大変お待たせしました、変な生き物動画第16回、今回は「キツネザル」について扱っていきます。
それと今回は関連するオマケとして、「ムー大陸とキツネザル」動画も同時投稿します。
本日の投稿動画
www.nicovideo.jp
youtu.be
お品書き
・キツネザルとは
・原猿と真猿
・キツネザルの謎
※以下は動画のテキスト版です
レイム マリサ 大口
ゆっくりしていってね。
大口
大変お待たせしました、変な生き物動画第16回、今回はマダガスカル島の固有種「キツネザル」について扱っていきます。
レイム
キツネザルって、日本の動物園にもけっこういて、なかには触れ合えたり食べ物を与えたりできるところもあるようだけど、あれって変な生き物なの?
マリサ
見た目とかも含めて、あまりそうは見えないんだぜ。
大口
それはキツネザルについて知らないからだね。
詳しくは本編で扱うけど、知れば知るほど奇妙な生き物だから。
大口
あと、今回のお題についてちょっとお知らせがあります。
キツネザルに関して深堀りすると、前回の環形動物ほどではないにせよ、膨大な情報を扱わないといけなくなってしまうので、今回はあくまで「キツネザルとはどんな生き物か」程度の内容になります、それと今回番外編としてキツネザルにまつわる、とある有名オカルトネタも用意しているので、そちらは別動画で投稿予定です。
大口
そんなわけでそろそろ本編へ行きます。
キツネザルとは
レイム
それで、最初はキツネザルとは何かについてやるの?
大口
そうだね。
まずキツネザルの生息しているマダガスカル島は、アフリカ大陸の南東400キロメートルにある島で、国土面積は日本の1.6倍と、実は結構広い島です。
また、この島には哺乳類がキツネザルを含めトガリネズミ科のテンレック、マングースの仲間の大型肉食獣フォッサ、アシナガマウス科のマダガスカルジャイアントジャンピングラット、オオコウモリ科のマダガスカルオオコウモリの5種類しかいないという特徴もあります。
大口
そして、興味深いのが、マダガスカル島に生息する生物の9割が固有種なんですよ。
マリサ
で、キツネザルも固有種と。
大口
そういう事。
あと一概にキツネザルと言っても、実はマダガスカルにキツネザルの仲間は100種類以上いるといわれていて、近年も新種が発見されているほどなんですよ。
レイム
え?そうなの?
キツネザルというとこれを連想するけど。
大口
ああ、それはワオキツネザルという種で、まあ日本の動物園でも特に多く飼育されていて、触れあえるところも結構あるようだから、気性が比較的大人しいんだろうね。
マリサ
ワーオ
大口
いや、名前の由来は尻尾の縞々で、英名は「Ring-tailed lemur」で漢字で書くと「輪尾」だからね。
マリサ
ワーオ
レイム
なんかマリサのツボだったみたいね、ほっとくしかないわ。
マリサ
ワーオ
レイム
あ、それとキツネザルというとこれも有名よね。
大口
ああ、それはキツネザル下目インドリ科のベローシファカだね。
マリサ
これもマダガスカル固有種なのか?
大口
インドリ科もマダガスカル固有種だよ。
マダガスカル固有種のキツネザルには、キツネザル下目としてアイアイ科と、キツネザル上科のコビトキツネザル科、インドリ科、キツネザル科、イタチキツネザル科がいるんだよ。
大口
で、アイアイは一科一属の「アイアイ」一種のみ、キツネザル上科にはコビトキツネザル科5属、インドリ科3属、キツネザル科5属、イタチキツネザル科1属に分かれていて、結構色々いるのね。
レイム
というか、日本の1.6倍くらいの面積の島にしては種類多過ぎない?
大口
とはいっても、ワオキツネザルとかみたいに広い範囲に生息している種もいれば、アラオラジェントルキツネザルやタターサルシファカみたいに、極々限られた地域にしか生息していない種もいるから。
マリサ
なんで一つの島にこんなに色々いるんだ?
他の地域にはキツネザルの仲間って全くいないのか?
大口
近縁種としてロリス型下目でアフリカ大陸に生息しているガラコ科と、インドから東南アジアにかけて生息しているロリス科がいるね。
レイム
他ではそれだけしかいないとなると、やっぱこれだけ色んな種が一つの島に密集しているのはちょっと不思議ね。
大口
その辺りは後半でやるとして、これだけ色々いると変わり種も結構いて、たとえば有名なワオキツネザルは、縄張りを持って群れで暮らしているのはメスだけで、オスは繁殖のため数年ごとに各群れの間を行ったり来たりしているのね。
大口
で、メスは縄張りの拡張や防衛のために、日々赤ちゃんを抱いて他の群れと闘争を繰り返したりしているんですよ。
マリサ
アマゾネスなんだぜ。
大口
他にも、ジェントルキツネザル属のうち2種と単一種のヒロバナジェントルキツネザルは、毒性の強いシアン化物を含む竹の仲間を主食としていて、腸内にシアン化物を解毒する腸内細菌がいるという事が分かっているね。
竹食に特化したジェントルキツネザル:シアン化物解毒作用をもつ腸内細菌の特定
京都府立大学
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18608/竹食に特化したマダガスカルのジェントルキツネザル3種の糞から腸内細菌叢を調べ、採食パターンとの関連性を検証した。ヒロバナジェントルキツネザルの腸内細菌叢は他の2種とは大きく異なっており、これはヒロバナジェントルキツネザルがもっぱら有毒な竹ばかり採食していたことや、かたい部位(成熟葉や稈)を選択的に採食していたことが影響したと考えられる。有毒な竹への依存度の違いは毒成分(青酸配糖体)摂取量の違いにつながり、ひいては腸内細菌叢形成に影響を与えている可能性が高い。
レイム
種類が多すぎてどんどんニッチな方向へ行ったって感じね。
大口
あとは日本の動物園にもけっこういるクロキツネザルも変わっていて、まずこの種はオスとメスで毛の色が違うのね。
マリサ
なんか別の種と言われても信じそうなくらい色が違うな。
大口
あとこの種から発見され、その後他の種のキツネザルも同様の事をしていると判明したちょっと変わった習性があって、現地にアフリカオオヤスデという、危険を察知すると悪臭のする毒を分泌するヤスデがいるのだけど、色も赤と黒というあからさまな警戒色なのに、クロキツネザルはこれを積極的に捕まえて齧るそうなんですよ。
レイム
悪臭のする毒をなんで?
