日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

日本の特定メディアが煽る韓国世論


さて、今回は先日の日本の参院選結果と、韓国へのTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備問題を巡る報道を比較しながら、韓国世論がどのように形成されて行くのかを書いて行きます。


現在韓国では、先日の日本の参院選の結果に対する評価として、「日本が戦争をする国になる」「徴兵制が復活する」「与党が改憲を争点にしなかったため注目されなかった」「右翼の暴走」等と、見覚えのある論調の内容が画一的に繰り返し報じられている。


これは去年の集団的自衛権の問題のときと良く似た構図であり、改憲したからと韓国に何らかの実害があるわけではないのだが、ほぼ異論が無くこの論調になっている背景には「被害者が最も偉い」「他者の劣等性の指摘が自己の優越性の証明」「異論を能動的に排除する社会構造」など、韓国独特の価値観や特徴が深く関係している。


またそれ以外に、その論調から明らかに日本のメディアの影響を強く受けている事がわかり、問題の本質が同根で同じく外部(北朝鮮や中国)からの干渉を強く受けているTHAAD問題では韓国内で賛否がかなり分かれていることと比較すると、韓国に対する日本の特定メディアの影響が非常に強い事が良くわかる。



※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
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1:「日本の特定メディア」と全く同じ論調


まずはこちらの記事から

60代より保守的な日本の若者... 右傾化教科書の「洗脳効果」か
東亜日報 July. 12, 2016
http://japanese.donga.com/Home/3/all/27/537977/1

10日に行われた日本の参議院選挙では、進歩的と見なされる若年層が保守連立与党を、高齢層が進歩野党を支持する異常現象が起こった。日本の若年層は、高齢化など未来に対する不確実性のため安倍晋三首相が掲げた経済再建公約に期待をかけた。しかしその結果、安倍首相の「戦争ができる日本」に向かう改憲作業に弾みがつく結果となった。

10日の参院選は、選挙法改正で選挙の開始年齢が20才から18才以上に拡大した後に行われた初めての選挙だ。これにより初めて投票することになった有権者は約240万人。各党は彼らの心をつかむためにソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)などを活用し、激しい選挙戦を繰り広げた。ふたを開けてみると、勝者は自民・公明の連立与党だった。改憲勢力改憲可能な議席を確保できた背景に「若い保守層」の呼応があったのだ。

11日に報道された朝日新聞出口調査の結果を見ると、18、19才の有権者比例代表の場合、自民党に40%、公明党に10%と連立与党に50%の票を投じた。世代別で見ると、20代(52%)に続き2番目に高い。一方、野党第1党の民進党に投票したのは17%にすぎなかった。民進党は20代と30代でも16%の支持しか得られなかった。NHKと共同通信が実施した出口調査でも、18、19才の有権者のうち比例代表で連立与党に投票したと人が過半数を占めた。

一方、高齢層ほど野党第1党の民進党に対する支持が高かった。朝日新聞の調査で、民進党に票を入れた60代以上の有権者は22%にのぼり、他の世代より最大6ポイントも高かった。共産党の支持率も年齢が高いほど高かった。これに対して日本国内では、「戦争を体験した世代と間接体験からも遠い世代の平和憲法に対する感受性の違いによる」という分析が力を得ている。今年1月、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに応じた20才の女子大生は、「自分でも驚く時がある。私は祖母よりも保守的だ」と話した。

若年層の与党支持が、安倍政権が推進してきた教科書右傾化の影響を受けた結果という分析も出ている。安倍政権は2012年末の発足以降、領土や日章旗、国歌である君が代など民族主義的要素を強調する歴史教育に力を入れた。このため旧日本軍慰安婦や独島(ドクト、日本名・竹島)領有権問題では近隣国と摩擦を醸し出したが、それでも止まることはなかった。

しかし、右傾化教育を受けた若年層が、安倍首相が今回の選挙で狙った憲法改正の念願を直接的に支持したと見るには無理がある。朝日新聞の調査によると、18、19才の有権者の場合、51%が「憲法を変える必要はない」と答えた。別の世代と比較して最も高い割合だ。憲法が改正されれば日本が戦争にまきこまれる可能性が高まり、徴兵制などにつながる恐れがあるという不安のためとみえる。

自分の投票が戦後日本の初の改憲につながるかもしれないという自覚が高くなかったものとみられる。毎日新聞が同日、有権者150人を対象に調査した結果、改憲可能な議席である参議院議席「3分の2の意味が分からない」と答えた人が83人(55%)にのぼったと報じた。野党が「改憲阻止」の争点化に失敗し、経済と社会保障政策など生活と密接な問題によって投票した人が多かったということだ。

一方、日本の総務省は同日午前、参院選投票率が54.7%と集計されたと発表した。3年前よりも2.1%上がったが、参院選の中で4番目に低い数値だ。投票率が比較的低かったことも、組織票が強い与党に有利に作用したと分析される。朝日新聞出口調査を根拠に、「無党派層の一部が今回は投票所に足を運ばなかった可能性がある」と伝えた。

