日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

【ニコ生】朴槿令氏インタビューに対する韓国側の反応とその背景


さて、今回は先日ニコニコ生放送の番組枠で行われた朴槿令氏へのインタビュー内容、それに対する韓国側の反応と、その背景にはどんな事柄があるのかについて書いていきます。


この件に関してなのですが、最初にいくつか事前知識として知っておいて欲しい事を書きます。
まず今回の記事で韓国の右派(保守)と左派(革新)について言及しますが、これはあくまで番組中でも朴槿令氏がそう表現していた事、また別の呼び方をするとかえって混乱するだけなのでそう呼ぶだけであり、厳密には思想の左右でカテゴライズすると実態としての姿を見誤ります。


では韓国の右派左派の実態はどんなものかといえば、どちらも全体としては民族主義の傾向にあり、そのうえで右派は韓国単体の民族主義でありどちらかというと国粋主義に近く、左派は北朝鮮も含めた朝鮮半島に住む民族全体を含めた民族主義であり、一般的に双方は北朝鮮の扱いの違いが対立軸となっている構図です。


そのうえで、朴槿令氏は父親の朴正煕元大統領の思想に非常に近い「反共+内に反日、外に親日」という方針の下で「(便宜上の)右派として」日韓関係を考えている人物であり、日本人が一般的に想定する親日とは異なります。


カテゴリー分けとしてはいわゆる「用日論」に近く、敵としての北朝鮮や同盟国としての米国の立場を考えて、「日本の態度は気に入らないが国益を考えてうまく日本を利用していこう」という事です。
そしてこの考えは90年代中ごろまでの一般的な韓国の右派(保守)の思想に近く、日本統治時代に官僚や軍人、あるいは政治家であり、そのまま韓国建国後にも同じような立場にスライドしていった人々の思想を色濃く受け継いでおり、現在の韓国では「古い考えの消え行く人々」との認識が大勢を占めています。


またこの用日論の背景には、韓国人独特の「主観的正しさ」が関係しており、彼らの社会では一般的に主観的正しさに基き自らの意見を押し通すか、或いは「嫌々我慢して受け入れるか」その2つの選択肢しかなく、用日論とは後者寄りの考え方とも表現できるわけです。


この考え方そのものは、国益優先であり実際のところ国のスタンスとしてはそれほどおかしくもないのですが、韓国の場合にはその独特の「主観的正しさ」という価値観と先鋭化した民族主義が存在しているために、日本人一般の価値観とは相容れず必ず問題が起きるわけです。


少々長くなってしまいましたが、上記を踏まえたうえで今回重要なのは、朴槿令氏のスタンスに対してどんな人々がどんなスタンスから反発しているのかと、日本のメディアなどで日韓友好を訴える人々が「どちら側」と協力関係にあるのかです。
まずは保守系代表格の朝鮮日報の記事から。


朴槿令氏「「天皇はすでに謝罪、靖国参拝反対は内政干渉
朝鮮日報 2015/08/06
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/06/2015080600592.html
先月末に続き「ニコ動」とのインタビューで親日発言

朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の実妹、朴槿令(パク・クンリョン)氏が、先月末に続き、日本のインターネット動画配信サイト「ニコニコ動画」とのインタビューで「韓国は元慰安婦の女性たちをほったらかしにして、ただ日本をたたくニュースばかり流しており、申し訳なく思っている」と語った。ニコニコ動画は日本のいわゆる「ネット右翼」が多く視聴する動画配信サイトで、過去には極右派の小説家、百田直樹氏の発言を集中的に取り上げたこともある。

 ニコニコ動画が今月4日に公開した朴槿令氏とのインタビューは、1時間57分にわたって行われた。日本人の司会者が日本語で尋ね、画面には登場しないスタッフがその質問を同時通訳し、槿令氏が韓国語で答えるという形になっている。

 槿令氏はインタビューで「政界で出てくる話ばかりが主にメディアで取り上げられるため、あのようなニュースばかりになる」とし「大部分の韓国国民は私と同じ考えを持っているということを理解し、韓国をもっと好きになってくれることを望んでいる」と述べた。