大口
どうも、この毒に蚊よけの効果があるらしく、齧ってその体液を体に塗りつけるそうな。
さらに、この毒には幻覚作用があるようで、クロキツネザル含む多数のキツネザル種は積極的に齧って酩酊状態になっている事もあるそうな。
クロキツネザルの天然ドラッグ | ナショジオ
https://youtu.be/X5VnCJwpLoo?si=EBMorn-XjwdlC9vR
マリサ
ヤスデをキメるとか発想が斬新すぎるんだぜ。
合法ヤスデなのか?
大口
他にも、アカビタイキツネザルは体液をお尻に塗ったり食べたりすることで、寄生虫対策にしているらしいと考えられているね。
股間にヤスデを擦りつけるキツネザル、薬代わり?
ナショナルジオグラフィック 2018.08.07
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/080700215/ふつうなら、ヤスデを口の中に入れるのはよくない。ヤスデをめちゃくちゃにして生殖器に塗りつけるのも、やはりお勧めできない。ヤスデは様々な毒を分泌して、捕食者を遠ざけることで知られているからだ。
ところが動物行動学者のルイーズ・ペッカー氏は、マダガスカルのキリンディ森林保護区で、アカビタイキツネザルのメスがヤスデを手に取るのを目にした。2016年11月のことだ。キツネザルは、毒を持つヤスデを噛んでは自分の尾と生殖器周辺の毛に擦り込むという行動を幾度となく繰り返した。しまいには、ヤスデをのみ込んでしまった。(参考記事:「ワオキツネザル、弱さを嗅ぎつけ相手に付け入る」)
その後、キツネザルはヤスデをもう2匹見つけ、まったく同じことを繰り返した。終わる頃には、唾液とヤスデのオレンジ色の分泌物が混じった泡状の液体で、下半身がぐっしょり濡れていた。
同じ日、ペッカー氏はさらに2つの異なる群れの5匹のキツネザルが、同様の奇妙な行動をとるのを目撃した。これまで、アカビタイキツネザルがヤスデを食べているところも、体中にこすりつけるところも観察されたことがなかった。一体これはどういうことなのか?
ドイツ霊長類センターでキツネザルのコミュニケーションを研究するペッカー氏は、確実なことはまだ言えないとしながらも、アカビタイキツネザルがヤスデの毒を寄生虫対策の薬として用いているのではないかとする論文を、2018年7月30日付け学術誌「Primates」オンライン版に発表した。(参考記事:「弱いオスほどよくしゃべる、ワオキツネザルで判明」)
なぜアカビタイキツネザルが生殖器に毒をこすりつけるのかを理解するためには、この種が他のキツネザルよりも多くの消化管寄生虫を抱えているということを知っておかなければならない。
しかも、寄生虫が卵を産みつけるために肛門から出てくると、周辺の皮膚にかゆみを伴う発疹ができることもある。(参考記事:「寄生虫もつ仲間を糞のにおいで選別、マンドリル」)
研究によれば、ヤスデが分泌する毒性物質の一つに、殺虫効果と抗菌効果をもつベンゾキノンというものがある。ヤスデはおそらく捕食者から身を守るためにベンゾキノンを利用しているが、どうやらキツネザルは、それを薬として使う方法を学習したようだ。
米バージニア工科大学でヤスデを研究する昆虫学者デレク・ヘネン氏は、キツネザルがヤスデを執拗にこすりつけるのは賢いやり方だと言う。
「外的ストレスを与え続けることで、ヤスデに多くの毒を分泌させられます」とヘネン氏は言う。「次の毒を作るのには時間がかかります。少々のことで一気に毒を放出してしまうのは、ヤスデにとって優れた防御戦略ではありません」(参考記事:「【動画】ヒヨケムシ VS ヤスデの死闘、貴重な映像」)
ペッカー氏によれば、次のステップは、アカビタイキツネザルに寄生する虫を、ベンゾキノンが殺したり防いだりするのかを実験によって示すことだ。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/080700215/?P=2
食べる事例は初めて
セルフメディケーション(自己治療)を行っていると思われる動物は、アカビタイキツネザルだけではない。(参考記事:「ノガンのオス、求愛のため毒虫も食べる」)
たとえば最近では、オランウータンが抗炎効果のある葉を噛みちぎり、皮膚に塗っていることが発見された。他のキツネザルや、チンパンジー、ヒグマ、ハリネズミ等も、薬効があると思われるものを体に塗りこむ「セルフ・アノインティング(self-anointing)行動」で知られる。
「植物を利用する生物もいれば、アリを利用する生物もいるし、ヤスデを利用する生物もいるということです」と、京都大学霊長類研究所のマイケル・ハフマン氏は語る。(参考記事:「毒草を食べて寄生虫を自己駆除する毛虫」)
ただし興味深いことに、薬効を利用するためにヤスデをのみ込んでいるという報告は今回が初めてだとハフマン氏は言う。普通は局所的に塗りつけるだけだ。
ヘネン氏も、動物が薬効目的でヤスデを食べる事例は知らなかったという。
