さて、本日は徐々に見えてきた韓国の文在寅政権の方針や、今後日本が注意していかないといけない事などについて書いていきます。
今月新たに就任した文在寅大統領と新政権は、就任後すぐに日本、アメリカ、中国へと特使を派遣し、現政権の考え方や方針などを伝え、朴政権で停滞した外交を回復させる成果を出したと伝え、また日本の一部メディアなどでは関係改善の道筋が見えた等の報道をしている。
しかし実際には、文政権が派遣した特使は実質的に「時間稼ぎ」をしただけであり、「何も決断していない事を相手国に伝えた」だけでしかなく、各国に対し「自分は何も変わらない、相手が自主的に変わりこちらの言い分を受け入れて欲しい」と要求しただけに過ぎない。
そしてそれをあたかも外交成果のように広報しているわけだが、問題はこのパターンは朴政権以前の韓国の大統領が行ってきた外交方針と同一のものであり、自分達の要求が通るまでは融和的な態度を「演出」しているに過ぎない。
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1:「外交成果」を宣伝する文政権
まずはこちらの記事から
日本などへの特使派遣を評価 「外交の空白埋めた」=文大統領
聨合ニュース 2017/05/24
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2017/05/24/0900000000AJP20170524004200882.HTML
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は24日、青瓦台(大統領府)で米国と日本、中国に派遣した特使らと面会し、「長期間政局が混乱状態だったため外交が空白の状態だったが、長引いた空白を一気に埋める役割を果たした」と述べた。その上で、中国が強く反発している米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備問題や旧日本軍の慰安婦問題を巡る日本との合意に言及し、「言うべきことはしっかり言ったと思う」との認識を示した。
文大統領は「(特使派遣は)急に決まったが、多くの成果があった」と評価した上で「その国々と首脳会談を行わなければならないが、会談に向けた準備としても意味があったと思う」と述べた。
この日は対米特使の洪錫ヒョン(ホン・ソクヒョン)氏、対中特使の李海チャン(イ・ヘチャン)氏、対日特使の文喜相(ムン・ヒサン)氏らと面会した。
記事にもあるように、文政権は特使を派遣し各国首脳と会談、朴政権の混乱で韓国が国際情勢から「はじき出されていた」状態から抜け出し、更に韓国の方針を伝え各国首脳が理解を示したとしています。
以下の記事では中国との間で懸案となっているTHAAD問題に関連し、中国側からはその件で具体的な言及が無く、むしろ中国側が実質的な経済報復を緩和する態度を示してきたと報じています。
韓国特使団「中国、THAAD報復の緩和に積極努力と発言」 聨合ニュース 2017/05/19
習近平国家主席、韓国特使と面会した席で「中国も両国関係を重視」 中央日報 2017年05月19日
中国人観光客が戻って来る、THAAD報復の中国で変化の兆し 東亜日報 May. 20, 2017
またアメリカへの特使派遣に関しても、文政権の懸案となっていたTHAAD問題や対北朝鮮問題でアメリカ側と活発な意見交換をし「期待以上の成果を得た」とし、THAAD問題に関しては結論を見送る事にしたとしています。
韓国の対米特使「期待以上の成果」 帰国の途に 聨合ニュース 2017/05/21
文在寅政権、北核・THAAD・慰安婦「外交リセット」開始 中央日報 2017年05月19日
THAAD:韓国国会の同意、韓米首脳会談まで見送り 朝鮮日報 2017/05/18 (1/3ページ) (1/3ページ) (3/3ページ)
そして日本に関しても、安倍首相に「伝えるべき事を伝え」相互に問題を克服していく事や、日本側から「(韓国側の立場を)理解すると受け取れる言葉」を得たとしています。
「韓米は全面的に意見一致」…「慰安婦問題を賢く克服することで合意」 中央日報 2017年05月22日
韓国の反対世論、日本側から「理解すると受け取れる言葉」と韓国特使 産経新聞 2017.5.20
特に対日本に関しては、特使が日本に対して伝えるべき事を伝えると同時に、日本側も合意の履行の要求を伝えられるような状況ではなく、韓国側が日本側に対して河野談話や村山談話を尊重すべきと「釘を刺した」としており、むしろ日本側が再協議要求を受け入れる空気だったという発言まで出てきています。
