さて、今回は過去何度も取り上げてきた韓国起源説関連となるわけですが、韓国が起源主張をするものの大部分は日本の文化や技術関連ですが、なかには日本以外の他の様々な国の文化や技術の起源を主張しているものもあります。
今回はそんな日本以外に対する韓国起源説を紹介して行く事となるわけですが、あまりにも起源を主張するジャンルが広く、また中国を中心に多数の国のものの起源を主張しているため、ここで全てを紹介するのは物理的に不可能ですし、何より一つの文章にまとめるのは無理です。
また、以前ソメイヨシノの韓国起源説を書いたときに言及しましたが、多数の韓国人が好き勝手に起源を主張するため、同じ起源主張のなかでも複数の亜種があったり、説によって本当に一部の人々が信じているだけだったり、逆に政府主導で多数の韓国人が信じて疑わないものまで、非常に多岐にわたります。
そこで今回は、韓国社会で一般的なある特定の歴史観と傾向に沿った韓国起源説と、その起源説の背景となっているものについて解説していきます。
(注意:今回紹介する『個別の』起源主張そのものに関しては、韓国でも一般的ではないものもあります)
まずはこちら
夏・殷国は私たちの歴史
経済風月(韓国語) 2012.09.04
http://www.econotalking.kr/xe/index.php?document_srl=65769
▲陳泰夏(ジン・デハ、仁済(インジェ)大学客員教授)
1.黄河文明の主役は東夷族
私たち韓民族の発祥地は松花江と遼河を中心に、満州野原に雄拠した狩猟騎馬民族として鴨緑江と豆満江を越え韓半島で南下する前に、すでに黄河流域に進出して世界4大文明発祥地の一つである黄河文明を形成するのに主導的な役割をした民族であることを明らかにしなければ、私たち韓民族の古代史を正しく明らかにはできない。
中国の史学界でも、これまで新しく出土した遺跡を通じて黄河地域の古代文物より遼河地域の古代文物がさらに発達していたと考証している。これで遼河側の私たちの先祖である東夷族の文明が黄河側に南下したことが分かる。黄河流域に住んだいわゆる本来の漢族は農耕民族として北側から南下する騎馬民族の東夷族に押され南に追われて今日の中国の南方と東南アジア一帯に居住し、今は55族の少数民族の一つの客家族というものだ。客家族は今でも自分たちが純粋漢族だと叫んでいる。
従って黄河文明の主役は漢族ではなく、東夷族であることは中国史学界ではすでに公認された事実だ。まだ私たちの史学界では黄河文明は漢族が作った文明と一般的に認識しているのは非常に残念なことだ。今でも私たちは過去の誤った我が韓民族の歴史を一つ一つ正しく探して整理し、確固たる民族史観と民族精気を確立しなければならない。
(中略)
3.漢字は東夷族が創造
中国の文字学者李敬斎は「…在武功方面、諸夏雖獲勝利、而在文化方面則同化於東夷矣.…夫東夷果何等人耶.乃愷悌慈祥、薄武力而崇芸術之人也.其代表人物如舜(孟子曰舜、東夷之人也).至仁至孝、能使人譲以天下、而以復以天下譲人、真古今中外無比至聖也.…可見我国文字東夷人亦多所創造、而為契所推広因以造字之功帰之契.如将東土西土古文略一比較、即東夷対於文字之智慧優於西夏、東夷人既握有教育権、故諸夏尽受東夷之文化。」(武功方面で諸夏がたとえ勝利を得たが文化方面では東夷に同化された。…そもそも東夷とは果たしていかなる人々なのか。すなわち和睦キメ細かくて、武力よりは芸術を崇める人々だった。その代表的人物を聞けば舜だ。(孟子は舜を東夷人だと言った)至仁至孝にして、他人に天下を譲位し、天下をまた他人に譲位することは真に古今中外に他にない極めて聖らしいことである。(中略)私たちの中国文字は東夷人がみな創造したものといえ、契が広く普及したので造字の球が契に帰すことになったのだ。
東土と西土の古文を概略比較してみれば、すなわち東夷が文字の知恵については西夏より優秀で、東夷人が先に教育権を掌握したので諸夏が全部東夷の文化を受け入れた。)(整理文化中途自述)と論及した通り中国文化の根源は東夷文化で成したことが分かる。ここでより一層重要なのは中国文化の根幹をなすいわゆる漢字を本来、東夷族が創造したということだ。この事実は今後、私たちの韓民族の古代史を正しく究明するのに非常に貴重な資料だ。
(後略)
類似記事
歴史の中なくした‘東夷観’再照明
江原道日報(韓国語) 2011.01.01
http://www.kado.net/news/articleView.html?idxno=495529
古代中国の王朝である夏や殷、そして漢字の韓国起源説です。
これなのですが、そもそも東夷というのは特定の民族を指すものでは無く、またこの呼称は中国の中原を中心とし、その周囲の異民族の事を大雑把に方向で区分けし四夷(東夷 北狄 西戎 南蛮)と呼んでいただけであり、特定の民族を指す単語ではないというだけではなく、時代によってそう呼ばれた相手や範囲そのものが変わっています。
そもそもこれは、最近の研究で「漢民族」と呼ばれる固有の民族は実は存在しなかったのではないかとする説を、彼らの民族史観で曲解に曲解を重ねた物に過ぎません。
続いてこちら
先史時代コリアンが米新大陸最初の発見?
