日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

【ゆっくり解説】ウナギ


お待たせしました、変な生き物動画第10回、今回は「ウナギ」についてです。


本日の投稿動画


YouTube
https://youtu.be/bDpFyO8OEjc

以下は動画のテキスト版です。

注意
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください

・キャラ崩壊あり

・うp主はただの「変な生き物好き」です




レイム マリサ 大口
ゆっくりしていってね


大口
お待たせしました、変な生き物第10回、今回は皆さんもおなじみの「ウナギ」について扱っていきます。


レイム
ねえ、ウナギってどこが変な生き物なの?


マリサ
そういやそうだぜ。
今は数が減っているとはいえ、地域によっては普通に川にいる生き物だろ?


大口
ああ、それね。
確かに地域によっては身近な生き物だし、釣りの対象だったりするからあまり「変な生き物」ってイメージはないかもしれないけど、ウナギって実は生態がかなり「変わっている」んだよ。


レイム
なんかそう言われてもあまり実感わかないわね。


マリサ
「実はウナギは魚じゃなくて蛇の仲間でした」とかか?


大口
いや、ウナギは間違いなく魚類なんだけど、まあそのあたりの話も本編でするね。


マリサ
つまりあれか、むしろ蛇魚類説なんだな?


レイム
ハイハイ。


大口
マリサ、実はそれかなり重要な情報だよ。


レイム
え?


大口
まあそのあたりも本編でね。


ウナギの仲間


大口
それで、蛇とウナギ云々の話をする前に、この世の中には「ウナギ」という名前がつくけど実はウナギの仲間ではない生き物が結構いるんだよ。


レイム
というと?


大口
たとえばデンキウナギ

デンキウナギって、実はウナギからはかなり「遠く」て、この系統樹を見てもらうとわかるけど、ナマズに最も近くてコイとかも近縁の種なんだよ。






マリサ
え?あれウナギじゃないのかよ!
なんか騙された気分だぜ。


大口
次に西日本の用水路とかによくいるタウナギ
これも実はウナギって名前がつくけどウナギとはかなり「遠い」生き物で、系統樹でみると「アナバンティフォルム」って学名の魚と近縁となっているのね。







レイム
「アナバンティフォルム」って何?聞いたことない魚だけど。


大口
これね、いわゆる「キノボリウオ」のことで、熱帯魚のグラミーとかもこの系統なのね。


マリサ
え?タウナギってグラミーと近縁なのか?


大口
遺伝子的にはね。

それと、ヤツメウナギヌタウナギ、この2種も実はウナギとは全く関係ないというか、この系統樹を見てもらうとわかるけど、魚類からはかなり「遠い」事がわかるのね。







レイム
ちょっとまって、これを見るとヤツメウナギとかヌタウナギって魚類よりも「ホヤ」に近いみたいだけど?


マリサ
うわ、うp主もこの前アメリカで起きたヌタウナギ搭載トラック事故みたいに粘液出すのか?


【動画】ヌタウナギが散乱、車や道が粘液まみれに


大口
失礼な!出さないよ!
系統樹ちゃんとみて!「近い」わけじゃないよ!
ヌタウナギのあれは捕食者からの防御用で、粘液を出すことで外敵の鰓を詰まらせる武器だから。


レイム
まあ要するにウナギって名前は付くけど実はウナギとは「遠い」生き物が多いって事ね。
じゃあ逆にウナギの近縁ってどんなのがいるの?


大口
ああ、それね。
たとえば有名なところではアナゴとかハモの仲間がそうで、この2種は同じウナギ目の生き物だね。


大口
あとはウツボとかもウナギ目の魚でウナギとは近縁だよ。


マリサ
というか、どれも細長い魚だな。
でもデンキウナギとかタウナギとかは別系統なのか。


レイム
ああ、収斂進化ってやつよね。
別系統の生き物が、同じような環境や食性で似たような形に進化するっていう。


大口
で、更にね。
さっきの蛇の話がここで関係してくるんだけど、実は「ウミヘビ」と呼ばれる種には2系統あって、一つはコブラ科の仲間の爬虫類、そして実は魚類にもウミヘビ科があって、これがウナギ目なんだよ。


レイム
ああ、それでさっきマリサの話を「重要」って言ってたのね。


マリサ
私はこれを予見していたんだぜ!


レイム
ハイハイ。


大口
そしてさらにね。


※記事詳細は同時掲載のブロマガ記事にあります。

うなぎ1億年の謎に挑む
うなぎ博士・塚本教授がCNCPで講演
Mizu Design 
https://mizudesignjournal.com/transcription/792.html

2009年にマリアナ諸島西方海域でニホンウナギの卵の採集に成功し、それまで謎だった産卵場所を特定したことでも有名な塚本勝巳・日本大学教授が、先ごろ千代田プラットフォームスクウェア(東京都千代田区)で開催された「第1回CNCPサロンにて「うなぎ1億年の謎に挑む」と題して講演されましたので、その概要を紹介します。

なお、CNCPとは「シビルNPO連携プラットフォーム」の略称。公益社団法人土木学会の創立100周年の記念事業として設立されたNPO法人で、全国の建設系NPO法人との幅広い連携をめざす中間支援組織です。塚本先生は、CNCPうなぎ完全養殖インフラ整備事業プロジェクトの顧問でもあります。CNCPについてはこちら。
ウナギは海の魚。海で生まれ、川で育つ

地球に現れた最初のウナギはその昔、深海魚だったようです。外洋の中深層に住んでいる現世のシギウナギやノコバウナギと共通の祖先をもち、現在のウナギとはかなり異なる姿だったようです。

1億年前にボルネオ島の川へ遡ったものが、この地球上で最初のウナギになりました。以後綿々と川に遡る習性が引き継がれ現在に至っています。ですから、今も川で成長するウナギは、海に帰って卵を産むのです。

赤ちゃんはレプトセファルスと呼ばれます。普通、動物の赤ちゃんは頭でっかちですが、ウナギの赤ちゃんの頭は小さい。レプトセファルスというのは、“小さな頭”という意味です。マリアナ海溝で卵から孵ったレプトセファルスは、海流に乗って移動をはじめます。日本近海には黒潮に乗ってやってきます。その間に成長し、4カ月ほどでシラスウナギへと変態します。

変態すると体の水分が減り、体表面積が減って摩擦抵抗が減るために、海流に乗っているのが難しくなって海流から降りる。降りた場所がシラスウナギが河口にやってくる場所ということになります。どこで変態が終わって、どの河口にやってくるのかは偶然でしかありません。

シラスウナギは春にクロコとなり、川を遡上します。中流域で黄ウナギとなって10年ほど川で過ごします。そして、成熟が始まると銀ウナギへと変態します。銀ウナギ特有の色は、アジやサバのお腹の金属光沢を持ったグアニンという物質が沈着するためです。そうなると川を下り、海に出て、産卵のためにマリアナ沖を目指します。半年ほどで産卵場につき、産卵し、一生を終えます。

卵からシラスウナギまでの半年が海、黄ウナギで10年ほどは川、銀ウナギから産卵場までの半年がまた海ですから、海にいるのは合わせて1年ほどしかありません。ウナギは海水魚の図鑑には載ってないことが多く、淡水魚と誤解している人も多いのですが、深海魚が起源ですし、繁殖も海。海に強く依存した魚なのです。
最新の電子工学の粋を集めた装置で謎に迫る

ウナギはマリアナ海溝の一番深いチャレンジャー海淵から100㎞ほど北の西マリアナ海嶺南端部の海山域で産卵します。広い海の中ではほとんどピンポイントと言える狭さです。ここは4000mくらいの深海ですが、ウナギの産卵は海面から200mくらいの比較的浅い水深で行われると考えられています。日本で育ったウナギも台湾や中国で育ったウナギも、みんなこのマリアナの産卵場に戻ってきます。日本海溝フィリピン海溝など、似たような環境は近くにあるはずなのに、マリアナの海でしか卵を産まないのは、不思議でしょうがありません。

こうした産卵回遊生態を解明するのが近年の電子工学の粋を集めて作ったポップアップタグとよばれる装置です。

これをウナギの背中に付けて放すと、センサーが水深や水温、照度などのデータを集めてくれます。タグがウナギから切り離されて海面に浮上すると、人工衛星経由でデータが地上局に送られてきます。そのデータを解析した結果、夜は水深200m、昼は800m前後の層にいて、規則的な日周鉛直運動をすることが分かりました。

