画像は本日12日のソウル光化門広場に現れた断頭台(ハリボテ)
さて、本日は一連の崔順実問題に関連し、韓国独特のいわゆる「民族・国民情緒」に流される形で、民族主義に根ざしたポピュリズム化がどんどん進行していっている件について書いていきます。
現在韓国では、崔順実問題に関連し朴大統領のみならず与党や与党公認で次期大統領選に出馬しようとしていた潘基文国連事務総長の支持まで減少傾向にあるが、平行して親北で原理主義的民族主義者の文在寅氏や所属野党の「共に民主党」への支持が若い世代を中心に高まっている。
そして文在寅氏は、現在の韓国では露骨な親北やイデオロギー的な扇動はあまり支持を得られないため、民族・国民情緒に依存する形でポピュリズム的な民族主義の扇動を行っており、それに乗る形で選挙前に実質的な大統領権限を手に入れようとしている。
その結果扇動され易い国民性のこともあり、韓国はこれまでよりも更に民族主義が先鋭化してきており、どんな形であれ「(正確な状況判断なしで)不用意に関わると民間であっても危険」と呼べるほどの状態になりつつある。
※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
1:政府が「死に体」のまま野党が暴走
まずはこちらの記事から
国政介入: 「外交・戒厳権もよこせ」 大統領気取りの文在寅氏
朝鮮日報 2016/11/11
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/11/11/2016111100917.html
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/11/11/2016111100917_2.html
インターネットアーカイブ
(1/2ページ)(2/2ページ)
「陰の実力者」として韓国の国政に介入した疑惑が持たれている崔順実(チェ・スンシル)氏の問題および米国大統領選挙をきっかけとして、文在寅(ムン・ジェイン)前「共に民主党」代表(写真)が、韓国の国内問題はもちろん外交・安全保障などほとんど全ての懸案について自らの立場を提示している。しかし、与党のみならず野党内部からも「早々と大統領職引き継ぎ委レベルの行動を取るのは性急ではないか」という指摘が出ている。
(中略)
文・前代表は、市民社会の人々と会談して「大統領の固有権限となっている軍の統帥権、戒厳権、また国家情報院(国情院)・監査院・司法部・憲法裁判所(憲裁)内の大法院長(最高裁長官に相当)と大法官(最高裁裁判官に相当)、憲裁所長と憲法裁判官などをはじめとする多くの人事権など国政全般を挙国中立内閣に委ね、大統領は国政から手を引くべき」と主張した。この通りにした場合、事実上野党が指名することになる首相が戒厳令を宣布することもでき、司法部門の顔触れも操ることになる。これについて、文・前代表サイドは「国家危機の状況なので責任感ある姿を見せる」「支持層からは『なぜ政権退陣運動に乗り出さないのか』という非難の声が聞かれるだけに、慎重かつ責任を持って処している」と語った。
しかし、与党はもちろん野党からも「いかに有力な大統領選ランナーとはいえ、もう大統領になったつもりで行動しているのではないか」という批判が出ている。与党セヌリ党の李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表は「(大統領が)国軍統帥権や戒厳発動権まで渡すべきだと主張する意図は何か」と指摘し、野党「国民の党」所属の朴柱宣(パク・チュソン)国会副議長は「国民が作ってくれた権力を、選挙を経ることなく、憲法が改正されてもいないのに丸ごと奪取しようとする、そういう姿勢は正しくない」と語った。また、民主党のある議員は「普段は言行が割に慎重という評価を受けているが、最近は文・前代表が『万機親覧』しているようだ。大統領職引き継ぎ委を立ち上げたかのような誤解をされては困る」と語った。
この記事なのですが、要するに文氏は選挙前に事実上大統領権限を自分のものにしようとしているという事になります。
