日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

日韓首脳会談30分、昼食会と共同記者会見無し決定の背景


さて、今回は11月2日に予定されている日韓首脳会談、この開催を巡って日韓の間で相当にモメたようで、結果的に会談時間は30分、昼食会と共同記者会見は予定無しという、とても友好国同士の首脳会談とは思えない内容となった件について、どうしてそうなったのかを主に韓国メディアの記事から読み解いてみます。


こうなった原因の一番の理由は、以前「日韓通貨スワップ終了の原因となった韓国人的考え方」で書いた事と全く同じ反応を韓国側がしてきた事が関係しています。


スワップの件では、実際には韓国側に協定継続をしたい動機があるにも拘らず、「自分達は常に道徳的に正しく優越的な存在なのだから、何も言わなくとも他者から助けられるのが当然」という考えがあったがために、日本に「韓国側から継続の要望があれば協議する」と言われてしまうと、継続する場合「韓国側から日本へスワップを頼み込む」という形になってしまう事になり、それを韓国側が嫌ったという経緯を書きました。


今回の件でも同じで、韓国側には首脳会談をしたい動機が多数あり、日本側には殆ど動機が無いわけですから、実態としては「韓国側が日本に首脳会談を頼み込んできた」という事になるわけですが、彼らには上記のような独特の考え方があるため、「日本側から会談を懇願してきたから受けてやった」という形にしたかったのです。
そうでなければ、彼らの価値観では「自らの正しさ」を実感できないからです。


しかしこの形に持っていく事ができなかったため、会談の内容でモメにモメ、結果的に会談時間30分、昼食会も共同記者会見もなしという形になったわけです。
要するに、彼らの望む会談の形に持っていけないので、「韓国は日本との首脳会談など重要ではないのだ」という事をアピールするため、このような対応にしたわけです。


まずはこちらの記事から


無礼な日本"韓国提案分からない"
ソウル経済(韓国語) 2015/10/27
http://economy.hankooki.com/lpage/politics/201510/e20151027174938142830.htm


朴槿恵(パク・クネ)大統領が去る2013年10月7日(現地時間)、インドネシア、バリで開かれたAPEC首脳会議で隣の席に座った安倍晋三総理が見ているのに正面だけ凝視している。両国の揺らぐ関係を象徴する場面だ。/=聯合ニュースDB

韓国政府が韓日首脳会談開催と日本軍慰安婦問題を連係した既存の立場から一歩退いたのに対し、日本側は誠意を見せるどころか無礼を働いて両国間の神経戦が続いている。来月1日に予定された韓中日首脳会議が一週間前でもまだ難色を示し、軍慰安婦問題をめぐる韓日間接点が見つからず会談日さえ確定できずに揺らいている。

27日、日本政府報道官の菅義偉官房長官は記者会見で「11月2日の韓日首脳会談開催方案を日本側に提案した」という大統領府当局者の前日の発言について「そのような報道をしたことを私は知らない」と言った。確かに大統領府報道官の公式発表ではないが、韓日両国のほぼすべてのメディアが報道した内容について日本の官房長官が「知らない」として事実上無視するような発言をしたことは外交上の欠礼という指摘が出ている。

これについて外交部は報道官定例ブリーフィングで「菅長官が報道内容を知らないといっただけ」として、韓国政府が来月2日に首脳会談を開こうと提案した事実を無視したのではないと解釈した。しかし、政府としては前日、日本を圧迫する次元で先制的に日付まで釘をさして会談を提案した事実を公開したが、球を日本側に渡して対応無策で待つほかない状況に置かれることになった。

特に政府が「意味のある韓日首脳会談のためには慰安婦問題が進展しなければならない」という従来の目標を低くして、安倍総理が問題解決に対する政治的意志を表明する水準を要求したにもかかわらず、日本側が難色を示しており、「やらない方がまし」な首脳会談になる可能性もある。

これと関連してユ・フンス駐日大使は前日、東京で開かれた韓日修交50周年関連シンポジウム演説で"(韓日)首脳会談前に(軍慰安婦問題を)解決できなくても'解決のための糸口を見つけることができる'というメッセージを(韓国)国民に伝える必要がある」と話した。

読売新聞は27日「韓国側は安倍総理がソウルに滞留する間、軍慰安婦問題について立場を表明することを要求したが、日本側が難色を示した」とし、「これに伴い、韓国側は昼食なしで約30分間、首脳会談を開催する日程を提示した」と報道した。