 また、(韓国では「日王」と呼ぶ)天皇を「天皇陛下」と呼び「天皇陛下はすでに謝罪されているのに、また謝罪しろというのは、国として恥ずかしいことだ」と主張した。A級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社に日本の首相が参拝することに韓国人が反発することも「内政干渉」だとし「子孫が親や先祖を崇拝しないということがどうしてできようか。まさかとは思うが、安倍(晋三)首相が『これからまた戦争を起こす』との考えを持って靖国神社を参拝していると思っているのではないか。そんな人たちはおかしいと思う」と語った。

 さらに槿令氏は「私もヨン様ペ・ヨンジュン)のファンだが、日本のファンたちがヨン様に熱狂する(ケースの)ように、韓国が日本で一方的に恩恵を被るのではなく、韓国にも日本の歌手たちが来て、韓国のファンたちの見ている前でコンサートを行い、そういった形で文化交流をしていくことを切に願っている」と述べた。

 槿令氏はこの日、インタビューの最中、韓日関係について話す中で、文殊菩薩と東洋の精神に言及し「私の父(朴正煕〈パク・チョンヒ〉元大統領)はいつも『時代的な使命』について話していたが、それはまさに宗教や国家、民族を超えたものだ」と述べたほか、昭和天皇今上天皇を混同するなど、事実関係が正確でない発言もした。



この記事からは朴槿令氏に対する不満がある事も読み取れますが、はっきりとは批判しておらず煮え切らないものが見て取れます。
これは要するに彼女の考えが現在の韓国の保守系にとっても「古い考え」になりつつある事を意味しており、インタビュー中で彼女は「殆どの韓国人は自分と同じ考えだ」と答えていましたが、実際には彼女の考えに全面的に賛同する人は「右」でもそれほど多くない事を意味しています。


また朴槿令氏のような考えに基く人々は、冷戦構造における対北朝鮮や対中国との観点から、例えば産経新聞黒田勝弘氏や東京基督教大学西岡力氏などとほぼ同じスタンスで日韓の協力関係を訴えているのですが、正直こんな事は書きたくは無いのですが、現在の韓国の「右」の主流はより韓国的な「主観的正しさ」を原理主義的に訴えるようになってきていることから、既に彼らの考えは時代に取り残されつつあります。


そして現在の韓国の「右=反北朝鮮」の主流の考えでは、対中国のスタンスも黒田氏や西岡氏らの考えとは大きく変ってきています。
以下の記事を読むとそれが解りやすいでしょう。


【寄稿】朴大統領は中国の抗日戦勝式典に出席するべき
朝鮮日報 2015/08/02
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/01/2015080100478.html
中国の習近平国家主席が、9月3日の戦勝70周年記念式に韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を招待した。朴大統領がこの記念式に出席すれば、今まさに回復の兆しを見せつつある日本との関係が再び冷え込みかねない。米国からの気まずい視線も意識しなければならない。行かなければ中国は失望する。行くべきか行かざるべきか、議論が熱を帯びるこの問題は、徹底して国益の観点から検討するしかない。

 北京の閲兵式は、日本という特定の国を超え、全世界のファシスト勢力を相手にした勝利を記念する行事だ。第2次大戦当時、中国は米国と共に連合国の一員であり、韓国の臨時政府も、小さいながら一助となった。従って、韓国がこの戦勝記念式に出席しない理由はない。

 朴大統領の訪中が韓日関係に冷水を浴びせる、という見方も性急だ。安倍首相訪中の可能性があるからだ。安倍首相の「外交策士」、谷内正太郎国家安全保障局長は、今月16日から18日にかけて中国を訪れた。今ごろ日本は、熱心にそろばんをはじいていることだろう。行事の名分に「抗日」が含まれている点が負担ではあるが、逆に、記念式出席を通して「平和を愛する日本」を装うことができる。また、中国は客人をもてなす伝統にのっとって日本を遇するはずで、これは安倍首相の外交的な立ち位置を強化するだろう。

 朴大統領の出席は、習主席の体面を立ててやることができる。北京の閲兵式に出席する外国首脳のリストは、今年5月にモスクワで開かれた戦勝記念式のものと大きくは違わないだろう。出席する首脳の数がもう少し増えることもあり得るが、新鮮な重量級の首脳は特にいないだろう。必要とされる時に行ってやるのが、真の友だ。中国の「親・誠・恵・容・善隣外交」の成功例たる韓国の指導者が行けば、主席にとっては「千軍万馬」となるだろう。これは、韓中関係の懸案となっている韓中FTA自由貿易協定)、一帯一路、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)、ユーラシア・イニシアチブなどを、この先中国が一層友好的に扱うよう仕向ける上で効果があるだろう。