なぜこんな主張がまかり通っているのかといえば、それは彼ら独特の価値観である「被害者が一番偉い」が関係しており、現在の韓国において朴大統領が「加害者」認定を受けていると同時に、実質的に文氏が「被害者のトップ」のように振舞えているからです。
これなのですが、本来ここまでするのならばいっそ朴大統領の弾劾をしてしまったほうが良いはずなのですが、恐らく文氏は「加害者が大統領として居座っている」という状態が続きながら、実質的に国政が野党のものになる状態を望んでいるようなのです。
要するに、政府としての責任を朴政権に残したまま、権限のみを野党に委譲させるという事で、朝鮮日報はこの野党の動きを「デモ隊の顔色をうかがいつつ、国政が正常化されることも望んでいないため」としています。
【社説】トランプ勝利の衝撃、死に体の朴大統領と無責任な野党は耐えられるのか 朝鮮日報 2016/11/10 (1/2ページ) (2/2ページ)
つまり「政争ありき」で「被害者でい続けたい」という事になるのですが、こんな状態でも誰も「止める事ができない」のは、前回の記事でも書きましたが現在韓国は「全部朴大統領と崔順実のせい」という状態だからです。
国政介入:「指示に従った」 側近らは朴大統領に責任転嫁 朝鮮日報 2016/11/11
その流れのまま主要財閥などに捜査の手が入っているため、下手に苦言をすると「財閥を守っている=崔順実の仲間(=加害者)」認定を受けかねないからです。
韓国検察がポスコ会長聴取へ 大統領親友の側近の疑惑絡み 聨合ニュース 2016/11/11
サムスンを家宅捜索 朴大統領親友の娘に資金提供か=韓国検察 聨合ニュース 2016/11/08
つまり事実上文氏の暴走を止める事ができる人間がおらず、しかも文氏自体がデモ隊の顔色をうかがっている状態であるため、誰も状況をコントロールできていないのです。
2:民族主義を煽って支持集め
韓国は現在こんな状態なのですが、この状態の韓国で徐々に支持率を高くしているのが文氏であり、更に彼は2012年の大統領選挙において、実は20~40代に限れば高い支持率を得ていました。
20代の支持率はついに1.6%に…朴槿恵大統領は4年前から若者に支持されていなかった S-KOREA/livedoor news 2016年11月8日
そして若い世代から高い支持を得ているのは、彼はガチガチの親北系でありながらあまりその事は公言せず、むしろ若い世代の民族主義の先鋭化を良く把握しているため、彼らの民族主義を満足させるアピール活動に長けているからです。
たとえば、今年7月に彼は慰安婦合意などにより「日韓の関係が改善される」と韓国の保守系やマスコミが報じている中で竹島上陸パフォーマンスを行っていますし、野党として慰安婦合意や日韓軍事情報協定にも反対しています。
韓国野党の文在寅前代表が竹島上陸、大統領選に向けPR? 産経新聞 2016.7.25
日本との軍事情報協定 来週ごろ仮署名=「拙速」の批判も 聨合ニュース 2016/11/11
そしてこうした動きは、単に反対しているというだけではなく、「日本の軍国主義化に反対する」という、要するに「日本の劣等性」を指摘することで韓国人の優越性を確立する形で行われており、背景には韓国人の民族主義を満足させる目的があるのです。
こうした韓国人の考え方に対し、去年アメリカの識者がわざわざ韓国にやってきて「その考えはおかしい、日本は味方だ」と「論理的に」訴えていたのですが、彼らは結局その話を一切聞かなかった、というより民族主義が先鋭化しているために受け入れられなかった背景があります。
米識者「歴史は重要だが圧力は敵に加えるものでは?」 朝鮮日報 2015/04/30
米識者「陸自の人数が韓国の3分の1でも心配というのは…」 朝鮮日報 2015/04/30
米識者「韓国人の対日観、自信を持って自ら歴史脱却を」 朝鮮日報 2015/04/30 (1/2ページ) (2/2ページ)
更に韓国では、このような動きから以前も書いた「儀式」が活発化しており、最近も「幼稚園という単語は日帝残滓だから清算作業をするべきだ」や「韓国の学校にあるカイヅカイブキは日本が植えたものだから切り倒せ」などの動きがあります。
