日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

「創氏改名」という問題について書いてみる


さて、本日なのですが、自民党の石破議員が韓国へ赴き日韓併合と「創氏改名」について語っていたようなのですが、明らかな事実誤認があったのでその件について手短に書いていきます。


初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。

ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由


注意
・このブロマガは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています

・当ブロマガのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです

・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません

・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらど
う思うか」という客観性を常に持ちましょう

・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください


※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。



1:石破氏の創氏改名発言


まずはこちらの記事から

石破氏「日本は独立国だった韓国を併合し創氏改名した歴史を認識すべき」
ハンギョレ新聞 2018-12-02
http://japan.hani.co.kr/arti/international/32251.html

強制徴用被害者に対する賠償判決以後 
高まる反韓世論を牽制 
シン・ガクス元駐日大使は 
「日本政府と韓日の企業が参加する基金」を提案

 石破茂・元自民党幹事長が、韓国最高裁(大法院)判決以後に高まった反韓世論と関連して、独立国だった韓国を併合し創氏改名をした歴史を日本人が認識する必要があると話した。石破元幹事長は9月、自民党総裁選挙で安倍晋三首相と一騎打ちした。

 産経新聞は1日、石破元幹事長が前日に行った早稲田大での講演で、韓国最高裁(大法院)の強制動員損害賠償判決で梗塞した韓-日関係と関連して「今回の判決は国際法的に誤り」と話したと伝えた。彼はしかし「(植民支配が)合法的だったとしても、独立国だった韓国を併合して(彼らの)姓を変えた歴史があったという事実を認識する必要がある」と話したと伝えた。今回の判決は誤りという日本政府の立場を支持しながらも、植民支配と侵略の歴史を再確認し、韓日関係をむやみに悪化させてはならないという持論を明らかにしたと解釈される。

 朝日新聞も2日、日本政府、韓日請求権協定で日本から資金を支援されたポスコなど韓国企業、強制動員被害者を雇用した日本企業が参加する基金を作り、事態を解決しようというシン・ガクス元駐日韓国大使の寄稿を掲載した。

 自民党内の右派政治家は、植民支配と侵略をどのように見るかを意味する「歴史認識」により大きく二つに分かれる。安倍首相など極右側では「日本の子供たちにこれ以上謝罪の宿命を負わせることはできない」(2015年8月安倍談話)として強硬な立場を維持しているが、穏健保守側では日本が誤りを謙虚に受け入れる周辺国外交をしなければならないとして対抗している。

 問題は、日本社会の右傾化が進み穏健保守の位置づけが弱まっていることだ。一時極右保守に挙げられた中曽根康弘元首相までが2015年に安倍首相を牽制して「一つの民族が被った傷は、三代百年間は消えない。日本は将来を考えて、近隣国と安定した関係構築のために絶え間ない対話を通じて、さらに深い相互理解と協力の道を進まなければならない」と話した。
キル・ユンヒョン記者


関連記事
自民・石破氏 日韓関係「併合した歴史を認識すべき」 産経新聞 2018/11/30



この記事で石破氏は「(植民支配が)合法的だったとしても、独立国だった韓国を併合して(彼らの)姓を変えた歴史があったという事実を認識する必要がある」としていますが、この件は明らかな事実誤認があります。


その件を詳しく説明する前に、この創氏改名問題が韓国でどう受け取られているか、その解り易い事例を挙げると、以下があります。


“妄言製造機”麻生副首相「セクハラ罪という罪はない」 ハンギョレ新聞 2018-05-06


この記事での自民党の麻生氏の2003年の発言が有名なのですが、「創氏改名朝鮮人が名前を付けたいと言って始まったこと」といって問題になったとしています。


どういうことかというと、現在の韓国では日本が朝鮮人から名前を奪い、強制的に日本人の名前に変更させたとしており、日本による蛮行のひとつして学校で教育されているからです。


後ほど説明しますがこれは明らかに事実と異なっており、そのことが現在もトラブルの原因のひとつとなっているわけですが、そもそも麻生氏発言に関しても原文からのかなり悪意的な曲解が行われています。


実際の発言と経緯は以下です

麻生太郎自民党政調会長(当時)による東大での講演会
2003年5月31日

(一部抜粋)
歴史認識を一緒にしようといっても、隣の国と一緒になるわけがない。

たとえば朝鮮人創氏改名の話。日本が満州国をやる前に創氏改名の話が出たことは一回もない。
しかし、当時、朝鮮の人たちが日本のパスポートをもらうと名前のところにキンとかアンとか書いてあり、「朝鮮人だな」と言われた。仕事がしにくかった。だから名字をくれ、といったのがそもそもの始まりだ。