つまり用日論を訴える人々の中でもその解釈や認識にはかなりの隔たりがあるわけです。
ですから朴槿令氏の考えが現在の韓国における一般的な保守の考え方だとか、ましてや普通の韓国人は彼女と同じ考え方だとすると確実に判断を見誤ります。


そしてインタビュー中でも彼女が言及していた「親北派」はどんな反応を見せているのか、それは以下の記事を見ると解ります。


朴槿令氏発言に挺対協「歴史を学んでいない人の発言」
朝鮮日報 2015/08/06
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/06/2015080600595.html
朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の実妹、朴槿令(パク・クンリョン)氏による親日的な発言が論議を呼んでいる中、韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)が主催する集会でも、これを批判する声が相次いだ。

 挺対協は5日午後、ソウル市鍾路区の在韓日本大使館前で、旧日本軍の慰安婦問題解決を願う1190回目の定期水曜集会を開催した。

 挺対協の尹美香(ユン・ミヒャン)常任代表は、歴史問題についてこれ以上日本に謝罪を要求すべきではないという槿令氏の発言について「あきれてものが言えない」と一蹴した。

 その上で尹代表は「歴史をきちんと学んでいない人の発言にすぎない。植民地時代の考え方から抜け出せない一部の人たちの誤った視点をそのまま反映している」と批判した。

 続いて、韓国政府が元慰安婦たちに対し十分に面倒を見るべきだという発言についても「政府が制度的にどれだけ、(元慰安婦の)おばあさんたちに配慮しているのかも知らない。おばあさんたちは生活費や住居費など、十分な支援を受けている。問題は日本政府だ」と付け加えた。

 集会に参加した市民団体の理事長パク・ヘスクさんも「謝罪とは、謝罪を受けるべき当事者側が認めて初めて成立するものだ。歴史の歪曲(わいきょく)を続け、被害に遭った当事者たちが補償を受けられない状況にあるというのに、どこが謝罪だというのか」と主張した。



以前にも書きましたが、挺対協は慰安婦問題を扱う団体であると同時に韓国の典型的な親北左派勢力でもあります。
ですから朴槿令氏が今回のインタビューを受けていなくとも、スタンスとしては彼女とは元々対立関係にある勢力ではあるのですが、それを踏まえてもこうした親北左派勢力からしてみると「用日論」そのものが受け入れられない事なのだと言う事が解ります。


そして重要なのは、現在日本のメディア等で日韓友好を訴える人々、或いは民間団体間の協力関係にある人々の大半は、この親北左派勢力と密接な関係にあり、例えば以下のような活動を日本において合同で行っています。


東京で靖国神社題材の絵画展 韓国人画家「歴史の直視を」
聯合ニュース 2015/07/26
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/07/26/0400000000AJP20150726000900882.HTML



【東京聯合ニュース】韓国人画家のホン・ソンダム氏が靖国神社をモチーフに描いた凄惨(せいさん)な絵の展示会が東京都練馬区の小劇場「ブレヒトの芝居小屋」で開かれている。

会場にはホン氏が約10年かけて描いてきた作品28点が展示されている。

 「靖国と刀18」は拝殿の下で、旭日旗が先端にかかげられた刀や銃を持ったがい骨が列をつくる。「ホウセンカ5」は刀を持った男性と戦争被害者とみられる女性の裸体が精肉店の肉のように吊るされている。

 凄惨で衝撃的なこれらの作品には、歴史や戦争の残酷さを直視してほしいという画家のメッセージがこめられている。

 靖国神社には日本の植民地時代に軍人として戦場に送られ戦死した朝鮮半島出身者と日本のA級戦犯らが合祀(ごうし)されており、韓国人遺族らは合祀に強く反発している。

 嫌韓の風潮が高まり、在日コリアンに対するヘイトスピーチ(憎悪表現)が行われる中、展示会の開催は容易ではなかったが、ホン氏の思いに賛同した日本の市民団体の協力などで、開催にこぎつけた。

 展示会は来月2日まで。開催中は、旧日本軍兵士となり、戦後の軍事裁判でBC級戦犯として処罰された李鶴来(イ・ハクレ)さんの講演会など、さまざまな行事が行われる。


韓日知識人が共同声明「日本政府は過去の過ち認め反省を」
聯合ニュース 2015/07/29
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/07/29/0400000000AJP20150729001200882.HTML
【ソウル聯合ニュース】韓国と日本の知識人らが29日、ソウルの韓国プレスセンターで記者会見し、日本に過去の過ちを認めるよう求める共同声明を発表した。