(※1)
幼稚園→乳児学校日帝排除遠い道 東亜日報(韓国語) 2016-11-10
こうしたいわゆる「日帝残滓の排除運動」を主導してきたのも、文氏などの親北系民族主義者が多数を占める現在の韓国野党であり、また他にも韓国人の一般的な歴史観に基く考え方である「日本は文化を作り出せない劣等な民族であり、日本の文化は全て自分達が教えたものだ」とする考え方も、彼らのほうがより原理主義的です。
またこうした動きは、単純に彼らが扇動してきたというよりも、彼らは世論が望むものを与えてきたという性質のほうが強いです。
要するに、現在の韓国では比較的抑制的な論調で「用日」を訴えていた韓国の与党系は、崔順実問題を切っ掛けとして韓国内で発言力を完全に失い、これまで若い世代に迎合する形で民族主義をアピールして、着々と力をつけてきた文氏などの親北系民族主義者が主導権を握ったのです。
3:韓国人は若い世代ほど原理主義的
今回書いたように、崔順実問題を切っ掛けとし韓国ではそれまで水面下で影響力を広げてきた原理主義的な民族主義が、文氏の支持率増加によってとうとう明確な形で表に出てきました。
ここで重要なのは、韓国の原理主義的な民族主義者は往々にして相手の話を聞きませんし、文氏のような人物は常にそうした世論にポピュリズム的態度で接するという事です。
日本で韓国の側に立つような人々は、「韓国の若い世代は反日ではなく融和的だ」と主張しますが、それはあくまで「原理主義的な彼らの考え方」を肯定する場合のみであって、少しでも彼らの歴史観を否定すれば一気に排他的になります。
要するに、「日本の文化は全て自分達が教えてやった」「日本の嫌韓は韓国に対する嫉妬だ」という意見以外は一切受け付けないという事です。
たとえば以下の記事ような論調が韓国の若い世代の一般的な考え方だということです。
(※2)
「日本の‘嫌韓’流布、しかし、韓日交流は続かなければ」 マネートゥデイ(韓国語) 2016.11.07
つまり、日韓友好を訴えるような人々の大半は、そもそも韓国のことなどまるで見ていないか、或いは主観的な印象のみで語っているか、そうでなければ嘘をついているだけという事です。
要するに彼らは単に無責任なだけなのです。
そして今後の私達は、民族・国民情緒と呼ばれる韓国独特のポピュリズムに左右される原理主義的な民族主義者達と、北朝鮮や中国の問題がある限り否応無く関わっていかないといけないわけですから、今後はよりいっそう慎重に状況把握が必要になります。
一見すると友好的な態度をとってきたからと何も考えずに受け入れると、今後は今まで以上に大きな被害を受けることになります、なぜなら韓国側の友好的な態度は彼らの原理主義的な理想から外れれば一瞬で消えてなくなるからです。
ちなみに余談となりますが、今後の韓国が具体的にどうなっていくのかは「民族主義が更に先鋭化していく」以上のことが私にはさっぱり読めません。
そもそも文氏や韓国野党の行いに全く長期的な計画性が見えてきませんし、与党も潘基文氏もまるで態度を明確にしていませんし、恐らく朴大統領は「(精神的に)折れて」います、そして世論は単純に「朴大統領の劣等性を指摘したいだけ」です、つまり単純に「予想材料が無い」だけなのですが。
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(※1)
幼稚園→乳児学校日帝排除遠い道
東亜日報(韓国語) 2016-11-10
http://news.donga.com/3/03/20161110/81256910/1
代表的日帝残滓だった「国民学校」の名称が「小学校」に変わって20年過ぎたが、教育界では相変らず日帝残滓の清算作業が進められている。「幼稚園」という名称や日本式命名法により建てられた学校名を変えて日本産樹種を校庭から追い出す作業も進行している。
○幼稚園名称変更は‘停滞中’
9日、教育界によれば日帝残滓と見なされる「幼稚園(ユジウォン)」の名称を変えなければならないという意見は継続的に提示されているものの改称議論には特別な進展がない。幼稚園という名称は日本人たちが子供の乳児教育のために1897年、釜山(プサン)にたてた「釜山幼稚園」から始まった。
