日韓問題(初心者向け)

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慰安婦問題と韓国のあいまい戦術


さて、今回は先日の日韓首脳会談で決定した「慰安婦問題の早期解決」という合意に関連し、現在の韓国のとっている態度と、それと関係した去年辺りからの韓国政府による慰安婦問題への表現の変化について書いて行きます。


日韓首脳会談で決まった「慰安婦問題の早期解決」に対して、韓国側は「どうすれば決着になるのかは日本側が考えろ」という態度です。
また一昨年辺りまで韓国政府は「軍命令による組織的強制への法的な謝罪と賠償」を明示し日本に対して解決を要求していたのですが、最近は日本のメディアと同じように「誰が」の部分を曖昧にする傾向にあります。


前者と後者は関係しており、「自分達から解決を提案しない」事で、韓国側の望む解決つまり「軍命令による組織的強制への法的な謝罪と賠償」を日本が自主的に提案するまで、日本側の要求を後付けで理由を作り何度でも拒否し続け、その間ずっと外交カードにすることができます。
また、「日本が自主的にやっている」という事をアピールすることで、対外的に「韓国が慰安婦問題に拘って日韓関係が悪化している」という批判を回避しようという意図もあります。


何より、自分達からは何も解決策を提示せず曖昧にすることで「軍命令による組織的強制」の証拠が無いことへの批判を回避することが出来ます。
そして恐らく韓国側の最終的な目標は、「軍命令による組織的強制への法的な謝罪と賠償」を日本側から自主的に認め確定させた上で、日本の首相が変わるたびに韓国への謝罪を慣例化することです。
これが現在の「あいまい戦術」をする韓国の意図です。


まずはこちらの記事から。


慰安婦解決案 「加害者として日本が提示を」=韓国当局者
聯合ニュース 2015/11/06
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/11/06/0400000000AJP20151106000900882.HTML
【ソウル聯合ニュース】韓国の政府当局者は6日、旧日本軍の慰安婦問題をめぐり、萩生田光一官房副長官が韓国側に解決案の提示を求めたことについて、「日本側が加害者として『結者解之』(自ら行ったことを自ら解決する)の観点から被害者らが受け入れ、韓国の国民が納得できる解決案を早期に示すべきだ」と述べた。

 安倍晋三首相の最側近の一人で、韓日首脳会談にも同席した萩生田氏は共同通信とのインタビューで、「どうすれば(元慰安婦の)心が安らぎ、両国の国民がある程度理解するのか。今、ボールは韓国側にある」として、韓国側が解決案を提示するよう促した。

 同当局者は「韓国政府は日本政府が(慰安婦問題を)解決すべきだ」との立場を堅持してきたとして、日本側が韓国側に解決案を求めた背景を探っている。朴槿恵(パク・クネ)大統領と安倍首相は2日の首脳会談で慰安婦問題の早期妥結を目指し協議を加速させていくことで合意しており、今後の局長級協議に向け双方が神経戦を展開する様相となっている。

 両国は首脳会談まで計9回行われた局長級協議でいわゆる「佐々江案」と追加措置をめぐり、協議を進めてきたとされる。佐々江案は2012年、当時の佐々江賢一郎外務事務次官が提示したとされる案で、▼日本首相の謝罪▼駐韓日本大使と慰安婦被害者との面会▼日本政府予算を使った補償――などが含まれているとされる。

 韓国側は今年3月の7回目の局長級協議後、「両国が相互に自国の立場のみを繰り返し話す段階は越えた。接点を見いだすよう努力している」と明かし、協議に進展があったことを示唆した。朴大統領も8回目協議後の6月、米紙ワシントン・ポストとのインタビューで、「相当な進展があり、交渉は最終段階にある」と明らかにした。


これなのですが、そもそもこれだと日本側が何を提案したとしても、韓国側は後付けでなんとでも拒否する事が出来ます。
手法としては「当り屋」と何らかわりません。


この事から、彼らは人権問題として慰安婦問題を解決したいのではなく、外交カードとして使い続けたいという意図がはっきりと見えます。
もし本当に解決を望むのならば、通常は交渉の際に韓国側から「こうすればいい」と提案するのが筋だからです。


またこの件は韓国側にもう一つ意図があり、アメリカ等から韓国は慰安婦問題に拘り日韓関係を悪化させる原因を作っていると何度か指摘されています。
実際その通りなのですが、韓国としては韓国が拘っているのではなく、問題は日本にあり、今は日本が自主的に解決に動いているだけとしたいのです。


そのため、「韓国が拘っている」という要素がある情報はどれも容認できず、過去にロッキード・マーティンや中谷防衛相の発言を勝手に改変したように、今回も日本のメディアから伝わる「韓国が拘っていると取られる情報」を全て日本政府の陰謀という事にしようとしています。
(参照:韓国はトラブルを解決するために新たなトラブルを作り出す


<韓日首脳会談>日本メディアと韓国政府当局者間の温度差(1)(2)
2015年11月06日14時40分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/037/208037.html
http://japanese.joins.com/article/038/208038.html
「韓日首脳会談後の日本メディアの報道が度を超している。苦労して実現した首脳会談が色あせるのではないかと心配になるほど危険な水準だ」(政府当局者)。

