日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

【慰安婦合意】韓国が今後とる可能性のある態度


皆様、明けましておめでとう御座います。
本年もよろしくお願いします。


さて、今年最初の記事は、去年末に取り交わされた日韓の慰安婦合意に関して、年末年始と韓国側の動向を観察していく事でわかってきた、合意に対する韓国人の考え方と、今後起こりうる可能性のある態度について書いて行きます。


要約


現状を見る限り、韓国側が積極的に合意を破棄する可能性は低い。
ただし、以前から書いているように、韓国では他者の劣等性が自己の優越性の担保となり、また自己の正当性も他者の劣等性を担保に証明されるという、非常に独特の価値観があるので、そもそも「慰安婦問題をこれで終わりにする」という発想そのものがない。
自己の優越性や正当性を証明できなくなってしまうからだ。



そのため今後は、事実上合意を破るような態度をとれるよう、日本側から合意を破ったとするための言質を取ろうとする言動や、合意を有名無実化する既成事実を積み重ねて行く行為が頻発する可能性が極めて高い。
いずれにせよ、日本人の想定する「解決」とは程遠い形になるのはまず間違いがない。


※一部を除き、引用記事は文末にまとめて掲載しています。
※文中の本文のない引用リンクは元ページ、或いはウェブ魚拓・ウェブアーカイブなどへ飛ぶリンクです。

1:「ひとまず合意を守る」との態度



まずはこちらの記事を


日本の責任認定で進展 問題指摘も=慰安婦合意で韓国専門家ら
聯合ニュース 2016/01/05
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2016/01/05/0200000000AJP20160105004600882.HTML

【ソウル聯合ニュース】韓国外交部傘下の国立外交院日本研究センターは5日、同院で政策セミナー「日本軍慰安婦被害者問題妥結の意味と課題」を開催した。出席者らは慰安婦問題をめぐる日本との合意について、日本の責任認定では進展があったが、真相究明などに向けた措置が含まれなかったことは問題との認識を示した。

 韓国で交渉結果をめぐる議論が続く中、合意の成果に対する意見にも食い違いがあった。李元徳(イ・ウォンドク)国民大日本研究所長は「日本が法的責任を認めたことに近い」として、内容上では安倍晋三首相を「ひざまずかせた」と語った。李根寛(イ・グングァン)ソウル大法学専門大学院教授も「過去に比べて進展した形で責任を認めた」と評価。「単純な道義的責任のレベルから抜け出し、法的責任の方向に進んだ外交折衝」と分析した。

 これに対し、鄭在貞(チョン・ジェジョン)ソウル市立大教授は「本質的な側面からは日本が(河野談話など)これまでやってきたことをまとめたもの」との考えを示した。ただ、「真相究明や追悼事業、謝罪をひっくり返すような発言に対する反論などの措置を取るべきとの内容が以前には入っていたが、今回の合意には盛り込まれなかった」と指摘した。

 合意前に韓国政府が慰安婦被害者らに十分に説明しなかったことや、交渉の初期に過度に強硬な姿勢を取ったことも問題として指摘された。鄭教授は「(韓国政府が)最初に高すぎる目標を設定し、被害者や支援団体の要求を100%貫徹するかのような印象を与えた」として、「国民の期待は相当に高かったが、現実的にはそうできなかった」と述べた。

 今回の合意は今後、どう履行していくかが鍵で、合意を履行し、被害者の傷を癒やすためには日本側の態度が重要との声が多く上がった。李教授は「(慰安婦)問題の最終的な解決は今後の日本政府の誠実な合意履行が条件」として、「日本政府は合意文の文字だけでなく、精神も尊重しなければならない」と強調した。

 一方、李所長は「今回の妥結内容を政治的かつ法的拘束力の強い共同宣言、条約の形に進展させていく必要がある」との考えを示した。「無表情な岸田外相の文章朗読では真意が感じられないのが事実」として、「(安倍)首相か外相が元慰安婦のおばあさんに直接会い、謝罪と反省を表明してくれたら、という残念な気持ちがある」と述べた。

