さて、今回のタイトルなのですが、これは韓国の事をよく知っている日本人などが、韓国を評する時によく使う言葉です。
一応どういう事なのかを説明すると、何か物事を始めようとしたとき、或いは何らかの問題を解決しようとしたとき、「どの段階で」状況の分析をするかという事です。
韓国についてよく知らない人は、「走り終わる=結果が出た」状態から状況分析をするのはどんな状態なのか、また状況分析をせずに物事を始めたり問題を解決しようとするとはどんな状態なのか、まるで意味不明だと思うのですが、文字通りそのままの事を彼らは非常に頻繁に行うのです。
つまり、状況分析が行われないままに結論ありきで問題に対処しようとする為、「走り終わってから考える」という事が起きるという事です。
そしてこの意味を大半の日本人が解らないのは、要するに日本人と韓国人の価値観や物の考え方がそれだけ違うという事であり、更にこの「韓国は走り終わってから考える」という表現自体が、日本人視点から見た韓国評であって、彼らの中ではその対応こそが一般的であるので、この韓国評自体がなぜなのか意味不明なのです。
彼らの社会では「正しい解決法をとっている」事になっている、事前にちゃんと分析を行った事になっているのです。
まずはこちらの記事から。
韓国 日本のWTOパネル設置要請に同意せず=輸入規制で
聯合ニュース 2015/08/31
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/08/31/0400000000AJP20150831002600882.HTML
【世宗聯合ニュース】東京電力福島第1原発事故を受けた韓国の日本産水産物の輸入禁止措置をめぐり、日本が世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会(パネル)の設置を求めていた問題で、韓国政府は31日(現地時間)、スイス・ジュネーブで開かれたWTO紛争解決機関(DSB)の定例会合でパネル設置に同意しなかった。韓国産業通商資源部が明らかにした。
パネル設置はWTO紛争解決手続きで必ず経なければならない過程で、パネルが設置されれば、報告書の提出などの手続きにつながる。
韓国は2013年9月から福島など8県の全ての水産物について輸入を禁じている。これに対し日本政府は5月、規制が不当だとして、WTOの紛争解決手続きに基づく2国間協議を韓国に要請。両国は6月に協議を開催したが折り合えなかった。
これを受け日本政府は今月20日、WTOにパネルの設置を要請したが、設置には韓国を含むすべての加盟国の同意が必要で、韓国が同意しなかったため設置は見送られることになった。ただ、初回のDSB会合でパネルが設置されなくても、日本が次回のDSB会合で設置を再度要請した場合、韓国政府の意思とは関係なくパネルは自動的に設置される。
韓国政府は今後予想されるパネル設置に備え、日本の原発管理状況や日本産食品の安全性などについて徹底的に調査し、措置の正当性を証明する計画だ。
産業通商資源部の禹泰熙(ウ・テヒ)通商交渉室長は同日の会見で「危害性評価など科学的根拠に立ち、われわれの措置が正当であるという点を主張していく」と説明。「今回の措置は貿易制限ではなく自国民の安全が目的。日本の原発事故による特殊性のため、日本の水産物に対し制限がかけられているもの」と強調した。
以前も何度か言及したことのある韓国による日本の水産物輸入禁止措置関連です。
この件を知らない人のためにざっと概要を説明すると、2012年に日本によるオリンピック誘致が決定する数日前の事、韓国政府が突然「日本産の海産物には放射能汚染の疑いがある」として輸入禁止措置を取ります。
しかし、具体的に汚染されているという数字を出したわけではない(当時日本からの外国へ輸出される海産物は、国際基準を満たしていた)うえに、海が無く当然海産物の韓国への輸出をやっていない群馬県などまで禁止範囲に入っていた事などから、明らかに日本のオリンピック誘致を妨害する目的での措置である事が明白でした。
(参考資料:【社説】日本水産物輸入制限を解除、正しい決定だ=韓国 中央日報 2015年02月13日
※実際には「検討した」というだけのニュースです)
こうした背景があるという事を知ってもらった上で、記事中の
>「韓国政府は今後予想されるパネル設置に備え、日本の原発管理状況や日本産食品の安全性などについて徹底的に調査し、措置の正当性を証明する計画だ。」
という内容に注目してください。
何かおかしくないでしょうか。
韓国が輸入禁止措置を決定したのは2012年であり、その頃から日本は抗議していたうえに、日本がWTOへの提訴するらしいと韓国側が察知したのは今から約1年前の事です。
つまり、なんら調査をせずにこの決定をした事を自白しているのです。