ムン・ヒサン日本特使「慰安婦合意含め全般的な対日政策を伝えた」 ハンギョレ新聞 2017.05.18
(※1)
安倍「慰安婦合意尊重」要求に「河野・村山談話も尊重しなければ」 京郷新聞(韓国語) 2017.05.19
ムン・ヒサン「日も慰安婦合意履行要求の雰囲気ではない」 ソウル新聞(韓国語) 2017-05-21
これだけを見ると、韓国の特使派遣は大成功であり、むしろ各国が韓国側の事情を鑑みて態度を軟化させ、韓国側の要求を受け入れる準備が出来たといった雰囲気になっていると韓国政府は発表していることがわかります。
また日本の一部のメディアでも、文政権は政権に知日派の人材を多く登用しており日本への理解を示していることが解り、また慰安婦合意に関しても撤回などの強硬手段ではなく「韓国人の多くが納得できる形で再協議するほうが、より両国の未来に貢献できるから」としています。
文在寅大統領誕生で未来ある日韓関係が?「慰安婦問題の合意“見直し”は白紙に戻すことではない」 週プレNEWS 2017年5月18日
ここまでが現在の文政権側の特使派遣等に関する公式見解や韓国側の発表です。
2:相手は無条件に変わるべき
上記のように、韓国政府側の発表を読む限りだと全てが文大統領の思惑通りに進んでおり、文政権になって外交上の諸問題全てが解決へと向かっているように見えます。
実際、韓国では「文在寅大統領なら全て上手くやってくれる」といった考え方が世論の主流となっており、文大統領は少数与党とは思えないほど非常に高い支持率を得ています。
文在寅大統領、国政支持率81.6%…民主党53.3%“最高値” ハンギョレ新聞 2017.05.23
しかし実態はどうかといえば、その後「公式発表と実態が大幅に違っていたこと」が次々と判明してきているのです。
例えば中国の場合、実は中国は特使との会談ではっきりとTHAAD問題に言及しており、むしろこの問題が解決しない限り関係改善はありえないという態度だったようなのです。
中国外相、THAAD配備の韓国に「障害物の除去」求める AFP 2017年05月18日
THAAD:中国、韓国大統領特使に「撤回」迫っていた 朝鮮日報 2017/05/24 (1/2ページ) (2/2ページ)
また特使は中国でかなり冷遇された事も判明しており、結局韓国側は中国側からなんの成果も得られず、それどころか実際にはTHAADに関連した「経済報復」も一切緩和される兆候がなかったのです。
中国で冷遇された韓国特使団、首脳会談の確約もなし 朝鮮日報 2017/05/20 (1/2ページ) (2/2ページ)
駐中韓国大使館「中国のTHAAD報復解除? 事実無根」 中央日報 2017年05月23日
また対アメリカに関しても、実際には単に韓国側が韓国の立場を一方的にアメリカに主張しただけであり、アメリカ側は最低限「同盟国とのトラブル」にならないよう言葉を選んだだけだったことが判明しており、むしろ対北朝鮮政策では廬武鉉政権のときと同じような扱いを受ける可能性が高い事が韓国の元外相から指摘されています。
文大統領、特使団に「THAADの基本な立場を伝えて」 東亜日報 May. 18, 2017
廬武鉉政権の参謀ら、ワシントンでは「韓国のタリバン」扱いだった 朝鮮日報 2017/05/22 (1/2ページ) (2/2ページ)
【社説】制裁解除・開城工団・金剛山観光の再開、韓国政府は国際社会にどう説明するのか 朝鮮日報 2017/05/23
更に対日本に関しても、日本側は「慰安婦合意」とは言及しなかっただけで合意の履行が大前提である事をはっきりと伝えており、再協議を受け入れるような発言は一切していません。
慰安婦合意:韓国特使の言及に日本外相は冷ややかな反応 朝鮮日報 2017/05/18
実際には、日本側が合意の履行をするよう発言したところ、韓国側が「韓国国民の大多数が感情的に合意を受け入れられないのが現実だ」と返しただけで、むしろ特使の側が政府としての慰安婦合意の履行についてどうするのかの判断を避けただけだったのです。
なぜこんな事になっているのかといえば、以前「【米大使襲撃事件】事件後の韓国人達による奇妙な言動の理由」や「韓国は「主張」や「要求」をするだけ」で書いたように、「自分達は正しい事をしているのだから、相手は正しさを受け入れるべき」という考え方があるからです。
つまり、「自分達は正しい事をしているのだから、相手はその正しさを理解し韓国の要求を受け入れるのが当然である」という考え方があるため、彼らは彼らの常識に沿って今回書いたような「要求」をし、それは当然受け入れられるべきものであったはずなので、それをそのまま言葉にしたのです。
