に入る理由はない
ハンギョレ新聞  2015.08.17
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/21649.html
(一部抜粋)
- 南北対決が先鋭化する中で、韓米日三角安保協力が一層浮き彫りにされる雰囲気だ。

「韓米日三角安保協力強化は望ましくない。 韓国は日本に植民地侵略された経験がある。 米国を先頭とする三角安保協力は、日本に軍事大国化の道を開くものだ。 日本と協力しないということではない。 日本と協力するためには、中国まで含めた『北東アジア多者間安保協力』のフレームですべきだということだ。 それでこそ日本を制御できる。

 そして韓米日三角安保協力強化の名分として北朝鮮の軍事的脅威を挙げているが、それは話にもならない。 世界最高の軍事力を備えた米軍だけでは世界最貧国の北朝鮮に対抗できないから、日本まで引き入れなければならないとでもいうのか? 当然に中国を狙った協力と見ざるを得ない。 そんな三角安保協力に韓国が加わる理由はない。 事実、そんな理由からも南北関係が重要だ。 南北間の協力がうまくいけば、北朝鮮の軍事的脅威が減少する。 そうなれば三角安保協力の名分も弱まり参加の圧迫も減る。 その第一歩が南北関係だ。 したがって、南北関係は私たちの生存と繁栄の鍵と言える」


一見すると親中反米のようにも見えますが、実は韓国の左派系は中国とは一定の距離を取っています。
恐らく北朝鮮が中国と微妙な関係である事が関わっているのでしょうが、中国と積極的に事を構えるつもりはないが、積極的に関わっていくつもりもない、といった態度です。
そして、記事にもあるように非常に反日であり反米でもあります。


ちなみに、左派系メディアではそもそも今回の朴大統領の中国訪問に関する記事が殆どありません。
わずかに概要のみを記事にしている状態です、彼らにとって重要なのは北朝鮮なので、ある意味当たり前なのかもしれませんが。


左派の傾向を並べると基本的にこうなります

対日:積極的反日
対米:積極的反米
対中:消極的反中
対北:積極的親北
(全てにおいて用○も加わります)


これが現状の韓国の右派左派の考え方なのですが、現状若い世代を中心に支持され始めている考え方は、この2つの考え方に区分けする事ができません。
どんなものなのかというと、まずは以下の記事を


光復70年:「韓米関係と韓中関係、どちらを強化すべきか」
朝鮮日報 2015/08/14
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/13/2015081301905.html(リンク切れ)
http://megalodon.jp/2015-0816-1122-17/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/13/2015081301905.htmlウェブ魚拓
【特集】朝鮮日報ソウル大学アジア研究所光復70周年国民意識調査
「韓米同盟強化に賛成」20-30代と女性の賛成比率高まる
韓米同盟強化に賛成、10年前比べ10ポイント前後増加

今回の調査で「韓米同盟を強化すべきだ」という回答は、20-30代の若年層や女性を中心に大幅に増加した。韓国社会の多くの問題を解決するために「韓米の厚い友好関係を築き、軍事的にも韓米同盟が強化されるべきだ」という意見に賛成した回答の比率は42.9%を占めた。10年前の「光復(日本の植民地支配からの解放)60周年国民意識調査」では、この比率は35.4%だった。

 とりわけ、世代別に見ると、20-30代の若年層で「韓米同盟の強化」に賛成する比率が高まった。20代の賛成比率はこの10年間に29.2%から40.6%に増加し、30代も同じく29%から37.6%に増加した。40-60代の賛成比率も10年前に比べると1-4ポイントほど増加した。

 また、韓米同盟の強化に対する女性の賛成比率は32.5%から42.1%に増加した。男性の賛成比率は38.4%から43.7%に増加した。

 これは、韓国海哨戒艦「天安」爆沈事件や延坪島砲撃事件などで北朝鮮の挑発が現実化し、若年層や女性たちを中心に安全保障への関心が高まったためだと考えられる。

 韓米同盟の重要性は高まったが、米国に偏った外交をしていてはいけないという世論も根強かった。今回の調査で「韓中関係を強化し、米中両国との等距離外交をしていくべきだ」と回答した比率は57.1%で、韓米同盟の強化に賛成する回答(42.9%)よりも依然として高い結果となった。