昼間に明るい浅層にいるとマグロやサメに食べられる危険があるため、水温が5℃くらいの800m層に隠れているのです。でも、お腹の卵の成熟を進めるにはあったかい水温が必要なので、夜になって捕食者の危険がなくなると、水温が20℃くらいの浅い層に上がってきます。
これまでの産卵場調査からわかったこと

メスは一回の産卵で300万個も卵を産みます。オスが精子をふりかけ、受精卵は1日半後に孵化します。卵は孵化直前になると直径10kmもの広い範囲に分散しています。卵は海水より比重が小さいので海中で浮上し、海水密度に大きな変化のある躍層(海面下約150m)にたまります。卵も孵化した仔魚も北赤道海流でゆっくりと西へ運ばれ、やがて台湾沖で黒潮に乗り換えて日本にやってくるのです。
ウナギは大切な食糧であり、神でもある

ウナギというと、背中が黒くてお腹が白い、というイメージではないでしょうか。それらはすべて養殖ウナギです。天然のウナギは黄ウナギと呼ばれ、黄色がかった複雑な色合いをしています。成熟が始まると、黄ウナギは黒またはこげ茶のいぶし銀のような体色に変わります。これを銀ウナギといいます。

ところで、今は世界に16種のウナギがいることになっていますが、3年前までは15種と言われていました。新種が1種、フィリピンのルソン島で発見されたのです。アンギラ・ルゾネンシスと名付けたこの新種は私たちの研究室の成果です。16種の中にはニュージーランドオオウナギのように体長が1.5mもあるウナギもいます。先住民のマオリ族にとってそれは大切な食糧資源であり、神のような伝説の存在でもあります。これは食文化や資源の持続的利用を考える際に基本的な心構えを教えてくれる好例ではないでしょうか。

お店に出るウナギのほとんど全ては、天然のシラスウナギを獲ってきて養殖したものです。近年このシラスウナギ資源が減って、ニホンウナギ絶滅危惧種に指定されてしまいました。しかしニホンウナギの場合は、パンダやトキのように地球上に現存する絶対数が危機的状況にあるというわけではありません。まだ食べるほど流通しています。

その減り方が激しいために、絶滅の危険があるとして指定されたのです。かといって、今のまま資源を放置し、有効な保全策を取らずに利用し続けることは危険です。ニホンウナギが分布する東アジアの国々が力を合わせて持続的な資源利用の方策を練る必要があります。
研究っておもしろい!

鼻紙のようなものでもいいから論文をたくさん書きなさいと先生に言われ、論文も書籍もたくさん書きましたが、その中でダントツのベストセラーは小学校4年生の国語の教科書として書いた科学読み物「ウナギのなぞを追って」です。これは何百万人もの子供達が読んでくれています。

私自身も「うなぎキャラバン」といって全国の小学校に出かけて行って、ウナギの話をする出前授業のようなものをしています。最初はウナギの研究成果を話し、ウナギに興味を持ってもらえたら、それがウナギの保全にもつながるのではないかと思って始めたものですが、最近では研究の面白さ、ワクワク感を子供達に伝えられたらと、少し方向が変わって来ました。

こんな話もします。2009年5月、マリアナ諸島の西方海域でウナギの卵が初めて採れた時の話です。採れたその瞬間は喜ぶどころではなくて、私は脱兎のごとく船内の階段を駆け上がり、船長に卵の採れた地点まで船を戻してもらいました。そこからもう一度プランクトンネットを入れ、同じ方向に、同じ水深、同じ距離を同速度で引いてみました。

科学は再現性が大事です。誰がやっても何度やっても、同じ条件なら同じ結果が出るはずです。1回目には、ニホンウナギのものらしい卵が3粒採れ、そのうち2粒は遺伝子解析の結果、ニホンウナギでしたが、もう1粒はノコバウナギの卵とわかりました。2回目の曳網の結果、2粒が採れ、今度はそのどちらもニホンウナギのものでした。

確かにその辺りにニホンウナギの卵が分布していることが確認できたのです。そして私たちはついにニホンウナギが卵を産む地点を突き止めることに成功しました。世界初のことでした。

その後2日間に亘り、30人くらいの乗船研究者はだれもベッドに入って寝ることなく調査を続けました。卵の水平方向の分布や鉛直方向の分布、海洋環境などの情報が次々に明らかになってきました。あらかた調査が終わり、ひと区切りがついたところでみんなバタンとベッドに倒れこんで寝ました。どのくらい寝たのか記憶にありませんが、目が覚めてみると夕方でした。

船はゆったりと船体をローリングさせながら微速前進しています。みんながぞろぞろ起き出してきてデッキに集まりました。そよ風が吹き、気持ち良い夕べです。その時、ようやく卵が取れたという実感がわいてきました。

「本当に卵が取れたんだね〜」
「よかったね〜、よかったね〜」



大口
ウナギ研究の第一人者である塚本勝巳教授によるとウナギの祖先は深海魚、1億年前にボルネオ島の川へ遡ったものが現在私たちが目にするウナギの祖先で、ウナギが川をさかのぼるのもこのころの習性が引き継がれているそうな。


大口
なので深海魚のシギウナギやノコバウナギとも遺伝子的に近縁関係にあって、ウナギの産卵場所も深海魚だった頃の特徴を受け継いでいるそうなんだよ。




シギウナギ




ノコバウナギ



マリサ
え?ウナギって元々深海魚なのか?
というかノコバウナギってなんかウナギとあまり似ていないし、シギウナギに至っては何だこりゃ?


レイム
というか、元々ウナギもこういう形だったって事?


大口
それはちょっとわからないな。
ウナギ直系の化石とかはまだ発見されていないようだし。


マリサ
というか、その話の流れだとウナギの産卵場所って深海なのか?


ウナギの生態


大口
マリサ、いいところに気付いたね。
ここからがこの動画の本題で、ウナギが変な生き物である理由なんだよ。


レイム
ウナギってそんなに「変」なの?


大口
「かなり」ね。
そもそもウナギの生態が解って来たのって21世紀に入ってからで

ウナギの祖先は深海魚 DNA解析から推定 東大など
朝日新聞 2010年1月6日
https://www.asahi.com/eco/TKY201001060093.html

ウナギの祖先は深海魚だった。そんな推定を、東京大海洋研究所と千葉県立中央博物館のグループが遺伝子の解析から示し、英科学誌バイオロジーレターズ電子版に6日付で発表した。

 ニホンウナギを含むウナギ科の魚は川や湖の淡水域で主に成長するが、生殖活動の場は外洋だ。ニホンウナギの産卵域はマリアナ諸島近くの深海と最近わかった。

 外見のよく似たアナゴ科やウツボ科の魚は浅い海に生息している。これに対し、深い海で生まれるウナギが、なぜ川や湖で育ち、大回遊してまた海に戻るのか、よくわかっていなかったが、その謎に迫る成果だ。

 グループはウナギ科を含む近縁の19科56種が細胞に持つミトコンドリアDNAの全長塩基配列を比較し、系統関係を調べた。すると、その中ではウナギ科の魚はアナゴ科などとは関係がやや遠く、熱帯付近の中深層にすむシギウナギ科、ノコバウナギ科、フクロウナギ科などと近いとわかった。巨大な口や、くちばしのようなあごをした奇妙な形の深海魚もおり、ウナギ科とはむしろ遠い関係とみられていた仲間だ。

 このため、ウナギの祖先はシギウナギなどと同じような深海にいたが、熱帯から温帯にかけては、海より淡水域の方が栄養豊富なため、えさを求めて成長の場を淡水域に移すように進化したと推定できた。千葉県立中央博物館の宮正樹・上席研究員は「淡水域にウナギと競合するような大型魚類がいなかったことも、こうした回遊を容易にしたのかもしれない」とみる。

 ウナギの生態を研究する塚本勝巳・東大海洋研教授は「ニホンウナギとノコバウナギは親の形は違っても、卵の形はそっくり。長い年月をかければ外洋から淡水域へ生活を広げることも可能だ」と話している。