 陳昌洙(チン・チャンス)世宗研究所長は「(日本政府が拠出する)基金が完成した形になると、プロセスの終着駅が最終的につくられる。日本もその過程で、妄言を吐けない構造をつくっていかなければならない」と語った。


実は韓国、この年末年始にかけて当初は「合意を破棄しろ」との論調が多かったのですが、時間が経過すると右派系を中心に合意を支持する論調が増えてきており、世論も賛成・反対がだいたい半々くらいになってきています。


またここへ来て、次期大統領候補の最有力と目され、韓国の与野党がこぞって自陣への引き込みを図っている潘基文国連事務総長が、今回の合意に支持を表明したことで、野党第一党の「共に民主党」など、「政権を取ったら合意を破棄する」と当初から訴えていた政党などのトーンが少し小さくなってきています。
(※1 慰安婦合意:韓国政界を揺るがす国連事務総長の合意支持表明 朝鮮日報 2016/01/05
(※2 慰安婦合意:韓国最大野党「政権執ったら『なかったこと』にする」 朝鮮日報 2015/12/31


現状でも、親北左派系は「合意破棄」を訴えていますが、少なくとも右派系はひとまず合意を守ろうというスタンスであり、また左派系が圧倒的に支持されているというわけでもない事が解ります。


2:合意推進派も本当は破棄したいができない理由


上記のように、現状少なくとも親北左派系以外は強硬な反対をしておらず、合意を受け入れるとの態度の人々も多いのですが、この人達も完全に肯定的なわけではありません。


たとえば、韓国の大手通信社である聯合ニュースは、「日本のメディアが、合意内容に含まれていない内容を合意内容であるかのように報じた、これは合意を揺るがす恐れがある」と、日本政府の見解と関係ないマスコミの記事ですら破棄条件になりうるとの趣旨の記事を書いています。


(※3 慰安婦めぐる日本の報道に懸念強まる 合意揺るがす恐れも 聯合ニュース 2015/12/30


また、韓国三大紙の朝鮮日報では、「日本政府内から問題発言あれば破棄せよ」と、露骨に破棄するための口実を探すような記事も出てきていますし、中央日報は「真正性(韓国人的価値観における主観的・絶対的正しさの事)」という単語を使い、同様の記事を書いています。


(※4 【社説】慰安婦合意、日本政府内から問題発言あれば破棄せよ朝鮮日報1/2ページ 2/2ページ 2015/12/31)
(※5 【社説】慰安婦合意の成否、説得と真正性にかかっている 2015年12月31日 中央日報


要するに、合意に肯定的な論調の人々も、「口実さえあれば反故にしたい」のです。


ただ、元々この合意は単なる慰安婦問題というだけではなく、南シナ海における中国の動向や、本日報じられた北朝鮮の核問題など、安全保障問題が「反日」で滞ってしまっている事に対して、アメリカが解決を要求した事が恐らく合意に至った経緯であること。


また合意が国際的に報じられ、各国がこの合意に対して肯定的な見解を出している事から、流石に韓国も容易に反故にできないわけです。


またもう一つ、韓国政府が安易に合意を破棄出来ない理由があります。
それは「韓国において、過ちを認める行為は自ら劣等性を認める行為」だからです。


2014年に発生した「大韓航空ナッツリターン事件」が典型的な事例ですが、韓国において一度自らが過ち(劣等性)を認めてしまうと、法的な処罰を超えた「リンチ」にあう事例が度々発生しており、特にこのナッツリターン事件ではこの「リンチ」に司法まで便乗していました。


序列が人間関係の全てである韓国社会において、自ら過ちを認めるという行為は、自ら「加害者」として名乗り出るのと同じ行為であり、加害者になった時点で序列の最下層に置かれることとなり、「何をされても文句の言えない存在」になってしまうからです。