※画像にも韓国側の願望が現れています。
要するに「韓国側は道徳的に劣等な日本と友好する積極的意思が無いが、日本側がそう願っているのだ」ということをアピールしたいわけです。


このニュースをみてピンときたのですが、恐らく2日に日韓首脳会談を行うという話自体は、この時点で日本側にも伝わっています。
ではなぜ官房長官は「知らない」という態度を取ったのでしょうか。


それは先ほど書いた「韓国側の望む理想的な形」に関係しています。
ヒントはこの記事の「軍慰安婦問題をめぐる韓日間接点が見つからず会談日さえ確定できずに揺らいている」と「安倍総理が問題解決に対する政治的意志を表明する水準を要求したにもかかわらず」という部分にあります。


要するに韓国側としては、「首脳会談を懇願する日本側は、今までの態度を反省し慰安婦問題での何らかの謝罪を手土産として持ってきた」という事にしたかったのです。
そうする事で、韓国人的価値観では日本の劣等性が証明でき、相対的に自身の優越性が実感できるからです。


具体的には、韓国側は2日の会談を「日本側から慰安婦問題で譲歩してきた」という既成事実化とセットで行おうとした可能性が極めて高いのです。
だから官房長官は既成事実化を避ける為に「そんな事は知らない」との回答をしたのではないでしょうか。


この事は今月始めの以下の記事からも読み取れます。


韓国の尹炳世外相、慰安婦で譲歩要求 日韓首脳会談前に神経戦
産経新聞/共同通信 2015.10.4
http://www.sankei.com/world/news/151004/wor1510040042-n1.html
韓国の尹炳世外相は4日、韓国KBSテレビで、今月末にも開かれる見通しの日中韓首脳会談に合わせた日韓2国間首脳会談へ向け、慰安婦問題で進展があれば「はるかによい条件が整う」と述べ、同問題で安倍晋三政権が譲歩すべきとの考えを示した。

 日韓会談の開催自体は確実視されているが、会談で日本から慰安婦問題での譲歩を得て「成果」を国内に示したい韓国と、無条件の会談開催を求める日本との間で神経戦が続いている。

 9月末に米ニューヨークで開かれた日韓外相会談でも尹氏は慰安婦問題を取り上げながら、日韓首脳会談の開催には明確な言及を避けている。

 尹氏はKBSで、慰安婦問題の進展は日韓会談開催の「前提条件とは言わない」とも述べた。(共同)


以前から書いているように、慰安婦問題における韓国側の要求というのは、日本で韓国側に立つ人達の「強制があったか無かったかは問題ではない」という主張とは違い、「軍命令による組織的強制」とそれに対する「法的な謝罪と賠償」です、記事にある譲歩要求というのも基本的にはこの形にもって行くためのものです。


しかし当たり前の事ですが、軍命令による組織的強制の事実など存在していないのですから、日本側が韓国側の提案を受け入れることなどありません。
日本側が一貫して「条約で解決済み」と主張しているのもこうした背景が関係しています。
当然話がかみ合う訳がありません、しかし韓国側は首脳会談をするにあたり日本側にこの問題の譲歩を要求し続けていたのです。


こうした韓国側の態度と言うのは、以下の記事からもよく解ります。


韓日首脳会談、歴史棚上げで開催に糸口
朝鮮日報 2015/10/26
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/26/2015102600719.html
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/26/2015102600719_2.html
北朝鮮の核・自衛隊問題で会う朴大統領と安倍首相
4年近く行き詰まり、慰安婦問題解決は依然遠く
大統領府「結論出れば週明けにも日程発表」
NHK慰安婦など議題調整」
(一部抜粋)
国策研究所関係者も「韓日首脳会談が今回開催されても、『完全な関係改善』につながるかどうかはしばらく見守らなければ分からない。朴大統領は何よりも慰安婦問題に対する日本側の誠意ある姿勢を望んでいるが、安倍首相が朴大統領の期待に応えるような解決策を提示する可能性は低いからだ」と言った。だが、一部には、韓日が▲日本の首相の直接謝罪 ▲駐韓日本大使から謝罪の手紙を渡す ▲日本政府予算による元慰安婦への賠償などが含まれた、いわゆる「佐々江案」を参考に、折衷案を探っているという見方もある。佐々江案とは、2012年3月に当時の佐々江賢一郎外務事務次官訪韓時に提示した慰安婦問題の解決案のことだ。