以前から書いている韓国側の「自分達は何も変わらない、相手は無条件に受け入れ変わるべき」といういつもの態度をしただけとも言い換えることが出来ます。
なぜなのかといえば、それは韓国ではこの世に「唯一絶対の正しさ」が存在している事となっており、それは自分達の考えとイコールであると想定されているからとしか説明できません。
更に今回の事例の場合では、そもそも韓国(世論)は以前から書いているように慰安婦問題を「(日本の劣等性を指摘する事で)自己の優越性を確認するための最も有効な手段」としているため、それを実質的に放棄するような慰安婦合意は絶対に受け入れることが出来ません。
また、現在韓国ではTHAAD撤去を支持する世論が高まっているため、少数与党でありポピュリズムを前面に出して当選した文大統領はこれを無視することができません。
「THAAD配備再検討すべき」56.1% ハンギョレ新聞 2017.05.16
しかし慰安婦合意は国際的に高い評価を受け注目された合意であるため、安易に合意を破棄する事はできませんから、韓国側の解決策としては「日本の同意の下で再協議」を行い、「韓国の望む慰安婦の定義で日本側が法的責任を認める」という形にするしかありません。
だから今回のように「日本に再協議を受け入れる空気があった」という事にしないと、文政権は世論と国際社会の板ばさみになってしまうのです。
またTHAAD問題にしても、中国側は撤去以外の選択肢を韓国に与えていないうえに、アメリカ側も撤去など最初から考えていません。
だから韓国側は世論の件もあり「国会で審議するから待って欲しい」と時間稼ぎをするしかなく、自力で問題を解決する方法が思いつかないため、「中国もアメリカも韓国に理解を示した」と主張するしかないのです。
要するにこの件の真相は、文政権に問題解決能力が無く、国内世論は「文政権なら”正しさ”を実現できる」という過剰な期待がある事もあり、日米中に対して「韓国の国内問題を各国が解決して欲しい」と要求しに行ったというのが真相なのです。
この件の真相は全て韓国の国内問題が原因であり、同時に各国とも「韓国の国内問題など知った事ではない」ため、韓国は国内向けに阿Q正伝における「精神勝利法」のような態度を取るしかなかったわけです。
3:今後日本が注意しないといけない事
今回書いたように、文政権が行っている外交とは、国内問題を各国に解決してもらうために「要求をして周っている」だけであり、各国政府から見れば「韓国政府は自国の問題を解決できる能力が無い」と自らの無能を証明して周っているだけに過ぎません。
そしてここまで解っていれば、日本側がこれから韓国にどのように対応していけばいいのかがはっきりします。「自国の問題は自国で解決してください」と、国連憲章にもある「民族自決」の精神を遵守するよう訴えていくだけで良いのです。
しかし問題は、こうした背景をちゃんと知っている一般の日本人はどれだけいるのかということです。
朴槿恵政権が特殊だったので印象が薄いのですが、韓国は対日本に関して昔から「政権の前半は親日、後半は反日」と表現される態度をとってきた経緯があり、これは要するに「自分達は何も変わらない、相手は無条件に受け入れ変わるべき」という考えの下、最初は日本に要求をするからなのです。
そして、その要求が受け入れられれば「要求が受け入れられたのだから、自分達のほうが序列が上なのだ」と考え尊大に、要求が受け入れられなければ国内世論から反発を受け、支持率回復のために日本に対して強硬な態度を取るという事を繰り返してきました。
文在寅政権も、過去の政権と同じく要求を受け入れてもらうために日本に対して融和的な態度を取り始めており、慰安婦合意に対して政府として明確な態度を示さず「世論が~」という態度を取っているのもそのためです。
文政権の場合、前評判として日本のメディアが「反日政権である」という報道をしていたため、むしろこの態度は「実は反日ではなく親日的な政権ではないか」と受け取られる可能性が高く、実際は親日とか反日の問題ではなく、彼ら独特の価値観から出てきた「いつもの態度」という事がわからず判断を鈍らせる結果になりかねないのです。
そういった世論が出来てしまうと、政府としても「当たり前の態度」がやり難くなり「過去と同じ過ち」をしてしまう可能性が高くなるため危険です。
そして文政権がどういった対日政策をするつもりなのかは、既にその兆候が見えています。
以下の朝鮮日報の記事によると
【社説】韓国の外交・安全保障政策担当者は核問題の素人 朝鮮日報 2017/05/22 (1/2ページ) (2/2ページ)