大口
「ウナギの祖先は深海魚」とわかったのも2000年代に入ってからなんだよ。
ついでにさっきアナゴとかハモとかと近い種って言ったけど、むしろシギウナギとかノコバウナギの方が遺伝子的には「ウナギに近い」んだそうな。


大口
「どこで枝分かれしたのか」は調べたけどちょっとわからなかったけどね。
もしかしたらまだよくわかっていないのかもしれないけど。


マリサ
なんかあれだな、ウナギの祖先が深海魚ってのも驚きだが、他の近縁種より「より深海魚に近い」ってのもすごいな。


大口
そしてウナギの産卵場所も近年になって発見されていて

日本列島から南へ2,500km!!
熱帯の太平洋上で世界初のウナギの親魚を捕獲!
黒木 洋明 (中央水産研究所 資源増殖研究室)
https://www.fra.affrc.go.jp/kseika/211028/program5.pdf

1.はじめに
長年の研究の結果、ウナギの人工種苗生産は技術的には可能になりました。しかしながら、この技術による安定供給にはまだほど遠く、多くの解決すべき問題が残っています。その中で最も大きな課題は、産卵用の親ウナギをうまく性成熟させ、産卵させることができないため、良質な卵の安定生産ができないことです。また、生まれた仔魚の成長は悪く、シラスウナギへの生残率もきわめて低いという問題もあります。

これらの問題を解決するためには、まず第1に人工的に卵を産ませる親ウナギの飼育環境を改善することが必要です。ところが、これまでお手本とすべき天然親ウナギの回遊や産卵生態はほとんど明らかになっていませんでした。海へ下った後のウナギの行き先はほとんど分かっていませんでしたし、そもそも、海で泳いでいる成熟したウナギを誰も見たことがなかったのです。

2.ウナギの産卵場

ニホンウナギの産卵場探しは、より小型の仔魚を追い求めることによって行われました(図1)。つまり、より小さな仔魚のいる場所がより産まれた場所(産卵場)に近いという考え方です。

太平洋のニホンウナギについては、2005 年に東京大学海洋研究所の塚本教授らが、ふ化してから数日たったニホンウナギ仔魚を西マリアナ海嶺にあるスルガ海山の西側で採集することに成功し、産卵場を特定しました。これにより、ニホンウナギは日本から南へ 2,500km も離れた熱帯の外洋域で産卵する大きくそびえる海山を目印として雄と雌が出会い、産卵行動を行うことがほぼ確実となりました。スルガ海山は、頂上の水深が 40 メートルくらいで、周辺の水深は 1,000 から 4,000 メートルと、まさに海の中に
そびえる山です(図2)。

しかし、ニホンウナギの産卵生態がこれで全て解明されたわけではありません。この時点でもウナギ類の成魚が外洋域で発見されたことはなく、産卵がどれくらい海山と密接に関連しているのか、また季節や年で産卵する場所は動くのかなど不明でした。さらに、産卵が起こる水深・水温やふ化仔魚の分布水深・水温もよくわかっていません。また、日本の沿岸では秋から冬にかけて、まき網などの漁業により下りウナギが時々捕獲されていますが、海に下ってから産卵海域まで到達するまでのルートについては全くわかっていないのです。

3.ウナギの親魚を捕獲せよ!
そこで、将来的なウナギの安定供給を目指し、未だに多くの謎につつまれている海洋におけるニホンウナギ成魚の生態調査に乗り出しました。

調査は、水産庁の漁業調査船開洋丸と水産総合研究センターの漁業調査船北光丸(図3)を派遣して、2008 年 5 月~ 6 月、2008 年 8 月~ 9 月、2009 年 5 月~ 6 月に行いました。調査海域は、日本から 2,500km 以上南のマリアナ諸島(グアム、サイパンなど)の西方、ウナギの産卵場と想定されたスルガ海山を含む西マリアナ海嶺南部の海域に設定しました(図4)。

ウナギ成魚を捕獲するための漁具には大型の中層トロール網を用い、その他に、プランクトンネットを用いた仔魚及び卵の採集などを実施しました。 しかし、誰も見たことがない外洋のウナギを捕まえるということは、宝くじで1等を当てるようなものです。初めての調査では、調査員一同、ウナギ捕るぞ!と気合いをいれてはいたものの、実際に捕れるか半信半疑で出発したというのが実情です。

4.2008年6月、世界で初めて成熟した雄ウナギを捕獲

当初の調査海域は、産卵場とされたスルガ海山の周辺(北緯 14 度、東経 143 度付近)とし、2008 年 5 月 28 日~ 6 月 1 日にかけて中層ト ロール網をひき続けました。ここでは全くウナギは捕獲できませんでした。ウナギは海山近くにいるだろうという強い先入観があったのですが、捕れない以上はそのこだわりをいったん捨て、スルガ海山を離れることにしました。

そして、スルガ海山から西マリアナ海嶺に沿って南下し(北緯 13 度、東経 142 度)、付近 6月 2 日から 9 日にかけて9回の中層トロール曳網を行いました。そのうち、新月の闇夜となった 3 日と 4 日に行った 2 回の曳網でついに3個体のウナギ属の雄を捕獲しました(図4)。

川にいるウナギと比べて眼が非常に大きく、腹側も含めて体全体が黒っぽい褐色をしていて、本当にウナギだろうか?と疑わせるような外見をしていましたが、DNA 鑑定を行ったところ、小型の2個体がニホンウナギ(標準和名ウナギ、学名 Anguilla. japonica)、大きな1個体がオオウナギ(Anguilla marmorata)と判明しました。3個体とも良く発達した精巣を持っていて、GSI(生殖腺重量の体重に対する割合,単位は%)は13.4 から 18.8 の範囲にあり,ホルモン投与によって人為的に催熟したウナギの GSI よりも高い値を示していました。

この成熟した雄ニホンウナギの捕獲成功により、これまでわからなかった生態的な情報が得
られました。ウナギが入網した水深は 230 ~300m と推定され、この水深における水温は 14~ 20°Cでした。また、捕獲海域は西マリアナ海嶺の上でしたが、水深は 1,200 ~ 3,000m と深いことから、ウナギは海山斜面や海底に生息しているのではなく、中層を遊泳していることがわかりました。さらに、捕獲海域は一番近い海山から約 130km も離れていたことから、必ずしも海山の近辺だけで産卵行動が行われるとは限らないことが示唆されました。

5.2008年8月、今度は産卵後の雌ウナギを初めて捕獲

成熟した雄ウナギの捕獲から3ヶ月後、次は雌を捕獲しようと再び調査を行いました。まずは、雄ウナギを捕獲した海域(北緯 13 度、東経 142 度付近)に向かい、2008 年 8 月 25 日~ 8 月 30 日にかけて中層トロール網を曳き続けました。しかし、ウナギらしきものは全く捕獲できません。そこで、思い切って調査海域を変更すべきと判断し、新月当日の 8 月 31 日には西マリアナ海嶺に沿って約 100km 北上しました。その夜、北緯 14 度、東経 143 度付近(スルガ海山の南約 30km)で中層トロール網を入れ、翌朝にかけて網を曳き続けたところ、2尾のウナギ属が網目の大きな身網部分の網地に引っかかっていたのです(図4)。


顕微鏡での観察でわずかな卵が確認され、ようやく2尾の性別は雌と判定されました。この雌には卵がほとんど残されておらず、体もやせ細っていたことから、産卵が終わった後かなりの時間が経過しており、再び産卵することはない、いわゆるサケでいうところの「ほっちゃれ」と思われました。

6.2009年6月、ついに卵を持った雌ウナギを捕獲

2008 年の調査では世界で初めて成熟したウナギの捕獲に成功しましたが、捕獲された雌は既に産卵を終えており、お腹には卵がありませんでした。そこから得られる情報は限られています。そのため、2009 年の調査では、産卵前の雌ウナギも含めてさらに多くの標本を得ることを目指しました。

調査海域は、海山にこだわることなく、西マリアナ海嶺の南部一帯としました。その結果、世界最深のチャレンジャー海淵に近い海嶺の南端部で2009年6月20日から1週間にわたって、ウナギ8尾(うち雄4尾、雌4尾)を捕獲しました。雄の4尾はよく成熟していて、腹部を押すと精液が出てきました。雌4尾のうちの3尾は 6 月の新月(23 日)前にすでに産卵をし終わった個体でした。残る1尾はまだ多くの成熟卵を持っていましたが、卵が熟し過ぎていたことから、何らかの原因で産卵できなかった個体と考えられました。しかし、雌4個体全ての卵巣には成熟途上の卵が多数残されており、再び産卵することができるものと推測されました。このことからウナギはサケのように1回の産卵で死んでしまうことはないことが推測されました。

