日韓問題(初心者向け)

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慰安婦合意を巡るやり取りをまとめてみた(後編)


さて、本日は前回、前々回に引き続き慰安婦合意を時系列でまとめる記事の後編となります。


そして今回なのですが、実は集めた記事が前回よりも更に多くなってしまったため、引用するurlがかなりの数になり文章量も相当なものになります、これ以上このテーマの記事を引き伸ばすわけにもいかないための苦肉の策ですが、その点だけご了承ください。



※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。



1:2016年10月から10月後半まで


まずはこちらの記事から

安倍首相の慰安婦への謝罪手紙拒否 「言及控えたい」=韓国
聨合ニュース 2016/10/04
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2016/10/04/0400000000AJP20161004002900882.HTML

【ソウル聯合ニュース】韓国外交部の趙俊赫(チョ・ジュンヒョク)報道官は4日の定例会見で、安倍晋三首相が旧日本軍の慰安婦問題をめぐる昨年末の韓国との合意の追加措置として、慰安婦被害者への謝罪の手紙を求める声があることに対し「毛頭考えていない」と発言したことについて、「安倍首相の発言、具体的な表現に関する言及は差し控えたい」と述べた。

 また、韓国政府としては慰安婦合意の精神と趣旨を尊重していく中で、被害者の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしが早期に行われるよう、引き続き日本側と協力していくとの姿勢を示した。

 趙報道官は先月29日の定例会見で、「慰安婦被害者の心の傷を癒やす追加的な、感性に訴える措置に期待している」と表明していた。


前回までで書いてきたように、韓国では慰安婦合意に否定的な意見が当初から多数派であり、「合意を受け入れよう」といった世論でさえ「渋々」なのが実態でした。


そして日に日に高まる合意破棄世論に対し、韓国政府は「問題解決を日本に丸投げする」という手段をとり始めるわけですが、これもその対応の一環です。


「最終的かつ不可逆的に解決」と合意したのですから、本来は追加で何かするなら合意そのものに意味が無くなるわけですが、以前から書いているように韓国側が望む解決とは「日本が謝罪し続ける事」であり、日本人が考えるような「これで終わり」と線引きをするようなものではなかったからこその要求です。


そして更に、この韓国側の合意を無視したような要求に対し、安倍総理が「毛頭考えていない」と拒否すると、記事にもあるように韓国政府は合意の当事者であるためこの時点では特に反応しませんでしたが、その後世論やメディアも含め非常に「韓国らしい」反応をします。


西独首相はひざまずき謝罪 日本に措置求める=韓国外相 聨合ニュース 2016/10/13


「表現自体は(韓国の)国民を失望させるもの」、「感性的な面で日本側が留意しなければならない」と反発、更に「毛頭考えていない」という表現を指して「日本の態度が失礼だ」と怒り出します。


この件は以下のハンギョレ新聞の記事の表現が最も典型的でわかり易いです。


[特派員コラム]12・28合意と決別しよう ハンギョレ新聞 2016.10.07


元々この「お詫びの手紙」要求は、最終的・不可逆的に解決したと双方が合意したにも関わらず、韓国側が日本に対して合意を無意味にするような言動をするよう要求してきたもので、韓国の行いは「自分から合意を反故にしたくないから日本から反故にして欲しい」と要求しているようなものです。


日本側からしてみれば「あつかましい」事この上ないわけですから、「毛頭考えてない」という強い表現が出てくるのは当然なのですが、韓国的価値観では以前「易地思之」の概念の記事で書いたように、相手はこちらの事情を汲んで思いやらなければいけないと考えます。


要するに、「韓国側がこんなに困っているのだから、日本はその事情を汲んで合意を空文化する態度を取らなければいけない」というわけです。


また、他者の劣等性から自己の優越性や正当性を証明する彼らの考え方では、この安倍総理の「毛頭考えていない」という表現を「日本側の劣等性」と定義し、そこから自分達の正当性や優越性を導き出しているため、韓国側が問題のある態度を取っているとの認識が消滅している事も重要です。


このあたりの作用は「韓国人が日本人から嫌われる根本的原因」で詳しく書いているのでそちらを参照してください。


こうして、彼らは彼らの価値観に沿った態度を取り続けていたわけですが、このような状態でも当初の韓国側の目的であった、「日本からの実質的な経済支援を取り付ける」は韓国側の積極的な働きかけで実行され続けます。