これを韓国でやりあったら灰皿が飛んできた。
そのときに「若い者じゃ話にならない、年寄りを呼んでこい」と言ったら、おじいさんが現れて「あなたのおっしゃる通りです」と。
(後略)


そしてこの発言は当時の朝鮮総督府の政策とも整合性が取れます。
どういう事かというと、以前の記事で国立公文書館アジア歴史資料センターにある史料「朝鮮人移住対策ノ件」を引用した事がありますが、そこにはこう書かれています。


朝鮮人移住対策ノ件 内務省
国立公文書館アジア歴史資料センター
レファレンスコード A03023591400
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F0000000000000061021

朝鮮南部地方は人口稠密にして生活窮迫せる者多数存し、之が為、南鮮地方民の内地に渡航する者最近極めて多数に上り、啻さへ甚しき内地人の失業及就職難を一層深刻ならしむるのみならず、従来より内地に在住せる朝鮮人の失業をも益々甚しからしめつつあり。
又、之に伴い朝鮮人関係の各種犯罪、借家紛議、其の他各般の問題を惹起し、内鮮人間に事端を繁からしめ、内鮮融和を阻害するのみならず治安上にも憂慮すべき事態を生じつつあり。
之に対しては、朝鮮及内地を通じ適切なる対策を講ずるの要あり。
即ち、朝鮮人を鮮内に安住せしむると共に、人口稠密なる地方の人民を満洲に移住せしめ、且内地渡航を一層減少すること緊要なり。
而して是等方策は、内地朝鮮全般の利益の為、一体として之を実施すること必要にして、財政の許す範囲に於て左記要目に掲ぐる事項を実施すべきものとす。


これは朝鮮に限らずどこでもかつて起きた事ですが、急速な近代化により医療と食糧事情が改善し、乳幼児の死亡率が下がる事で農村部の人口が一気に増加、親の土地を継承できない次男以下などが職を求めて都市部へ移動するという現象です。


そして朝鮮の場合、総督府は寒冷であまり農業に向いていない北部は工業化を、比較的温暖で農業に適している南部では農業を推進した結果、1920年頃からこの問題が顕在化し、その対策として、この人々を当時東アジア最大規模の工業地帯建設が行われていた満州国から北朝鮮北部への移住を推進したというわけです。


しかしここで問題が起きます。
実は李朝末期より満州地域に朝鮮人が移住しており、その結果水を巡るトラブルなどが頻発し、地域によってはかなり険悪な状態に陥っていました。
そして当時の日本人はその事情を殆ど知らず、事態の深刻さに気付くのも遅れました。


また元々朝鮮の宗主国であった清は「満州人」の国であり、伝統的に朝鮮人を見下す傾向にあったため頻繁にトラブルが発生しており、度々死者を伴う乱闘事件へと発展していました。
(この件を詳しく知りたい方は「万宝山事件」と「朝鮮排華事件」について調べてみてください)


余談になりますがこの双方のわだかまりは現在も部分的に続いており、台湾フォクスコンの郭台銘会長がシャープとの提携を発表した際以下のように

「日台協力でサムスンに勝つ」 鴻海会長が宣言 
朝鮮日報 2012/06/20
https://web.archive.org/web/20120622181210/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/06/20/2012062000483.html

 韓国人を卑下するような発言もあった。郭会長は「わたしは日本人を尊重している。日本人は決して後ろから刺したりしない。しかし、『高麗棒子』(カオリーバンズ=韓国人に対する蔑称)は違う」と語ったという。

高麗棒子
当時主に満州国満州人によって使われていた朝鮮人への蔑称


高麗棒子(カオリーバンズ)」と韓国人の事を卑下(※)した事があります。

(※)韓国メディアの日本語記事でよく見かける表現ですが、意味としては「侮辱」に近いものとなります。


こうしたいざこざがあったため、満州へ移住した朝鮮人は一目で朝鮮人とわかる名前を嫌い、「日本風の名前への改名を望んだ」というわけです。
麻生氏は何もイデオロギー的な背景からこれを言ったわけではなく、ちゃんと歴史的背景に沿った発言をしたというわけです。


しかし当時も現在も、韓国や日本のメディアでは、こうした背景のある発言である事を無視し、発言のセンセーショナルな部分のみを切り取りする、いわゆる「チェリーピッキング」を行って印象操作をしているわけです。