何のために食べるのか?アカビタイキツネザルにとって、ヤスデは食物として価値が高いとは思われないため、ヤスデを食べるのには他の理由があるはずだとペッカー氏らは推測している。具体的には、ヤスデを摂取することが寄生虫の感染予防に効果があるのではないかと考えている。
なぜアカビタイキツネザルが毒を持つヤスデを食べても平気なのかは明らかになっていないが、こする行動が毒を中和している可能性がある。似たような行動は鳥でも知られており、蟻酸と呼ばれる毒を分泌するアリを羽にこすりつけることで、食べても問題ないようにしていると考えられている。(参考記事:「イヌの肉球はコーン?お菓子の香り漂う動物たち」)
不思議なことに、アカビタイキツネザルの体内の寄生虫の数がピークを迎えるのは雨期の始まりだということが糞の分析からわかっているが、雨期の始まりはまさに、1年の内でヤスデが地中から多く出てくる時期でもある。まるで、サルたちが最も必要としているときに、彼らのための薬局が出現するようなものだ。(参考記事:「【動画】鉄壁の守り? 赤ちゃんヤスデの集団戦法」)
一方、動物における自己治療を多く研究してきたハフマン氏は、動物が先のことを考えているという点に関しては懐疑的だ。
「端的に言うと、動物が予防的なケアを行っているという証拠はありません」とハフマン氏は述べる。
とはいえ、地球上のあらゆる生物は病気や寄生虫に悩まされるものだ。だから、それぞれの種が「不快感に対処し、『通常の』状態に戻る」ための方法を見つけるというのは不思議なことではない。ただし、動物たちが意図的にそれを行っているという証拠はない。
ペッカー氏は、キツネザルを取り巻く多くの謎が、彼らが暮らす生態系を守るのに役立ってくれないかと期待する。世界の霊長類研究者が集った最近の会議では、キツネザル種の95%が絶滅の危機に瀕していることが確認されている。(参考記事:「1万3000種って何の数字?」)
「私たちが住んでいる場所では、どんどん森林破壊が進んでいます」とペッカー氏は言う。「ここでは、研究をすること自体が闘いなのです」(参考記事:「新種のキツネザル、まんまる目玉でリスより小さい」)
レイム
色んな良い効果があったとしても、流石にヤスデは勘弁してほしいわね。
大口
まあ、人間がヤスデを食べるのはやめたほうが良いね。
調べてみると、ゲテモノ食い競争でヤスデを食べて死亡した事例があって、毒の影響ではないかと言われているし。
マリサ
頼まれてもふつう食べないぜ。
大口
まあとにかく、狭い範囲に多数の種がいるので、色々と変わった習性をもつ種もいるというわけです。
大口
あとはワオキツネザルは体温調節機能が未発達と言われていて、朝はまず太陽に向かってこんな格好で日向ぼっこで体温を上げるのが日課だそうなのね。
朝日を浴びて体を暖めるワオキツネザル
日本モンキーセンター 2020年1月5日
https://www.j-monkey.jp/jmckeeper/2020/01/05/%E6%9C%9D%E6%97%A5%E3%82%92%E6%B5%B4%E3%81%B3%E3%81%A6%E4%BD%93%E3%82%92%E6%9A%96%E3%82%81%E3%82%8B%E3%83%AF%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%8D%E3%82%B6%E3%83%AB/(一部抜粋)
体温調節機能が未発達といわれるワオキツネザル。太陽の光を浴びて体を暖めます。とくに冷え込むこの季節は、朝イチ全頭で日光浴をします。
体が暖まり、チャージが終了すると動き始めます。
まだ、暖まらないようですね。
新年を迎え、今年の魅力アップポイントを阿弥陀(アミダ)で楽しめるものを、私の独断と偏見で作りました。
マリサ
なんかの儀式みたいだぜ。
レイム
まあでもこのポーズが一番効率よさそうというのはわかるけどね。
大口
それでね、これは2007年頃に日本モンキーセンターで発見された行動のようなのだけど、どうもキツネザルたちは冬の寒い時期になると、ストーブの前に集まってこのポーズをするそうなんだよ。
マリサ
まあ、冬はこたつを装備したまま外出したくなるからな、気持ちはわかるぜ。
レイム
この体制のままストーブの前で寝るってなんかシュールね。
原猿と真猿
大口
それで話は変わるけど、過去には霊長類って原猿と真猿という分け方をされていて、人間含む多くの霊長類は真猿、キツネザル、アイアイ、ロリス、メガネザルなどは、より原始的な特徴を残しているという意味で、原猿と呼ばれてきたのね。
マリサ
今は違うのか?
大口
DNA解析技術の発展で色々な事が分かってきて、実は原猿と分類されていたメガネザルは遺伝子的に「真猿」に比較的近い種という事が分かってきて、今は呼び方が変わったそうなんですよ。
最古の霊長類の全身骨格化石が発見された!- 中国で発見されたメガネザルの仲間の化石
国立科学博物館 2013-07-18
https://www.kahaku.go.jp/userguide/hotnews/theme.php?id=0001374732484294&p=2霊長類はどのように研究されているのでしょうか?