韓日首脳会談(11月2日)が後遺症を生んでいる。日本メディアの報道のためだ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)や外交部など複数の政府の人々は日本政府の関係者の発言を引用した日本メディアの報道が、ほとんど事実と違っていたり歪曲されたりしていたと証言した。ある核心当局者は「日本政府が自国内の世論を意識して意図的にメディアプレーをしている」と批判した。

代表的なのが読売新聞だ。この新聞は3日付で「日本政府が慰安婦問題を(首脳会談から)切り離そうとして韓国政府が難色を示した」としながら「日本側が『(慰安婦問題のために)会談ができないのであればやむを得ない』と伝えると韓国側が折れてきた」と伝えた。政府当局者は「全くつじつまの合わない報道」といった。韓国が譲歩して会談が開かれたのであれば慰安婦議論をしてはならないが、実際には単独首脳会談60分の大部分を慰安婦議論で占めた。安倍晋三首相も帰国後「フランク(frank、率直な)な議論をした」と吐露したほどだ。

日本側は、初めから慰安婦問題を扱うことを前提に首脳会談を要請したという。今年8月の東南アジア諸国連合ASEAN)地域安保フォーラム(ARF)と9月の国連総会などを機に外交接触があるたびに首脳会談を締めたと会談に関与した当局者は伝えた。「しなければそれまで」というふうな態度はただの一度も見せたことがないとも語った。

読売は先月27日には、韓国側が安倍首相がソウルで慰安婦問題に対する立場表明を求めたところ日本側が難色を示したことから「韓国側が昼食会を省き会談時間を30分とするスケジュールを提案した」と報道した。韓国が偏狭にふるまったというニュアンスだ。だが当時政府は会談時間を特定したことがなく、日本側に「十分に時間を設けて行おう」と話したという。実際に単独・拡大首脳会談時間は98分にもなった。

産経新聞は3日「韓国側が(慰安婦問題の)『早期妥結』について安倍首相に『年内』と明言することを求め、朴大統領主催の昼食会などを交換条件に譲歩を迫ってきたが日本が拒んだ。安倍首相は周辺に『昼飯なんかで国益を削るわけにはいかない』と話した」と報道した。これについて外交部当局者は「年内と釘をさそうと提案をしたことはない。当然昼食を条件にしたという事実もない」とした。

ある当局者は昼食の提案を日本側がしてきたと耳打ちした。韓国は1日には韓日中首脳会議に集中して2日に韓日首脳会談を行おうといったが、日本は1日にすべての日程をこなすことを望んでいた。それと共に「昼食をとってくれたら2日の提案を受ける」と提案したということだ。

首脳会談の前日に開かれた韓日外相会談で日本側が米韓両国の各地に設置された慰安婦像の問題などを持ち出したという朝日新聞の報道(3日)も事実ではない。当時会談では少女像(慰安婦像)という単語自体が出てこなかったと政府関係者は伝えた。
(後略)


類似記事

韓日首脳会談の日本メディア報道は歪曲多い=韓国当局者
聯合ニュース 2015/11/04
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/11/04/0400000000AJP20151104002600882.HTML


どれもそうなのですが、記事中で韓国政府が主張しているような、「韓国政府にとって都合の良い態度」を日本側がしなければいけない必然性がどこにもありません。
というよりも、特に最初の読売の事例は、元々安倍内閣の基本方針として「慰安婦問題等の条件無しの会談」「緊急に韓国側と話し合う事は無い」としていたのですから、このような日本のスタンスは当たり前です、韓国側の「言い訳」はどれも単に韓国がこだわっている」という事を否定したいがための答えでしかないとわかります。


先ほども書いたように、韓国側としては韓国側は何もせず、日本側が韓国の望む答えを自主的に提示してくるという状況を作り出したいのです。
そうする事で、対外的に「日韓関係の悪化は韓国が慰安婦問題に拘っているから」という評価を回避したいのです。
勿論無理ですが。


また、最初に書いたように韓国が「あいまい」になっているのには日本のメディアの論調の変化と同じ意図もあります。
要するに以下のような論調です。


慰安婦問題は歴史的真実 謝罪を=元朝日記者の植村隆
朝鮮日報 2015/05/05
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/05/05/2015050500664.html
【ニューヨーク聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦にされた女性の証言を1991年に最初に報じた元朝日新聞記者の植村隆氏が4日(米東部時間)、米国のニューヨーク大で講演し、「慰安婦問題は歴史的な真実」とした上で、慰安婦問題に対し日本政府は謝罪しなければならないと強調した。

 植村氏は、日本の一部では日本が強制的に慰安婦を動員したことはなく、証拠もないという主張があるが、慰安所で強制労役があったのは厳然たる事実で、明らかな人権侵害だと指摘した。
(後略)


誰がどのような意図で「強制」したのか、本音としては彼らは「軍命令による組織的強制への法的な謝罪と賠償」を要求しているわけですが、証拠が無いのでそれを明確にしていると不利になる事を、おそらく韓国側は日本の上記のような人々の耳打ちでようやく気が付いたのです。