韓国国民51.8%「朴大統領、中国戦勝式に参加すべき」=世論調査
2015年08月11日17時22分
[ⓒ 中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/324/204324.html
韓国国民のうち半数以上は来月3日に中国北京で開かれる抗日戦争勝利(戦勝節)70周年記念式に朴槿恵(パク・クネ)大統領が参加するのが望ましいと考えていることが分かった。

世論調査機関リアルメーターが今月11日に全国の成人500人を対象に朴大統領の中国戦勝節記念式への出席の是非に対する世論調査を実施した結果、「参加すべき」という回答が51.8%で、「参加しないほうがよい」という回答(20.6%)の2.5倍を越えることが明らかになった。「よく分からない」は27.6%だった。

これに先立ち、青瓦台(チョンワデ、大統領府)は前日、朴大統領の戦勝節記念式への出席に関連して「諸般の事情を考慮して慎重に検討している」と明らかにした。



以前も書きましたが、韓国の若い層では左派系の影響力が強く、親北反米かとおもいきや、実はそこまで反米ではなく、どちらかというと親米+用米に近く、また親中寄りでもあり左派系の考え方とは少し違う事が解ります。


後半の記事では年齢の区分けがありませんが、今までの傾向から見ても大きく訪中を支持しているのは若い層でしょう。


若い層の傾向を並べると基本的にこうなります

対日:積極的反日
対米:消極的親米
対中:積極的親中
対北:消極的親北
(全てにおいて用○も加わります)


見て解るように、既存の右派と左派の傾向を足して2で割ったような考え方です。
そして、右派左派ともに対中国に関しては慎重な傾向にあるのに対して、若い層はかなり積極的に親中である事が解ります。


また、この層の対日傾向は左派系と全く同じであるということも特徴的です。
つまり、「(韓国の)正しい歴史観を受けれ日本は謝罪を続けなければならない、関係改善はそれからだ」と考えているという事です。


そして、どうもその背景として、最近アメリカがあまり対日本で韓国側に立ってくれないことから、一見すると韓国の側に立ってくれているように見える中国に傾倒して行っているということのようなのです。


更に、現在韓国は以下のような状況になっています。


韓国の若者10人のうち7人「一度失敗したら立ち上がれない」
ハンギョレ新聞 2015.08.19
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/21661.html

韓国の子どもは世界一不幸、学校にも外見にも満足できず
Record China 8月19日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150819-00000082-rcdc-cn

韓国の自殺率 OECDでワースト=日本は3番目
朝鮮日報 2015/08/28
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/28/2015082803096.html
(一部抜粋)
【ソウル聯合ニュース経済協力開発機構OECD)の加盟国のなかで韓国は自殺による死亡率が最も高く、自らを健康だと考える割合は最も低いことが30日までに、分かった。

 OECDが発表した「ヘルスデータ2015」によると、2013年を基準としたOECD加盟国の自殺による死亡率は人口10万人当たり12.0人だった。韓国(2012年基準)は平均を大きく上回る29.1人で、OECD加盟国のうち、最も高かった。2番目はハンガリー(19.4人)で、3番目が日本(18.7人)だった。

 1985年からの自殺率推移をみると、OECD加盟国のほとんどは減少しているが、韓国は2000年から増えている。日本も自殺率が高いが、2010年以降は減少傾向にある。


青年'ニート族'15%越えて…OECD国家中3位
アジア経済(韓国語)  2015.08.04
http://www.asiae.co.kr/news/view.htm?idxno=2015080408445342517
(一部抜粋)
4日、OECDによれば韓国で青年層(15~29才)の中で仕事をする意志がなく、教育や訓練を受けることもない'ニート(NEET・Not in Education、Employment or Training)族'の割合は2013年基準で15.6%だった。これはOECD会員国の平均の8.2%に比べて7.4%ポイント高く、韓国よりニート族の割合が高い国はトルコ(24.9%)とメキシコ(18.5%)だけだった。