現生霊長類の分類では、従来はキツネザル・アイアイ・ロリス・メガネザルなどを総称して「原猿」<げんえん>として、新世界ザル(中南米のサル)や旧世界ザル(ニホンザルを含むオナガザル類)と、ヒトに近縁な類人猿(ホミノイド)をまとめて「真猿」<しんえん>とされていましたが、その後の分子系統解析などにより、「原猿」の中でもメガネザルはむしろ「真猿」に近いことが示されるようになりました。
そこでかつての「原猿」からメガネザルをのぞいたものを「曲鼻猿類」<きょくびえんるい>として、「真猿」にメガネザルを加えたものを「直鼻猿類」<ちょくびえんるい>とする分類区分が提唱されました。「真猿」のまとまりは今も有効ですが、「原猿」は単系統群ではないということで有効でないとされるようになっています。真猿の起源をめぐっては、現生のキツネザルなどに似た化石霊長類グループの「アダピス類」と、現生のメガネザル似の化石霊長類グループの「オモミス類」の、どちらが祖先にあたるのかについて、長年の間、統一見解が得られていませんでした。
2009年にはドイツのメッセルで見つかっていた大変保存状態のよい霊長類全身化石が、「人類へつながるミッシング・リンク」だとして、大きな話題となりました。「ダーウィニウス・マシレァェ(Darwinius masillae)」と命名された約4700万年前のこの化石は、体長が60cm程度と比較的大型で、顔面や歯、足の特徴などから、「アダピス類」に属するものと判断されました。ところがこの化石が現生キツネザルの特徴である「カギ爪」と「櫛状の切歯」を持たないことから、そもそもアダピス類が現生キツネザルの祖先ではなく、真猿類の祖先を含むグループの一員として位置づけられる、との結論が提示されました。
しかし専門家の間では、論文の著者らの分析方法や結論に対する疑念も強く、また論文発表日に合わせて関連するドキュメンタリー本が発売され、テレビ番組も放映されるなど、メディア向けの宣伝が行き過ぎた感も強く、あまり歓迎されませんでした。この資料は約4700万年前という古さにしては例外的に保存が良く、資料そのものの重要性は誰も否定しないのですが、「売り出し方」が少々やりすぎであったようです。
大口
現在は原猿からメガネザルを除いたグループを「曲鼻猿類」、原猿にメガネザルを加えたグループを「直鼻猿類」と呼ぶようになっていて、原猿という分け方は今でも有効ではあるのだけど、メガネザルの件もあって単系統群ではないという事になっているようなんですよ。
レイム
なんか分かりにくいわね。
図とかないの?
大口
あるよ。
こちらの京都大学霊長類研究所のページにある系統樹が分かりやすいけど。
霊長類の共通祖先は夜行性だったか
京都大学霊長類研究所
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/192771/7/spe_40.pdf
大口
霊長類の祖先はプレシアダピス類という種が暁新世(6500万年前から5500万年前)に出てきて、そこから始新世(5600万年前から約3390万年前)になるとキツネザルやロリスの御先祖様のアダピス類と、人などの御先祖様のオモミス類に分岐、そこから早い段階で分岐して現代まで生き残ってきたのがメガネザルみたいだね。
霊長類の進化とその系統樹
京都大学霊長類研究所
http://pri.ehub.kyoto-u.ac.jp/shinka/keitou/jyu/jyu.html
霊長類の進化は約6500万年前、白亜紀末期頃に始まったと考えられています。この頃出現した最古の霊長類はプレシアダピス類と呼ばれるグループですが、現在では彼らは真の霊長類ではないと主張する研究者が多くなっています。したがって「偽霊長類」(あるいは「霊長類様哺乳類」)として霊長類からはずすこともあります。プレシアダピス類が霊長類かどうかは今後の研究結果を待たなければいけませんが、彼らが初期霊長類に非常に近い系統にあたることは確かでしょう。
プレシアダピス類は暁新世にその最盛期を迎え、つづく始新世末(約3500万年前)には完全に絶滅してしまいます。彼らの衰退と呼応するかのように出現してくるのが、アダピス類とオモミス類です。形態的にみて彼らは明らかに霊長類に含まれ、「現代型霊長類(または真霊長類)」と呼ばれています。おもに暁新世末期?漸新世初期の北米?ヨーロッパ大陸にかけて繁栄しましたが、一部の種(シバラダピス類)は中新世の末期まで存在していました。
現在多くの研究者はアダピス類から現生のキツネザル類・ロリス類が進化し、オモミス類からメガネザル類と真猿類(ヒト・類人猿・旧世界ザル・新世界ザルを含むグループ)が進化したと考えています。現生霊長類のうち、真猿類以外のものを原猿類と呼びますが、このうちキツネザル類はマダガスカル島のみに、ロリス類はアフリカ大陸と東南アジア、メガネザル類は東南アジアに生息しています。
中期?後期始新世(約4500?4000万年前)に旧大陸で出現した初期真猿類は、広鼻猿類と狭鼻猿類というふたつの大きなグループにわかれて進化してゆきます。広鼻猿類とは現在南米大陸に生息する新世界ザル(=南米ザル)で、狭鼻猿類とは旧大陸(アフリカ・アジア)に生息する旧世界ザルと類人猿・ヒトをふくみます。
最古の新世界ザルの化石は南米ボリビアの約2500万年前の地層から見つかっています。古生物学的な解析によると、この新世界ザル達は漸新世の頃にアフリカ大陸から大西洋を渡って南米大陸に侵入したと考えられています。当時の大西洋は現在の半分くらいの大きさで、最も狭いところでは500km程度だったと考えられていますが、それでもそれでもサル達が渡るには十分離れていたと思われます。おそらく海流に乗って島づたいに渡ってきたのでしょうが、信じられない話しです。
旧大陸の霊長類は、ニホンザルやコロブスを含む旧世界ザルと類人猿やヒトを含むホミノイドの2つのグループに分かれて進化しました。この二つのグループが分岐したのは、漸新世後半(約3000?2500万年前)と考えられています。化石記録から見ると最初(中新世前半)はホミノイドの方が繁栄していたのですが、中新世後半から旧世界ザルが勢力を増してその比率は逆転します。現在ではご存じのようにヒト以外のホミノイド(類人猿)はほとんど絶滅寸前ですが、旧世界ザルは大いに繁栄しています。
旧世界ザルは上下顎の臼歯の構造が特殊化していることから、ホミノイドとはっきり区別できます。前期中新世(約2000万年前)のアフリカ大陸で出現した後、葉食性のコロブス類と果実を中心とした雑食性のオナガザル類に分かれて進化しました。日本に生息するニホンザルはオナガザル類の中のマカク類に含まれ、食べ物を一時的に貯めることのできる「頬袋」が特徴的です。
ホミノイドは小型類人猿と大型類人猿、そしてヒトに分けられます。小型類人猿には東南アジアに生息しているテナガザルだけが含まれます。大型類人猿にはオランウータン、ゴリラそしてチンパンジーが含まれます。テナガザルは腕渡り行動(ブラキエーション)、大型類人猿はナックルウォーキングといった特徴的なロコモーション(移動様式)をしています。現在テナガザルとオランウータンは東南アジアに、ゴリラとチンパンジーはアフリカ大陸に生息していますが、ホミノイド全体の起源は前期中新世のアフリカ大陸で、その後ユーラシア大陸に進出したと考えられています。
ヒトと現生の類人猿の系統が分岐したのは鮮新世初頭(約500万年前)と考えられていますが、まだはっきりしたことはわかりません。ナックルウォーキングをしていた化石類人猿から直立二足歩行のアウストラロピテクス類が出現したときから、われわれヒトの進化が始まったと思われます。現生のヒトの系統であるホモ属が出現したのは約200万年前と考えられています。おそらく東アフリカで進化した彼らは、やがて(約100万年前)にアフリカ大陸を離れユーラシア大陸、そしてアメリカ大陸(約2万年前?)へと分布を広げていきました。
マリサ
この新世界猿ってのはなんだ?