いくらオリンピック誘致への嫌がらせ目的とはいえ、何かしら「もっともらしい動機」を考えているはずと、日本人的価値観では考えますが、主観のみで物を考え、根拠というものを非常に軽視する韓国社会では、そういう事を考える前に願望のみで行動に移してしまうのです。
そして、日本に提訴され輸入禁止措置の根拠をWTOという誤魔化しの効かない場で求められたため、今頃になって自らの措置の正当性を「探している」というわけです。
我々の常識ですと、輸入禁止措置を行う時点で根拠を探すか、或いは最低でもWTO提訴の情報が入ってきた時点で探すか、そのような発想となると思うのですが、韓国は提訴されて根拠を求められた時点でやっと探し出しているのです。
これが「走り終わってから考える」の正体です。
またこちらの事例も同じです。
産経新聞 韓国政府のコラム削除要求を拒否
聯合ニュース 2015/09/01
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2015/09/01/0200000000AJP20150901003000882.HTML
【ソウル、東京聯合ニュース】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を朝鮮王朝時代の王妃・閔妃(死後に明成皇后)になぞらえ韓国で波紋を呼んでいる産経新聞のコラムについて、韓国政府が1日、産経新聞側に記事の削除を要求したが、産経側がこれを拒否した。
在日韓国大使館関係者が同日、産経新聞側に抗議の意を伝え、記事の削除を要求したが、産経側は問題が生じたことについて「残念だ」とした上で、表現の自由などを理由に記事削除の要請を拒否したという。
産経新聞政治部専門委員の野口裕之氏は8月31日、同紙電子版に掲載された「米中二股 韓国が断ち切れぬ『民族の悪い遺産』」と題するコラムで、9月3日に中国・北京で開かれる抗日戦争勝利70年を記念した軍事パレードに朴大統領が出席することを、朝鮮王朝時代から続く「事大主義」と主張。朝鮮時代にも朴大統領のような女性の権力者がいたとして閔妃を引き合いに出した。
同コラムについて外交部の魯光鎰(ノ・グァンイル)報道官は1日の定例会見で、「歴史歪曲(わいきょく)と歴史修正主義のDNAを持ち、過去の歴史に対して厚顔無恥な主張を日常的に行う日本国内の特定の人物とこれと関係する報道機関の根拠の無い記事に対し、政府として論評する価値はまったく感じない」と述べた。また「記事の内容も問題だが、そのような記事を載せた報道機関に対しても品格の問題があるのではないか」と指摘した。
2015年9月3日20:11追記
※閔妃の件が少々説明不足ですので、文末に追加で補足説明を書き加えました。
これなのですが、まず閔妃という人物について知らない方のために説明をしておくと、1990年代半ば頃までは韓国で「傾国の悪女」と評された人物でした。
閔妃は李朝末期の朝鮮の王である高宗に嫁いだ人物だったのですが、色々あって(長くなるので省きます、知りたい方は調べてみてください)義理の父(高宗の父親)である大院君と対立、20年以上に渡って権力争いと暗殺合戦を繰り返した人物です。
当時朝鮮を訪れていたアメリカの心理学者ジョージ・トランブル・ラッド博士(1842~1921年)からは、「頭は良かったが朝鮮の玉座にとって恥となるほど最も残酷な人物であり、何年も国王の父である大院君と政争を続けており、この間両派閥の殺し合いはまるで毎年の挨拶交換のように行われてきた。」と評されています。
また呪術信仰に傾倒して国庫の6倍以上の金額を布施として浪費、帳尻あわせに国民に苛烈な徴税を行うという行為をした人物であり、当時の朝鮮人からは相当に恨まれていた人物でした。
そのため、1990年代半ばまでは傾国の悪女と評価されていたわけです。
が、1990年代半ば以降、「日本人に暗殺された」という趣旨で悲劇のヒロイン化されたミュージカルが韓国で上演されると、たちまちその評価が「傾国の悪女」から「国母」に変り、現在まで韓国では公的にそのような評価となっています。
ここからが重要で、現在の韓国で「国母」とされているのならば、日本人の感覚ですと「国母と同等に扱われて名誉な事だ」とでも返しておけば良いと思うでしょうが、韓国では「日本人に暗殺された(これも諸説あるのですが)」とされていた部分のみを根拠に国母としているので、同じ事をしているとされたら侮辱になるという、おかしな事になっているのです。
つまり、どんな人物か深く考えずに国母としてしまっているので、泥縄であっても抗議せずにはいられないわけです。
また、今回の朴大統領による中国の抗日式典出席は、韓国内の親米派などからも「事大主義」と批判されているため、ある意味でこの産経のコラムは韓国人の中でも図星なのです。
