日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

慰安婦像問題の原因と日本のマスコミの不可解


さて、今回は一連の慰安婦像問題の原因は何なのかと、この問題に関連した日本のマスコミ報道で私が感じた不可解さについて書いていきます。


現在日韓の間で話題となっている、韓国の慰安婦像問題や慰安婦合意破棄議論が発生する根本的な原因は、要するに日本と韓国で慰安婦の定義が異なっているからであり、韓国の定義する慰安婦を日本側が認めないからこそ発生している。


また、合意を行った韓国政府側にしても、「本来は韓国側の望む定義を認めさせたい」が、それが出来ないため「日本は軍関与を認めた」とボカした表現を使っているが、結局そのごまかしが韓国内で通じず、だからこそ慰安婦像設置にも強く反対できないという背景がある。


要するに、日本側が「軍や政府の命令で軍人や警官が組織的に行った拉致」を慰安婦の定義とし、この法的責任を認めて「謝罪し続ける」以外に、韓国側が納得する事は無いわけだが、そんな事実は存在しないため問題が消えることは無く、今だからこそ本来伝えるべきこの対立部分を伝える日本のメディアがなぜか存在していない。


※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。


1:「強制連行」を認めさせたい韓国



まずはこちらの記事から

日本との慰安婦合意交渉文書 公開命じる判決=韓国地裁
聨合ニュース 2017/01/06
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2017/01/06/0400000000AJP20170106003100882.HTML

【ソウル聯合ニュース】韓国の弁護士団体「民主社会のための弁護士会」が外交部を相手取り、旧日本軍の慰安婦問題をめぐる2015年末の韓日合意の交渉に関する文書の一部を公開するよう求めた訴訟で、ソウル行政裁判所は6日、文書を公開するよう言い渡した。

 団体が公開を要求した文書は3件。両国が合意の発表で「軍の関与」との用語を選択し、その意味を協議した文書、強制連行を認めるかどうかについて協議した文書、「性奴隷」「日本軍慰安婦」などの用語使用について協議した文書だ。

 岸田文雄外相は15年12月28日、ソウルで行った韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官との共同記者会見で、「慰安婦問題は当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」として、「責任を痛感している」と表明した。だが、強制連行問題については言及しなかった。

 団体は昨年2月末に訴訟を起した際、「日本は(合意の)発表後も強制連行や戦争犯罪を否認し、両国が日本の立場を前提に問題を最終的に解決したかのように発言し、『軍の関与』は性病検査など衛生管理との意味だったと一方的に説明している」と批判していた。


上記記事は一連の問題で非常に重要な要素となっています。


記事では「軍の関与」をどう定義しているかを問題としているわけですが、背景として一昨年の慰安婦合意が締結されて暫く、韓国政府や保守系の韓国メディアは「日本は軍の関与を認めて謝罪した、これで解決なのだ」と宣伝していたことが関係しています。


しかし、以前も何度か紹介した事のある以下の記事で日本側が「慰安婦の強制連行は資料で確認できなかった」と、要するに韓国側が望む「軍や政府の命令で軍人や警官が組織的に行った拉致」を否定していた事が韓国内で発覚します。


国連委で日本が慰安婦問題説明 韓国「被害者癒やす行動を」 聨合ニュース 2016/02/17


朝日や毎日など、いわゆる韓国側から良心的日本人(例1 例2)と呼ばれている、私が便宜上「日韓友好論者」と呼んでいる人々が主張するような慰安婦問題での関係悪化の説明は全て(意図的な)的外れで、問題の本質はここにあるのです。


少女像設置団体、勝利叫ぶ 靖国参拝が後押しとの見方も 朝日新聞 2016年12月30日


私が繰り返しこの問題を取り上げるのも、慰安婦問題においてこれが最も重要であり、日韓の間の対立点はこの部分に集約されるからです。


そしてもう一つ重要な要素として、この問題で鍵となるのがいわゆる韓国内の親北左派系なのですが、彼らは過去日韓友好論者と共同でこの定義の慰安婦問題を煽った経緯があり、現在も率先して煽っているのも一側面として事実です。