さらに、雌を捕獲した海域の近くでは、数百匹ものふ化後まもないウナギの仔魚が同時に採集されたことから、調査海域がまさに産卵場のまっただなかであったことは、ほぼ確実です。

7.産卵回遊調査の意義と今後の展開

ウナギ親魚を捕獲した海域の環境情報や、耳石や生殖腺などの分析から得られる生態や生理に関する情報は、人工種苗生産のための優良な親魚養成にとって非常に重要と考えられます。また、ふ化直後の仔魚が生息していた水深と水温、消化管に残されていた食べ物などの情報も、仔魚の育成環境や餌料の最適化に貢献できるでしょう。

種苗生産技術の進展は、ウナギ養殖の安定生産に貢献するとともに、養殖用の種苗 100%天然シラスウナギに依存している現状から、一部を人工種苗に置き換えることで、天然資源の保存・維持にも貢献できるものと期待されます。


大口
こちらの中央水産研究所の記事によると、1950年代に海へ出たウナギの追跡で奄美や沖縄の沖合にいることがわかり、更に1980年代になってさらにその先のフィリピン沖までいっている事がわかっていたのね。


大口
でもそれでもまだ産卵場所が謎のままだったのだけど、2005年になってついに西マリア
ナ海嶺附近で稚魚の捕獲に成功、どうやらこの辺りが産卵場だと大雑把にわかったんだよ。


大口
そしてさらに産卵場所の特定に

環境 DNA を用いたウナギ産卵生態研究の新展開
○竹内 綾・河邉真子・山 梨津乃・渡邊 俊(日大生物資源),
山本哲史・源 利文(神戸大院人間発達),宮 正樹・佐土哲也(千葉県博),
三輪哲也・福場辰洋(海洋研究開発機構),塚本勝巳(日大生物資源)
https://www.jamstec.go.jp/maritec/j/blueearth/2016/pdf/be16-p29.pdf

2009 年 5 月、世界初のニホンウナギ Anguilla japonicaの天然卵がマリアナ諸島西方海域で発見され、産卵場問題は一応の結着を見たが、産卵集団形成機構や産卵地点の物理化学的特性,産卵親魚数など、ウナギの産卵生態の諸課題は依然未解明のまま残っている。これらの問題を解決するには、まず産卵が起こるピンポイントの地点を正確に予想し、産卵行動を実際に観察する必要がある。このため本研究では環境 DNA 手法に着目し、産卵行動が起こる地点とタイミングを正確に予測することを目的とした。

環境 DNA とは、水中や土壌などの環境中に存在する生物由来の微少な DNA 断片で、これを採取・増幅・解読することで生物種の特定と分布状態の把握が可能になる。この手法を絶滅危惧種に指定されたニホンウナギの産卵生態研究に船上適用できれば、採するだけで非侵襲的、且つ迅速簡便に親ウナギの集合地点を予測でき、産卵行動の直接観察が実現するものと期待される。

2015 年 5 月 19 日と 20 日『なつしま』研究航海(NT15-08)において、ニスキン採水器を用い西マリアナ海嶺南端部海域の計 9 測点(図 1)から採水(水深 3.6 m、100 m、200 m、250 m、300 m、400 m、500 m、600 m、700 m、800 m、900 m、1000 m の計 12 層)した。各測点各層の海水 2L を濾過して、それぞれの濾紙から DNA を抽出し、これを鋳型としてリアルタイム PCR を行った。プライマーとプローブは、これまで計 5 回のニホンウナギの卵発見で実績のあるミトコンドリア DNA16S リボソーム RNA 保存領域の全長 154bp に設けた (Minegishi et al, 2009)。黄ウナギの飼育水について実施した環境 DNA 予備実験から、リアルタイム PCR システムにおける環境水中の有効基準を蛍光強度 1以上と定めた。

解析した計 136 サンプルの中で有効基準を満たしたものが 3 サンプル見つかった。このうち測点 C6t 400m のサンプルはダイレクトシークエンスで 34bp の配列を読むことができた。これと BLAST 検索で100%の相同性を示したニホンウナギとドンコ属 3 種、およびオオウナギの既知の配列を比較したところ、ニホンウナギは全て一致したが、ドンコ属 3 種は 3 塩基、オオウナギは 2 塩基の不一致があった(図2)。さらに、DDBJ データのオオウギ 42 個体の C6t 400m の塩基配列相当部分には 2 塩基の不一致が必ず存在し、且つ種内変異は全く見られなかったことから、C6t 400m の環境 DNA はニホンウナギ由来の可能性が高いと考えられた。現在、さらに次世代シークエンサーを用いた確認を行っている本研究から DNA が著しく希薄な海域でも環境 DNA 手法はウナギ産卵地点の予測に有効であると考えられた。


大口
当時最新の「環境DNA検出技術」といって、水中や土中に含まれるわずかな生物のDNA痕跡を採取・増殖・解読する技術をつかって生物の分布などを調べる手法をつかって、図にあるようにマリアナ沖の9か所の水を採取、それでとうとう2008年に具体的な産卵場所の発見に至ったそうな。


レイム
というか、この話の感じだともしかしてウナギってみんな「同じ場所」で産卵しているってこと?


大口
どうやらそうっぽいんだよ。
まあ、といってもその範囲は数百キロメートルとかなりの範囲っぽいけどね。


マリサ
つまりあれか、ウナギは水深1000メートルくらいの海底で産卵しているってことか?


大口
以前はそう思われていたようで、過去にはNHKのドキュメントでもそういうイメージCGが使われていたんだけど、どうも水深は 230から300メートルくらいの 中層で産卵して、卵はそのまま海流に乗りながら孵化するようなんだよ。


大口
あと、さっき紹介した塚本勝巳教授の記事によると、ウナギの卵の孵化には一定以上の温度がひつようなので、ウナギの親は産卵場所に来ると昼は天敵の少ない水深800メートル付近にいて、夜になると比較的水温の高い200メートル付近に上がってきて産卵をするそうな。


マリサ
温度って800メートルと200メートルでそんなに違うのか?


大口
記事によると、800メートル付近の水温は5度、200メートル付近の水温は20度なんだそうな。


レイム
そういえば、ウナギって養殖しているわよね?


大口
その件なんだけど、ここでもウナギの変わった生態が関係していてね

世界初の「ウナギの完全養殖」、ついに成功!
~天然資源に依存しないウナギの生産に道を開く~
国立研究開発法人 水産研究・教育機構 平成22年4月8日
http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr22/2204082/

ポイント
・人工ふ化仔魚から成長したウナギを人為的に成熟させ、採卵・採精を実施
・これらを人工授精、ふ化させ、ついに完全養殖によるウナギの仔魚を得ることに成功

 独立行政法人水産総合研究センターは、実験室生まれのウナギのオスとメスに成熟誘導処理を実施することにより、卵および精子を採取し、人工授精したところ3月27日(土)にふ化仔魚を得ることができました。この仔魚はその後も順調に発育し、4月2日には摂餌の開始が確認でき、順調に成長を続けています。このことによりこれまで誰も成し遂げなかった悲願の「ウナギの完全養殖」が実現しました。

 この成果により、天然資源に依存しないウナギの再生産の道が開かれ、天然のウナギ資源の保護に役立つと共に、「鰻」という日本の食文化を守る重要な技術となることが期待され、ウナギの養殖にとって大きな前進です。

 今後、産卵場での親ウナギや仔稚魚の捕獲調査結果を加えて、成熟技術や餌の開発をより促進したいと考えています。

*この成果は、農林水産技術会議委託プロジェクト研究「ウナギの種苗生産技術の開発」、水産庁委託費等により実施され得られたものです。

本件照会先:
独立行政法人 水産総合研究センター
経営企画部 広報室 広報企画係長 佐野春美 TEL:045-227-2624
養殖研究所 業務推進部長 伊藤 文成 TEL:0599-66-1831
         生産技術部 繁殖研究グループ長 田中 秀樹 TEL:0599-66-1830


http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr22/2204082/220408besshi.pdf