 声明には詩人の高銀(コ・ウン)氏、ソウル大の白楽晴(ペク・ナクチョン)名誉教授、和田春樹東京大名誉教授、荒井信一駿河台大名誉教授らのほか、欧米の歴史学者も参加している。

 知識人らは、安倍晋三政権が「歴史修正主義」や「積極的平和主義」を掲げ、過去には目をつぶり未来に向かおうという論理を展開していると指摘。「歴史的真実としての過去は隠蔽(いんぺい)できない。これを認めて真に反省するときに過去から自由になれる」と強調した。

 両国の知識人は日本による韓国併合から100年を迎えた2010年にも、韓国併合の違法性を主張する共同声明を発表している。




これ等情報を総合するとある事が解ります。
日本のメディアなどの公的な場で日韓友好を訴える人々の大半は、韓国に批判的或いは懐疑的なスタンスの日本人に対しては、朴槿令氏のような旧来の右(保守)のスタンスを特定の側面だけを抽出して紹介し、「本当の韓国は日本に融和的なのだ」と訴え、実態の活動としては上記のように彼女の持論とは真っ向から対立する親北左派の活動に積極的に関与しているわけです。


そもそも現状、先ほども書いたように韓国の右派(保守系)は年々原理主義的になってきているため、黒田氏や西岡氏のような一部の人々を除いてその殆どが韓国からは離れて行っており、現在日韓の間で公的な交流活動を続ける日本人はその大部分が上記のように親北左派系との協力関係にある人々ばかりになってきています。


元々が、冷戦構造におけるイデオロギー上の対立という構図からできた日韓の協力関係だったので、それが崩れれば新たな価値観の対立という対立軸が発生し、それのみに依存してきた旧来の「反共右派」同士の関係が維持できなくなるのは当たり前であり、逆に「(日本人から見た)反日」という構図で繋がる人々はむしろ韓国に入り込みやすくなった、その結果がこの現在の姿なのです。
イデオロギー上の左右の対立という構図は既に終っているのです。


最後に。
インタビュー中で朴槿令氏が「タイズ・ザット・バインド」を見ての感想を求められた時、彼女は少し口ごもって無難な感想を述べたのですが、これにはこれで事情があります。
私もあのドキュメントを見て感じたのですが、恐らくですがあのドキュメントにはどのレベルまでかかわっているのかは不明とはいえ、韓国内の親北左派が何かしらの形でかかわっています。


全体として、韓国の反日の構図の中での親北系の役割や態度にまるでスポットが当たっておらず、過激な反日デモとして取り上げられたのは、あからさまに李承晩や朴正煕の写真を掲げる団体のみ、挙句の果てには、日本側で取材協力をする人々の大半が韓国の親北左派と協力関係にある人達ばかりだったからです。


ドキュメント製作会社がどのような人脈で韓国の取材をしたのかがわからないとなんとも言えないところがあるとはいえ、あのような内容では彼女が口ごもっても当たり前なのです。
インタビュー中でしきりに韓国の親北派について言及しようとしていたのも、恐らくこれが関わっているでしょう。


そして現在韓国における旧来の「右=反共右派」の人々が最も危惧しているのは、この親北左派は韓国の教育界に非常に強い影響力を持っており、若い世代ほど親北の傾向にあるため、このままでは国が北朝鮮に乗っ取られてしまうと、かなり強い危機感を持っています。


朴槿令氏は典型的な用日論者であり、彼女のようなスタンスを今までのように受け入れてしまうと、現在の情勢ではより一層日本の問題が増えてしまうのは明らかであり、最も警戒すべき人物ではあるのですが、正直に書いてしまうと彼女のような人物に、明らかに親北派が関与しているドキュメントを見せて肯定的なコメントを求めるのはいくらなんでも酷すぎます。


親日派財産没収法を作ったのは韓国の親北派であり、その主目的は当初朴正煕の一族の追い落としにありました。
つまり彼女もまかり間違えば「現代の魔女狩り」の標的にされていたわけです。
自分を社会的に抹殺しようとした相手の関与したドキュメントを評価しろなんて、韓国人でなくても普通は良い感情を持たないのが当たり前です。