朴大統領 経団連会長らと面談=韓国若者の採用と投資拡大要請 聨合ニュース 2016/10/10
韓国産業通商資源相 日本経団連代表団に投資拡大を要請 聨合ニュース 2016/10/10
韓日経済団体 第三国への共同進出など協力強化で一致 聨合ニュース 2016/10/10
韓国・九州経済交流会議 あすから福岡県で 聨合ニュース 2016/10/11


なぜなら、彼らの中では彼らの主観によって決定された「日本の劣等性」によって、韓国側の問題のある言動は全て消滅しているため、「日本は約束を守らなければいけない」という前提だけが残っていたからです。


2:2016年10月後半から11月まで


このようにして、日韓の価値観の違いによってこの時点で合意に対する考え方にかなりの齟齬が発生していたわけですが、そこへ来ていわゆる朴大統領の友人による国政介入事件により、状況が更に混沌としてきます。


まず動いたのは親北系の団体でした。


以下で引用している記事の親北系団体などは、10月後半頃から「慰安婦合意も崔順実のせいだ」という宣伝をし始め、その結果韓国内にこれを新たな慰安婦合意破棄の動機とする世論が出来上がります。


元慰安婦らが日韓合意の破棄訴え 「崔順実氏に操られたのではないか?」 産経新聞 2016.11.4
慰安婦被害女性「朴大統領、退陣せよ」時局宣言に参加 中央日報 2016年11月04日
朴大統領、外交長官の「3カ月追加交渉」意見黙殺し「12・28慰安婦合意」強行 ハンギョレ新聞  2016.11.22
韓国外相が大統領に慰安婦協議の延長要請? 外交部「事実無根」 聨合ニュース 2016/11/22


しかしそもそも、前編で書きましたがこの合意は元々朴大統領の「慰安婦問題などの歴史問題が解決しない限り、日本との首脳会談はしない」としていた頑なな態度が、韓国の経済や安保を不安定な状態にし、合意はこの状態をリセットするために行われたものです。


つまり、崔順実による政治介入があったとすれば2015年前半までの「首脳会談はしない」というそれまでの頑なな態度だった時期であり、この合意はそれまでの態度を改めるものであったのですから、影響があるわけが無いのです。


しかも2015年8月の韓国の世論調査でも、朴政権の対日外交方針は原則論にこだわり過ぎであるとして低評価であったとする調査結果もあるのですから、本来日本との関係改善を望んだのも世論だったはずです。


朴大統領が任期折り返し 前期の国政運営と今後の課題 聨合ニュース 2015/08/21


にも関わらず、「朴大統領の劣等性」を見つけ出した韓国世論は、こうした親北系による扇動に簡単に乗せられてしまい、慰安婦合意も崔順実問題の一つとなってしまいます。


更に、この時期韓国政府は慰安婦合意によって日本との外交窓口が開けたことで、対北朝鮮の核問題を想定したGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の締結を進め始めていたのですが、これに真っ先に北朝鮮が反対します。


北朝鮮メディア、 日韓政府の「軍事機密共有」協議を非難…「米国を後ろ盾にした凶悪な企画」 DailyNK Japan 2016年11月09日


そしてそれに呼応するように、韓国内でも「韓国国民の世論を十分に反映せずに推進されている」「日本が歴史認識問題に対し従来の立場を変えていない状況で韓国が日本と軍事協力を行うことは不適切だ」と反対の声が高まっていき、韓国政府が当初予定していた慰安婦合意を基点とした諸問題解決の思惑は次々と崩れて行きます。


韓国 世論より「安保が優先」=日本との軍事情報協定で 聨合ニュース 2016/11/14
韓国国防相「国民同意が前提と言ったことない」 韓日軍事協定 聨合ニュース 2016/11/14
韓日軍事情報協定「国会の批准同意必要なし」=韓国外相 聨合ニュース 2016/11/14


また、全ての問題を崔順実問題と関連付けて政府批判を展開していた親北系野党は、この件も朴政権の独断であるとして関連付け批判を開始、結果韓国政府は完全に世論と日米との間で板ばさみ状態となっていきます。


日韓軍事情報協定に暗雲=韓国野党が中止案提出 時事通信 2016/11/10
韓国野党 国防相の解任案提出へ=日本との軍事協定推進で 聨合ニュース 2016/11/15
軍事協定で日本に傍受・人的情報提供へ 懸念示す専門家も 聨合ニュース 2016/11/15
韓日情報協定に仮署名…韓国野党「国防部長官の弾劾を進める」 中央日報 2016年11月15日


