日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

【朝日誤報問題・従軍慰安婦問題】日本と韓国では報じられ方が全く違う件


さて、今回は朝日誤報問題と従軍慰安婦問題についてとなるのですが、問題そのものに触れるのではなく、日本と韓国でのメディアの報じ方が全く違う内容である事と、それに関連した日本のメディア等の態度の問題となります。
まずはこの問題を取り上げた韓国の三大紙、朝鮮日報中央日報東亜日報の記事を


東亜日報
[特派員コラム/パク・ヒョンジュン] 証拠がなければ日本人の北への拉致もないのか
東亜日報 2014-09-01 03:00:00
http://news.donga.com/Column/3/all/20140901/66131614/1
(前略)
彼らの核心の主張は「日本政府や軍が慰安婦を強制的に連行しなかった」ということだ。極右指向の安倍晋三総理や橋下徹大阪市長慰安婦が受けた苦痛に慰労の意を伝えながらも最後の発言は常に「政府や軍が強制連行した証拠はない」で終わる。次の発言を推定すれば「民間会社が慰安婦を募集し、慰安婦は自らの選択により身体を売った」程度であろう。

だが、慰安所の設置および管理、慰安婦移送に日本軍が関与した証拠には口を閉じる。慰安婦が甘言や強圧などによって本人の意思に反して募集された事実にも言及しない。ただ‘強制動員したことを見せる証拠(文書)がない’という事実一つだけに執着する。

これについて吉見義明、中央大教授は2012年8月の東亜日報とのインタビューで「北朝鮮政府文書に‘日本人を拉致しなさい’と書かれていなければ、北朝鮮の‘日本人拉致問題’はないと主張してもかまわないのか」と皮肉った。

最近、大阪に住む日本人読者から電話一本受けた。韓国政府が参考にする大きな課題があるので紹介する。「韓国政府が来年、慰安婦白書を作って発表することにしたのは本当によいことです。日本の資料はあまりにも多いけれど韓国側の資料があまりありません。日本が過去を直視できるように韓国も多くの資料を発掘して下さい。」


続いて中央日報


慰安婦問題めぐり…日本、新聞各紙の戦争
2014年08月07日09時26分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/646/188646.html
日本の朝日新聞が5・6日の2回にかけて掲載した慰安婦関連の特集記事について日本の右派言論が波状攻勢を繰り広げた。「慰安婦問題の本質を直視してこそ未来がある」という記事の趣旨はものともせず、一部の記事の虚偽を認めたことに対して待っていたかのように「慰安婦強制動員は虚構だった」といった主張が続いた。これら右翼メディアは韓日関係が悪化した全責任は朝日新聞慰安婦記事にあるように追い込んでいる。保守政治権も関連記事を国会で検証する必要があるとして火に油を注いでいる。

保守指向の産経と読売新聞が、先頭に立って「朝日たたき」に出た。産経は6日付1面に「朝日の慰安婦報道に間違い」という記事をはじめ、2・3・8面に集中的に批判記事を載せた。特に社説では「慰安婦強制連行の根幹が崩れた」と主張した。「済州島(チェジュド)から205人の若い朝鮮人女性を狩猟するように強制的に連行していった」という日本人の吉田清治(故人)の主張を裏付けるだけの証言を新しく探せなかった朝日が記事を取り消したことに対するものだ。産経は引き続き、慰安婦動員の強制性を認めた1993年河野談話を「根拠なく作文された」と釘を刺した。産経はまた「自国(日本)の名誉を守ろうとする一部論調が韓日両国の民族主義を刺激して問題を悪化させている」という朝日の指摘には「責任を転嫁している」と追い立てた。
(後略)


最後に朝鮮日報


どこへ行く安倍政権 慰安婦の強制連行否定する動き活発
朝鮮日報 2014/10/22 11:21
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/10/22/2014102201490.html
【東京聯合ニュース】日本の安倍晋三政権が旧日本軍慰安婦の強制連行を歴史から消し去ろうとしている。

 安倍政権は6月、慰安婦問題をめぐる1993年の河野洋平官房長官談話に対する有識者チームの検証結果を通じ、強制連行の証拠はないとあらためて主張した。8月に朝日新聞が、韓国から暴力を使って女性を連れ出し慰安婦にしたとする吉田清治氏(故人)の証言を取り上げた過去の関連記事を取り消すと、強制連行を否定する動きは活発になった。
(中略)
安倍政権は朝日新聞誤報問題を、慰安婦の強制連行はなかったという主張につなげようとしている。河野談話作成当時に日本政府が聞き取りした韓国人元慰安婦の強制連行に関する証言は、裏付け調査がなかったと主張するが、談話作成後に存在が確認された外国の法廷文書でも強制連行が分かっている。それでも安倍政権が強制連行を否定するのは、朝鮮半島以外での強制連行を日本メディアがほとんど報道しない中、この問題を韓日関係におけるあつれきの一つとして矮小(わいしょう)化する意図と受け止められる。