大口
あー、これはちょっと複雑なので、次の「キツネザルの謎」を説明するときに一緒に説明するね。
大口
それと、プレシアダピス類が霊長類の祖先なのか近縁種なのかはまだ結論が出ていないみたいだね。
レイム
あ、こっち見るとプレシアダピス類の根っこの部分から点線が出ているわね。
大口
で、現在の分類の「曲鼻猿類」と「直鼻猿類」の違いなのだけど、鼻腔が曲がっていて鼻孔が左右を向いているのが曲鼻猿類で、鼻腔がまっすぐで鼻孔が下か前を向ているのが直鼻猿類という分け方みたいだね。
マリサ
まあ要するに鼻の穴が前や下を向いているか、それとも横を向いているかの違いで分けていて、曲鼻猿類のキツネザル、アイアイ、ガラコ、ロリスはより霊長類の祖先に近い姿をしていて、例外的にメガネザルだけこれとは別系統だけど、原始的な姿を残していると。
大口
まあとりあえず、キツネザルの祖先(アダピス類)と人類の祖先(オモミス類)は、恐竜絶滅直後の暁新世(約6,600万年前から約5,600万年前)頃に分岐してたという事が次の件に関係するので、覚えておいてね。
キツネザルの謎
レイム
「キツネザルの謎」って?
マリサ
なんか面白そうなんだぜ。
大口
これもう150年くらい議論されていて、有力な説は一応あるにはあるけど未解決の謎で、孤島のマダガスカルにキツネザルなどの種はどうやってきたのか?という件に結論がでていないんですよ。
大口
マダガスカルってキツネザル以外にも現在3種類の哺乳類が現存しているのだけど、当然泳いでこれる距離ではないのね。
レイム
そんなの、大陸移動説で説明できるのでは?
大口
まずマダガスカルがいつアフリカから分離したかというと、約1億3000万年前(文献によっては1億6000万年前)の白亜紀前期、恐竜の闊歩していた時代で、キツネザルの祖先どころか哺乳類の祖先である獣弓類がいた時代なんですよ。
大口
で、マダガスカルがインド亜大陸から分離したのも8800万年前なので、霊長類の祖先が誕生した6600万年前より2000万年近く前だから、大陸移動説では説明できないんですよ。
マリサ
氷河期に海面が下降して陸と繋がったとかはありえないのか?
大口
たとえば最終氷河期とよばれている今から2万年前にあった氷河期を例に出すと、水深が120メートル低下したといわれているけど、アフリカ大陸とマダガスカルの間にあるモザンビーク海峡の最大水深は3292メートル、アフリカとの最短距離は約400キロだから、海岸線が数十キロくらい狭くなったとしても、それでも300キロ以上はあるだろうから、あまり変わらないんだよ。
大口
で、陸伝いにやってきたという説は実のところ主要な学説のうちの一つ「陸橋説」ではあるのだけど、これにはもう一つ問題があって、陸地が繋がっていたのならなんでマダガスカルにライオンやゾウなどの大型哺乳類がいないのかという話になってしまうんだよ。
大口
かつてはマダガスカルに固有のカバがいたそうだけど、これは偶然海を渡ってきたんじゃないかという説があるね。
これも色々と異説あるし、本題ではないので扱わないけど。
レイム
じゃあほかにどんな説があるの?