それでも韓国政府は協定締結を強行しなんとか締結にまでこぎつけ、保守系メディアも野党の態度に批判的な記事を書き続けるのですが、韓国的価値観で「劣等である」と定義された朴政権の行った政策であること、また「反省しない日本と協力する」という事が許せない韓国世論から大バッシングをうける事となります。


【社説】韓日GSOMIA仮署名に気が狂った韓国野党 朝鮮日報  2016/11/17
韓日軍事情報協定推進  国防部「大統領府の指示ではない」 聨合ニュース 2016/11/17
日本との軍事協定 59%が反対=韓国世論調査 聨合ニュース 2016/11/18


またこの時期慰安婦合意に関しても、韓国側が合意に基いて設立した「和解・癒し財団」の活動に対し、「国政停止の間に慰安婦被害者に強要している」という批判が噴出、最近いくつかのメディアで報じられているような「活動が知られていない」どころか、活動そのものが世論から批判されるという事態に陥ります。


慰安婦支援財団、23人に現金支給 「国政停止の間に強要」との見方を全面否定 産経新聞 2016.11.17 (1/2ページ) (2/2ページ


また、ユネスコの記憶遺産への慰安婦の登録事業に関しても、合意によって韓国政府はこれ以上関与しない事になっていたわけですが、最早韓国の世論はそんなことはすっかり忘れ、登録事業への予算を実質的に打ち切った事に関しても批判される事となります。


日本に配慮? 慰安婦記憶遺産登録予算を別事業へ=韓国政府 聨合ニュース 2016/11/18


このようにして、11月末までの時点で当初韓国政府が予定していた慰安婦合意を基点とした思惑は韓国世論と親北派によって全否定され、計画そのものは全て通りますが今後もそれが継続される可能性は殆どなくなります。


慰安婦・THAAD・韓日軍事情報協定で速度戦、すべて「朴大統領の独断」 ハンギョレ新聞  2016.11.24

「朴槿恵は父親の祖国である日本のために死ぬ覚悟を決めたようだ」城南市長が強く批判 ハンギョレ新聞  2016.11.24


3:2016年12月


12月にはいると、この動きは更にエスカレートしていき、とうとう慰安婦合意を「不法」として損害賠償を求める動きや、合意の破棄を求めるデモ活動などが合意1年目の節目として高まって行きます。


韓国地裁 政府に慰安婦合意の「法的意味」説明求める 聨合ニュース 2016/12/02
「慰安婦合意、無効化を」=朴氏弾劾受け韓国団体 時事通信 2016/12/14
日韓合意「新たな協議を」=法的責任、謝罪求める-韓国野党元代表 時事通信/アメーバニュース 2016年12月15日


そして注目すべきは、この時期より韓国の大統領選での争点として慰安婦合意が取り上げられるようになり、野党系有力候補はみな合意破棄を争点とするようになっていき、更にそれが彼らの支持率に直結して行きます。


次期大統領有力候補の文氏「慰安婦合意は見直す」 朝鮮日報 2016/12/15
日本は重要な隣国だが敵性国 支持率急上昇の李氏=韓国 聨合ニュース 2016/12/14


そして12月末になると、慰安婦合意当初から始まっていた釜山日本領事館前への慰安婦像設置活動が活発化、韓国政府は改めて合意の履行を訴えますが、韓国内では合意無効を訴える世論が拡大し続けたうえに、韓国政府はプロパガンダ戦で完全に親北系の後手に回り、「和解・癒し財団の活動は政府による慰安婦への強要(※1)」というイメージがついてしまいます。


韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦少女像設置の動き、菅官房長官「きわめて残念」―韓国メディア Record China 2016年12月21日
慰安婦合意から1年 反対世論にも履行進む 聨合ニュース 2016/12/25
韓日慰安婦合意 韓国世論「破棄」に傾く=世論調査会社 聨合ニュース 2016/12/29

(※1)
[コラム]「金を受け取って日本が謝ったと考えて下さい」 京郷新聞(韓国語) 2016.12.26


そしてこの頃より、韓国政府側は「「お金を渡したのでやるべきことはすべてやった」というような日本の態度は問題だ」と、再度日本側に対して事実上の「追加措置」をするよう要求するようになり、実質的に政府に問題解決能力そのものがなくなっている事を自分達で証明してしまいます。