もし、韓国政府が今回の合意を破棄した場合、それはつまり「合意は過ちだった」と自ら認めるのと同じですから、「加害者認定」されて世論から法を超越したリンチにあう可能性があります。
だからこそ韓国の合意推進派は、自らの保身のためにも安易な合意破棄はできず、「日本が問題を起こしたから破棄したのだ」という名分が欲しいわけです。


3:合意の有名無実化をはかる韓国


上記以外にも、韓国は「合意の有名無実化」もはじめています。
どういう事なのかと言えば、「合意の例外」を次々と作り出し、事実上慰安婦関連の政治的な活動が自由に出来る状況を作り出そうとしているのです。


たとえば、韓国政府はソウルの日本大使館前の慰安婦像の撤去問題に関して、「少女像は民間が自発的に設置したものであり、政府がああしろこうしろと言える事案ではない」との見解を発表していますが、そもそもこれは「外交関係に関するウィーン条約」に関連する問題です。


(※6 韓国外交部 慰安婦少女像めぐる岸田外相の発言に抗議  聯合ニュース 2016/01/04


ですので、像をどうするにせよ日本大使館前に設置されている以上、その責任はこの条約を批准している韓国政府の責任になるにも関わらず、「民間の問題」に論点を摩り替えることで、像の設置を既成事実化しているうえに、2002年に発生した「議政府米軍装甲車女子中学生轢死事件」では、米大使館付近への記念碑の設置を韓国政府が拒否しているのですから、完全にダブルスタンダードです。


また更に、実は韓国の法律では外国の大使館前でのデモが禁じられているのですが、挺対協の「水曜デモ」は、記者会見の名目で以前から容認されているうえに、現在韓国の大学生が行っている「韓日交渉廃棄のための学生対策委員会」デモも、「文化祭である」との名目で警察に黙認されており、事実上法も条約も何も機能しない無法状態が続いています。


これは以前から書いているように、韓国社会には根拠を必要としない「主観的・絶対的正しさ」という概念が存在し、この「正しさ」は多くの韓国人の中で「世界中の人々が元々理解している普遍的正しさ」という事になっているため、どんなに法や条約があっても、彼らの中で主観的に通用する「動機」や「口実」があればいくらでも超越できるのです。


その結果、上記のように例外に次ぐ例外が繰り返され、どんな約束も安易に放置すると直ぐに有名無実化してしまうわけです。


今回の合意も、彼らの行いを放置しておくと、いつの間にか合意そのものが有名無実化します。
元々慰安婦問題は、こうした韓国による有名無実化を放置したからこそ問題が長期化したという背景もあります。


そこで重要なのは、この事を韓国人に指摘しても、多くの韓国人は何が問題なのか理解できないという事です。
彼らにとって「正しさ」というのは絶対普遍のものであり、法や条約はこの正しさの下位に位置づけられているので、私達の常識における法や条約を彼らに語っても意味がないのです。


ただし、今回の場合には、だからといって放置できることでもないので、韓国人に対して「こちらはその行為に対して怒っているのだ」という事を明確に意思表示していくべきでしょう。
法も条約も抑止にならないうえに、元々韓国では「感情を表に表すこと」が美徳とされる傾向にあるので、日本人的な感情を表にあまり表さない態度よりも、明確に「怒っているor不快に感じている」事を伝えた方が、こちらの意思が伝わり易く上手く行く場合が多いのです。


価値観や常識が異なるというのはそういう事です。



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(※1)
慰安婦合意:韓国政界を揺るがす国連事務総長の合意支持表明
朝鮮日報 2016/01/05
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/01/05/2016010500647.html

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長=写真=について野党が頭を抱えている。韓国最大野党の「共に民主党」では盧武鉉ノ・ムヒョン)政権時に外交部(省に相当)長官を務めた潘事務総長をこれまで「潜在的友軍」と見なしてきた。