「慰安婦問題は民族の痛み…南北間の連帯が必要」 ハンギョレ新聞  2017.01.05

(※1)
正しい解決 大邱新聞(韓国語)  2017-01-02
チュ・ミエ"韓日慰安婦合意無視すること" SBSニュース(韓国語)  2016.12.30


しかし問題はそう単純なものではなく、実際には多くの韓国人、特に10代~40代くらいまでの韓国人はこの定義を慰安婦問題の本質であると信じている人々が圧倒的な多数派であり、親北左派系はあくまでこの世論を後押ししているに過ぎないのです。
(50代~の韓国人の中には、過去韓国が売春を外貨獲得の国策としていた事などの実態を知っている人が多いので、この定義を信じていない人も一定数存在しています)


つまり、この問題は「右派が」とか「左派が」というイデオロギー的な問題などではなく、韓国社会でこの定義が社会的な共通認識となっているからこそ、彼らは「日本が問題を認めていない」と認識しているのであり、慰安婦合意に対する不満も慰安婦像問題も、根本的な原因はここにあるわけです。


だからこそ韓国政府や保守系は、「日本は軍関与を認めた」という事を強調することで事態を誤魔化そうとしたわけです。
イデオロギー的なものだけならば、「北朝鮮の陰謀だ」と親北系を攻撃すれば良いだけですから。


また、これも以前から書いていることではありますが、彼らの価値観では「被害者が最も偉い」という序列社会に根ざした考え方と、「他者の劣等性を指摘できれば自己の優越性や正当性が証明される」という独特の価値観があります。


そのため、日本側がこの定義を認めて謝罪すればそれで「終わる」わけではなく、半永久的に謝罪し続け「日本の劣等性を認めること」を要求しており、彼らの望む解決そのものが私達の想定する「解決」とは大幅に異なっている事も重要です。


関連記事
韓国では被害者が一番偉い
韓国人が日本人から嫌われる根本的原因


つまり、この問題は突き詰めていくと人権問題やイデオロギーの問題ではなく、日韓の価値観の対立に行き着くのです。


そしてだからこそ、日韓の間でこの問題を「話し合いによる解決」で決着をつけることは不可能であり、安倍政権が過去に何度か行ったように、国際社会へ向けて「日韓の対立点は何か」を伝えていくことが重要となるわけです。


2:慰安婦像は決して撤去されない


日韓の間にある慰安婦問題の対立点は上記の通りなのですが、先ほども書いたように一応「渋々」ではありますが、現在の韓国政府や保守系はこの慰安婦の定義を曖昧なまま「解決した事にしたい」という意思があります。


なぜならそもそもこの定義を客観的に証明することは不可能であるばかりか、それを否定する資料も山のようにあり、韓国側がこの定義のよりどころとしているのは突き詰めていくと「慰安婦の証言」しかないからです。


つまり、この定義を前面に出して日本と国際社会で争った場合、韓国側の行う慰安婦関連の政治活動そのものが破綻してしまう可能性が高く、そうすると韓国人の望む「日本に対する道徳的優位性」までも破綻してしまいかねないからです。


この事は日韓友好論者の側も同じであり、一部の先鋭的な親北系日本人を除き基本的には韓国政府と同じスタンスを取っているわけですが、これを前面に出した世宗大学の朴裕河教授は韓国で名誉棄損で訴えられ検察から懲役刑まで求刑されています。


その背景には、韓国では法の上位に「国民情緒」とか「民族情緒」と呼ばれる、法や憲法よりも「その時の感情」を優先する考え方があり、世論の多数派が「そう感じている」のならば、法であれ憲法であれ簡単に捻じ曲げられるポピュリズムが社会を支配しているからです。


<Wコラム>ゴネるが勝ち、あなたは本当に「韓国」を知っている? WoWKorea 2017年1月4日

関連記事
非常に厄介な韓国人の国民情緒・民族情緒


そしてだからこそ、韓国では慰安婦像の設置が多くの韓国人から支持され、支持されているからこそ行政もそれに逆らえず、韓国政府と釜山の自治体や保守系メディアは「その行為を強く批判できない」という背景があります。


少女像問題で韓国政府「当該機関で判断」 釜山市東区に丸投げ 産経新聞 2017.1.3

【社説】釜山慰安婦少女像めぐる韓日葛藤…国益中心に解こう 中央日報 2017年01月07日


また、これは何も「対日本だから起きている特殊な事例」ではない事も重要で、アメリカが韓国に設置を進めている対北朝鮮の核抑止用の「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」問題でも発生しています。


普通に考えれば、北朝鮮の核の脅威に対抗するためのTHAADの設置は韓国にとって「悪くない選択」のはずなのですが、中国がこれに反対しており現在韓国は中国から「経済的な嫌がらせ」を多数受けています。


