日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

10年前のマンガ嫌韓流発売で『ある意味』進んだ日韓の相互理解


さて、今回は先日twitterのほうで「マンガ嫌韓流発売から今月で10年目なので、総括的な記事を書いて欲しい」との要望がありました。
そこで、私なりに当時の状況などと、そこから解った事などについて書いていく事にします。


※今回はあくまで韓国側の反応を中心とした内容を取り上げます、当時の日本のメディアなどの反応がどうだったかについては、こちら(2005年、マンガ嫌韓流をなかったことにしようとしたメディア達)を参照してください。


今回のタイトルの「相互理解」なのですが、これははっきり書いてしまえばマイナス方向への相互理解です。
2002年の日韓共催ワールドカップ、そして日本のメディアと韓国政府が始めた韓流、こういったものから得られる情報は実際のところ日韓共に非常に限定的であり、それが否定的であれ肯定的であれ、お互い限られた情報から相手を推測するという事しかできませんでした。


例外的に、日韓翻訳掲示板では双方の生の声によるやり取りがされており、今回書くこともすでに相互にある種の理解が進んでいたのですが、それはあくまでコピペなどによる二次的なものを含め、利用者のみの限定的現象でした。


そんななか、フィルターを通さない「日本の生の声」を韓国へ伝えたのがマンガ嫌韓流とそのベストセラー化であり、それに対する韓国側の日本へ向けた様々な反応も、フィルターを通さない生の声だったのです。
そしてこの時、多くの人々が「お互いの真意」に始めて触れ、相手の姿を実体を持って知ることとなったのです。


まずはこちらの記事から。


日本のインターネット書店で「韓国嫌悪漫画」前売り1位
ハンギョレ新聞(韓国語) 2005-07-18
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/50814.html
韓国をけなす内容に満ちた日本の漫画が、日本の大規模なインターネット書店で前売り率1位を走っている。

インターネット書店アマゾン(www.amazon.co.jp)は来る26日発売される「マンガ嫌韓流」という単行本が日本の書籍部門前売り率1位に上がっている。

この漫画は、韓国が「竹島」(独島)を侵略したという主張と一緒に成形、「ヨン様」、歴史問題などで歪曲された主張を広げ韓国人に対する嫌悪を赤裸々にさらされたことが分かった。

(東京=聯合ニュース



上記記事は引用にもあるように韓国の通信社である聯合ニュース発で、引用はハンギョレ新聞ですが同じ内容が韓国の三大紙(朝鮮日報中央日報東亜日報)やその他多くの韓国メディアで大々的に記事になり、更に韓国の全国放送のテレビなどでも次々と取り上げられるトップニュースとなります。


ここで重要なのは、マンガ嫌韓流はヒットしましたが発売3ヶ月で約30万部ほどの売り上げ、発売元の晋遊舎は中小の出版社、それほどのニュース性があるとは思えないのですが、韓国は文字通り蜂の巣を突付いたような大騒ぎになった事です。


ここに日本側が「気付いた」事があります。
韓国でなぜこんな大騒ぎになったのかといえば、韓国人は「日本人が韓国を嫌うことを全く想定していなかった」からです。
そして韓国側より発信されるこれらリアルタイムの情報からは、その驚きと動揺がありありと日本側に伝わってきたのです。


先ほども書いたように、この韓国人の反応は日韓翻訳掲示板などではその数年前に起きた現象で、利用者は知っていたのですが、そのほかの日本人にとってはそれこそが驚きの発見でした。


なぜならば、当時のノ・ムヒョン政権は現在の朴政権がやっていたのと殆ど同じ「告げ口外交」を繰り返していた時期であり、またこの頃から韓国起源説の周知が進んだこと、それと韓国在住のカナダ人が発見した「韓国の小中学生による民族主義丸出しの反日絵展示会」の発覚などもあり、日本の内閣府調査でも韓国への好感度が徐々に下がり始めた時期で、日本人的感覚では「こんなことをしていたら嫌われて当たり前」だったからです。


しかし韓国では、日韓のメディアなどが韓流を通じて肯定的な面しか伝えず、韓流押し付けに対する反発や日韓共催ワールドカップから始まった嫌韓の流れなどについては文字通り「無かったこと」にしていた事、また韓国人の独特の価値観である絶対的正しさや信用の概念の違いから、自らの行いが韓国への不信感を募らせているという発想には至らなかったのです。


またこの時期韓国では、特に韓流を通じて世界中に韓国の肯定的イメージが広がっているとの宣伝が政府・メディア問わず行われていた時期でもあり、当時民族主義が先鋭化してきていた韓国人の多くは「自分達は世界中から尊敬を集め賞賛されている」と思い込んでいました。


そのため、これは今でも韓国でその傾向があるのですが、「自分達は嫌われる要素がどこにも無い」と考え、また「自らの行いすらも他者のせいにしてしまう」「他者の劣等性が自らの優越性や正当性と直結している」という独特の価値観から、この韓流を通じて広がった嫌韓の流れに、日本のメディアと韓国人達が合理化による解釈を行おうとします。