イタリア(14.4%)、ハンガリー(11.3%)、米国(10.8%)、イスラエル(10.0%)は韓国より低い4~7位であり、アイルランド(9.3%)、オーストラリア(9.0%)、ニュージーランド(9.0%)、英国(8.7%)、フランス(6.8%)、ドイツ(5.6%)等も10%未満を記録した。

ニート族割合が最も低い国家はルクセンブルグ(2.6%)であり、日本(4.6%)とスイス(4.5%)、スウェーデン(4.4%)、アイスランド(3.5%)も5%未満だった。



韓国の若い層はこのような状況にある事から、中国と経済的に更に交流を深めれば、経済が好転し自分達の状況も改善されるのではないか、そんな希望を持っているようなのです。
実態としては、韓国の市場に中国製品が増え始め、逆に市場を占拠されつつあるのですが、若い層は現状より悪くなる事は無いだろうと楽観的なようです。
(参照:中国製廉価スマホ、韓国市場の脅威に 朝鮮日報 2015/08/27


つまり元々左派傾向の強かった若い層が、対日傾向は左派系のまま、それ以外の部分が右派系の考え方にスライドしつつあり、更に右派系が朝鮮戦争のこともあり完全に親中になれないのに対し、そうした過去のわだかまりに実感のない若い層は抵抗なく親中になっていっているというわけです。


そして更に、この傾向は若い層だけではなく、音頭を取っている人物がいます。
その中で最も大きな影響力があるのが以下の人物です。


国連の潘基文事務総長、中国抗日行事への出席を疑問視する日本に反論=「全世界が記念している」―中国メディア
Record China 2015年8月29日
http://www.recordchina.co.jp/a117830.html
2015年8月29日、中国新聞網によると、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、自身が中国で行なわれる中国人民抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70周年の記念行事に出席することに対し、日本から疑問が提起されていることに反論した。

潘事務総長は、中国メディアの取材に「習近平(シー・ジンピン)国家主席と会えるのを楽しみにしている。中国の国連への多大な貢献に感謝している」と述べた。また、「持続的発展の目標を実現し、気候変動など世界的な挑戦の中で、中国が世界をリードすることを大いに期待している。これも私が行事に出席する理由だ」とした。

さらに、日本から行事への出席を疑問視する声が上がっていることについて、「世界中が第2次世界大戦という人類史上最大の悲劇から70年、そして国連創設から70年に当たる今年を記念している。歴史を振り返れば、私たちはどんな教訓が非常に重要であるかを見て取れる。同時に、歴史の教訓を基礎とし、より明るい未来に向かわなければならない。これこそが、私が習主席の招待に応じて訪中する理由だ」と反論したという。


元々彼は盧武鉉大統領時代に外相を務めていた人物であり、政治的には左派系であったのですが、現状はこのように左派系とは距離を取り親中に舵を切っています。
そして更に、現状潘基文氏は次期韓国大統領の最有力候補でもあります。


これが現在の韓国の姿です。
日本では、韓国で反日をしているのは年寄りだけとか、若い人は友好していけるとか宣伝されていますが、この傾向を見る限り将来的には更に関係が悪化して行くのは確実です。


彼らの基礎部分は左派であり、左派は原理主義的に「正しい歴史観」を固持しているうえに、若い層はそれに加え「対中関係がよくなれば、日本との関係改善は後回しでも良い」と考えるようになって来ているからです。


むしろ彼らは、対日では中国と組んで日本に対抗し、対北ではアメリカと組んで北朝鮮に対抗していく、そう考えているようです。
主観的視点のみで相手の事情は一切考えず、自らの都合のみを前提に考えた結果なのでしょう。


またある意味で、イデオロギーが社会の政治的中心ではなくなったからこその、新たな構図とも言えます。