そこで韓国は、今までのように「誰が」を明確にするのをやめ、また「解決の方法は日本側が提示しろ」と要求する事で、日本側が自主的に「軍命令による組織的強制への法的な謝罪と賠償」を提示するまで「被害者の望む解決ができていない」という態度を取る事にしたわけです。


勿論、日本側がそんな韓国の都合など汲む必要がまったく無いため、現在以下のようになっています。


安倍首相側近「慰安婦問題、今ボールは韓国側に」
2015年11月06日08時46分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/020/208020.html
日本の安倍晋三首相の側近である萩生田光一官房副長官は5日、共同通信とのインタビューで「どうすれば(元慰安婦の)心が安らぎ、両国の国民がある程度理解するのか」とし、「今ボールは韓国側にある。何をもって誠意と受け取るのか。韓国からの提案を期待している」と話した。


慰安婦問題で韓日の駆け引き本格化 交渉は難航必至
聯合ニュース 2015/11/06
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/11/06/0400000000AJP20151106001800882.HTML
(一部抜粋)
萩生田氏は5日、共同通信とのインタビューで、慰安婦問題をめぐり「今、ボールは韓国側にある」「何をもって誠意と受け取るのか。韓国からの提案を期待している」と述べ、韓国に具体的な解決案を提示するよう促した。

 これに対し、韓国政府の当局者は6日、「日本側が加害者として、被害者らが受け入れ、韓国の国民が納得できる解決案を早期に示すべきだ」と反論。両国がともに、相手側に先に譲歩するよう要求した格好だ。


これは当たり前でしょう。
アメリカの意向などもあり日韓の関係を早急に解決したいのも、慰安婦問題で「得点」が欲しいのも、経済的に助けて欲しいのも、全て韓国側であり日本にとってそれは特に重要な要素ではありません、ですから日本はこれら全てを韓国への外交カードにできるわけですが、韓国はそれに対抗するカードを慰安婦問題しかもっていないのです。


だから何とかして自分達の意図する方向に「あいまい戦術」で誘導しようとしたわけですが、傍から見ていても情報を総合すれば韓国側の意図は一般人でも簡単に見透かすことが出来ます。
結果がこの状態なのです。


日本側がこのような態度を取れば、より一層「韓国が慰安婦問題に拘って関係改善の障害となっている」事が浮き彫りになるのです。
韓国のこの戦術は、元々日本が韓国に「配慮」してあげなければ成り立たないものなのです。


最後に。
韓国側から良心的日本人と呼ばれている日韓友好論者で特にメディアに連なる人々は、韓国側のこの方針に深く関わっている可能性がきわめて高いです。
明確にこの方向への方針転換が始まったのが去年辺りである事や、最近朝鮮日報等の記事内容などを見る限り、その中核は朝日新聞でしょう。
(驚くべき事に、右派系で政府とも近い関係にある朝鮮日報が、去年の夏頃から植村氏や挺対協関連の記事を多数書いているのです。)


また、現在韓国は経済的に危機的状況にあり、実際以下のような状態になっています。
数年以内に経済破綻するのではないかという話も、韓国ではかなり現実感をもって話されています。


「韓国経済における輸出不振が深刻化…10月の対日輸出25.6%減」
2015年11月05日16時20分
[ⓒ 中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/001/208001.html
韓国開発研究院(KDI)は、最近、韓国経済における輸出不振が深刻化していると分析した。

KDIは5日、報告書「経済動向」を出して「世界の経済成長が次第に鈍化していることに伴い、多くの主要輸出品目で不振が深刻化している」と明らかにした。先月の輸出は前年同月比15.8%の減少となった。前月(-8.4%)より減少幅がさらに拡大した。

地域別では通貨安の日本(-25.6%)や欧州連合(EU)(-12.5%)で輸出が大きく後退した。中国(-8.0%)や米国(-11.4%)など多くの地域への輸出が減少したことを受け、前年同月比15.8%減少した。品目別では無線通信機器の輸出だけが大きく増加したほかは多くの品目で不振となった。

半面、内需は民間消費で緩やかに改善しているなど全般的に回復傾向にあることが明らかになった。9月中の小売販売額指数は前年同月比5.5%の増加率を記録して前月(2.0%)より大きく伸びた。また、投資関連指標も運送装備設備投資を中心に最近の増加傾向を維持しているほか、建設投資は建築および土木部門ともに大幅で伸びたことが調査された。



ですから、韓国の国益や国民の幸福を考えるのならば、慰安婦問題にここまで拘る必然性は本来どこにもないのですが、日本に住んでいる日韓友好論者には韓国景気や若い層の失業率がどうなろうと、反日であればいいのでどうでも良いことですし、こうした勢力と仲の良い韓国内の親北からしても、景気が悪くなって国民による政府批判が増えれば、それだけ自分達の勢力に取り込めるので利益になりますから、いくらでも韓国を煽る事ができるのです。


これが韓国の現状です。
ある意味韓国政府は「あいまい戦術」を取る事で、今までのツケを全て日本に被ってもらおうとしているという側面もあります。





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