その一例が以下の記事です。


嫌韓流」「抗韓流」…韓流の向かい風吹く
2005年10月21日10時31分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/822/68822.html
韓国や韓国人を卑下、歪曲の内容が詰まった日本マンガ本「嫌韓流」。

20日午後、東京新宿紀ノ国屋書店。東京の大型書店の1つであるこの書店1階中央には常に話題の書籍が陳列される。その半分は韓流関連本だ。「クォン・サンウの秘密」「韓国ドラマ完全解剖」など30種にのぼる。

ところで最近変なマンガ本1冊がこのコーナーに登場している。韓流を憎むという意味の「嫌韓流」がそのタイトルだ。発行2カ月で30万部が飛ぶように売れた。
(中略)
韓流熱気が熱いから日本と中国の一角では反韓流気流も表れ始めている。日本には韓国を憎むという嫌韓流が、中国には韓流に対抗しようという抗韓流がある。

中国の有名俳優張国立氏は先月28日「韓国ドラマ『大長今』(宮廷女官チャングムの誓い)を見て頭に来た。中国が発明した鍼術をまるで韓国が発明したかのように描いていた」と責めた。

彼はまた「中国はこれまで外部から侵攻されたが、文化的に奴隷になったことはない」とし「中国のメディアが韓国ドラマを放送し称賛すればそれは中国を文化奴隷に仕立てること」と述べた。人気タレント唐国強氏も「今から韓国ドラマの悪い点を見つけて正面攻撃を展開すれば怖いものなし」と韓流と闘う宣言をした。

ドラマ制作者たちも韓流卑下に同調している。中国映画ドラマ制作センターの閻建鋼主任は「韓流にもう後はない。韓国ドラマは大部分放送局で製作されるため深みがなく、完全でもない」と批判した。

日本の場合、放送や新聞が「嫌韓」を直接取り上げない。ただ検証の不可能なインターネットが問題だ。マンガ「嫌韓流」も厳密に言えばインターネット上の各種「アンチ韓国」サイトに出回る話を拾い集めたものにすぎない。日本ポータルサイト「ヤフージャパン」検索窓に「反韓」と打てば数百の関連サイトが検索される。

「パクリ大国南朝鮮」というサイトに入れば1970年代から今まで韓国が知的財産権を侵害したと主張する歌やマンガ、ゲームなどの事例が整然と並ぶ。初期画面には「それでも韓国は2003年世界知的所有権予算委員会議長国に選ばれてます」と皮肉ったタイトルが掲載されている。

ポータルサイト楽天掲示板には「韓国男子高生の40%が痴漢をした経験があり、4%は婦女暴行をした経験がある」とし「日本国内で在日韓国人による性犯罪が頻繁に発生するのは韓国人特有の性文化による」という文が掲載されている。

「2002年ワールドカップ当時競技場建設費用を日本が貸したが、返済されていない」という内容は嫌韓サイトのお決まりのカテゴリだ。


嫌韓の原因を相手に求め、一切自己の原因に触れていません。
要するに、「韓流への嫉妬と危機感から嫌韓が出てきたのだ」との解釈は、マンガ嫌韓流の衝撃への合理化として生まれたという側面もあるわけです。
これは日本のメディアも同じで、彼らは自分達こそが唯一の世論の代弁者であると考える傾向にある事から、自分たちの意向に反する嫌韓の流れは差別主義者の戯言であると、そうレッテル貼りすることで自らの正当性を保とうとしたわけです。


また長々と書いてしまいましたが、この時起きたある種の相互理解とは。


韓国側:日本に韓国への否定的意見が存在する事を知った
日本側:韓国人は自分達が嫌われる事を全く想定していなかった


というお互いの実態を自覚できた事です。
結果的に韓国側は日本のメディアの影響や独特の価値観の事もあり、分析が明後日の方向へと飛んで行ってしまいましたが、少なくとも日本人の韓国を見る視線は肯定的なものだけではないと、それが周知できただけでもある種の前進だったと言えるでしょう。
マンガ嫌韓流発売とそのヒットには、こんな効果もあったわけです。


最後に少々余談となりますが、元々予定していた記事で引用するはずだったソースに、この件に関係した、韓国人独特の価値観に関する記述があったので、それについて紹介します。
まずは該当記事を。


韓国の記者は「嫌韓」や日本社会をどう見つめているのか 特派員座談会
ハフィントンポスト日本版  2015年07月09日
http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/30/korean-correspondant-talks_n_7695732.html
最近は韓国メディアの記事が日本語に翻訳され、ネット上で目にすることも多くなった。ただ、背景事情の異なる国に向けて書かれた記事は、ときに誤解も生む。どんな人が、どんな視点で日本を見つめているのか。

日韓関係の悪化が言われる。日本で「嫌韓本」が売れるなど、国民感情も悪化しているように見える。そんな日本を、韓国メディアの東京特派員たちはどう見つめ、どう母国に紹介しようとしているのか、聞いてみた。