 ところが、潘事務総長の「慰安婦合意は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の勇断」という発言をきっかけに、批判対象と見なす雰囲気に変わろうとしている。しかし、出身地の忠清北道の民心を考慮して強く非難もできない、はっきりしない状況になった。

 同党は4日の指導部会議で、韓日政府の慰安婦合意を肯定的に評価した潘事務総長を批判した。

 鄭清来(チョン・チョンレ)最高委員は過去に日本を批判した国連の慰安婦関連活動を取り上げ、「今回の合意で国連の勧告事項は一つも通過していないのに、朴大統領に『合意を歓迎する』というのは、国連事務総長個人の立場なのか、国連の立場なのかをはっきりさせるべきだ。名誉を持って国連事務総長の職を遂行してほしい」と述べた。

 同党の文在寅ムン・ジェイン)代表が「候補獲得1号」と発表した表蒼園(ピョ・チャンウォン)犯罪科学研究所所長も2日、「参与政府(盧武鉉政権)の外交部長官に過ぎなかったあなたを、国連事務総長の座に就かせたのは、故・盧武鉉大統領だった。韓日(慰安婦)交渉支持発言を取り消すべきだ」と述べた。

 このように野党関係者が潘事務総長を直接非難するのは異例のことだ。文代表は先月8日、報道関係者の親睦(しんぼく)団体「寛勲クラブ」の討論会で、潘事務総長を大統領候補として獲得する意思を尋ねられると、「我が党の出身だ。我々が作り上げた国連事務総長だ。もし政治をやるとおっしゃるなら、ぜひ我が党と一緒にするべきだ」と述べた。朴大統領に近い筋の一部から潘事務総長を大統領候補者として念頭に置いた発言が出たことに対する反論だった。

 ただし、野党の潘事務総長批判を潘事務総長に対する全面的な戦略修正と断定するのは難しい、というのが野党関係者の説明だ。文代表をはじめとする指導部は同日、慰安婦合意は批判したものの、潘事務総長については直接言及していない。

 野党関係者は「潘事務総長を与党の潜在的な大統領選候補者と見なして完全に背を向ければ、総選挙で票の流れに影響を及ぼす可能性がある忠清道地域に悪影響を与えかねない」と語った。これは、しばらくは潘事務総長に対する「けん引と批判」を同時進行するしかない

(※2)
慰安婦合意:韓国最大野党「政権執ったら『なかったこと』にする」
朝鮮日報 2015/12/31
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/31/2015123100717.html
http://web.archive.org/web/20151231010333/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/31/2015123100717.html(ウェブアーカイブ

「国会の同意ない合意は無効、再交渉せよ」

 野党が韓日両国の慰安婦合意に対し、本格的に反対する動きを見せ始めていることから、新たな政治争点になりそうだ。しかも、韓国最大野党の「共に民主党」(旧名称:新政治民主連合)は30日、慰安婦合意の無効を宣言し、政府に再交渉を要求した。

 同党の文在寅ムン・ジェイン)代表はこの日の党最高委員会議で、「今回の合意は、国民の権利を放棄する条約や協定に該当するため、国会の同意を得なければならない」「我々はこの合意に反対する。国会の同意がなかったため、無効であることを宣言する」と述べた。同代表はまた、「日本は(拠出するとした)10億円は賠償でないとクギを刺した。政府はそのカネを受け取ってはならない」「元慰安婦の女性たちのための財団を設立するなら、全額韓国の資金で設立せよ」とも言った。さらに、少女像問題については、「日本が撤去を要求したのは厚かましい行為だ。そのような不当な要求に引っ張り回される政府も恥ずかしいのは同じだ」と語った。田炳憲(チョン・ビョンホン)最高委員も「10億円を手にしたが、これは我々にとって侮辱的で恥ずべきカネだ」と言った。

