さて、今回の記事なのですが、マスコミ問題の方に書こうかこちらに書こうか迷ったのですが、以前よりこちらで紹介している「韓国的価値観」が大きくかかわる問題ですので、こちらに書くことにしました。
先日韓国で『帝国の慰安婦』の著者である朴裕河教授がソウル高裁において「有罪判決」を受けたが、この判決でとうとうごまかし切れなくなったのか、朝日新聞が明確に「韓国側の慰安婦の定義の問題」に言及する記事を書いた。
元々朝日は「(軍人などによる)強制連行があったかどうかは問題ではない、慰安婦被害者の救済が目的だ」としており、韓国側が「慰安婦の定義」に拘っている事実を「無かった事」にしていたが、それがこの裁判でできなくなった事がわかる。
そしてこうなった背景には、以前から書いている韓国の「主観的・絶対的正しさ」が関わっており、韓国では常に「正しさは一つしかない」ため、一度正しさが社会的に決定すると以後それ以外の意見は「劣等である」として排除される傾向にあり、朝日や吉見教授の主張は一切受け入れられなくなった。
ある意味、朝日や吉見教授は「韓国に追い詰められた」とも言える。
始めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由
※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
1:「韓国側との意見の違い」を明確に認めた朝日
まずはこちらの記事から
(社説)「慰安婦」裁判 韓国の自由が揺らぐ
朝日新聞 2017年10月31日
http://www.asahi.com/articles/DA3S13206113.html
自由であるべき学問の営みに検察が介入し、裁判所が有罪判決を出す。韓国の民主主義にとって不幸というほかない。
朴裕河(パクユハ)・世宗大学教授の著書「帝国の慰安婦」をめぐる刑事裁判で、ソウル高裁が有罪の判決を出した。
著書には多くの虚偽が記されていると認定し、元慰安婦らの名誉が傷つけられたと結論づけた。朴教授には罰金約100万円を言い渡した。
虚偽とされたのは、戦時中の元慰安婦の集め方に関する記述などだ。研究の対象である史実をめぐり公権力が独自に真否を断じるのは尋常ではない。
一審は、大半の記述について著者の意見にすぎないとして、無罪としていた。高裁は一転、有罪としながら、学問や表現の自由は萎縮させてはならないと指摘したが、筋が通らない。
学問の自由が守られるべき研究の領域に踏み込んで刑事罰を決める司法を前に、学者や市民が萎縮しないはずがない。
韓国では、植民地時代に関する問題はデリケートで、メディアの報道や司法判断にも国民感情が影響すると言われる。
そんな中で朴教授は、日本の官憲が幼い少女らを暴力的に連れ去った、といった韓国内の根強いイメージに疑問を呈した。物理的な連行の必要すらなかった構造的な問題を指摘した。
社会に浸透した「記憶」であっても、学問上の「正しさ」とは必ずしも一致しない。あえて事実の多様さに光を当てることで、植民地支配のゆがみを追及しようとしたのである。
朝鮮半島では暴力的な連行は一般的ではなかったという見方は、最近の韓国側の研究成果にも出ている。そうした事実にも考慮を加えず、虚偽と断じた司法判断は理解に苦しむ。
韓国では、民意重視を看板に掲げる文在寅(ムンジェイン)政権が発足して、もうすぐ半年になる。政権は、歴史問題で日本に責任を問うべきだと唱える団体にも支えられている。もし高裁がそれに影響されたのなら論外だろう。
日韓の近年の歩みを振り返れば、歴史問題の政治利用は厳禁だ。和解のための交流と理解の深化をすすめ、自由な研究や調査活動による史実の探求を促すことが大切である。
その意味で日本政府は、旧軍の関与の下で、つらい体験を強いられた女性たちの存在を隠してはならず、情報を不断に公開していく必要がある。
日韓の関係改善のためにも、息苦しく固定化された歴史観をできるだけ払拭(ふっしょく)し、自由な研究を尊ぶ価値観を強めたい。
この記事が注目すべき内容となったのは以下の部分が理由です
>そんな中で朴教授は、日本の官憲が幼い少女らを暴力的に連れ去った、といった韓国内の根強いイメージに疑問を呈した。物理的な連行の必要すらなかった構造的な問題を指摘した。
要するに、以前からこのブロマガでも指摘しているように、韓国側は公的に慰安婦の定義を「軍や政府の命令で日本人の官憲が行った組織的な女性の奴隷狩り」としていることを、とうとう朝日が言及したのです。
以前は例えば安倍政権の河野談話見直しなどの時には、対立の原因を誤魔化し「もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済であることは論をまたない」等と書いていたので、この裁判で隠し切れなくなったのでしょう。
慰安婦検証―問題解決の原点に返れ 朝日新聞 2014年6月21日
隠していたら、なぜ朴教授が訴えられ有罪判決を受けたのか、なぜ朴教授の著書から裁判所命令で「慰安婦たちを誘拐し、強制連行したのは、少なくとも朝鮮の地では、また公的には日本軍ではなかった」という部分が削除されたのか、説明が出来なくなるからです。
参考記事
『帝国の慰安婦』書籍の出版等禁止及び接近禁止の仮処分決定
またもう一つの大きな理由として、朝日は2014年に吉田証言の虚偽を認めその後大バッシングを受けたため、下手に誤魔化して更なる炎上をするくらいならという意図もあるでしょう。
実際、毎日新聞などは、
朴裕河教授に逆転有罪 学問の自由を侵す判断だ
毎日新聞 2017年10月30日
https://mainichi.jp/articles/20171030/ddm/005/070/002000c