とにかく韓国側は、「日本側から歩み寄って来た」「首脳会談をしたいのは日本側」ということにしたいのです。


また以下の記事では韓国側の望みが更にはっきりと解ります。


青瓦台「来月2日の韓日首脳会談提案…日本の返答待ち」(1)(2)
2015年10月27日08時26分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/514/207514.html
http://japanese.joins.com/article/515/207515.html
(前略)
こうした発表があるまで韓日中3カ国間には高度な「外交戦争」が繰り広げられた。

神経戦を始めたのは日本だった。日本メディアは最近、相次いで日本政府の立場を詳しく伝えた。「韓国政府は日韓首脳会談について慰安婦問題で安倍首相が反省、謝罪する姿勢をしっかりと示すよう求め、初の首脳会談に暗雲が垂れこめている」(26日、産経新聞)、「韓国は日韓首脳会談の日程を正式に提案しない。朴槿恵大統領が慰安婦問題にこだわっているようだ。議長国としてふさわしくない」(23日、共同通信)などだ。「日本は首脳会談に積極的だが、韓国が固執している」という趣旨で受け止められる記事だった。

報道に接した外交部の当局者は不快感を表した。「日本政府は我々に首脳会談の議題や具体的な訪韓日程など事前準備に必要な事項についていかなる返答もせず、メディアを通じて自分たちの立場を有利に流している」という反応だった。

ある当局者は「韓日首脳会談を必ずしなければいけないのは事実。日本側が『慰安婦被害問題を以前より進展した方向で解決する契機にする』という意思を確実にするべきだが、こうした方法を使っている」と話した。
(中略)
韓国はさらに一歩踏み出して日本に圧力を加えた。青瓦台は韓日首脳会談日程を発表し、「提案」という表現を使った。外交消息筋は「普通は『首脳会談をいつどこでする』と発表するが、『いつ開こうと提案したがまだ回答がない』という形で発表するのは見たことがない」と話した。

これに関し政府関係者は「我々は慰安婦問題に真の解決意志を見せるべきだという立場を明確にし、『首脳会談開催のボール』を日本側に渡した。しかし日本側は『韓国が慰安婦問題を前提条件にして首脳会談を難しくしている』という形でボールが我々にあるように主張しているため、事実関係を明確にするべきではないだろうか」と述べた。

高麗大の金聖翰(キム・ソンハン)教授(国際大学院)は「日本が『韓国のために首脳会談ができない』という噂をワシントンで広め、朴大統領が今回の訪米で首脳会談をすると宣言した」とし「日本側が同じ態度を見せ続けるため、『実際、日本が十分に準備できていない』というメッセージを送った」と話した。また「韓国がこのように先手を打てば、日本もよい形で受け入れるよう内部で悩まなければいけない。3者首脳会議であるため駆け引きがよりいっそう激しい」と話した。


今まで書いてきたように、実際問題として慰安婦問題での日本側の譲歩を首脳会談の条件とし続けてきたのは韓国です。
しかしそれだと「韓国側が日本に首脳会談を頼み込んでいるにも拘らず、韓国がゴネて会談が出来ない」という形になってしまうので、それを認める事はできません。
また韓国人的価値観では、この形だと日本側の劣等性と韓国側の優越性の証明が出来ないのも問題なのです。


ですから、韓国側としては「日本側が自主的に慰安婦問題で韓国の望む形の譲歩をし、首脳会談を韓国へ懇願してきた、だから韓国側は受けてやった」としたかったのです。
この形ならば韓国人は優越性を実感できます。


また恐らく、上記引用で言及されている記事を書いた産経や共同の記者は、韓国人独特の価値観である「他者の劣等性を担保として自己の優越性を確立させる」など知らないでしょう。
だからこそ「見たまま」を記事にしたのでしょうが、それが計らずも韓国人の正しさの琴線に触れたということも見えてきます。


こうして11日2日の日韓首脳会談は、韓国が望んだ「日本が首脳会談を懇願し、反省した態度を取ったので受けてやった」という形にできなかったため、このままでは日本の劣等性を元に自己の優越性を実感できない韓国は、本来どうしても首脳会談をしたいにも関わらず、「日本との会談などどうでもいいのだ」という事をアピールするために、会談時間30分、昼食会も共同記者会見もなしという形になったわけです。


これが韓国メディアの記事から見えてくる来月開催される日韓首脳会談決定の顛末です。
ちなみに韓国は、TPPへの加入の日本からの口添え、日韓通貨スワップ再開、対米および対中での韓国の擁護、経済支援などその他諸々様々な「お願い」をしたかったようですが。


今回の件は、韓国人独特の価値観を知っているかいないかで、見え方がかなり変わってくる典型的な事例でしょう。



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