(別紙)
〔成果の概要〕

1.背景
我が国のウナギ養殖では、その種苗は 100%天然のシラスウナギの採捕に頼ってお
り、不安定な採捕量による種苗供給と極端な価格の変動が養鰻経営を圧迫している。
さらに、近年、ウナギ資源の急激な減少が危惧されており、2009年度はシーズン前半
シラスウナギ漁が極端な不漁となり、ウナギ養殖に必要な量を十分に確保できない事態
となった。ウナギの人工種苗生産技術を開発し、天然資源に依存しない完全養殖を実現
することが関係者の悲願である。

2.これまでの研究の流れ
水研センター養殖研究所では、1998 年に、サメ卵凍結乾燥粉末がウナギの初期餌料と
して有効であることを明らかにし、人工ふ化仔魚を全長 10mm まで成長させることに世界で
初めて成功した。続いて、1999年には餌の改良により250日以上飼育を継続し、全長30mm
を越えるレプトセファルス幼生と呼ばれる仔魚(図参照)にまで成長させることに成功した。
さらに、飼育装置及び飼料の改良を行った結果、2002 年には、ふ化後 250 日前後で全長
55mm前後までレプトセファルス幼生を成長させ、約20日間でシラスウナギに変態させること
に成功した。その後、人工生産ウナギを親として次世代を誕生させる「完全養殖」を目指し
て、養殖研究所および志布志栽培漁業センターで実験室生まれのウナギ稚魚の育成を継
続し、また、一部の個体については稚魚期にホルモンを投与することによって雌化し、雌雄
の親魚候補として養成してきた。これらの親魚候補がふ化から2~5年を経過し、全長45~
70cm に達したことから、人為催熟が可能と判断して本年初めからホルモンの反復投与によ
る成熟誘起を開始した。その結果、雄では4週目から精液が採取でき、人為催熟が成功し
た。雌は6週目頃から成熟の兆候である腹部の膨満および体重の増加が確認され、催熟
開始から8週目の3月26日に排卵誘起に成功し、人工授精によって受精卵がおよそ25万
粒得られた。これらの受精卵は正常に発生が進み、翌日昼前からふ化が見られ、その後も
順調に発育し、4月2日より給餌飼育を開始、順調に成長を続けている。また、今後も数個
体の人工生産魚雌雄から採卵・採精して人工授精を実施する見通しである。

3.今回の成果の意義及び今後の展望
人工生産したウナギを成熟させて正常なふ化仔魚を得たことにより、悲願の「ウナギの
完全養殖」を世界で初めて実現した。本成果により、天然資源に依存しないウナギの再生
産が可能となり、天然のウナギ資源の保護に役立つと共に、「鰻」という日本の重要な食文
化を守る重要な技術となることが期待される。ウナギの種苗生産に関して、諸外国では稚
魚(シラスウナギ)まで育てることにさえ成功しておらず、国内でも養殖研究所から技術指導
を受けた研究機関でのみ稚魚まで育てることに成功しているに過ぎない。このたび、水研セ
ンターにおいて人工生産第2世代の誕生に成功したことは、世界の最先端を独走する研究
成果である。
完全養殖が実現しても、国内のウナギ養殖に必要な億単位の種苗を生産する技術は確
立されていないので、今すぐに養殖用種苗を人工生産によってまかなえるということにはな
らないが、この成果は、資源の減少が危惧されている天然ウナギに依存せずに飼育下で
ウナギを再生産できることが示されたという点、および飼育環境に適応したウナギを選抜し
て世代を重ねることによって安定的大量生産技術開発に向けての進歩が期待できるという
点で大きな意義を持っている。
今後も天然産卵海域での調査結果と併せ長期的な視野で研究を継続することにより、種
苗生産規模の拡大を進め、養殖用種苗の一部を人工種苗で補うことによって天然資源の
回復を図ることや、飼育下で世代を重ねることによって養殖に有利な形質を持った系統を
作出することなどが期待される。

【用語の説明】
完全養殖 対象となる生物の生活史を人工飼育下で完結させること。

プレレプトセファルス この時期は前葉形仔魚期ともよばれ、ふ化後、レプトセファルスに達
するまでの発育段階。全長 3~12mm。ただし、プレレプトセファルスとレプトセファルスの
区分は様々な基準があり、天然のプレレプトセファルスの標本が少ないこともあって、一
概に大きさで区切ることは難しい。

レプトセファルス ウナギ類の仔魚期の名称で、透明な柳の葉のような特徴的な形をしてい
ることから葉形仔魚とも呼ばれる。全長12~60mm。

シラスウナギ 沿岸や河口域に来遊するウナギの稚魚で、現在のウナギ養殖は全て天然
シラスウナギを捕らえて種苗としている。全長50~60mm。

変態 オタマジャクシがカエルになるのと同様に、ウナギはレプトセファルスからシラスウナ
ギへと、短期間に外部形態及び内部組織の劇的な変化がみられる。この一連の変化を
変態と呼んでいる。


大口
一応ウナギの完全養殖、つまり卵から育てた稚魚を大人にして、その大人が産んだ卵を孵化させて大人にして又卵をとるというサイクル自体は2010年に出来上がっているのね。


大口
ただし、水産研究・教育機構の説明によると、どうやら稚魚は自然界ではいわゆるデトリタス(マリンスノー)、つまり動物の死骸や老廃物が分解された物質を食べているようなのだけど、これの代用品が特定のサメの卵くらいしかなくて、安く大量に入手というのが不可能なそうなんだよ。


大口
更に卵から孵化した幼魚もかなり特殊で、ウナギなどが含まれるカライワシ上科の種は、レプトケファルスという、半透明で平べったい形の、成魚とは似て似つかない姿で、

ウナギ人工ふ化仔魚をレプトケファルス幼生まで育てることに成功
養殖研究所・繁殖部・初期発育研究室 
http://nria.fra.affrc.go.jp/kenkyu/seikaH11/nria99002.html

[要約]
我々は最近,人工ふ化したウナギ仔魚を,サメ卵低温乾燥粉末を主成分とした餌により全長10mm程度まで成長させることに成功した。しかし,この餌では透明な柳の葉状のレプトケファルス幼生には育たなかった。そこで,消化器官が未発達な仔魚の消化生理を考慮し,タンパク質を低分子に分解したオリゴペプチドおよびビタミン・ミネラル等を添加した餌を与えることによって最長250日以上飼育し,大きなものは全長30mm以上のレプトケファルス幼生まで成長させることに成功した。


[背景・ねらい]
養殖研究所では,卵から親までの完全養殖実現を目指してウナギ人工ふ化仔魚の飼育技術開発に力を入れてきた。昨年,サメ卵凍結乾燥粉末がウナギふ化仔魚の初期餌料として有効であることを明らかにしたが,サメ卵のみからなる飼料では約1カ月間,10mm前後のプレレプトケファルス幼生の段階までしか育てることができず,天然海域から得られているウナギ目魚類に典型的な葉形仔魚(レプトケファルス幼生)にまで発育しなかった。そこで仔魚の消化生理を考慮して餌の改良に取り組み,さらに長期間飼育しレプトケファルス幼生にまで発育させることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

サメ卵凍結乾燥粉末をベースとし,消化機能の十分発達していないプレレプトケファルスが効率よく栄養を吸収できるように,タンパク質を低分子にまで分解したオリゴペプチドを添加するとともにビタミン・ミネラルを強化し,これらの材料をオキアミ抽出液に懸濁させた新たな餌を考案した。
上記の飼料を与えた結果,従来の餌では成長が停滞したふ化後20日目以降も順調な成長が続き,50日目の生残率は3~5%,100日目で0.5~2%と高く,全長は25日で約10mm,50日で16mm,100日で20mm以上に達し,最高250日以上生存させることに成功した(図1)。 
大きなものは全長30mmを越え,歯の数が増し,形が分化したこと,肛門前筋節数が増加したことおよび鰭の発達などから,人工ふ化仔魚(プレレプトケファルス)はレプトケファルス幼生にまで発育したことを確認した(図2)。 