大口
それなんだけど、約80年前頃から主張されている説として、洪水などで多数の木や草の絡まった疑似的な「筏」ごと渡って来たんじゃないかって説があるんですよ。
マダガスカルの哺乳類は大陸から漂着
ナショナルジオグラフィック 2010.01.21
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2190/(前略)
マダガスカル島の哺乳類が陸橋を渡ってきたとする説の弱点は、現在のマダガスカル島に主に4種類の哺乳類しか生息していないことだ。これらの哺乳類はアフリカ大陸にいる哺乳類の遠い親戚にあたるが、どれも体が比較的小さい。「アフリカとマダガスカルの間に陸橋があったのなら、ゾウやライオンといった大型の動物が渡って来なかったのはなぜだろうか」とフーバー氏は疑問を投げかける。さらに遺伝学的証拠から見ると、マダガスカル島の哺乳類は数百万年の間隔で断続的にやって来たと考えられる。キツネザルがおよそ5000万年前に移動したのを皮切りに、ハリネズミに似たテンレック、続いてフォッサなどマングースの仲間の肉食動物が移動し、最後に齧歯類(げっしるい)が2400万年前に来たという。
漂流説の方が生物学的証拠と一致することから、フーバー氏と、今回の研究の共著者である香港大学のジェイソン・アリ氏は、マダガスカル島周辺の海流が時間とともに変化したのではないかと考えた。
実は5000万年前のアフリカ大陸とマダガスカル島は、大陸移動のために現在の場所よりおよそ1600キロ南に位置していたと両氏は指摘する。そこで、古代の地球の海洋データと大気データを最新の気候モデルに当てはめると、当時のアフリカ大陸とマダガスカル島の付近の海流は、予想どおり西から東に、すなわちアフリカ大陸からマダガスカル島に向かって流れていたことがわかった。
フーバー氏は、海流が最も速く流れていた場合でも、430キロ離れたマダガスカル島に漂着するまで約3週間かかったと推測する。「今回のシミュレーションから、このような非常に速い海流が起こることはめったにないと考えられる。おそらく100年に1カ月程度だっただろう」。そして、小型の哺乳類はそもそも代謝が低いため、それほど多くの食料や真水がなくても数週間は生きることができたはずだと両氏は推測する。
今回の研究に参加していないが、論文の掲載にあたって査読を担当したデューク大学キツネザル・センター長アン・ヨーデル氏は、新発見を次のように評価する。「とても興奮した。結果自体には驚いていないが、そのような結果が出たことに満足している。私にとってこの論争は決着した。マダガスカル島の哺乳類はアフリカ大陸から海を漂流してマダガスカル島に来たのだ」。
一方フーバー氏は、今回のコンピューターシミュレーションは他の生物学的な謎の解明にも役立つ可能性があると期待する。「サルがどのようにして南アメリカ大陸に到達したのかを説明できないか検討するつもりだ。古生物学の研究成果から、サルが南アメリカ大陸にたどり着いたのは始新世(5580万~3390万年前)、つまり南アメリカ大陸が他のどの陸地とも繋がっていなかった時期と考えられるからだ。彼らもアフリカ大陸から漂流物に乗って来たに違いない」。
マダガスカル固有の動物、陸ではなく海から渡来、議論に終止符か
ナショナルジオグラフィック 2023.05.25
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/052300254/「陸橋」説を否定する結果、遺伝子データから渡来方法の3大仮説を検証
アイアイやエダハヘラオヤモリなど、マダガスカルの野生動物には奇妙な姿をしたものが多い。2023年5月4日付けで学術誌「Biological Reviews」に発表された新たな研究によると、これはロビンソン・クルーソーも顔負けの海の旅が何度も行われた結果なのかもしれない。
「動物が海を漂流して生き延びるというのは、ありえない考えのように思えるはずです。人間だって生き延びるのは大変なのですから、動物ならなおさらです」。そう話すのは、米デューク大学キツネザル・センターの化石を専門とする学芸員、マシュー・ボース氏だ。氏は今回の研究には参加していない。
しかし、現在のマダガスカルの種の遺伝子データと、アフリカ本土から渡ってきた祖先の化石記録を比べたところ、ほとんどの陸生脊椎動物は海を渡ってきた可能性が高いことがわかった。
マダガスカルの爬虫類、両生類、哺乳類は、アフリカ本土から大きな「いかだ」のような植物に乗って流れ着き、それが現在の形に進化したと考えられる。マダガスカルの哺乳類の95%、爬虫類の98%ほどは固有種、つまりほかの場所で見ることのできない種だ。
マダガスカルとアフリカ本土を隔てるモザンビーク海峡を渡るには、30~35日ほどが必要だ。動物がそれだけの日を生き延びるのは難しいと思うかもしれない。だが、植物には果実などの食料がついているかもしれないし、たまった雨水を飲んで渇きをしのぐこともできるかもしれない。
「地質学的規模で時間が経過すれば、統計的に見て可能性が低いことや、ほとんどあり得ないことでも、確実に起こります。500万年間サイコロを振り続ければ、そのうち10回連続で6が出ることもあるでしょう」。論文著者の一人で、香港大学の地球物理学者であるジェイソン・アリ氏はそう話す。
(中略)
ところが、今回の研究モデルは、陸橋説を否定するものになっている。アリ氏とヘッジズ氏が、現存する種の祖先がマダガスカルにやってきた時期を推定したところ、その時期は種によって異なっており、ランダムに分布しているように見える。もし陸橋が存在していた時代があったなら、多くの種がその時期に一斉にやってくることになるので、その証拠が遺伝子の記録にも残るはずだ。ボース氏は、この研究の「強力なモデル」が陸橋説に終止符を打つことになるのではないかと考えている。
さらにボース氏は、動物が島に流れ着くのはマダガスカルに限ったことではないという。アフリカから南米まで、さらに長い距離を漂流物に乗って渡った動物はたくさんいるそうだ。また、かなり巨大なものが漂流する場合もある。ボース氏は、巨大な植物の塊がパナマ運河を流れる動画(何本かの木は立ったままの状態になっている)を例に挙げ、「これならサルでも十分乗ることがでたはずです」と言う。
「マダガスカルの多様性は、偶然のなりゆきと、この生態系で居場所を見つけた生物たちの産物なのです」
大口
遺伝子を調べてみると、まず5000万年ほど前にキツネザルの仲間がやってきて、その後断続的に他の種もやってきていて、現在マダガスカルに生息する哺乳類が揃ったのは今から2400万年ほど前、もし陸橋や氷河期による海面低下でアフリカと繋がったのなら、どの種もあまり時間差なく一度にやってきているはずだから、漂着説が現在有力なわけ。
大口
そして当時の海流などをシミュレーションしたところ、運がよければ海流に乗ってモザンビーク海峡を渡るのに30~35日ほどと出たそうなのね。
マリサ
というか、偶然木や草ごと流されただけで、そこで繁殖できるほどの数になるなんてあり得るのか?