【出席者】
尹熙一(ユン・ヒイル)京郷新聞・東京支局長
金秀恵(キム・スヘ)朝鮮日報・東京特派員
吉倫亨(キル・ユニョン)ハンギョレ新聞・東京特派員
(一部抜粋)
金:FAXをこんなに使う国がまだあったとは…。(提携関係にある日本の)毎日新聞で韓国に詳しい先輩から「似ていると思ってかかると大けがするよ」と忠告されました。日本では自分と他人の立場が違うことに緻密にこだわるけど、韓国では「正しいこと」は一つだけで、それを巡って争っている。それを互いに知らない。だから毎日が衝撃ですね。
(中略)

ちなみに韓国では「反日本」はもうあまり売れません。1970年代から徐々に卒業してきたのだと思います。『日本はない』(邦題:『悲しい日本人』)という日本批判本が売れたのは90年代。それに反論本が出てベストセラーになるという現象はもう過ぎ去った感がありますね。

尹:京郷新聞には日本語版がないので、日本人から悪口を書き込まれることもないけど、日本は、嫌韓コンテンツを数十万人が買うなど、厚い層をなしています。簡単に言えば、嫌韓をビジネスチャンスとしているんです。韓国は、社会全体に反日感情が根ざしているため、他の市場がない。もう韓国は「嫌日」を卒業したとも言えるんですが。

私が日本社会に最も失望したことの一つは、嫌韓嫌中が一つのビジネスになるほどまで形成されてしまったこと。韓国や中国で数十年続いてきた反日嫌日の反動とみることもできるけど、ここまで経済的に成長した日本で「韓国ドラマの放映が多すぎる」と言ってフジテレビへの抗議デモが起きたのは衝撃でした。この市場が、いつ解消するか、あるいはもっと大きくなるのか。今はどんどん大きくなっているようにも思えます。

吉:韓国の反日と日本の嫌韓は違うと思うんです。韓国社会が経済成長し発展してきた内なるエネルギーは、日本への劣等感です。韓国人に悪いことはしたけれど、日本は優秀だ。優秀な日本に負けたくない、頑張ろうと韓国はやってきた。でも日本の嫌韓は、人種的な差別や偏見、蔑視があると思う。日本はこれから、対等な韓国、中国、ある意味で日本より大きくなった中国と付き合わないといけないのに、準備ができていない。仲が悪くなると、根底にあるものが表に出てくるんだと思います。人種的な差別がまだあり、そこに「失われた20年」や、東日本大震災があり、2012年の李明博大統領の竹島訪問を契機に爆発したんでしょう。


■「韓国人が持っている不当な偏見を解消したい」

――おそらく、アメリカの人種問題と同様に、日本人は朝鮮半島に対して冷静に見られないところはあるし、政治的な関係も大きく影響しているでしょう。ではどうすれば解決できると思いますか?

吉:外交的には、首脳会談なしには関係を正常化できないと思う。決断できる人は朴槿恵大統領しかいない。慰安婦問題を巡ってもめているけれど、条件なしに会おうという決断ができるかといえばわからない。日韓関係は、お互いの感情が悪化して、双方の政治がナショナリズムを利用している側面があり、2002年のワールドカップのような機会でもないと、傷が治るのは相当時間がかかるような気がします。


まず注目すべきはこちら


>日本では自分と他人の立場が違うことに緻密にこだわるけど、韓国では「正しいこと」は一つだけで、それを巡って争っている。


表現の仕方こそ違いますが、これは要するに「絶対的正しさ」のことです。
以前も書きましたが、韓国では他者が自身と異なる考えを持つと「裏切られた」と感じる傾向にあり、思考の多様性を極端に嫌う社会とも言えます。


ですので「自分と相手の意見が異なる」となった場合、何があってもそれを覆さないといけない、そんな思考が強く働くわけです。
結果として、韓国では異なる意見、異なる視点というものが一切許容されず、「一つの正しさ」「一つの視点」に集束させるために、理屈ぬきの「正しいから正しいのだ」という考えが生まれ、他者に対してもその一つの正しさを受け入れさせるための要求が行われる傾向にあります。


また、記事中では韓国では反日が減ってきており、日本では差別感情から嫌韓が増えてきているとしていますが、これは「絶対的正しさ」と「全て他人のせい」と典型的な「蔑視ありきの自民族中心主義」の複合です。


韓国では自己の正当性を証明するのにも他者の劣等性が必須です。
ですから、先ほど挙げた嫌韓流に対する合理化的解釈と同じように、「日本人は韓国人への差別感情があるから嫌うのだ」とする事で、彼らの様々な行いは「(相手の落ち度と言う)理由があるからやっているのだ」として正当化され、或いは「一部の人がやっているだけ」と他人のせいにすることで、日本人から見たら反日以外の何物でもない行為も、彼らの中ではこれによって「正しい行い」「自分とは関係ないこと」となっていると、そんな事が解るわけです。


ですからマンガ嫌韓流にしても、自らの「一つの正しさ」を証明するために、韓国人は自らに対する否定的な意見を全て「劣等な思考」と定義しなければいけない、それが彼らの「当たり前」なのです。


更に余談となりますが、韓国で反日が減っているというのはある意味で正しいです。
それはつまり以前から書いているように、思想対立に起因する明確な反日が減り、民族主義の発露としての結果の反日が増えてきた、それだけのことなのですが。