【取材日記】葛藤は相変わらず、慰安婦交渉妥結1年 中央日報 2016年12月28日


このようにして、事実上韓国政府が機能しない無政府状態のなかで発生したのがいわゆる釜山日本領事館前への慰安婦像設置事件です。


像が最初に設置された28日時点では、警察と自治体が「道路法上設置は許可できない」とし設置された像と関係者を強制的に移動させたわけですが、その後多数の抗議が寄せられたうえに、大統領候補支持率一位の文在寅氏が「少女像撤去は設置を恐れた釜山東区庁の親日行為」とレッテル貼りをすると、態度を急変させ設置許可を出します。



釜山・日本総領事館前の少女像設置 警察が阻止 聨合ニュース 2016/12/28
少女像撤去した釜山の自治体に抗議殺到 HPダウンも=韓国 聨合ニュース 2016/12/29
慰安婦合意:文在寅氏「少女像撤去は設置を恐れた釜山東区庁の親日行為」 朝鮮日報 2016/12/30
釜山市東区 日本総領事館前の少女像設置を一転容認=あす除幕式 聨合ニュース 2016/12/30
釜山日本領事館前の少女像設置を容認…「自治体が対応するのは難しい」 中央日報 2016年12月30日


そして本来ならば、ここまで拗れた場合政府が対応して撤去を進めるべきなのですが、韓国政府は「地方自治の問題」としてこれを放置、韓国は最早法が機能していない事や、政府が国内問題を解決する能力が無い事などがはっきりします。


4:2017年1月~現在


こうして慰安婦合意を巡る問題は、韓国内において完全に親北派が主導する形となり、元々韓国内で「軍や国の命令によって軍人や官憲が行った直接的な拉致」という定義を日本が認めない事に対する不満があり、崔順実問題をこじつける事にも成功した事で、合意破棄=民意という構図が出来上がります。


年明け1月2日の韓国経済新聞の記事で、今頃になってやっと「被害者という事実が一度存在したからといって永遠に何かの請求権が存在すると主張するのは無理がある」という記事が出てきましたが、最早何もかもが手遅れの状態でした、記事を書くのが1年遅いです。


韓経:【社説】中国に続いて日本との関係も悪化一途、東アジア外交で蚊帳の外か=韓国 韓国経済新聞/中央日報 2017年01月02日


またこの頃になると、親北系のハンギョレ新聞は慰安婦問題での北朝鮮との連携を隠そうともしなくなり、またこうした動きを公的に批判できる人も韓国内で殆どいなくなってしまいます。
これはつまり、韓国において「韓国の敵は北朝鮮ではなく日本である」という世論誘導が成功した事を意味します。


「慰安婦問題は民族の痛み…南北間の連帯が必要 ハンギョレ新聞 2017.01.05


またこの時期、韓国の弁護士会慰安婦合意の交渉文書の公開を求めていた請求が受理され、裁判所から韓国政府に対して文書の公開を命じる判決が下されます。


公開を命じた文章の内訳は「両国が合意の発表で「軍の関与」との用語を選択し、その意味を協議した文書」「強制連行を認めるかどうかについて協議した文書」「「性奴隷」「日本軍慰安婦」などの用語使用について協議した文書」と、どれも「直接的な強制の有無」に関する内容でした。


日本との慰安婦合意交渉文書 公開命じる判決=韓国地裁 聨合ニュース 2017/01/06


韓国側が「軍や国の命令によって軍人や官憲が行った直接的な拉致」に徹底的に拘っていることがここからも伺えます。


そしてこの判決と同日、釜山日本領事館前の慰安婦像設置に対する日本側からの4つの対抗措置が菅官房長官によって公表され、日韓の対立構図が明白となります。


釜山の少女像は遺憾、駐韓大使一時帰国など対抗措置=菅官房長官 ロイター 2017年 01月 6日


またこの件に関して、韓国側は独特の「他者の劣等性から自己の優越性や正当性を証明する」という価値観により、「韓国側は日本が問題ばかり起こすから仕方が無くやったのだ」というロジックで思考しており、「世界がこの正しさを認めている」と考えていたにも関わらず、アメリカがその「正しさを認めなかった」と取れる態度を取ったことに少なからずショックをうけたと見られる記事が出てきます。