文政権は韓国の外交や安保問題を扱う外交部長官に康京和氏という人物を登用したそうなのですが、この人物は外交や安保問題を扱った実績が皆無であり、朝鮮日報はこの人事を「女性であるというだけで登用した」と、単なるパフォーマンスである事を指摘しています。
つまり、対北朝鮮で成果を出せるような人物ではないということです。
しかし実際の問題はそこではなく、この人物は実はこれまで国連で女性の人権問題を扱ってきたとされる人物であり、要するに「国連における慰安婦問題ロビーの専門家」なのです。
外交官試験出身でない人権専門家が外相候補に…外交部の“ガラスの天井”破る ハンギョレ新聞 2017.05.22
つまり、文政権は外交や安保を担当する責任者に北朝鮮問題ではなく慰安婦問題の専門家を登用したという事であり、これを見ても文政権が北朝鮮問題よりも日本との慰安婦問題を外交上の重要懸案としていることが解ります。
現在の北朝鮮情勢を考えると「普通なら」ありえない人事です。
この事からも廬武鉉政権と同じように、文政権は日本を「主敵」と想定している可能性が高いわけです。
もし、現状の文政権の態度を「いつもの韓国の態度」であると多くの人が認識できなかった場合、日韓の間にまた更なるトラブルを呼び込む可能性が極めて高く、特に警戒していかないといけません。
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以下は当ブロマガのお勧め記事マイリストです、もしよかったらこちらもどうぞ。
(※1)
ムン・ヒサン「日も慰安婦合意履行要求の雰囲気ではない」
ソウル新聞(韓国語) 2017-05-21
http://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20170522008006
ムン・ジェイン大統領の特使として日本を訪問した共に民主党ムン・ヒサン議員は21日、「日本側も慰安婦合意履行を促す雰囲気ではなかった」と明らかにした。
ムン議員はこの日、ソウル新聞との電話通話で「日本側が合意履行を強力に主張しようとするなら『もし慰安婦合意を履行しなければ私たちは前に進めない』と言わなければならないが、そのようには言わなかった」としてこのように話した。
彼は「私たちも日本側に(慰安婦合意を)再交渉せよ、破棄しろとは話してはいない」とし、「ただし『国民の大部分が(慰安婦合意を)受け入れないと考えているのが現実』といった」と伝えた。
引き続き「慰安婦問題はこれから韓日関係にとって障害物にならないだろう」とし、「すぐに首脳どうしが会って新たな合意を多くしていくだろう」と強調した。
ムン議員は「大統領府でも(訪日成果の)報告を受けてとても鼓舞的な雰囲気」として「ムン大統領が各国に派遣した特使を一カ所に集めて報告する席を作ることが分かっている」と付け加えた。
韓日シャトル外交復元と関連しては「私たちが話を切り出す前に(日本側が)先に話した」とし、「完ぺきに復元されるだろう」と見通した。
安倍「慰安婦合意尊重」要求に「河野・村山談話も尊重しなければ」
京郷新聞(韓国語) 2017.05.19
http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=201705191046001&code=910100
ムン・ジェイン政府日本特使団が去る18日、日本軍慰安婦合意履行を促す趣旨の日本政府側発言に対して「河野談話、村山談話など韓日間で成し遂げた様々な約束と互いの立場が尊重されなければならない」と答えた、と共に民主党ユン・ホジュン議員が19日明らかにした。
特使として日本を訪問中の民主党ムン・ヒサン議員と同行したユン議員はこの日、CBSラジオ「キム・ヒョンジョンのニュースショー」に出演して「誰も慰安婦合意という、そのような慰安婦という単語を自制しながら、とても気をつかう雰囲気」としてこのように伝えた。
ユン議員は「特に「一昨年あった国家間の約束は履行されなければならない」という言葉を安倍総理もしたが、それについて私たち特使団も国家間の約束はそれだけではなく、2000年にあった金大中(キム・デジュン)・オグチ共同宣言や河野談話、村山談話、この様な韓日間のこれまで成し遂げた様々な約束とお互いの立場が尊重されなければならないと私どもは答えた」と明らかにした。
ユン議員はまた「慰安婦合意については日本側が問題提起した」として「それについて、私たちは私たちの国民が情緒的に受容できない面について説明した」と話した。