[成果の活用面・留意点]
新しい餌を開発し,従来より大幅に長期間の飼育を可能にし,ウナギ人工ふ化仔魚をレプトケファルス幼生にまで発育させることに成功したことにより,ウナギ人工種苗生産技術開発は飛躍的に進歩した。今後,レプトケファルスからシラスウナギまでの飼育および変態誘起技術が確立されれば,待望久しいウナギの完全養殖が実現する。


大口
この水産研究・教育機構の1999年の記録でも、レプトケファルスを3センチの大きさにまで育てるだけでもかなり苦労していたようなんだよね。
どうも水質にも敏感なようで。


大口
更に今は研究が進んで、ウナギの稚魚はこのJAMSTEC(海洋研究開発機構)のページにある図みたいに、卵→プレレプトセファルス→レプトセファルス→シラスウナギ→黄ウナギ→銀ウナギ→成熟ウナギと、3から20年かけて成長していく、非常に特殊な生活環があって、シラスウナギにたどり着くまでが難しいんだよ。


マリサ
つまりあれか、一応育てることはできて卵も採取できるけど、養殖業として成り立たせるにはコストがかかりすぎると。


レイム
「養殖で量産はできます、ただし養殖ウナギの鰻重一杯3万円です」じゃお話にならないって事ね。


大口
それよりさらに問題なのが、餌となるイタチザメとアイザメの卵を餌用にとっていたら、それこそこの2種が絶滅しかねないから、餌を根本的に変えないとそもそも安定した養殖は無理なんだよ。


マリサ
というかさ、幼魚は自然界でマリンスノーを食べているってわかっているんだから、それを集めればいいんじゃないか?


大口
集めるといっても、あれは要するに「生物の残骸」だから、広範囲に広く薄くあるわけね。
しかも幼魚が住んでいるのは水深200メートル以下、これを集める事自体が難しいし、できても相当なコストがかかってしまうわけ。


レイム
まあ、現実的じゃないわね。


大口
ついでに、ウナギのレプトセファルスは常に海流に乗って生活しているから、水質変化にも敏感で、深海の状態での毎日の水替えも必要らしいしね。


マリサ
なんかあれだな、今の情報聞いていると「ほんとに商用化できるのか?」って思えてくるな。


絶滅危惧種


大口
それでね、これだけ「変わった」生態のウナギなんだけど、知っている人もいるだろうけどウナギって絶滅危惧種なのね。


レイム
ああ、そういえばそうらしいわね。


マリサ
でも国産に拘らなければいいんじゃないか?


大口
それも違うんだよ。
まず食用とされているウナギは4種類いて、そのどれも絶滅に瀕しているうえに、私達がよく食べているウナギは「ニホンウナギ」って名前だけど、この種は日本だけに住んでいるんじゃなくて、東南アジアから東アジアまで広い地域に住んでいる種で、それが絶滅に瀕しているわけ。


レイム
つまり、「どこ産」でも絶滅危惧種に変わりはないって事ね。


大口
そういう事。
しかも絶滅しかけている原因の一つに

シラスウナギで不正横行? 流通ルート不透明、求められる資源保護
SankeiBiz 2020.7.29
https://www.sankeibiz.jp/business/news/200729/bsm2007291543013-n1.htm

 絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」を関西空港から香港へ密輸しようとしたとして、大阪府警関税法違反(無許可輸出未遂)容疑で男7人を逮捕した。国内産のウナギは養殖が中心だが、完全養殖は難しく、川に遡上(そじょう)する天然のシラスウナギを捕獲し育てている。だが、これまでもシラスウナギの流通ルートには国内外ともに不透明な点があると指摘されており、資源保護のためにも適正な流通管理が求められている。

 昭和30年代に年間100~250トンあったシラスウナギの漁獲量は年々減少し、昨年は過去最少の3・7トン。今年は6年ぶりの豊漁となったが、それでも17・1トンにとどまる。1キロあたりの価格も平成15年の16万円から30年は約300万円と急騰し、「白いダイヤ」とも呼ばれている。
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 国内消費に足りない分は海外からの輸入で補っている。以前は主に台湾からだったが、19年に輸出を禁止するようになってからは、輸入先の約9割が香港に。しかし、香港ではシラスウナギ漁は行われておらず、台湾などから密輸されたものが香港に集約されているとの見方がある。

 国内の流通も適正に管理されているとはいえない。水産庁は養殖池に入れられるシラスウナギの量を確認する一方、各自治体から漁獲量の報告を受けている。本来なら、漁獲量と輸入量の合計は養殖池の量と一致するはずだが、毎年大幅に少ない。出所不明のシラスウナギが多く流通していることになり、密漁したものを横流しする不正が横行しているとの指摘もある。

 横流しの過程で国外に持ち出されている疑いもあるが、現地でどのようにさばかれているのか判然としない。ある捜査幹部は「シラスウナギの取引にはグレーな点が多い」としている。(西山瑞穂)



大口
シラスウナギの乱獲があって、こちらの産経の記事のグラフにもあるように、ウナギの漁獲量は年々ものすごい勢いで減ってきているのね。


大口
しかも日本で消費されるウナギの大部分はこのシラスウナギを捕まえて養殖池で育てる手法なのだけど、この流通ルートがかなり不透明で、どうも犯罪の温床になっているようなんだよ。


マリサ
これってさ、ちゃんと取り締まるとウナギの流通量が激減するってことか?


大口
そうなるだろうね。
土用の丑の日に食べられるウナギのかなりの量が「犯罪によって不正に乱獲されたシラスウナギ」に由来するものとみたほうがいいから。


レイム
これ、下手すると私達が食べ続けるといずれウナギが絶滅して一生食べられなくなる可能性もあるってことじゃない?


大口
まさにその通りなんだよ。
全てのウナギが限られた海域を生活環としているから、今のようなペースで乱獲が続くとある日突然「全くいなくなる」という事もあり得るんだよ。


大口
そして他にも


第1回 乱獲で資源は危機的に、生息地破壊も一因
ナショナルジオグラフィック 
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120710/315512/

 日本人が食べているウナギは19の種・亜種が知られるウナギの一種、ニホンウナギで、日本、韓国、台湾、中国など東アジア一帯の海域の回遊してくる。沿岸に回遊してきたシラスウナギ(ウナギの稚魚)は河川を遡上して成長し、そこで5~10年程度過ごした後に、繁殖のために河川を下って海に下る。

 ウナギは5~8月の新月の直前に、グアム島近く、西マリアナ海嶺南端付近の太平洋で産卵するとされる。卵からふ化した仔魚はほとんど自分では泳がずに海流に乗って西に移動、その後黒潮に海流を「乗り換えて」北上し、東アジア各国の沿岸までたどり着く。

 これがウナギの長く、不思議なライフサイクルだ。

 こうしてみるとウナギの生息のためには、河川の上流域や湖沼から下流域を経て公海に至る広い範囲の環境がきちんと保全されていなければならないことが理解できるだろう。河口域の干潟や浅海部分も、遡上前のシラスウナギや、海に泳ぎ出す直前の親ウナギにとって重要だとされているし、ダムや河口堰などの大構造物に阻まれることなく自由に遡上、降下ができる河川環境も不可欠である。ウナギは良好な淡水と海の環境が残されていることの指標生物の一つなのである。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120710/315512/?P=2

だが、ウナギの漁獲量は、遡上する前のシラスウナギ、河川や湖沼の親ウナギのいずれもこの数十年ほどの間に急減した。

 1961年には年間3400トン近くもあった親ウナギの漁獲量は、現在では200トン近くにまで減少している。2011年の日本国内のウナギ消費量は成魚換算で約5万6000トンなので、「天然ウナギ」と呼ばれるこれらのウナギは全消費量の0.5%にも満たない。われわれが食べているウナギのほぼすべては、国内外の養殖池育ちの「養殖ウナギ」である。

ウナギ消費はすべて「天然」

 問題はウナギの場合、「養殖」といってもサケやタイ、ハマチなどのように人工的に受精卵から育てた稚魚を成魚にまで育てる真の意味での「養殖」が、技術的な困難さから実現していないということだ。「養殖」ウナギといっても、天然のシラスウナギを捕獲して池の中で餌を与えて育てたものである。つまり、われわれはウナギ消費のすべてを天然の資源に依存しているということになる。