安倍首相、米副大統領との電話会談で釜山少女像関連に発言 中央日報 2017年01月06日


そしてこの事からも解る事として、韓国側は「日本が韓国側の歴史認識(軍命令による直接的な拉致)を認めない」ことが不満であり、一連の合意不履行と取れる態度は「日本が歴史を歪曲しているからその対抗措置だ」と考えている事、そしてそれは政府側であろうと親北系側であろうと変わらないという事です。


この事は以下の中央日報の記事でわかりますし、また記事中で「日本政府がリーダーシップ空白状態を利用して韓国を懐柔しようとするのではないのか、韓国に圧力を加え続けることで追加の少女像設置を防ぐのが利益だと考えるのではという不信感だ」と書いていることも重要です。


【コラム】韓日の慰安婦葛藤を解くには…(1)
 (2) 中央日報 2017年01月23日


元々慰安婦合意が締結されたのは2015年12月ですから、崔順実問題はまるで関係がありませんし、当時から日本のスタンスは一切変わっておらず、状況を悪化させる原因を作り出したのは、「慰安婦の定義を巡る問題」以外では全て韓国単独で発生したものばかりです。


しかし彼らの価値観では「今現在の感情(情緒)」を最も重視するためこの事が既成事実化し、それが因果を逆行して「日本の劣等性」として認識され、「日本が韓国の政治的危機を利用して歴史の改竄をしようとしている」とする認識となっています。


そして重要な事として、この認識が存在するがために韓国の次期大統領候補全てが慰安婦合意破棄を選挙の主だった争点にするという状況を作り出しており、また「韓国が正しい事をしているのに国際社会が正しさに同調しないのは、韓国に国力が無いからだ」という認識に繋がり、韓国の大統領候補たちは誰もがより反日に、より民族主義的になって行っているわけです。


韓国大統領候補ら、連日「韓日慰安婦合意」を批判 中央日報 2017年01月30日
(※2)
[デスクから]ダボスが聞かなかった韓国の声 朝鮮日報(韓国語) 2017.01.31


また彼らが慰安婦像を国内外に次々と設置しようとしており、慰安婦像が韓国で崇拝に近い象徴的存在となってきているのも、そうする事で「日本の劣等さ」を世界が認識し、認識すれば「韓国の正しさや優越性」も理解されるはずだという考え方があるからです。


彼らは彼らの価値観に基く「常識的なこと」をしており、だからこそ今現在の行いを続けていればきっと世界は韓国の正しさに気付くはずと考えているわけです。


今年に入ってからの、日本人から見て不可解にしか見えない韓国側の言動は、竹島への慰安婦像設置も含め彼らの社会における常識に沿った対応をしていたからこそであり、このことからも韓国人は日本人とは全く異なるロジックの価値観を有しているという事が良くわかります。

5:あとがき


今回、3回にわたり長々と一つのテーマについて書いたわけですが、題材とする慰安婦合意を巡る問題の期間が非常に長かった事もあり、これまでで最も記事作成に時間が掛かりました。
特に今回の後編記事に関しては、資料集めを除く記事作成だけで実質3日かかっています。


また、今回用意だけして引用しなかった分も含め、引用ソースの前・中・後編合計の総容量が1.5MBを超えるというとんでもない数字になっており、多分もうこんな事は二度とやらないでしょう。
とてつもなくつかれましたから。


ただ、このまとめを行ってはっきりした事として、朴政権の元々の対日方針は「現在の韓国世論と親北派が求めている方針」と殆ど同じものであり、その方針では経済も安保も立ち行かなくなる事から軌道修正のために慰安婦合意を行い全てをリセットしたという背景があります。


にもかかわらず、現在の韓国では軌道修正を朴政権のせいとして断罪し、2015年9月頃までの朴政権の外交方針に戻るという現象が発生しており、これほど「本末転倒」という言葉が似合う状況も早々無いと呼べるような状態になっています。


またこの合意そのものが韓国側の都合であったにもかかわらず、それが韓国世論に受け入れられなかったこと、世論が簡単に北朝鮮のコントロール下に置かれるという状況になっていること、慰安婦の定義(軍や国の命令によって行われた軍人や官憲による直接的な拉致の有無)が韓国との間で最も大きな対立点であった事などの再確認にもなりました。


また本日潘基文氏が大統領選への不出馬を表明しましたが、こうして改めて時系列を追って状況の整理をしてみると、仮に「潘氏は保守系の立候補を妨害するために空出馬した」という話しが後日出てきても私は何も驚きません。