 強制連行の否定にとどまらず、慰安婦制度の強制性までも否定する動きがある。安倍首相は3日、「日本が国ぐるみで性奴隷にしたと、いわれなき中傷が世界で行われている」と発言した。

 日本の動きに国際社会が同調する可能性は低いとみられるが、安倍首相にとっては来秋の自民党総裁選をにらみ保守派の支持を固める思惑がありそうだ。




要するに韓国では「軍命令による強制」が主題であることが解ります。
これは以前から書いていますが、韓国では軍による強制と言う問題がいわゆる従軍慰安婦問題の本質であり、韓国政府が度々日本政府に要求する「歴史問題」とは、まさにこれを日本が認めろとしている主張なわけです。
つまり韓国政府の主張とは、「関係改善をしたくば従軍慰安婦を軍が強制連行で集めたと認めろ」というものです。


そのうえで、次に朝日を含む日本のメディアの記事を見てください。
まずは朝日新聞


慰安婦問題の本質 直視を
朝日新聞 2014年8月5日05時00分
http://www.asahi.com/articles/ASG7X6753G7XUTIL053.html
(前略)
 戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

 90年代、ボスニア紛争での民兵による強姦(ごうかん)事件に国際社会の注目が集まりました。戦時下での女性に対する性暴力をどう考えるかということは、今では国際的に女性の人権問題という文脈でとらえられています。慰安婦問題はこうした今日的なテーマにもつながるのです。

 「過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております」
(後略)


続いて赤旗


歴史を偽造するものは誰か
――「河野談話」否定論と日本軍「慰安婦」問題の核心
しんぶん赤旗 2014年9月27日
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2014/09/post-596.html
(前略)
第一に、「河野談話」否定派は、「慰安所」における強制使役=性奴隷状態とされたという事実を無視して、「慰安婦」とされた過程で「強制連行」があったかなかったかだけに、問題を矮小化しています。こうした攻撃の手口そのものが、日本軍「慰安婦」問題の本質をとらえない、一面的なものであることは、すでに「志位見解」が次のようにきびしく批判しています。

 「女性たちがどんな形で来たにせよ、それがかりに本人の意思で来たにせよ、強制で連れて来られたにせよ、一たび日本軍『慰安所』に入れば監禁拘束され強制使役の下におかれた――自由のない生活を強いられ、強制的に兵士の性の相手をさせられた――性奴隷状態とされたという事実は、多数の被害者の証言とともに、旧日本軍の公文書などに照らしても動かすことができない事実です。それは、『河野談話』が、『慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった』と認めている通りのものでした。この事実に対しては、『河野談話』見直し派は、口を閉ざし、語ろうとしません。しかし、この事実こそ、『軍性奴隷制』として世界からきびしく批判されている、日本軍『慰安婦』制度の最大の問題であることを、まず強調しなくてはなりません」
(後略)



続いて神奈川新聞


【社説】慰安婦報道撤回 本質は強制連行にない
神奈川新聞 2014.08.10 10:30:00
http://www.kanaloco.jp/article/76014/cms_id/95741
(前略)
しかし、国際社会から非難されているのは強制連行があったからではない。厳しい視線が向けられているのは、人集めの際の強制性のいかんに焦点を置くことで問題の本質から目を背け、歴史の責任を矮小(わいしょう)化しようとする態度にである。

 問題の本質は、女性たちが戦地で日本軍将兵に性的行為を強要されたことにある。慰安をしたのではなく性暴力を受けた。兵士の性病まん延防止と性欲処理の道具にされた。その制度づくりから管理運営に軍が関与していた。それは日本の植民地支配、侵略戦争という大きな枠組みの中で行われたものであった。

 歴史認識の問題が突き付けるのは、この国が過去と向き合ってこなかった69年という歳月の重みだ。国家として真(しん)摯(し)な謝罪と反省の機会をついぞ持たず、歴史修正主義を唱える政治家が主流になるに至った。

 朝日が撤回した記事について、自民党石破茂幹事長は「国民も非常に苦しみ、国際問題にもなった」と、その責任に言及し、国会での検証さえ示唆した。過去の国家犯罪の実態を明らかにし、被害国と向き合う政治の責任を放棄し続ける自らを省みることなく、である。国際社会の非難と軽蔑を招く倒錯は二重になされようとしている。



韓国メディアと日本のメディアで、論調が大きく異なることが解るでしょう。
朝鮮日報と神奈川新聞の記事の対比が最も解りやすいですが、要するに韓国メディアでは「問題の本質は強制連行だ」としており、日本のメディアでは「強制連行があったかなかったかは問題ではない、女性が本人の意思とは無関係に従事させられた事が問題の本質だ」としているわけです。