 そして、シラスウナギの漁獲量も親ウナギ同様、減少が著しく、1963年の230トン余から現在では10トンを切るまでになっている。シラスウナギの漁獲量は2009年の漁期は約25トンと比較的多かったもの、その後、2年連続で10トンを切る不漁が続き、今季は10トンにも満たない3年連続の極度の不漁に見舞われた。ウナギ資源の危機が顕在化し、このままではウナギは絶滅に向かうとの懸念が現実のものとなってきたのである。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120710/315512/?P=3

ウナギ資源の減少はニホンウナギだけにとどまらない。主に食用になっている他の2種、欧州のヨーロッパウナギと北米のアメリカウナギも、ニホンウナギと同様に個体数の減少が目立つ。

 中でもヨーロッパウナギの状況は深刻で、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)では、最も絶滅危険度の高いランクである「近い将来に極めて絶滅の恐れが高い種(CR)」とされ、ワシントン条約の規制対象種にもなっている。アメリカウナギも、米国東海岸の各州レベルで漁獲の禁止措置や規制が導入されている。

 ウナギ減少の理由は必ずしも明確にはなっていない。だが、重要なものとして指摘されているのが、河口堰やダム、水力発電所などウナギの遡上や降下を阻む巨大な河川構造物の建設だ。これに、河川や湖沼の護岸のコンクリート化などによる生息地の破壊も加わって、ウナギの生息に大きな影響を与えたとされている。

 北関東の利根川流域や茨城県霞ケ浦・北浦などは、かつては日本最大級の親ウナギとシラスウナギの産地であったのだが、1960年代後半から70年代に掛けて利根川の河口堰やその隣の常陸川の逆水門などが建設された結果、漁獲量が急減し、漁業がほぼ崩壊状態となったことがデータによって裏付けられている。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120710/315512/?P=4

もう一つの、そして恐らく最大の原因は稚魚と成魚の乱獲である。欧州ではコンピューターシミュレーションなども交えた研究によって、シラスウナギ漁獲の影響やそれを規制することによる資源回復効果に関する研究が進み、これが行政に取り入れられて、各国で漁業や取引規制、資源管理などが進み始めた。

世界のウナギの70%を食べる日本人

 日本は世界で漁獲されるウナギの70%を消費する最大のウナギ食大国であるのだが、シラスウナギ漁の実態に関する信頼すべきデータはほとんどない。このため、日本のシラスウナギ漁が資源にどれだけの影響を与えているのかに関する研究もほとんど存在しない。

 だが、海外の研究成果や、毎年大量のシラスウナギが河川に遡上する前に大量に漁獲され、産卵に下る親ウナギ(下りウナギ)も、かなり以前から高級食材としてかなりの量が漁獲されていた実態からして、日本でもウナギの乱獲が資源の急減の大きな原因であることは論をまたないだろう。

 ヨーロッパウナギの激減にも、90年代後半からの数年間に、大量のシラスウナギが漁獲され、中国の養殖施設経由で日本に輸出された事実が深く関連しており、世界規模でのウナギの減少には、最大のウナギ消費国である日本の業者と消費者の責任が極めて大きいということになる。ウナギ資源の危機が顕在化してきた今、日本は、ウナギ資源の保全と持続的な利用の実現するための大きな責任を負っているのである。

※     ※     ※

 ウナギの資源減少の背景には、1980年代後半から始まった日本のウナギの利用と消費構造の大きな変化があった。次回はこの点について紹介したい。



大口
こちらの記事にもあるように、ダムや堰によってウナギの遡上が妨げられたり、護岸工事によって川の両岸がコンクリートになってしまって、ウナギの生活できる環境がなくなったり、あとは干潟の減少も影響を与えているっぽいね。


マリサ
これさ、ほんとウナギが食べられないどころか「いなくなる」事を心配しないといけないな。


大口
そして最近JAMSTEC所属の台湾の人の研究でさらなる問題が浮上していて

海流変動で、日本や台湾に流れ着くシラスウナギが減少
JAMSTEC 
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20180412/

ウナギは日本のはるか南のマリアナ諸島沖で生まれ、成長しながら海流を乗り換え北上し、シラスウナギとなって日本にたどり着きます。ところが近年、日本ではそのシラスウナギの漁獲量が減少傾向にあります。その原因には、乱獲や河川環境の悪化などが指摘されています。そうした中、海流変動の影響もその一因であることが、このたびシミュレーションで示されました。


海流予測モデル「JCOPE2」を使って海流を1993年から2013年までを再現し、ウナギの卵が産卵されてから東アジアにいくまでをシミュレーションした。
その結果、20年の間で、シラスウナギは日本や台湾などに流れ着きにくくなっていることがわかった。
日本や台湾に流れ着きにくくなっている原因は、北赤道海流が弱まったことが関係していた。

ウナギが大好きな職員がとても心配しています。今回は、この研究をScientific Reports誌に発表した台湾出身の研究者、ユリンチャン研究員に話を聞きました。

【目次】
▶ 一生で数千㎞を回遊するウナギ
▶ JCOPE2で海流を再現し、ウナギに見立てた粒子の挙動を解析
▶ 日本や台湾にたどり着くシラスウナギが減少
▶ 原因のひとつは、海流変動
▶ 人に興味を持ってもらえる新発見をしたい

ウナギに関する研究をされたそうですね。ウナギの生態は謎が多いと言われていますが、どのようなことがわかっているのでしょうか。

ウナギはとてもおもしろい生物です(図1)。ふつう水棲生物は、川などの淡水にいるものと、海水にいるものに分かれるのですが、ウナギは淡水と海水の両方で生活するのです。

日本や台湾に流れ着く二ホンウナギは、日本のはるか南に位置するマリアナ諸島沖で生まれます(図2)。親ウナギは、直径1.6㎜以下の小さな卵を何百万個も産みます。1日半ほどで孵化した赤ちゃんウナギはプレレプトセファルスといいます。目も口もまだできていません。北赤道海流にのって西へ流され、1週間ほどでレプトセファルスに成長します。レプトセファルスは葉っぱのような平べったくてペラペラした体で海流の流れに乗りやすく、また黒い眼以外は透明な体をしているため敵にも見つかりにくいのが特徴です。

北赤道海流は、フィリピン諸島にぶつかる形で二手に分かれます。北赤道海流に乗ったレプトセファルスも二手に分かれ、南側へ流れたものはミンダナオ海流に乗って南下し、北側へ流れたものは黒潮に乗って北上します。

黒潮に乗ったレプトセファルスは黒潮の中で成長し、全長5、6㎝のシラスウナギになります。シラスウナギは、体が透明なことを除けば、親とほとんど同じ形をしています。やがて日本や台湾など東アジアの河口に集まり、川をさかのぼって中流や湖などで5年から10年かけて成長します。そして成熟したウナギは川を下り、再びマリアナ諸島沖へ戻って産卵すると考えられていますが、これについてはまだ謎が残されています。

こうしたウナギの一生の回遊距離は、数千㎞に達します。

ウナギはそんな長距離を回遊するのですね。

http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20180412/02.html

JCOPE2で海流を再現し、ウナギに見立てた粒子の挙動を解析

今回は、日本や台湾にたどり着くシラスウナギの減少が明らかになったとのこと。どのように調べたのですか?