潘基文氏が韓国大統領選不出馬を宣言 政局への影響必至 聨合ニュース 2017/02/01


それくらい今の韓国は北朝鮮と中国にいいようにコントロールされているからです。
そしてこれは韓国内の親北派が問題であったというだけではなく、政府側にも相当に問題があると同時に、元々この問題の根幹は日韓の価値観の違いが大きく関わっているのが明白なのですから、どんな政府だろうと結果はさして変わらなかったであろうという事が重要です。


そして今回の一連の合意には、この問題をはっきりと浮き上がらせる効果があったという事が最大の成果であり、そのための10億円であったともいえます。



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以下は当ブロマガのお勧め記事マイリストです、もしよかったらこちらもどうぞ。









(※1)
[コラム]「金を受け取って日本が謝ったと考えて下さい」
京郷新聞(韓国語) 2016.12.26
http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=201612262101005&;code=990100

韓日慰安婦合意は28日、締結1年をむかえる。合意通りなら慰安婦被害ハルモニたちは名誉と尊厳を回復し心の傷を治癒しているはずだった。少なくともその過程でなければならない。現実は正反対だ。ハルモニたちの名誉と尊厳は回復しなかったし心の傷はかえってさらに深くなった。

今、ハルモニたちは悲しい戦いをしている。合意が最善として受け入れを強要する韓国政府が相手だ。加害国の日本政府を後に隠した格好だ。主客転倒にもほどがあり、ハルモニたちは悲嘆に暮れている。

政府の代理として説得に出たのはキム・テヒョン和解・治癒財団理事長だ。先月あったキム理事長とハン、ハルモニの1時間20分の対話内容を紹介する。

キム理事長が説明する。「日本政府がこれまで認定しなかった日本軍の関与を認めました。間違っていたと謝罪し反省しました。言葉だけでなら謝ったとは言えませんが、その責任で10億円を支援しました。ハルモニの名誉回復と尊厳を持って残りの生活を送れるように治癒する事業をするよう送りました。」

偽りと歪曲がある。慰安婦合意文には「当時、軍の関与の下に~」とだけある。どこにも日本軍が組織的・体系的に犯した戦争犯罪と明示しなかった。また、日本政府は謝罪して反省すると言葉で言っただけで実際は謝罪して反省しなかった。日本が謝罪と反省の責任で10億円を送ったという話も事実と違う。合意文には‘日本政府はハルモニたちの心の傷を治癒する措置を講じる’とされている。その後も支援金と表現した。法的責任の性格が込められた賠償金と明らかにしたことはない。

ハルモニはこれをよく知っていた。「10億もらったら青春が帰ってきますか?」キム理事長の懐柔が本格化する。「ハルモニたちにしてみればそうでしょう。私は誰よりも日本をよく知っています。日本はこれ以上謝罪しない、これよりお金は出さない、それなら、これだけでも出る謝罪を受け入れて下さい。」金を受け取るのが賢明な選択という話だ。しかし、ハルモニの返事は簡潔で核心を刺す。「千度万度、話したというが、直接来なかくて、それのどこが謝罪なの?」

キム理事長がさらに意図を見せる。「私の考えでは生きておられるうちにお金を受け取って謝罪を受けたと考えることに意味があるのであって、亡くなった後には日本は何もできません。日本がそれでも謝って反省してまた、日本軍が関与したと認定もして政府がお金をくれるといったので、それは謝罪の意味がありますね、責任あって認めたのでしょう。そのように考えれば申込書を作成して下されば良いです。」90才を控えたハルモニの境遇を利用して罠をかける感じを与える。しかしハルモニは巻き込まれない。「ところで私は今、日本に対し訴訟を起こしたことをご存知ないですか?」

キム理事長の語調が強くなる。「もう歴史的にある程度謝罪表明したし、お金出したのはもう手始めです。受けるべきものは受けなければならないですね。謝罪表明したことも受けなければならないですね。日本はいくら引っ張ってもこれ以上お金を出しません。韓国も日本の良心的な人々も圧力を加えていて、政府もずっと努力しています、安倍が来て謝れと。」また嘘をつく。合意後、韓国政府は日本に真心からの謝罪を求めるどころか、かえって反対に行っている。慰安婦白書発行事業を中断し、ユネスコ登録推進事業予算は全額削減した。