大口
この説を提唱している学者たちによると「500万年間サイコロを振り続ければ、そのうち10回連続で6が出ることもあるでしょう」という事だそうな。
レイム
まあ、たまたま偶然そういう事が重なったって事があったとしても、1カ月以上も水も食料もない状態で哺乳類が生き残れるの?
大口
それなのだけど、2000年代以降に発見されたキツネザルの新種や習性などから、可能ではないかという話があるんですよ。
レイム
それはどんなものなの?
大口
それが、2024年8月時点で20種以上が確認されていて、その殆どの種が2000年代以降に発見されているネズミキツネザルの仲間で、種ごとに違いはあるけど、ネズミキツネザルのいくつかの種では尻尾と後ろ足に脂肪を蓄える事が出来て、なかでもメスはマダガスカルの乾季(4月から10月)に休眠状態になって過ごすそうなんですよ。
ネズミキツネザル
ナショナルジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428872/(一部抜粋)
ネズミキツネザルはメスが支配する15匹ほどの群れで生活している。ほとんどの時間を樹上で過ごし、枝から枝、木から木へと素早く動き回る。日中は高い木の上で眠り、夜になると昆虫や果実、花などのエサを探す。環境適応力が高く、しっぽとうしろ足に脂肪を蓄え、食料が乏しい時期にそれを燃焼する。体重の35%もの脂肪を蓄えることができる。メスはオスより体が小さく、マダガスカルの乾季にあたる4~10月まで休眠期に入る。この時期はほとんど動かず、木の穴を離れることはあまりない。しかし同じ時期のオスは活動的で、繁殖期に備えて序列を決めるようである。
大口
他にも、ハイイロネズミキツネザルという種が、気温の低下や食料や水源の不足に応じて自発的に休眠状態になる事ができるようで、1日の特定の時間帯のみ休眠状態になることもあれば、最長4週間休眠状態になることもあるようなんですよ。
ハイイロネズミキツネザルの代謝を低下させるためのオプションの戦略。
ヒポクラ × マイナビ Bibgraph
https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/19277596?click_by=p_ref霊長類の中で、休眠状態は小さなマダガスカルのコビトキツネズミキツネズミキツネとコビトキツネズミキツネについてのみ記載されています。夜行性のハイイロネズミキツネザルMicrocebusmurinus(約60 g)は、気温の低下や食料や水源の不足に応じて、乾季に明らかに毎日の休眠状態に入り、自発的に覚醒することができます。標識再捕獲研究は、生理学的証拠が不足しているものの、この霊長類種も数週間冬眠する可能性があることを示しました。本研究では、皮下に埋め込まれた温度感受性データロガーを使用して、南半球の冬の間の2つの放し飼いのM.murinusの体温のパターンを調査しました。
1匹のキツネザルは休止状態になり、4週間活動を停止しました。この間、体温は周囲温度に受動的に追随し、最低体温は11.5℃で、正常体温レベルへの不規則な覚醒によって中断されました。同じ条件下で、2番目の個人は早朝に短い休眠状態を示しましたが、夜行性の活動を通して安定した正常体温を維持しました。
体温の低下は、27℃の最小値で短い休眠状態を利用したマウスキツネザルではそれほど顕著ではありませんでした。サンプルサイズが小さいにもかかわらず、私たちの調査結果は、冬眠中のM.murinusの個体が湿った常緑の沿岸熱帯雨林には、環境制約に対する2つの代替のエネルギー節約生理学的解決策と同じ条件下で、短い休眠発作または冬眠を利用するオプションがあります。
大口
他にも、こうした休眠期状態はミミゲネズミキツネザルや同じコビトキツネザル科のフトオコビトキツネザルでも確認されていて、更には同じく曲鼻猿類で、ベトナム、ラオス、カンボジア、中国に生息しているピグミースローロリスでも似たような休眠が確認されている事から、ネズミキツネザルの仲間が最もキツネザルの祖先に近い種ではないかと言われていることからも、漂着した祖先もこの性質を持っていたのでは?と考えられているんですよ。
マリサ
その休眠ってのは冬眠とは違うのか?
大口
理化学研究所にその辺りの説明をしているページがあったので、そこから引用すると、「休眠は冬眠と異なり安定した低代謝時間が極めて短い」そうで、たとえばネズミなどでは条件次第で数時間代謝が低下する休眠状態になるようで、特定の季節に代謝が長期間低下するのではなく、環境の変化に対して能動的に代謝を低下させるシステムっぽいんですよ。
休眠と冬眠の代謝制御機構の共通点を明らかに
理化学研究所 2016年11月15日
https://www.riken.jp/press/2016/20161115_3/index.html(一部抜粋)
マウスの休眠は冬眠のような長期間にわたる変化ではありませんが、数時間にわたって、睡眠とは明らかに異なる低代謝状態を示します。しかし、マウスの休眠は冬眠と異なり安定した低代謝時間が極めて短く、また安定した誘導法がなかったため、これまで能動的低代謝の研究において、積極的には研究対象とされませんでした(図2)。研究チームは、マウスの休眠を詳しく解析することで、能動的低代謝の原理の解明や、能動的低代謝を臨床応用するための基盤を整備することを目指しました。そのために、まずマウスの安定的な休眠誘導法を開発し、次に、さまざまな条件でマウスの休眠を誘導することで温度制御の観点から休眠の特徴を解析し、冬眠との相違点を明らかにすることにしました。
マリサ
つまり、冬眠ほどしっかり体の機能を低下させるんじゃなく、状況次第で一時的に低下させる能力って事か。
レイム
ああ、それで木ごと海に流されてしまったネズミキツネザルの祖先が、食べ物の無い状況で休眠状態になり、偶然マダガスカルに漂着できた個体が覚醒して生き残ったと。
大口
他のマダガスカルの哺乳類、トガリネズミの仲間のテンレックやマングースの仲間のフォッサなども、似たような手段で漂着してやって来たのではないかと言われているね。
大口
それと、最初の方でちょっと触れていたけど、南米に生息しているいわゆる「新世界猿」も、アフリカから大西洋を渡って南米に到達したんじゃないかって言われているんですよ。
マリサ
でも南米の猿は「真猿」なんだろ?