 同党の李鐘杰(イ・ジョンゴル)院内代表はこの日、韓国プレスセンターで国内外メディアの記者と会見し、「合意を受け入れることはできない。原点から再交渉しなければならない」「わが党は今回の交渉について、現在はもちろん、今後、政権を執ることになったら、なかったことにする」と言った。同党は合意に対する糾弾決議案と尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部(省に相当)長官の解任建議を提出することにした。

(※3)
慰安婦めぐる日本の報道に懸念強まる 合意揺るがす恐れも
聯合ニュース 2015/12/30
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/12/30/0400000000AJP20151230002900882.HTML

【東京聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦問題をめぐり、韓日外相が28日に発表した合意に含まれていない内容が日本メディアにより「内々の合意」事項などとして報じられ、これに韓国政府が反論する事態が相次いでいる。報道は支持基盤である保守層を意識した安倍晋三首相の「希望事項」が反映されたものとみられるが、韓国世論の反発を呼び、ただでさえ危うい合意を根本から揺るがしかねず、懸念が強まっている。

 韓日は外相会談で、慰安婦被害者を支援するための財団を韓国政府が設立し、日本側が10億円程度を拠出すること、日本側が撤去を求めているソウルの日本大使館前に設置された慰安婦被害者を象徴する少女像について、韓国政府が関連団体との協議を通じて解決に努力することなどで合意した。

 朝日新聞は30日、複数の日本政府関係者の話として、少女像の移転が財団への拠出の前提になっていることは韓国と内々に確認済みだと報じた。

 これに対し、韓国政府当局者は「完全なねつ造」と即座に反論したが、韓国のポータルサイトなどには報道を受け韓国政府を批判する書き込みなどが殺到している。

 29日には、韓日外相が前日の会談で、韓国政府が慰安婦関連資料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産への登録申請を見送ることで合意したとする時事通信の報道をめぐり、攻防が繰り広げられた。

 韓国外交部当局者が報道を「事実無根」と一蹴したところ、30日付の産経新聞は「(韓国が)記憶遺産不参加を否定」と一面トップで報じた。毎日新聞日本経済新聞なども同様の報道をしている。

 登録申請は政府が関与することではなく、韓日間にそうした合意はなかったというのが韓国政府の立場だが、日本メディアの記事は一見すると韓国が登録を申請するという意味に誤解されかねない。

 東京都市大の李洪千(イ・ホンチョン)准教授(メディア情報学)は「日本の報道内容は(慰安婦問題に対する)日本政府の解決意欲を疑わせるもの。合意を受けて韓国政府が被害者らの説得に苦労しているなか、こうした報道は韓国の世論を分裂させ、韓国政府の立場を苦しくさせる」と指摘した。そうなると日本政府が望む通りの解決は得られないとし、「日本政府は一方的な自己主張をするのではなく、韓国政府の被害者の説得に力添えすべきだ」と述べた。

 先月の韓日首脳会談の前後にも、同じようなことがあった。安倍首相が朴槿恵(パク・クネ)大統領に対話内容の非公開を提案したにもかかわらず、日本メディアは首脳会談の少人数会合で議論されたとする内容を相次ぎ報道し、そのたびに韓国政府は「事実と異なる」などと否定した。

(※4)
【社説】慰安婦合意、日本政府内から問題発言あれば破棄せよ
朝鮮日報 2015/12/31
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/31/2015123100773.html
http://web.archive.org/web/20151231055452/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/31/2015123100773.html(ウェブアーカイブ

韓国政府と日本政府が従軍慰安婦問題の解決に向け合意に至った後も、日本からは今回の合意そのものを揺るがしかねない発言や動きが相次いで報じられている。日本のメディア各社は毎日のように事実関係がはっきりしない報道を続けており、また日本政府の複数の関係者、それも責任ある立場の人間が一連の報道と関係する発言を何度も行っているからだ。