もう談判は短文団答式で行き来する。「いく前に恨みをはらさなければならないと思います」というとすぐに「それでわだかまりが解けますか?」と答え、「とてもお気の毒です、度々入院してらして」には「日本は良いだろう、みな死ぬから。政府もそうだ」と答える。これにキム理事長が「政府は努力しています」というと「パク・クネは安倍に何度も会ったが、何一つ解決できなかった」と正面から受ける。キム理事長が「安倍がその様な酷い人です」として政府を擁護すると、すぐに「途方もなく努力して…お金を何文受けとったのですか?」と応酬する。対話は「受けとらなかった方々の申込書みな受けて持ってくれば私も考えてみる」というハルモニの言葉で終わった。

ハルモニは頑固だった。派手な弁舌はなくともキム理事長の円熟した話術と扇動に乗らなかった。金を受け取ればハルモニたちの尊厳と人権、女性性をじゅうりんした日本の戦争犯罪をこれ以上問題にすることが難しくなるという事実をよく知っている。耳は聞こえにくく判断力も曇る90才ほどのハルモニたちに非公開裏に1対1で会う政府の見せ掛けの術が通じない理由だ。

だからパク・クネ大統領が弾劾訴追後、「血の涙が何か分かる」と言っても、安倍晋三総理が謝罪手紙の要請に「毛頭考えない」と妄言してもみな耐える。ハルモニたちは28日、今年最後の水曜デモを開く。社会的関心が切実だ。


(※2)
[デスクから]ダボスが聞かなかった韓国の声
朝鮮日報(韓国語) 2017.01.31
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2017/01/30/2017013001227.html

今年のダボスフォーラムは様々な面で例年と違っていた。昨年だけでも第4次産業革命など革新が主要問題だったが、今回はポピュリズムと政治リーダーシップ不在、保護貿易主義など憂鬱な話がトップニュースを飾った。

'正義とは何か'の著者マイケル・サンデルハーバード大教授は「米国大統領選挙でトランプが勝ったことは伝統的に民主党を支持してきた米国社会の下位25%層がポピュリズム指向を見せた共和党のトランプ支持で背を向けたため」と分析した。彼は「民主国家のエリートが怒った国民の声に耳を傾けなければ、選挙はポピュリズムに流れるほかない」と警告した。人ごとではない。
(中略:人工知能の事例)

ダボスフォーラム演説者らは先を争って未来を展望し、参席者らはそのような未来に対応する方案を議論した。だからだろうか。ダボスからみた韓国の国内状況はさらに絶望的に見えた。政治家たちは社会正義が重要だと血を吐く心情で言っても、20~30年後の韓国が暮らす産業について話すことはない。

国際社会では力がすなわち正義なのに、私たちだけの井戸の中で社会正義に埋没し、未来に対応できない愚を冒しているのではないか心配になった。その上、技術もなく実力もないのにひたすら自分の権限だけ強調して責任は取らない風潮、法の上に情緒法があってその上に無理強い法がある社会だ。

左派とか右派とか、従北とか反北とか、親日とか反米とか言いながら、あなたの側・私の側に分けて分裂する。これでは中国に押され日本にやられる。国家がなくなったらあなたの側・私の側に何の意味があるのか?我が国は本当に大変なことになったという気がした。

20人余りに過ぎなかった我が国の参席者は限韓令など中国のTHAAD関連措置や日本の慰安婦問題について私たちの立場を熱心に表明した。しかし誰も聞き入れようとしなかった。明らかに私たちは正しいが、私たちの正義は認められなかった。

ある参席者は「中国や日本より力がないため」といった。正しい言葉だ。しかし、そのような認識が愚痴だけに終わってはならない。私たちが生き残る道は何か悩まなければならない。答は一つだ。中国や日本の国民が私たちのドラマをさらに多く見ずには耐えられないようにして、私たちの製品を買わずにはいられないようにすることだけが私たちの生きる道だ。

英語・中国語・日本語の一単語でもさらに覚えて私たちだけの技術をより一層発展させ、大韓民国でなければできない、それで私たちの声に耳を傾けなくてはならないようにしなければならない。私たちの実力が世界的な水準に昇る時まで、私たちは前だけ見て走らなければならない時だ。

20年後、今を振り返ってみれば、私たちの社会が主に主張した社会正義が国際社会では何の意味もなくならないようにだ。