類似記事
【社説】護憲の防波堤崩壊、生まれ変わった日本に向き合う韓国 朝鮮日報 2016/07/12
【社説】改憲のカギを握った安倍首相の暴走を憂慮する 中央日報 2016年07月11日


記事を読んでもらえば一目瞭然なのですが、どれも概ね「改憲の事実が隠されていた」「右傾化」などを与党勝利の根拠としているのがわかるのですが、「どこかで見た事がある論調」です。


そして、先日私がもう一つやっているブログで書きましたが(選挙報道とマスコミ不信)、日本のメディアの多く、特に全国放送のテレビ局のほぼ全て、朝日新聞毎日新聞、いくつかの大手地方紙、野党の演説などはしきりに「改憲勢力2/3阻止」を選挙の争点としていました。


つまり与党が話題にしなくとも、これだけメディアで露出していたのならば改憲問題の周知効果は十分にあったのです。


この事実から解るのは、「メディアや野党は改憲阻止を煽ったが有権者の大多数はその煽りに同調しなかっただけ」との事実なのですが、日本のメディア関係者は「結果から原因を考える」ことが習慣化しているため、自身に都合のいい原因を作り出してしまったというのが実態です。


そして興味深いのは、そもそも9条を改正したからと現在の世界情勢で韓国の不利になる事は現実的にまずありえないにもかかわらず、韓国側の記事ではあたかも日本の改憲が韓国に危機をもたらすかのような論調である事です。


むしろ、現在韓国は中国からの圧力に戦々恐々の状態、また北朝鮮による挑発や核開発も悩みの種であり、最近の在韓米軍によるTHAAD配備決定はこうした問題の解決のためにアメリカを頼った背景があるのですから、アメリカと同盟関係にある日本の軍事的な強化は韓国にとってプラスにこそなれマイナスになる事はありません。


そしてこの事は、去年1月に相次いで訪韓したアメリカの現職や元政府関係者、東アジア情勢専門のシンクタンクの研究員などがしきりに説明を行っていた事でもあります。


米識者「歴史は重要だが圧力は敵に加えるものでは?」 朝鮮日報 2015/04/30


こうした背景があるので、韓国内の親北左派や親中の人々以外ならば、この選挙結果が韓国にとって都合の悪い事ではないと解るはずです。
どんなに「韓国人にとってのかくあるべき歴史」が重要であっても、目の前の脅威への対応すら無視するようでは本末転倒である事は流石に解るからです。


実際問題、去年の集団的自衛権の問題の時には韓国三大紙でも多少なりとも「韓国にとって悪い事ではない」との記事があったのですが、今回参院選結果の記事ではそのような論調がほぼありません。


要するに、韓国は1年前と比べてもより「頑な」になってきているのです。


これには、先ほども書いたように「常に被害者でいたい」「他者の劣等性から自己の優越性を確認したい」という韓国独特の価値観も関係しているのですが、明らかに年々韓国メディアに対して日本の特定メディアの影響力が強くなってきている事が関係しているのです。


特に去年辺りから朝鮮日報でこの傾向が強く、最近の朝鮮日報は日本関連の記事で日本のメディアの論調とそっくりの記事が次々と登場しています。


改憲目指す安倍首相に立ちはだかる日本国民の「戦争トラウマ」 朝鮮日報 2016/07/12 (1/3ページ)(2/3ページ)(3/3ページ


日本のメディアが自らの政治的な意向を成り立たせるために、韓国メディアへの干渉を強め煽る事でそれを国内報道に利用しているのは明らかです。
以前も書きましたが、韓国社会は非常に扇動され易くまた異論や異端を能動的に排除する傾向にあるため、条件さえ揃えば特定方向への誘導はさほど難しくないのです。


今回の場合ならば、「韓国は被害者で日本は加害者、この事実は永久に変わらない(被害者が最も偉い)」という彼らの独特な価値観に基く大前提を、知ってか知らずか結果的に刺激しているわけです。


2:対照的なTHAAD報道


この日本の参院選結果に対する報道と対照的なのが、韓国内におけるTHAAD問題に対する報道です。


この問題も日本の憲法改正集団的自衛権問題と同じで、特に対北朝鮮で韓国がアメリカと連携を取って行くのならばTHAADの配備は理に適った判断です。
特にTHAAD問題では韓国は長い事曖昧な態度を取り続けたため、アメリカは韓国に不信感を持っていたわけですから、多少なりともそれを緩和する効果もあります。


要するに韓国が注目している(させられているとも)今回の日本の参院選結果と同じで、今後の韓国が行う対北朝鮮政策を左右する重要な選択であるわけです。


そしてこの件に関しては、韓国の三大紙は概ね配備に肯定的であり、唯一今月1日に中央日報で『戦争防止が至上命令なのにTHAADがあれば北朝鮮の挑発意志は折れない。いっそTHAADを放棄して中国の力を借りながら北朝鮮の戦争挑発を事前防止することが最善の政策だ。』との記事が掲載されましたが、これは韓国内でかなり批判されました。