聯合ニュース(韓国語) 2009/11/24
http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2009/11/24/0200000000AKR20091124105800057.HTML
(蔚山(ウルサン)=聯合ニュース)イ・サンヒョン記者=
"4千年前バンクデ壁画を描いた先史時代コリアンが、鯨について韓半島で沿海州、再び千島列島を経てロシア、カムチャッカ半島、を経由してアリューシャン列島をすぎて米国北部のアラスカに行った。"
国立水産科学院キム・チャングン博士は24日午前蔚山(ウルサン)鯨研究所で開かれた韓-日鯨文化セミナーで'鯨と韓国の文化-コリアン新大陸発見説紹介'という主題発表を通じて異色学説を話題に出した。
キム博士は"先史時代コリアンが米国新大陸を初めて発見したというこの学説は米国シカゴ博覧会の'1893韓国展示館復元記念事業会'のキム・ソンギュ会長が提示した内容"としながら"キム会長の主張は'鯨と韓国の文化'という論文を通じて私が明らかにした内容と一脈相通じる"と話した。
この学説は2007年米国の考古学会誌に米国、アラスカのアリューシャン列島アマクナック島で3千年前の韓国伝統オンドルが発見されたし、新羅の微笑とピョンサンタルと類似の形の'鯨仮面骨'が発見されて信憑性を付加しているとキム博士は説明した。
鯨仮面骨は国宝285号で世界で最も古くなった蔚山市(ウルサンシ)、蔚州郡(ウルチュグン)亀台岩壁画の岩の図に出ている鯨仮面骨とその形が似るということだ。
(後略)
※韓国やこの記事ではオンドル(床暖房)が韓国起源であるかのように書かれていますが、実際はシベリアのツングース系諸民族の間では一般的なものであり、韓国固有でも韓国起源でもありません。
今度はアメリカ大陸発見の起源を主張しています。
これなのですが、そもそもこの時代に「朝鮮人」という民族はまだ存在していないうえに、根拠が間接的推定ばかりで客観性がまるでなく、注釈でも書いていますがまず根本的にオンドルと呼ばれる床暖房は韓国由来のものではなく、シベリアに住んでいるツングース系諸民族で一般的なものなのですから、むしろそちらから朝鮮に伝わったと考えるのが自然です。
残りは一々突っ込みを入れるのも疲れるので紹介だけにします
ロケット韓国起源説
朝鮮は「ロケット先進国」だった(上)(下)朝鮮日報 2009/08/23
八咫烏韓国起源説
高句麗代表象徴物 三足烏、日本サッカー協会エンブレムに化ける 東亜日報 2001/02/19
漢方(中医学)韓国起源説
中の東北工程、今度は「韓医学」狙う? 中央日報 2006年10月24日
台北市長、「韓国起源説」を現地で体験・・思わず下品な言葉を発してしまう―台湾紙 FOCUS-ASIA 2015年07月14日
ここで紹介したものは、先ほども書いたように個別の事例としては韓国人の中でも信じている人もいればいない人もいるのですが、これらにはある共通点があり、韓国人のある種の民族純血主義とも呼べるものに関係しています。
現在韓国では、13世紀に書かれた「三国遺事」に言及のある檀君と呼ばれる伝説上の人物を実在の人物とし、檀君が即位したとされる西暦紀元前2333年を元年として(この数字事態が単なる曲解です)、そのころから単一の民族の血筋が守られてきたと学校で教育されています。
(ちなみに北朝鮮でも実在の人物とされており、北朝鮮は檀君の墓があると主張しています。この墓は檀君稜と呼ばれているのですが、どう見てもコンクリート製です)
初等教科書、高麗の時「23万帰化」言及もしない
京郷新聞(韓国語) 2007-08-21
http://news.nate.com/view/20070821n11817
小学校4~6年生用の教科書、単一民族・血統を過度に強調
小学校の教科書が過度に単一民族や血統などを強調しており、副作用が憂慮される、という指摘が提起された。子供たちに、外国人への人権侵害や他文化排斥を当然視する誤った認識を植えつけるおそれがあるという。社会の多文化・多民族傾向とも相容れない。
韓国は単一民族国家イメージの克服に向け適切な措置を取るべきだという国連人種差別撤廃委員会の最近の勧告も同じ脈絡だ。
京仁教育大の朴チョルヒ教授は、21日に出た季刊学術誌「教育社会学研究」に掲載した論文「多文化教育の観点に基づく初等社会・道徳教科書内容に対する批判的考察」で、韓国史を扱った小学校4~6年生用の社会教科書が過度に民族中心的に叙述されている、と指摘した。