(一部抜粋)
朴教授は「多くの少女が日本軍に強制連行された」という画一的イメージを否定した。一方で、慰安婦を必要とした帝国主義日本に厳しい視線を向けている。実際には業者が慰安所を運営していたとしても、そのことで日本が免罪されるわけではないと明快に主張した。
のように、朝日に比べるとかなり曖昧な表現になっています。
いずれにせよ、この裁判と朝日の論調の変化は大きな意味を持ちます。
これにより、「韓国では中央大学の吉見教授の説は受け入れられない」事と、「韓国が慰安婦合意で最も不満としているのは慰安婦の定義である」という事が世間に周知され易くなるからです。
ちなみに余談となりますが、朝日の記事の以下の部分は明らかにおかしいです。
朝鮮半島では暴力的な連行は一般的ではなかったという見方は、最近の韓国側の研究成果にも出ている。そうした事実にも考慮を加えず、虚偽と断じた司法判断は理解に苦しむ。
朴教授のような論調の意見は、韓国内に少なくとも90年代からあるにはありました、ただし韓国内では完全に無視されていましたが。
今回の朴教授の裁判は、ある意味でそうした人々への「みせしめ」的な意味もあったわけです。
2:韓国の「正しさ」に追い詰められた
ではなぜこんな事になったのか、答えは韓国的価値観について知っていれば簡単にわかります。
以前から書いていますが、韓国において「正しさ」は根拠を必要とせず、また主観によって決定され、更に正しさが対立した場合には原則的に序列によって決定され、そうでない場合には「相手の劣等性を指摘すること」で自身の正しさを証明しようとする方法が一般的です。
しかし朝日新聞やそこに連なる人々は、こうした韓国との価値観の違いを無視し続け、「慰安婦問題を継続させるならこちらの方が合理的だ」という考えから、中央大学の吉見教授らの説を支持していました。
そして、彼らは「こちらの方が合理的なのだから韓国側も受け入れるはずだ」というスタンスを取り続けたわけです。
記事中にある「息苦しく固定化された歴史観をできるだけ払拭(ふっしょく)し、自由な研究を尊ぶ価値観を強めたい。」という部分からもそれが解ります。
しかし韓国的価値観に対し、そんな「理屈」は通用しません。
彼らは意見が対立したなら「相手の劣等性から正しさを導き出す」ので、日本との意見が対立したら「日本の劣等性を指摘する」ことこそ「正しい」と考えるわけです。
だからこそ、韓国側は以前引用した聨合ニュースの記事にあるように、「16人の元慰安婦女性の証言こそ、慰安婦問題の強制性を立証するいなかる(原文ママ)文書よりも強力で明確な証拠だ」と主張したりするわけです。
韓国政府「日本の河野談話検証強行に遺憾」 聨合ニュース 2014/06/20
以下の韓国政府公認の慰安婦の証言のほうが、吉見教授らの「政府が業者に委託してやらせた」よりもずっと「日本の劣等性」を実感できるからです。
[ハンギョレプリズム]私たちはあきらめない/イ・ジェフン
ハンギョレ新聞(韓国語) 2016-12-18
http://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/775108.html
海辺に‘パレ’(潮干狩り)に行って日本軍に引きずられて行った。
検察、「帝国の慰安婦」の著者・朴裕河教授に3年求刑 ハンギョレ新聞
2016.12.21
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/26007.html
16歳のとき、寝ていたところを軍人に捕まって
元慰安婦のキム・ボクトンさん「日本が公式に謝罪するまで戦う」
東亜日報 December. 29, 2016
http://japanese.donga.com/List/3/all/27/813848/1
日本軍に連れて行かれた14才の
韓国ウォッチャーならこのことがすぐにわかります。
しかし「彼ら」にはその事が解らないため、判断を誤り日韓の慰安婦の定義の違いをごまかし続け、そしてとうとう朴裕河裁判でその綻びが修正できなくなり、「韓国側との間に致命的な意見対立がある」ことを認めざるを得なくなったわけです。
そして今後朝日や吉見教授らは更に窮地に立たされる事になるでしょう。
なぜかといえば、韓国側は上記の前提に基いて、「日本が法的責任を認める事」を要求しており、いずれ慰安婦合意問題でもこれが表面化していくこととなるからです。
慰安婦合意:「日本の法的責任を免除、史上最悪の外交惨事」 朝鮮日報 2016/01/20
そうなったとき、朝日や吉見教授らは韓国を支持することはできませんし、かといって日本政府の方針を支持する事もできません。
では双方の意見と異なる論調でやっていけるかといえばそうでもなく、そんな事をしていれば日韓双方から板ばさみで叩かれる事になります。
つまり彼らは「韓国人のためにやっている」という大義名分すら失うわけです。
現状は、朝日や吉見教授らが韓国側と意見対立がある事が韓国内で周知されていないため、まだ「良心的日本人」と認識されてますが、こうなった以上いずれ韓国側に「韓国の正しさを否定していること」がバレます。
合理的な戦略としては、こうなってしまったら慰安婦問題そのものを捨てるしかないわけですが、彼らにそれができるかといえばまず無理でしょう。
要するに、彼らは彼らの言うところの「ネットウヨク」や日本政府などに追い詰められるのではなく、韓国社会の「主観的・絶対的正しさ」に追い詰められる事になるのです。
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