コラム】THAADを放棄しよう=韓国(1) (2) 中央日報 2016年07月01日


そしてその後も、彼らは現実よりも「かくあるべき姿」を優先するため現状認識に甘さはありますが、THAAD配備を肯定的に扱い、否定的な論調を批判する記事が韓国三大紙では支配的となっています。


【社説】THAAD配備、韓国社会の不安をあおる無責任な政治家と地方自治体 朝鮮日報 2016/07/12

韓経:【社説】THAADめぐる韓国内部の誇張と歪曲がより大きな問題だ 中央日報 2016年07月12日
[社説]THAAD配備で錯綜する「共に民主党」、反米親中の本性が出るか 東亜日報 July. 11, 2016


北朝鮮の核問題を背景とする韓国の安全保障問題という面では、本質的に日本の9条改正などと根っこが同じなのですが、日本が直接関わっているいないの違いがあるにしてもその反応が対照的です。


実際、主だったTHAAD問題を扱う韓国メディアの論調をチェックする限りでは、配備に明確に否定的なのはハンギョレ新聞などの親北系メディアと議員や自治体などで、韓国内で完全に世論が二分しています。


THAAD配備で韓国経済を窮地に 中国が切る五つの報復カード ハンギョレ新聞  2016.07.10


強いて書くなら東亜日報がどちらとも取れる微妙な記事を書いているくらいです。


韓米、THAAD配備を公式宣言…中ロ反発、日本は歓迎 東亜日報 July. 09, 2016


そして注目すべきは、THAADの問題はあくまで韓国の内政問題であって日本の与野党対立や日本のメディアの政治的利害とはあまり関係が無いため、日本のメディアの論調はあまり積極的ではなく、韓国メディアへの干渉も限定的であるという事です。


これは当たり前といえば当たり前の事ではあるのですが、だからこそ韓国では問題の根元が同じにも関わらず賛否が分かれ、比較的配備に肯定的な世論が優勢となっているという事実です。


つまり、この事からも間接的に「日本のメディアが韓国を煽らない場合には、比較的冷静な判断ができている」という事がわかるのです。
今回の参院選にしても、程度の差こそあれ日本のメディアの干渉が無ければ賛否が二分していた可能性は高いです。


3:日本のメディアは厄介者


今回の韓国で報じられる日本の参院選結果と改憲問題、そして韓国で配備が決定したTHAAD問題を巡る2つの報道の論調から解ることは、日本のメディアが単純に北朝鮮や中国の意向のままに動いているだけではないという事です。


そしてまたむしろ、日本のメディアは自らのイデオロギー的或いは政治的な意向を優位に進めるために、韓国メディアに積極的に関与し韓国社会を効果的に扇動している事実です。


勿論、日本のメディアのいくつかは北朝鮮の下部組織である朝鮮総連と非常に密接な関係にありますし、中国政府の意向を受けて報道を行う事があるのも事実ですし、過去何度も韓国政府のプロパガンダを垂れ流して来た事実があることも間違いありません。


しかし今回のこの2つの問題を巡る記事の比較から解ることは、日本の特定のメディアにとって最も重要なのは他国の意向よりも自らのイデオロギー的・政治的意向の実現であり、中国や北朝鮮、或いは韓国の意向がどうであれ必ずしも何でも協力するわけではないという事です。


もし、日本のこうしたメディアが完全に北朝鮮や中国、或いは韓国政府の下部組織との属性を持っているのならば、もっと積極的にTHAAD問題にも関与していたでしょうし、韓国世論を煽っていたでしょう。


勿論、単に「工作機関としての役割が違うから」という可能性もなくはないですし、個人としてそういった人物もいるでしょうが、会社全体としてはそれは少数派であり彼らの目的はあくまで自分達の利益を実現させるために韓国世論を煽っているのが実態でしょう。


先ほども書きましたが、特にこの1年か1年半ほどは日本の特定メディアによる朝鮮日報への干渉が非常に活発であり、もともとの朝鮮日報”らしい”記事もあるにはあるのですが、個人的に朝鮮日報が徐々に「(イデオロギー的に)日本のメディア化」して行っている様にも見えます。


朝鮮日報に関しては、「右翼メディア」とか「政府の御用メディア」という評価も見かけますが、それ以上に韓国では最も購読者の多い新聞社であり、韓国の公共放送であるKBSと双璧をなすほど韓国内での影響力の強いメディアでもあります。


そうしたメディアを中心に、日本のメディアが思想的な扇動を行い「日本のメディアと同じような論調の記事が増えている」これが私が現在韓国のメディアや世論から受ける印象です。
しかも韓国側は、そうした人々を今でも「良心的日本人」と呼びもてはやしています。


日本のメディアは相当に「たちが悪い」です。
だからといって、これまでがこれまでですし、そもそも既に韓国人の多くは「良心的日本人=日韓友好論者」に批判的な意見は「右翼の差別主義者」としか認識しませんから、助言や手助けをする気には一切なりませんが。



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