大口
厳密にはさっきの図にあるように、メガネザルと同じく初期に直鼻猿類から枝分かれした種で、広鼻猿類と呼ばれているね。
漂流する大陸と生物の進化
科学バー
https://kagakubar.com/evolution/16.html(一部抜粋)
新世界ザルの起源に関してはさまざまな議論があった。南アメリカで新世界ザルの化石が見つかるのは、今から2600万年前以降のことであり、それ以前にはまったく霊長類の痕跡が見られないのである。
最初は北アメリカから祖先が渡ってきたのではないかと考えられた。現在では南アメリカは北アメリカと陸続きになっているが、それは300万年ほど前からのことであり、それまでは海で隔てられていた。しかし、新世界ザルの祖先が渡って来られるとしたら、やはり一番近い北アメリカしか考えられなかった。ところが、その北アメリカには新世界ザルに関係しそうな霊長類の化石はまったく見つからないのだ。
そうこうするうちに、エジプトで新世界ザルに似た霊長類の化石が見つかり、新世界ザルの祖先はアフリカからはるばる海を越えてやって来たのではないかと考えられるようになってきたのである。アフリカから南アメリカまでサルが海を渡ったということは、とても信じがたいことのように思われるかもしれない。確かに確率的にはとても起りにくいことが起ったように見える。しかし、北アメリカから渡ってきたのでないとするとそれ以外には考えられないのである。
図14-1eは現在の大陸配置であるが、図14-1dは新世界ザルの祖先がその航海をしたと考えられるおよそ3500万年前の大陸配置である。その頃のアフリカと南アメリカの間の距離は、今のおよそ半分くらいしかなく、アフリカから南アメリカに向かって海流が流れていたと考えられる。カナダのアレイン・ヒュ-レによれば、その当時であれば、アフリカを出発した浮島は13日くらいで南アメリカに到達できただろうという。
北アメリカから南アメリカへの距離は確かに短かったが、その頃の海流の向きはサルの移住には好ましくなかった。何よりも、北アメリカには霊長類の化石はまったく見つからないことも大きい。それに対してアフリカからは南アメリカの方向に海流が流れていて、しかもアフリカには新世界ザルの祖先になり得る霊長類が生息していたのだ。
大口
で、本題からは逸れるのでざっと説明すると、かつてはキツネザルの祖先のアダピス類の仲間が北アメリカ大陸に生息していたそうだけど、広鼻猿類の祖先であるオモミス類がいた痕跡はないうえに、この種も北米と南米が繋がる前に絶滅しているのね。
大口
このことから、ユーラシア経由で南米にやってきたとは考えにくいのだけど、1966年にエジプトでエジプトピテクスという、新世界猿の特徴を持つ猿の化石が発見されて、どうもアフリカ大陸から直接来たんじゃないかという事で、漂着説が出てきているんですよ。
レイム
でも流石に南米とアフリカでは距離が開きすぎでは?
大口
それが、エジプトピてクスが生息していた漸新世頃は、アフリカと南米の距離が今の半分くらいしかなかったので、2週間もあれば到着したんじゃないかという説があるようなんですよ。
マリサ
まあ要するに、今はマダガスカルにせよ南米にせよ、霊長類が生息している理由は漂着説が有力って事でいいのか?
大口
勿論異論もあるから、それで確定ってわけではないけど、化石や遺伝子の解析などからはそう考えると「つじつまが合う」と考える学者が多いって事みたいだね。
なので確定したわけではないので、皆さんも何か思いついたら説を提唱するのもいいかもしれない。
マリサ
つまり、宇宙人誤発注説とかを提唱してもいいわけだな?
レイム
マリサ、「根拠があれば」だからね。
大口
それと、蛇足ついでにキツネザル小話を。
5000万年前にマダガスカルに到着したキツネザルの仲間はかなり多岐にわたって分岐して進化していったのだけど、既に絶滅している種の中には変わり種もいるんですよ。
マリサ
なんだ?
眼からビームでも出すのか?それとも音速で飛行できるとかか?
レイム
マリサ、それもう生物の域を超えているから。
大口
で、どんな変わり種かというと、メガラダピスという巨大キツネザルで、他のキツネザルの仲間は6センチから50センチ程度なのに対して、メガラダピスは頭胴長約1.5メートル、体重80から140キロもあったそうなんですよ。
マリサ
でかすぎるんだぜ。
よし、捕獲しに行くか!
レイム
もう絶滅してるから。
大口
で、習性も面白くて、どうもコアラのように木にしがみついて木の葉を食べる大人しい性質だったといわれているね。
マリサ
じゃあ放し飼いもオーケーだな!
レイム
もういないか、諦めなさい。
大口
そ、そんなわけで今回の本編はここで終わります。
レイム マリサ 大口
ご視聴ありがとうございました。
大口
おつかれ~
マリサ
というか、また随分と間が空いたな。
レイム
前回投稿が2024年1月4日だから^ちょうど1年ね。
マリサ
流石にサボりすぎなんだぜ。
大口
いやー、今回の本編の方は結構すんなり進んだのだけど、オマケ動画の方がね。
レイム
何か問題あったの?
大口
あっちはオカルト系なので、普段と勝手が違い過ぎてソース集めにてこずったのと、当初の予定ではただの奇人変人紹介動画になる予定が、調べていくうちにそれでは済まなくなったというのもあるんですよ。
マリサ
そっちの面白ネタを本編にするべきなんだぜ。
大口
これ一応「変な生き物」シリーズだからね?
レイム
実在する生き物しか扱っていないしね。
大口
そんなわけで今回はここで終わります。
レイム マリサ 大口
またいつか~
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