 たとえば日本の産経新聞の報道によると、安倍首相は合意が行われた翌日の29日「韓国の外相がテレビカメラの前で不可逆的という言葉を口にした」と前置きした上で「ここまで発言した以上、もし約束を破れば韓国は国際社会の一員ではなくなるだろう」という趣旨の発言を行った。また朝日新聞は30日付で、日本大使館前に設置されている少女像の移転問題と関連して「日本政府は慰安婦支援財団に10億円を拠出する前提条件と考えている」などと報じた。安倍首相が本当にそのような発言を行い、また日本政府が本当にそのように考えているのであれば、今回の合意は最初から崩壊しているのと同じだ。

 今回の合意の精神に反する言動は、実は合意の直後から相次いで報じられていた。日本の岸田外相は尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官との共同会見が終わった直後、日本メディアに対し「我々が失ったのは10億円だけだ」と発言した。この発言が事実であれば、従軍慰安婦動員の強制性に対する日本政府の謝罪と反省の言葉に全くと言って良いほど真実味がなくなり、ただ10億円という現金への色づけに過ぎなくなってしまう。しかも翌日には従軍慰安婦関連資料をユネスコ世界文化遺産に登録する問題について「韓国政府が活動を中断する」とも報じられた。これでは「10億円と慰安婦問題を交換した屈辱的な交渉」という声が韓国国内から出るのも当然のことだ。

 日本軍慰安婦問題は被害を受けた女性の数や動員の強制性、またその悲惨な生活などから、女性の人権をじゅうりんした事件の中では20世紀最悪のものだった。韓国政府は20年以上前から日本政府に対し「政府としての謝罪」と「法的責任の認定」を求めてきたし、国際社会もこれを全面的に支持してきた。それにも関わらず、韓国政府は今回これまでの立場を全て放棄して合意に至ったが、それは何よりも米国との関係を重視し、さらに将来の日本との関係も同時に考慮したからだ。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は合意が報じられた直後、元慰安婦女性と国民に対し「より大きな観点から理解してほしい」と訴えたが、それもこのような理由があったからだ。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/31/2015123100773_2.html
http://web.archive.org/web/20151231055553/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/31/2015123100773_2.html(ウェブアーカイブ

 日本側にも国内の政治的な事情があったはずだ。合意内容には「日本政府として責任を痛感」「謝罪と反省の表明」といった文言が入っているが、これらに対する日本国内の反発を安倍政権は抑えなければならない。しかし現在、日本国内の反発世論や報道内容は想定されたレベルをはるかに超えている。

 韓国政府は「最終的かつ不可逆的な解決であることを確認する」ことを含む3つの点を約束したが、これに対する国内での反発も当然予想していたはずだ。ところがそこには「日本側による誠実な合意の実行」という前提条件がはっきりと添えられなければならない。日本の態度や行動が誠実かどうかの判断は、日本がいかに真実な形で「責任」と「謝罪」の態度を持ち続けるかにかかっている。このことを日本政府もしっかりと認識すべきだ。

 今回の合意は、一つの些細な問題で前提条件そのものが崩壊しかねないほど非常にデリケートなものだ。また政府次元で合意に至ったからといって、それだけで全てが終わるような問題でもない。ところが韓国政府は今回の合意に至ったプロセスはもちろん、その後の対応についても現時点でミスを繰り返している。大統領や関係する全ての部処(省庁)の閣僚が直接動いたとしても、元慰安婦女性たちを説得するのは非常に難しいが、それにも関わらず、次官一人を元慰安婦女性たちに派遣して説得にあたろうとした。交渉の段階で日本に主導権を握られたかと思えば、今度は日本ととんでもない密約をしていたとの疑念も表面化している。韓国政府は今からでも今回の合意内容の全てを国民に説明し、国民の判断を仰がなければならない。そして、万一安倍首相や日本政府関係者から合意の精神を傷つける発言が出た場合は、合意そのものを破棄するとの立場を明確にしておくべきだ。