だったら黙っていればいいのですが、このように過剰反応して猛抗議をしてしまっています。
まさに「雉も鳴かずば撃たれまい」状態なのです。
要するにこの一連の産経への抗議は、二重の意味で「走り終わってから考える」という状態である事が解ります。
更にこちらの事例も同じです。
ブッシュ氏「米国遠征出産」を非難…韓人社会が集団反発
2015年08月27日09時50分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/927/204927.html
米国共和党の大統領選挙立候補者であるジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が「アンカーベイビー(anchor baby)」という言葉でアジア系を批判すると、韓人社会が集団で反発した。アンカーベイビーは米国で出産すれば米国の国籍を取得できる制度を利用し、出産を通じて米国に錨(いかり、アンカー)を下ろすようにして定着する便法移民を意味する用語だ。主に中南米出身の不法移民者が米国で子供を産むことを非難する用語として使用されていたが、一部アジア人の遠征出産も含まれている。ブッシュ氏は24日(現地時間)、テキサス州の国境地域を訪れてアンカーベイビーに言及し、「アジア人が米国内出産を組織的に悪用している」としてアジア系を非難した。
韓人(米国で暮らしている韓国人)社会は直ちに対応に出た。ワシントンとバージニア一帯の韓人会「ワシントン韓人連合会」は25日に声明を出して「事実に基づかない、軽蔑的かつ侮辱的な発言」としながら「ブッシュ氏は発言を撤回し、アジアンコミュニティに謝れ」と要求した。韓人2世が主軸の「米州韓人協議会」も「侮辱的で無礼だ」と論評した。これまで各種選挙の際にバージニア州から出馬した候補の討論会を開催してきた韓人政治参与連合のマイケル・クォン会長は「ごく少数の行為があたかもアジア系全体に当てはまるかのように表現し、アジア系に対する認識を悪化させた」と批判した。バージニア州議会のマーク・キム下院議員(民主党)は「ライバルのドナルド・トランプ氏が支持率で自身を追い越したので、焦るあまり本音を公開した」と述べた。
(後略)
こちらの件は少々説明が必要なので概要を書くと、2000年代初頭頃からアメリカのこの制度を悪用する韓国人が後を絶たず、韓国では遠征出産と呼ばれ専門の業者やブローカーまで現れ、徴兵制や二重国籍問題の事もあり、韓国内でも社会問題化していました。
外国人学校入学のため偽装離婚・結婚する韓国の母親
2012年11月07日14時04分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/709/162709.html
#ソウル江南(カンナム)に暮らす中堅企業家の夫人オさん(46)は昨年、夫と偽装離婚をした。子どもを外国人学校に入学させるために接触したブローカーが教えた方法だった。現地でエクアドル国籍の外国人と偽装結婚をしたが、国籍の取得はうまくいかなかった。ブローカーはその代わり海外同胞の偽国内居所申告証を渡し、オさんはこれをG外国人学校に提出して子どもを入学させた。
#中堅企業家の夫人ベクさん(36)は子ども3人を米国で遠征出産し、米国市民権者の資格を取得させた。長男と二男は問題なく外国人学校に入学させたが、三男は法律が変わったため親の外国国籍が必要になった。ブローカーに4000万ウォン(約290万円)を支払い、自らグアテマラに行って偽造パスポート(旅券)を受けた。しかしブローカーは「入学を志望している外国人学校がグアテマラ国籍を受け入れてくれない」と説明してきた。ベクさんはやむを得ずホンジュラスのパスポートまで偽造してほしいとブローカーに頼んだ。
(後略)
兵役義務を忌避する人への管理を強化
2003年09月30日18時57分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=44304
入営する日と訓練を受ける部隊を、本人が直接、列車のキップを買うように、インターネットを通じて選択する制度が、来年から施行される。また、市民権取得などのため米国などへ渡って出産する「遠征出産」と早期留学の方式を通じて、兵役義務を忌避しようとする人々への管理も、さらに厳しくなる。
(後略)
※余談となりますが、こうした状態になる背景を知りたい方はこちらの過去記事を参照してください。
韓国人は世界一「嫌韓」
http://ch.nicovideo.jp/ooguchib/blomaga/ar625082
韓国内ですら社会問題化しているほど頻発しているのですから、当然一部の例では済まされないような状況ですし、何より今でもこの状況は続いているのですから、アメリカで問題にされても当たり前です。