さて、ここからが本題です。
まず韓国政府や韓国のメディアが「強制連行」に拘る理由はなんでしょうか。
その答えはいたって単純です。
もし、日本のメディアと同じ論調で「強制連行が問題ではない」としてしまうと、「では韓国軍の従軍慰安婦問題はどうなるのだ?」となってしまうからです。


韓国政府としてはそれではまずいのです。
現状、日本と韓国は非常に関係が悪化しているわけですが、その中で韓国政府に残された唯一の政治的外交カードが「従軍慰安婦問題」なのです。


もし、日本のメディアと同じ論調になってしまうと、問題が薄まる上に国際的には韓国軍の慰安婦問題にも大きくスポットが当たってしまいます。
それでは韓国は事実上「唯一の外交カード」すら失い国際政治の場で圧倒的に不利になってしまうわけです。


だからこそ、「韓国軍の慰安婦問題」との差別化を図るために、「強制連行の問題」は絶対に失ってはいけないと、そういう事です。
韓国が強制連行の問題にこだわる事こそ、これが人権問題では無く極めて政治的な問題であるという事を非常によくあらわしていると、そんなわけです。


そして更に問題なのが日本のメディアやそれに連なる人々です。
朝日をはじめ、こういったメディアは韓国のメディアや政府と非常に密接な関係を持ち、一種の共闘関係にあります。
つい最近も、朝日新聞の社長がこんな会合に出席しコメントしていることからもそれは明らかです。


「韓日関係、自尊心より尊敬を前面に出すべき」
2014年10月20日08時44分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/543/191543.html
「韓国と日本は自尊心よりお互いに対する尊敬を前面に出して接近しなければいけない」。

朝日新聞木村伊量社長は16日、韓国言論振興財団や韓日未来フォーラムが東京で主催した韓日言論人フォーラムに出席した韓国の記者らに対し、「両国間の葛藤が深まっていて心配」とし、このように述べた。

慰安婦強制動員を批判するなど韓国関連イシューで進歩的な立場を守ってきた朝日新聞は今年8月、慰安婦強制連行を証言した吉田清治氏に関する過去の報道を「誤報」と認め、日本保守勢力から強い批判を受けている。

これに関し、木村社長は「日本国内で『韓国たたき』の雰囲気が強まっている」とし「嫌韓などを聞くに堪えない言葉が出るなど懸念するほどの事態につながっている」と伝えた。しかし木村社長は「韓日は切っても切れない関係の国」とし「両国メディアが行き過ぎた国粋主義的な事態をうまくコントロールする役割をしながら、長期的な視点で見て友好増進につながるよう努力しなければいけない。それがジャーナリストの役割」と強調した。

また「過去、朝鮮半島の影響なしには日本の文化が豊かにならなかったと考える。そのような面で、韓国は日本の兄のようだ」とし「今後も韓国との連帯関係を深めていかなければならないというのが朝日新聞の信条。韓国メディアにも知恵を出してほしい」と述べた。


彼らがこういった関係にある以上、朝日をはじめとした日本のメディアや言論人、議員などが韓国側のこの主張を知らないわけが無いのです。
つまり論点が明らかに違い、更に韓国側が本質としている問題を彼らは「本質ではない」としているにも関わらず、日本のメディア等はこの事に一切触れません。


本来、本当にこれら人々が慰安婦問題を彼らの論調どおり女性の人権問題と考え、人権問題としての解決を望んでいるのならば、韓国に対して「強制連行は問題の本質では無い、韓国軍の慰安婦の問題があるのなら、女性の人権問題としてそれも一緒に考えましょう」とすればいいのです。
それならば彼らの主張にも一応筋が通ります。


が、現実には彼らはこの「本質としている問題の違い」「意見の齟齬」自体を見なかった事にしています。
そのうえで、韓国政府や韓国メディアと「共闘」しているわけです。


ここから彼らの真意が見えてきます。
要するに、上辺では女性の人権問題と主張しながら、実体は韓国政府のスタンスと同じ、極めて政治的・思想的要素が強く、彼らは韓国政府の意図を汲んでプロパガンダを行っているだけ、人権問題などはなからどうでも良い、そんなわけです。


「政治的意図」でないのなら、はっきりと韓国に「強制連行は問題の本質では無い」と、日本国内での論調と同じスタンスで接すれば良いだけですからね。
ある意味、この日韓のメディアの報じ方の違いこそが、本当の意味でのこの問題の「本質」を良くあらわしているわけです。


「女性の人権問題」としてこの問題を扱っている人は、元からどこにもいないのです。
極めてイデオロギー色の強い外交上の駆け引きを、女性の人権問題という見栄えのいい「皮」で包んでいるだけなのです。