それだけなら「中国が韓国に不当な圧力をかけている」と、「被害者になること」で国際社会にアピールする、いつもの韓国の外交方針で済むはずなのですが、現在韓国では一連の崔順実問題に関連し、朴政権の行った政策は「全て崔順実のせい」と全否定される傾向にあります。


そのため、THAAD問題も崔順実の指示だという噂が親北系によってかなり広まっており、本来この問題では韓国的価値観で中国が加害者に定義されるはずが、「朴大統領と崔順実のせいで中国が経済制裁をしてきた」という世論を形成してしまっています。


結果、既にレームダックどころか事実上国家運営能力すら失った韓国政府は何もすることが出来ず、韓国野党が中国と「二重外交」を行う状態になってもそれを止める手段がありません。


THAAD:中国が仕掛けた「離間の計」にはまった韓国最大野党 朝鮮日報 2017/01/05 (1/2ページ) (2/2ページ
【社説】中国の内政干渉、共に民主党にはひとごとなのか 朝鮮日報 2017/01/05
1/2ページ) (2/2ページ

韓国政府「THAAD配備撤回はない、力によって屈すれば悪い先例になる」 中央日報 2017年01月06日


しかも世論の後押しが無いため、何も決められず現在韓国はTHAAD設置反対の動きに対して政府までが「様子見」という有様になっています。


[社説]THAAD対策のない外交安保業務報告、次期政権様子見 東亜日報 January. 05, 2017


これは慰安婦像関連と根元が全く同じで、国民情緒・民族情緒という「皆がそう考えている」という曖昧なポピュリズムによって政治が動く韓国らしい反応なのです。
慰安婦問題でも政府は原則的に「様子見」するしかないのです。


そしてだからこそ、今後韓国で慰安婦像が更に増える事はあっても撤去される事はまずありえませんし、慰安婦合意もTHAADも次の政権で撤回される可能性が極めて高いです。


3:日本のマスコミ報道の不可解さ


今回書いたように、この慰安婦像や慰安婦合意を巡る一連の日韓の間の問題では、日本と韓国で大幅に異なる慰安婦の定義や価値観の問題を根底として、そこに韓国独特の「その時の感情が何よりも優先される」国民情緒とか民族情緒と呼ばれる現象が関わった結果、問題が拗れに拗れているという背景があります。


そしてだからこそ、この問題を伝えるのならばこの「日韓で慰安婦の定義が異なっている」という事を何よりも優先して伝えないといけないはずなのですが、なぜかこの問題を重点的に扱う日本のメディアがどこにもありません。


朝日や毎日などの日韓友好論者は、元々北朝鮮朝鮮総連との繋がりが強いですし、慰安婦問題は「今後も問題にし続けたい」のですから「なぜ」が抜けているのは当たり前であり、実際この2社の記事は「その方向」で一貫しています。


韓国との外交 性急な対抗より熟考を 朝日新聞 2017年1月7日
インターネットアーカイブ
釜山の少女像 合意の崩壊を危惧する 毎日新聞 2017年1月7日


しかし不可解なのは読売や産経で、どちらも過去に「安倍政権の動き」として多少は伝えたことがあるにはありますがそれが主題になったことが無く、本来は今この状態であるからこそ「日韓の慰安婦の定義の違い」が重要であるにも関わらず、それをまるで伝えていません。


しかも読売の場合、「どういった意図があるのか」がまるで読めない意味不明な記事まで出てきています。
それが以下です。


元慰安婦支援をメディア黙殺、合意理解広がらず 読売新聞 2016年12月31日



この記事なのですが、私は何度か読み返しましたが意図も意味もさっぱりわかりません。


なぜかといえば、この記事では慰安婦合意によって韓国政府から慰安婦認定を受けている人々の7割が既に見舞金を受け取っているにも関わらず、そのことがまるで韓国メディアで伝えられておらず、それが韓国側の無理解を生んでいるとしています。


しかし、この件は韓国内で保守系メディアを中心に去年何度も報じられている上に、去年末にも聨合ニュースがしっかりと報じています。
(ちなみに聨合ニュースは公共放送のKBSや全国紙最大手の朝鮮日報に次いで韓国で影響力の強いメディアです)


現金受け取り表明の慰安婦被害者 5人増え34人に=韓国財団 聨合ニュース 2016/12/23
「慰安婦白書」刊行は追って検討 まず研究報告書=韓国女性相 聨合ニュース 2016/12/26