創氏改名という単語は、こうやって今でも日本と韓国の間のトラブルの原因のひとつとなっています。


2:「創氏」と「改名」


上記のような背景のほかに、創氏改名にはいくつかの目的があり、それは「朝鮮人の名前を奪う」とは全く別の目的がありました。
というより、そもそも「創氏」と「改名」は全く別の制度なのです。


どういう事なのかは、以前も引用した事のある以下の画像を見れば解ります。



(クリックで拡大します)


この画像は「創氏」の目的を説明している設定創氏のポスターなのですが、この告知では「日本風など「新たな氏」の設定を希望する者は8月10日までに申請し、それ以降に希望しても出来ないとしています。


また新たな「氏」の設定を希望しない場合は夫の従来の「姓」が「金」で妻が「尹」とすると 、夫の「金」姓が氏と設定され妻も「金」氏として登録されるとなっています。


「姓」と「氏」という単語が出てきたわけですが、これについて詳しく解説すると、朝鮮では伝統的に『一族の名』として「姓」が使われており、これは「一族の名」であるため、結婚して嫁入りした女性は原則的にこの姓=一族の名を名乗れません。


例えば現在の韓国大統領である文在寅氏の姓は「文」ですが、奥さんは「金正淑」と「金」姓を名乗っています。


一見すると夫婦別姓であるだけに見えますが実態は違っており、夫婦別姓の場合には子供たちは「どちらかの苗字」を選択できますが、朝鮮の伝統的な考え方では「子供たちは一族の一員」であるため、父親の姓を名乗る事となります。


つまり朝鮮では伝統的に女性は結婚しても一族から「よそ者扱い」され家族の一員と見なされないというわけです。


朝鮮近代化の過程でこれに色々と不都合があり、また朝鮮総督府的にもこの朝鮮伝統の姓を使用していると戸籍の管理が大変であったため、日本との一元化のために1939年に「日本式の氏」つまり「家族の名」としての苗字を設定しました、だから「創氏」というわけです。


そして、このときに「新たに氏を設定するのだから日本風の苗字にしてもいいし、朝鮮式の姓をそのまま氏にしてもいい」とし、また手続きをしなければそのまま姓が氏と設定され「特に手続きがなければ奥さんも夫の姓が氏として登録されます」としたわけです。


そしてそのうえで画像にもあるように、「氏を設定すると従来の姓が無くなると云う誤解があるようですが氏設定後においても姓及び本貫はそのまま戸籍に存置されますから心配ありません」と、朝鮮伝統の姓も戸籍に同時に登録したわけです。


例えば当時に文在寅氏が生きていた場合、創氏手続きをしなければ奥さんの「戸籍上の名前」が金正淑から文正淑になり、文という氏の家族と戸籍に書かれるわけです。
また、これはあくまで書類上の事であるため、別に普段は従来通りの姓を名乗っても何ら問題がありませんでした。


つまり、普段は文在寅金正淑夫婦と名乗っていますが、戸籍上の「氏=家族の名」は文在寅、文正淑、となり、「姓=一族の名」が文在寅金正淑と記載されると言うわけです。
他に本貫というものもありますが、ややこしくなるので知りたい方はウィキペディアの記事をどうぞ。


では「改名」は何かというと、この創氏の設定の少し前から始まった制度なのですが、元々姓名の変更には裁判所の許可が必要であったのを、本人による届出を行えばそれでいいとした制度で、こちらが先ほどの満州の事例と直接関係があります。


ただし、姓名変更の届出には当時の金額で50銭が必要であったので、現在韓国や日本のいくつかのメディアの言うように「殆どが強要された」というものではなく、かなりの数の人がそのまま朝鮮姓を氏にし、また朝鮮名を名乗っていました。


例えば以下の1940年代(1942年だったかも?)の「子供の科学」の懸賞当選者発表ページを見るとわかりますが、日本風の名前よりも朝鮮風の名前の方が多い事が解ります。








(クリックで拡大します)


こうした事例を韓国人や韓国の側に立つ人に伝えると、往々にして「親日で媚を売っているやつは強要を免れたのだ」と主張しますが、そもそもおかしいのは「親日で媚を売るなら尚更積極的に日本名に変えるのでは?」という事です。


実際、この「創氏」と「改名」に強要を示す一次資料はありませんし、彼らの主張はこのように明らかに矛盾を引き起こします。
結局のところ、創氏改名という彼らの主張は「歴史の改竄」に基くプロパガンダでしかなく、実態は「創氏」と「改名」それぞれに別の事情から実施された背景があったというわけです。


特に「創氏」のほうは、単なる「役所の書類上の問題」に過ぎないのです。


他にも矛盾点はありますが、それはまた機会があったら記事にします。



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