しかも元フロリダ知事は「アジア系」としか言及しておらず、韓国人を狙い打ちにしたわけではないのですから、これでは自分達で「韓国人は制度を悪用している」と宣伝しているようなものです。
しかし韓国人はそこまで考えていません。
彼らの中では問題点を指摘された=自分達が劣等だと指摘されたという図式が成り立つため、反射的に反発し声をあげてしまうわけです。
遠征出産問題に真剣に取り組み、予防策に取り組み、また韓国人の中で問題意識を広く共有していれば、そもそもこんな事にはなっていなかったのですが、これも何もかもが泥縄です。
こうして、ここ数日以内ですら3回も大々的に「走り終わってから考える」を行っている韓国なのですが、こうした事を繰り返す背景には韓国人独特の問題意識とアプローチ法が関係しています。
以前から書いているように、彼らは一般的に非常に主観的で自己中心的な考え方をしており、問題が起きるのは全て他人のせいと考える傾向にあります。
これは要するに、視点を変えると彼らは基本的に問題を自ら率先して解決する意思そのものが無いという事でもあります。
だからこそ、今回挙げた3つの事例のようなことが起きるのです。
問題が起きるのは他者が原因であり、問題を解決するのも全て他人任せであるからこそ、事前に問題解決のための対策や分析という、日本人の価値観からすると当たり前の事柄を行う発想が無く、不快に思ったことに対してストレートに反応し他者に対して「あなた達が何とかしろ」と要求を繰り返します。
そしてそれが韓国における一般的な問題解決の手段なのです。
また、彼らの主観視点では自らに批判が来ることそのものが予想外であまりにも唐突であるため、非常に理不尽に感じ、その結果「相手に問題があるのだ」と解釈し、天秤の相手側に自身が指摘された問題を重りとして乗せる事で、自らが指摘された問題を打ち消そうとするわけです。
結局のところは、韓国では一般的に「問題が起きたら相手が解決するもの、それが解決策」という意識が常識であるがために、何をどうやっても自ら問題の分析や解決を図るという発想に至らない人が多く、それが習慣化した結果が「走り終わってから考える」という、我々日本人から見ると非常に奇妙な言動に繋がっているわけです。
余談となりますが、問題解決を常に他者(国)に頼るという態度は、韓国人の事大主義が関係しているとも言われています。
事大とは小国が大国に従い依存する態度の事ですが、まさに韓国は問題解決を他国に依存していることが事大意識の現われというわけです。
ですので、韓国をよく知る人の中には「韓国は日本に事大している」と表現する人もいます。
最後に。
当然ですが、こうした背景があるので彼等が日本に抗議してきたからと、それにいちいち応えていたら、韓国は延々と様々な問題を日本や他国に解決してもらおうとしてきますから、当然問題はより一層悪化していきます。
それは現在日本と韓国の間で問題になっている事柄に対して、韓国がどのような態度を取っているのかを見れば一目瞭然です。
慰安婦問題にしても日本海呼称問題にしても、竹島問題にしても旭日旗問題にしてもそうですが、韓国側は「話し合い」をしようとはしていません、「要求」をしているだけです。
これも要するに、他者(国)に自らの問題を解決してもらおうとしているという態度だからです。
しかし結局のところ、問題を解決しようと思えば日韓両者がちゃんと対等な立場で話し合いの場を持たなければまるで意味がありません。
現在、日本でメディアなどを中心に韓国側に立つ人々のように、何でも彼らの要求を受け入れるといった態度をしていては、解決する物も解決しないわけです。
ほんとうに韓国の事を彼等が考えているのならば、彼等がまずするべきは韓国が相手に対して要求やアピールばかりする態度を批判し、自ら解決のために動くよう促すことなのですが、それができている人を私は殆ど知りません。
ちなみに、私はそうした態度を取りません。
なぜかといえば、もう日本は韓国に対して必要以上に関わるべきではない、集団としての関わりは必要最低限に抑えるべきと考えているからです。
日本と韓国はあまりにも常識が違いすぎますし、何より韓国は今まで日本に依存しすぎていました、ここでそうした悪循環は完全に断つべきと考えているからです。
韓国政府が産経の記事に対して抗議をした件の補足説明
この件なのですが、本文で書いたように韓国でも元々閔妃は傾国の悪女という扱いだったわけですが、その後「国母」扱いになったからと、いくらなんでもそれで悪女と教わってきた韓国人の記憶が完全に改変されるわけではありません。
特に年輩層は恐らく悪女という印象の方が強いでしょう。
そして、朴政権への支持は年齢別に見ると年輩層の支持が高いことから、当然朴大統領を閔妃に喩えると悪い印象しか持ちません。
また、事大主義云々も閔妃は清、日本、ロシアと次々と事大相手を変えていった人物なので、特に事大しているという内容に彼らは怒ったのです。