上記のような背景から、慰安婦合意によって見舞金を受け取った人々がいる事は大半の韓国人が知っています、知っていて「不満がある」のです。


こうした内容を「最近日韓問題を知った人」が、ここ数日の韓国発の記事を読んでそういった印象を持ったのなら解りますが、読売はまかりなりにも日本トップの全国紙であり、明らかにそのアンテナの精度は「私個人よりはるかに上」のはずです。
また韓国政府関係者との直接のパイプも、読売クラスならいくらでもあるでしょう。


そんな大手メディアがなぜこんな記事を書くのか、そもそも慰安婦合意が拗れている背景は「日韓の慰安婦の定義の違い」である事は、韓国メディアや韓国政府の公式発表、また韓国野党や挺対協の公式コメントなどを見ていれば一目瞭然なのにです。


産経がこの問題を重点的に報じないのも意味が解りませんが、読売のこの記事はあまりにも不可解で、論点がズレ過ぎていて「何か公になっていない裏事情でもあるのか?」とも考えましたが、いくら考えをめぐらせてもこの記事の結論になる事情が見えてきません。


対立点をボカして韓国の保守系メディアに気を使っているのかとも考えましたが、ここまで状況が悪化して対立点が一目瞭然な状態でそれをする意味がありません。
しかも親北系日韓友好論者の論調とも明らかに性質が異なっているので、余計にわけが解りません。


もしかして日本のメディアはこの程度の認識しかないのかと勘ぐりたくもなります。
だとしたら今年の日韓関係は更に無駄に拗れ、「しなくても良い苦労」をすることになるでしょう。



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(※1)
正しい解決
大邱新聞(韓国語)  2017-01-02
http://www.idaegu.co.kr/news.php?mode=view&num=215179

(前略)
安倍総理は繰り返し韓日日本軍‘慰安婦’合意で日本軍慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたと明らかにした。いったい誰の思い通りに解決されたのか。日本政府は被害当事者らにどんな謝罪もしなかったが、安倍政権は日本軍慰安婦の強制動員に対して、日本政府の責任を認めた河野談話さえも否定しようとして、どのように日本軍慰安婦問題が解決できるというのか。

延辺で亡くなった筆者の叔母も「処女供出」を避けて14才の若さで満州に嫁に行った。日本軍慰安婦強制動員を筆者の母は「処女供出」という単語で表現した。「処女供出」という言葉の意味は日本軍慰安婦日本帝国主義によって組織的に強制動員したことを反証するものだ。

映画‘鬼郷’でも見られたように、被害者らは海辺に貝を拾いに行ったり、あるいは畑で仕事をして日本軍に無茶苦茶に引きずられて行かなければならなかった。日本政府はその様な強制動員の責任をまだちゃんと認めずにいる。

去る7月、韓日日本軍‘慰安婦’合意に対する被害生存者と国民の怒りに充ちた反対にもかかわらず、政府は日本軍慰安婦被害者支援のための和解・治癒財団なるものをスタートさせた。その過程で被害生存ハルモニたちをこっそりこっそり訪ねて、彼らが行った見せ掛けの姿勢は被害ハルモニたちをより一層挫折させ憤怒させた。

真の容赦と和解は加害者の犯罪事実認定と真心に充ちた謝罪、そしてそれにともなう賠償で可能になる。そしてその様な過程を通じて日本軍慰安婦生存ハルモニらの治癒ははじめて始まることができる。

歴史を忘れた民族に未来はない。韓日日本軍‘慰安婦’合意の撤回は新しい時代のために歪曲された歴史を正しく立て直すことであり、それがすなわち正しい解決だ。



チュ・ミエ"韓日慰安婦合意無視すること"
SBSニュース(韓国語)  2016.12.30
http://news.sbs.co.kr/news/endPage.do?news_id=N1003965228

チュ・ミエ共に民主党代表は1年前、韓国と日本政府の間でなされた慰安婦被害者問題合意は無効という価値さえないので無視すべきだと話しました。

チュ・ミエ代表は今日、SBS歳時ニュースブリーフィングに出演して慰安婦強制動員に対する日本政府の責任を明らかに規定しなかった合意はそのまま看過できな問題と強調しました。

民主党が執権すれば韓日慰安婦合意はなかったことになるという点も明確にしました。

チュ代表は仮称改革保守新党が過去の政府の負債を清算し、国民のために新しく出発する覚悟ならば改革保守新党とも協力できると明らかにしました。
(後略)