朴教授は論文の中で、「高句麗と渤海が多民族国家だったという事実が抜け落ちている。高句麗の領土拡大は異民族との併合過程であり、渤海は高句麗の遺民と靺鞨族が一緒に立てた国家だが、これについての言及が全く無い」と述べた。
(後略)
結果として、韓国人はこの民族純血主義に基く選民思想に近い考えをもっている比率が高いのですが、先ほど紹介した韓国起源説は、そのどれもがこの歴史観の延長線上なのです。
つまり、「数千年続いた歴史ある単一民族なのだから、相応の優秀さがあるはずであり、世界で知られている様々な文化は自分達が発明し広めた物なのだ」と、そのような考えから非常に様々なジャンルの起源主張をするわけです。
一応、こうした考えや檀君を実在の人物とし数千年の歴史があるとする歴史認識に否定的な歴史学者も韓国にはいるにはいるのですが、例えば以前紹介した日韓の歴史共同研究会では、オフレコの場で個人的には否定しても、公的に記録の残る場では決してこの歴史観を否定しない人がいたそうです。
要するに、この歴史観を韓国で公的に否定してしまうと、社会的地位を失う可能性があるからです。
そして、なぜたかが歴史観で社会的地位まで失う可能性があるのか、それは以下のハンギョレ新聞の記事を読むと解ります。
韓国史学界はなぜ日本の植民地史観に沈黙するのか
ハンギョレ新聞(韓国語) 2014.09.16
http://www.hani.co.kr/arti/culture/book/655126.html
日本植民史観を批判してきたチェジェソク高麗大名誉教授が2011年に出した自伝「逆境の幸運」で韓国史学界に向けて、このような質問を投げた。
「百数十年前から日本の古代史の学者はほとんどすべてがくっついて、古代韓国の日本の植民地だったと主張しているが、ここに終始口を閉じて沈黙を守っている理由を説明してくれ。
古代史の学者であれば、ここに一言程度のコメントはなければならないことはないか?」
この質問に誰が答えたというニュースはまだありません。
(中略)
植民史観論者とコネを介して徒弟関係を結んでいる。
韓国史学の「泰斗」イビョンドと高麗大人脈の金剛山の史学界の有名な「社団」はまだ師匠への義理を強硬に守っている
そのおかげで、韓半島北部が中国の領土であり、万里の長城が黄海道まで伸びた。
東北工程は巡航している。
(中略)
黄氏は、朝鮮総督斎藤誠の朝鮮人教育施策についてこう語る。
「朝鮮人が自分の仕事、歴史、伝統を知らないように作って民族の魂、民族文化を失わせる。
彼らの祖先と先人たちの無為·無能と悪事などを暴き出し拡張して子孫に教えることで、朝鮮の若者たちは、彼らの祖先を軽視し蔑視する感情を生じさせており、それを一つの気風にする。
その結果、朝鮮の若者たちが自国のすべての人物の史跡についての否定的な知識を得て、必ず失望と虚無感に陥ることがだから、その時日本の史跡、日本の人物、日本の文化を紹介する童話効果絶大である。
「自民族虚無主義と劣等感、強者礼賛に駆け上がった朴正煕と植民史観論はそうして作られた。」
これらの子孫がまだ大学や研究所の、北東アジア歴史財団などの組織、並びに組織、そして日韓歴史共同研究委員会などを掌握し、国民の税金を排他的に使用しながら、国の根本を少し食べていると、二人は主張する。
要するに、先ほどの民族純血主義に基く歴史観に反する考えは、日本が朝鮮人の誇りを奪うために作った植民地史観であると、そしてそのような歴史観に基く人物は民族の裏切り者であると、このようにして糾弾するため、現在のように民族主義が先鋭化した韓国では、この歴史観に疑問を持つ事が命取りになりかねないのです。
結果的に、「学問として」この歴史観を誰も公然と批判できないがために、そこを根元として上記で紹介したような韓国起源説が次々と発生し続ける仕組みがあるというわけです。
韓国起源説に関しては、大抵の場合笑い話と共に語られることが多いわけですが、このようにその背景には、以前から書いて来た民族主義や蔑視ありきの自民族中心主義のほかに、先鋭化した韓国の民族純血主義があるわけです。
お知らせ
今回よりカテゴリー分けのためのタグロックを行っていきます。
過去記事に関しては、量が多いので全てで行うかどうかはまだ未定ですが、時間があるときに少しずつやっていく予定です。