シミュレーションで、海流モデル「JCOPE2」(Japan coastal Ocean Predictability Experiment2、図3)で過去の海流を再現して、ウナギに見立てた粒子がマリアナで産卵されてから日本や台湾にたどり着くまでを解析しました。

JCOPE2とは、北西太平洋の黒潮黒潮続流、親潮、中規模渦などの変動を見るためにJAMSTECが開発した海流予測モデルです。観測データをモデルに取り込み融合することで、精度良く過去の海況を再現し、また海況予測も可能とします。これまでに黒潮大蛇行の予測や船舶の燃費節減に役立てられるなど確かな実績を誇ります。私自身もJCOPE2を使って研究していて、その再現性の高さには信頼を寄せていました。

そのJCOPE2に、私がつくったシラスウナギの動きを再現するプログラムを組み込みました。ポイントは、シラスウナギの水平・鉛直方向の運動(図4)を再現したことです。ウナギは成長とともに泳ぐようになり、敵に食べられないように昼間は200mくらいの深さへ、夜間は浅海へ浮上するなど水平方向にも鉛直方向にも動きます。こうしたウナギの水平・鉛直方向の動きは再現するのが大変なのです。

こうして1993年から2013年までの海流を再現し、毎年5月から7月に1万8000個の卵が孵化すると仮定して、回遊を経て東アジアにたどり着くまでを年ごとにシミュレーションしました。

http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20180412/03.html

日本や台湾にたどり着くシラスウナギが減少

動画 1993年(左)と2010年(右)の、ウナギにみたてた粒子が、マリアナ諸島沖で誕生してから東アジアにたどり着くまでのシミュレーション。色の違いは孵化エリアの違い。赤が南側、青が中央、緑が北側です。産卵場所は特定されていないので、不確実性をふまえて過去に卵が採取された海域をすべて入れてあります。

1993年(左)は粒が北上するのに対して、2010年は粒が北上しにくくなっているのが見て取れます。

解析期間の最初の5年(1993年~1997年)と最後の5年(2009~2013年)の平均を比べても、台湾や日本にたどり着くシラスウナギが減っていることがわかります(図5)。

動画 1993年(左)と2010年(右)の、ウナギにみたてた粒子が、マリアナ諸島沖で誕生してから東アジアにたどり着くまでのシミュレーション。色の違いは孵化エリアの違い。赤が南側、青が中央、緑が北側です。産卵場所は特定されていないので、不確実性をふまえて過去に卵が採取された海域をすべて入れてあります。

1993年(左)は粒が北上するのに対して、2010年は粒が北上しにくくなっているのが見て取れます。

解析期間の最初の5年(1993年~1997年)と最後の5年(2009~2013年)の平均を比べても、台湾や日本にたどり着くシラスウナギが減っていることがわかります(図5)。

明らかな違いがありますね!

はい、まさかこんなにはっきり違いが出ると予想していなかったので、私もびっくりしました。興奮して、すぐに宮澤泰正主任研究員(論文の第2著者)に報告しました。

http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20180412/04.html

原因のひとつは、海流変動

なぜ、台湾や日本にたどり着くシラスウナギは減っているのでしょうか。

シミュレーションで毎年同じ数の卵を孵化させているのに日本や台湾にたどり着く数が減るということは、海流に何か起きているということ。そこで海流の解析を進めると、北赤道海流に原因があることがわかってきました。
北赤道海流というと、最初に卵やプレレプトセファルス、レプトセファルスを西へ運ぶ海流ですね。

そうです。北赤道海流は、上空を吹く時計回りの風と、南側に吹く反時計回りの風によって駆動されています(図6)。流れの向きは平均的には西向きですが、その中には南北方向へもあります。

解析期間の最初の5年(1993年~1997年)と最後の5年(2009~2013年)を比較すると(図7)、北赤道海流の西向きの流れが弱くなっていました。同時に、表層から深さ約50mにかけて北向きの流れが弱くなり、50m~250mの深さにかけては南向きの流れが強くなっていたのです。

その50~250mという深さは、ちょうどプレレプトセファルスやレプトセファルスが生息するあたりです。つまりちょうど南向きの流れが強くなっている水深にプレレプトセファルスやレプトセファルスがいるために、物理的に北上しにくくなっているのです。
なぜ、北赤道海流にそのような変化が起きたのでしょうか。

上空を吹く北側と南側の風が弱くなったためです。しかし、なぜ風が弱くなったのかはわかりません。地球温暖化の影響という人もいれば、数十年変動だという人もいます。
そうなると、将来的にウナギは食べられなくなってしまうのでしょうか。

それはまだわかりません。北赤道海流がこのまま弱まり続けるのか、元の状態にもどるか。現状ではまだわからないのです。

また、実際の漁獲量の減少の原因には、人間による漁獲、マリアナ諸島沖(産卵海域)に戻る親ウナギの数、それらの産卵量、餌となるプランクトンなどの影響もあります。ウナギの資源量変動には、解明するべき謎が数多く残されているのです。今後は、そうしたパラメータをモデルに加え、精度を高めていきたいと考えています。

http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20180412/05.html

人に興味を持ってもらえる新発見をしたい

チャンさんは、どのように研究の道へ進んだのですか?

実は、もともとは高校の先生を目指して台湾の師範大学で学んでいました。しかし4年生の時に教授にお誘いいただきモデルを使って台風と海流の研究をはじめたところ、「あなたは研究に向いています」と言われ、大学院へ進学しました。
今更大変失礼なのですが、チャンさんはウナギではなく、もとはモデルなどの物理屋さんだったのですね。

はい。博士課程ではアメリカの大学院にも籍を置いて海洋物理の研究をしました。

台湾に帰国後、学位をいただき、ポスドクを経て大学の助教になりました。ウナギの研究を始めたのは、この助教時代に訪問したカナダの大学で、ウナギの研究をするフランス人の女性研究者と出会ったことがきっかけです。共同研究をする中で、ウナギという生態がおもしろいと率直に思いました。

台湾に帰国後ほどなくして准教授になりましたが、日本人研究者との結婚を機に2017年に来日しました。
そうだったのですね!

ウナギは日本で暮らし始めてから初めて食べました。台湾ではウナギはあまり食べないのです。最初は少し怖かったですが、食べてみるとおいしかったです。
それは良かったです。最後に、チャンさんはどのようなスタンスで研究に取り込まれているのか教えてください。

新しいことを発見したいと思いながら研究しています。それが人に興味を持ってもらえることなら、なお良いと思っています。
ありがとうございました。これからの日本での生活が、うなぎ上りに楽しい日々になることを祈願しております。


大口
どうやら最近の深海の海水温上昇のせいで、北赤道海流の動きが変化して北へ流れにくくなってしまってきているようで、ウナギの幼魚であるプレレプトセファルスやレプトセファルスが「北へ向かえない」つまり日本や台湾にたどり着きにくくなってきているようなんだよ。


レイム
つまり、ただでさえウナギの数自体が減ってきているのに、更に海流の変化で東アジアにまでたどりつける稚魚の数自体も減っていると。


マリサ
それって東南アジアにはウナギがまだ結構いるって事か?


大口
そんな上手い話じゃないだろうね。
元々そこにいた数以上のウナギが集まっても成長できるウナギの数が増えるわけじゃないし、そもそも「絶対数」自体が減ってしまっているわけだし。


レイム
何よりあっちに「たくさんいる」とわかったら、「日本での需要は期待できる」以上、東南アジアでの乱獲と密猟が横行するだけだろうしね。


大口
そういう事。
問題を解決したかったら、「日本でのウナギの消費量を減らす」しかないんだよ。
ウナギの消費量は日本が70%でダントツだからね。


マリサ
なんか色々と難しいな。


大口
そんなわけで今回はここで終わります。


レイム マリサ 大口
ご視聴ありがとうございました。


大口
おつかれ~


レイム
というか、今回はなんかちょっと真面目な回だったわね。


マリサ
おもしろネタ不足なんだぜ。


大口
たまにはね。
あじゃあちょっと「そういう成分」を追加しようか


生きた動物や人間から毛を失敬 シジュウカラの大胆不敵な犯行 Newsweek 2021年8月13日 


大口
ニューズウィークの2021年8月13日の記事なんだけど、鳥の中には動物の毛をむしって巣に利用する種がいて、その理由として保温や動物の臭いで天敵除けにするとかの意図があるようなんだよ。
詳細は同時掲載のブロマガにリンクがあるから、そっちを参照してね。


レイム
でもそれ、鹿とかならいいけど画像では狐の毛をむしっている鳥までいるわね。


大口
それだけリスクに見合った恩恵があるって事だろうね。
ちなみに、蛇の抜け殻を集めて臭いで天敵除けをしたり、肉食動物のフンを集めて同じことをしている種がいたり、オーストラリアにはコアラの毛をむしって巣作りに利用する種までいるそうだよ。


マリサ
コアラの毛の臭いって意味あるのか?あれユーカリの葉を食べる草食だろ?


大口
まあ保温にはなるんじゃない?
そしてさらにはペットの犬の毛や人間の毛まで「むしる」鳥までいるそうな。









レイム
もはやなんでもありね。


マリサ
それはある特定の人たちにとってはかなりの脅威になるんだぜ。


レイム
マリサ、それ以上言ったらだめよ。


大口
そんなわけで今回はここで終わります。


レイム マリサ 大口
またいつか~


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