その事は9月1日の初期の抗議内容などを見ると解りやすいです。
韓国政府 産経新聞に抗議とコラム削除要求へ
聯合ニュース 2015/09/01
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/09/01/0400000000AJP20150901001100882.HTML
【ソウル聯合ニュース】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を朝鮮王朝時代の王妃・閔妃(死後に明成皇后)になぞらえ韓国で波紋を呼んでいる産経新聞のコラムについて、韓国政府が産経新聞側に強く抗議するとともに記事の削除を要求する方針を固めたもようだ。
政府関係者は1日、「当該メディアに記事の削除および再発防止を要求する予定だ」と話した。政府は在日韓国大使館を通じ、できれば速やかに産経新聞側に記事の削除を要求する方針とされる。
産経新聞政治部専門委員の野口裕之氏は8月31日、同紙電子版に掲載された「米中二股 韓国が断ち切れぬ『民族の悪い遺産』」と題するコラムで、9月3日に中国・北京で開かれる抗日戦争勝利70年を記念した軍事パレードに朴大統領が出席することを、朝鮮王朝時代から続く「事大主義」と主張。朝鮮時代にも朴大統領のような女性の権力者がいたとして閔妃を引き合いに出した。
このコラムに対し韓国政府の当局者は、「歴史歪曲(わいきょく)と歴史修正主義のDNAを持ち、過去の歴史に対して厚顔無恥な主張を日常的に行う日本国内の特定の人物とこれと関係する報道機関の根拠の無い記事に対し、政府として論評する価値はまったく感じない」と批判していた。
この時点では事大主義云々という内容に反発していたことがわかります。
が、これも本文で書いていますが、1990年代半ば頃から韓国では閔妃が「国母」という設定になりました。
ですので、閔妃が事大主義の権化として扱われ、朴大統領と比較されている状況で、朴大統領は閔妃と同じで事大主義をしているとの内容に怒っているとしてしまうと、現状の設定である「国母」と整合性が取れなくなってしまいます。
そもそも韓国は、日本に対しても「閔妃は日本人に暗殺された悲劇のヒロイン」であるという歴史観を共有するよう要求しています。
そして、明らかに当初韓国側はこの矛盾に気付いていなかったのですが、以下のように日本のメディアがこの件を報じる段階で「暗殺された事」を一番の口実として扱うようになると
産経コラムの削除要求へ=「事大主義」に反発-韓国
時事通信 2015/09/01
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015090100514&g=soc
【ソウル時事】韓国外務省報道官は1日の定例記者会見で、朴槿恵大統領を李氏朝鮮時代の王妃で日本人に殺害された閔妃に例えた産経新聞ネット版のコラムを批判し、同紙に削除と再発防止を求める考えを明らかにした。産経新聞をめぐっては、韓国の裁判所で、朴大統領への名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴された加藤達也前ソウル支局長の裁判が行われている。
報道官はコラムについて「歴史に対する厚顔無恥な主張にふける特定人物と、関係言論機関のひどい記事に対し、政府次元では論評する一顧の価値も感じられない」と強い不快感を示した。
政治部専門委員によるコラムは、朴大統領が3日の中国の抗日戦争勝利70年記念式典の軍事パレードに出席することなどを挙げ、韓国外交は「強国に弱国が付き従う事大主義」だと指摘。「李氏朝鮮には、朴大統領のような女性の権力者がいた」として、閔妃を紹介している。閔妃は強い権力を握り、接近する相手を清、日本、ロシアと次々と代えて王朝の存続を図ったが、1895年に日本人に殺害された。
コラムに対し、与党セヌリ党は「大統領を冒涜(ぼうとく)するのは韓国国民へのテロ行為と同じだ」と非難し、反省と謝罪を求めた。韓国メディアも「妄言」などと批判的に報じている。
韓国メディアでも暗殺された事を口実に持ってくる様になります。
恐らくですが、日本のメディア関係者から「韓国内における現在の閔妃の評価」との整合性が取れるように、「耳打ち」がされたか、或いはこうした日本側の一連の記事が「耳打ち」になったかのどちらかでしょう。
この件は、「走り終わってから考える」韓国人の態度に、日韓友好を望む日本人などがフォローを入れて、抗議内容の根本部分の「ゴールポストを変えさせた」事例と私は見ています。
まとめると、当初韓国側は「朴大統領の行いを事大主義と書かれたこと」に抗議していたが、後になって「暗殺された事」に主に抗議しているとの設定に変わったということです。