日本人がドイツ語の‘キンダーガルテン(Kindergarten・子供たちの庭)’を日本式にした用語だ。中国でも幼稚園名称を使っていたが1945年、終戦後、名称を乳児院に変えた。
幼稚園の名称を変える試みは継続的に行われてきた。日王ヒロヒト(裕仁)が1941年、皇国臣民教育を強化するために作った名称である‘国民学校’を1996年に‘小学校’に変え、幼稚園の名称も一緒に変えるべきだという意見が提示されたが注目を集めなかった。2004年、乳児教育法が制定されたときも一部に議論があったが改称されず、2014年にもセヌリ党イ・グンヒョン議員が幼稚園を「乳児学校(ユアハッキョ)」に変える乳児教育法改正案を発議したが法案は通過しなかった。
(中略)
また、学校に植えられている日本の代表的な造景樹であるカイヅカイブキも日帝残滓に含まれ除去対象だ。カイヅカイブキは1909年、伊藤博文が大邱(テグ)達城(タルソン)公園に2株を植えたのを始め全国に広がった。教育当局はカイヅカイブキが校木ならば他の種類に交替するよう案内しており、国旗掲揚台など周辺にあるこの木は除去するよう知らせている。
日帝残滓は清算する必要があるが、教育的に必要な部分まで排斥してはならないという反論もある。例えば修学旅行が日帝強制占領期から始まったとしても、現在は教育の一部門に席を占めたし、日本式教育文化という指摘がある頭髪および服装検査なども学生指導次元で肯定的機能もあるだけに慎重な議論が必要だという指摘だ。
(※2)
「日本の‘嫌韓’流布、しかし、韓日交流は続かなければ」
マネートゥデイ(韓国語) 2016.11.07
http://news.mt.co.kr/mtview.php?no=2016110218157824402
(一部抜粋)
韓日間の感情的対立の原因を求めて最近「日本の国家戦略と東アジア安保」という本を出した鄭求宗(チョン・グジョン)東西(トンソ)大国際学部客員教授兼韓日交流会委員長に会った。
チョン教授は「‘嫌韓’については中国、韓国の浮上にともなう日本のいらだちが発現した事例で日本社会全体の雰囲気というよりは一部に現れる現象」と定義した。合わせて「屈辱的歴史に対する韓国人の否定的感情と反対に増える日本の反韓感情が減るには時間が必要だ」として「このためには両国間の交流を通じて理解しようとする努力が必要だ」と強調した。
特に彼は「韓日交流関係は2000年前から持続してきたし、1876年江華島(カンファド)条約以前1000年以上は韓国が優れた文化と技術を日本に伝播し日本の支配を受けた数十年間は日本が先んじてきた」として「今は対等な競争関係に入り、北核に対応するための安保協力パートナーとして関係もより一層しっかりしなければならない」と強調した。
(中略)
-歴史的に日本は韓国にどんな存在だったか
「‘日本と韓半島2000年’というドキュメンタリーをNHKで何年か前に特集放送したことがある。日本の歴史学者らが日本あちこちで出土した種もみや土器遺物を見て約2千年前から韓半島から伝来した文物と評価した。その当時は文化面でも生活面で韓半島がはるかに発達した国であった。壬辰倭乱の時、陶工たちを拉致した理由も日本人たちが習えなかった技術文化を発展させるためだった。
朝鮮通信使が往来した18世紀までは優秀な文物と人的資源など文明の利器が韓半島から日本に渡っていった。日本で書画を書き、詩を作り、漢字も解釈して公演団も行って様々な文化を伝播したと歴史が語っている。日本が1800年に入ってから、米国、ロシア、ヨーロッパから圧力を受けて門戸を開放した後、ムヌァショクを受けることになりながら明治維新が始まった。これを通じて日本は近代的統一国家が形成された。経済的には資本主義が成立し政治的に増えた立憲政治が開始されたし社会文化的には近代化が推進された。
先進技術文明を習おうと数百人を各国に派遣して軍事、文化、経済など多様な部分で早く技術を習得してその威力でアジアを圧迫し始めた。最初のスケープゴートが韓半島だ。江華島に攻め込んで門戸開放を強要し強制的に江華島条約を締結した。
(後略)