(※5)
【社説】慰安婦合意の成否、説得と真正性にかかっている
2015年12月31日10時43分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/244/210244.html

28日にかろうじて妥結した韓日慰安婦の合意が激しい抵抗にぶつかった。一部の市民団体と野党は汎国民反対運動まで行う勢いだ。韓日協定50周年を迎え、困難の中で用意された関係改善の契機が水の泡になる局面だ。

今回の合意は、日本側の法的責任の拒否と元慰安婦女性との事前疎通の不在によって初めから問題を抱えていた。それでも未来志向的な韓日関係の構築という名分で、長年の懸案が円満に解決されることを期待したのが私たちの率直な心情だ。

だが合意後、日本から出る一連の発言と報道を見ると、安倍政権の謝罪に対する真正性を疑わざるをえない。

何よりも安倍晋三首相自身が「もう謝罪はない」と釘をさしたという部分は衝撃的だ。ユダヤ人虐殺を犯したドイツは1970年、当時のヴィリー・ブラント首相がポーランドワルシャワのゲットー記念碑の前でひざまずいて謝って以来、首相・大統領が過ちの赦しを請い続けてきた。日本の作家、村上春樹が指摘したように「謝罪は被害者がもういいというまですること」だ。

日本大使館前の慰安婦少女像も同じだ。日本は、少女像の事前撤去が補償金10億円の支給条件だと言い張っている。少女像は民間団体が設置したものであり政府が移転を約束できない事案だ。合意内容にも「関連団体との協議などを通して適切に解決されるよう努力する」とだけされている。

これだけではない。「韓国政府が慰安婦の記録物の世界記憶遺産の登録を見送ることにした」という日本メディアの報道や、安倍首相夫人の昭恵氏が慰安婦合意の当日に靖国神社を訪れたのも全て納得し難い。

「国際社会で相互非難・批判を控える」という合意内容の前には「日本政府が表明した措置が確かに実施されるということを前提に」という但し書きがついている。日本政府が約束した通り「慰安婦に対する責任を痛感して心からおわびと反省の心を表明しなければ」、韓国の怒れる市民たちがただちに妥結の無効化を叫ぶことは明らかだ。今回の慰安婦合意の成否は結局、韓国政府の対国民説得と共に日本の真正性いかんにかかっている。

(※6)
韓国外交部 慰安婦少女像めぐる岸田外相の発言に抗議
聯合ニュース 2016/01/04
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2016/01/04/0400000000AJP20160104003300882.HTML

【ソウル聯合ニュース】韓国外交部の当局者は4日、日本の岸田文雄外相がソウルの日本大使館前に設置されている慰安婦被害者を象徴する少女像について、適切に移設されるものと認識していると述べたことに対し、「(慰安婦問題をめぐる韓日)合意の円満な履行のためには誤解を招きかねない日本側の言動がこれ以上あってはならない」と強調した。

 また、「慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復、傷の治癒がしっかりとなされるよう日本側が誠実に合意を履行する姿勢を見せなければならない」と述べた。

 外交部は同日午後、在韓日本大使館の関係者を呼び、強く抗議したとされる。

 同部の尹炳世(ユン・ビョンセ)長官は先月30日、「誤解を招きかねない日本側の言動がないことを望む」と述べており、日本側で韓日合意をめぐり論争をあおる言動が続いていることに対しあらためて警告した形だ。

 外交部当局者は「少女像は民間が自発的に設置したものであり、政府がああしろこうしろと言える事案ではないということをもう一度明確にしたい」と指摘した。

 慰安婦関連資料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産への登録申請については「消えていく記録物の保存のために民間主導で推進しており、政府が関与することはできない事案」と指摘。その上で「昨年12月28日の韓日外相会談でも尹長官がこのような立場を明確にしている」と説明した。