日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

「嫌韓はナショナリズム」という論調は突っ込みどころだらけ


さて、今回はライブドアのBLOGOSに掲載された田原総一朗氏の記事に関連し、最近メディアを賑わしている「嫌韓は日本人のナショナリズムの高まり」という論調へ突っ込みを入れていく事にします。
まずは田原氏の記事を


「朝日叩き」が安易な「ナショナリズム」につながるのは気持ち悪い~田原総一朗インタビュー
BLOGOS 2014年08月27日 13:54
http://blogos.com/article/93224/
(前略:吉田証言訂正に関する朝日報道や関連した投書を掲載しない事への批判など)
もう一つ、朝日が慰安婦報道の誤りを認めたことで、週刊新潮週刊文春週刊現代週刊ポストといった週刊誌が「朝日叩き」をしている。その叩き方が、「韓国叩き」「中国叩き」と極めて似通っているのが気になる。

いま日本では、韓国の悪口や中国の悪口を言えば、週刊誌や月刊誌が売れる。だから、週刊誌や月刊誌は、とにかく韓国や中国を批判する。その手の単行本もやたらと出ている。この「韓国叩き」「中国叩き」と「朝日叩き」が非常に似ているのが、気持ち悪いなと感じている。

なぜ、そうなっているのか。僕は、日本人の「弱者意識」が変わったのだろうと考えている。

これまでは「弱者」といえば、在日朝鮮人被差別部落非正規社員、障害者といったものだった。つまり、五体満足な日本人は「強者」だった。しかし、ここへきて、「弱者」の位置づけが大きく変わってきている。

いま一番、「我々こそが弱者だ」と考えているのは誰か。それは、ネット右翼だと思う。彼らは「自分たち日本人は弱者である。だから、中国や韓国に勝手なことを言われるのだ」と考えている。ネット右翼は韓国や中国のことをボロクソに叩くが、それは自らを「弱者」と捉えているから。そんな彼らにとって、「弱者」の一番象徴的な存在が、安倍晋三なのだと思う。そして、この弱者意識がナショナリズムにつながっている。

戦前は「ナショナリズム」に抵抗できなかった
僕は戦争を体験している世代で、小学5年の夏休みに天皇玉音放送で敗戦を知った。そのとき、ナショナリズムは極めて危険な考え方だと悟った。

戦前の日本はナショナリズム一色で、「欧米列強に侵略されたアジアの国々に代わって、日本はアメリカやイギリスやオランダやソ連と戦うのだ」と信じていた。当時は、このナショナリズムに一切、反発することも、抵抗することもできなかった。「いまの日本は戦前の状況と似ている」と簡単に言いたくはないが、ナショナリズムの勃興は、とても嫌だ。

そもそも日本人は、世界の「弱者」ではない。韓国や中国が日本と対立して、日韓首脳会談や日中首脳会談ができないのは、日本を馬鹿にしているからではなくて、彼ら自身に弱みがあるからだ。

韓国で言えば、李明博(イミョンバク)大統領のときに、韓国の憲法裁判所が「従軍慰安婦の問題で日本にきちんと要求しない韓国政府は憲法違反だ」という決定を出した。ここから、韓国の中で、従軍慰安婦問題がぐっと前に出てくるようになった。つまり、朴槿恵(パククネ)大統領は、従軍慰安婦の問題を言わないと支持率が落ちてしまうという構造で、「内なる問題」を抱えている。
(中略:中国の事情など)
そういう中国や韓国の国内事情も全く考えないナショナリズムの勃興というのは、嫌だなと感じる。「朝日叩き」をするのはいいが、それが安易なナショナリズムにつながっていくのは、戦争を知っている世代として、危険なことだと思う。



まずそもそも、田原氏は文中で「批判」と「悪口」に区別をつけていません。
批判と悪口を同列に語っている時点でもう色々とアレなのですが…


そして、ここまで書くならなぜ韓国内の親北朝鮮派の影響を書かないのでしょうか。
以前から書いているように、韓国や朝日新聞従軍慰安婦問題には北朝鮮や日本や韓国内の親北朝鮮勢力が深く関わっており、韓国政府が少しでも「日本寄り」と取れる態度を取るとこの親北派がここぞとばかりに政権たたきに利用するという構図があります。これが現在の状況を作り出している主要構成要素のうちの一つです。
田原氏ならこの辺りのことは良く解っているはずなのですが…


また、弱者・強者という観点が問題を分析する上で根本的におかしいのですが、それより何よりこの観点でいくと中韓は国内事情のために反日ナショナリズムを煽っている事になります。
つまり、田原氏は片一方で相手国への批判をナショナリズムであると断じ否定しながら、片一方では国内の事情だから仕方が無いとナショナリズムを肯定しているのです。


この分析ならば本来同列に論じるべき「ナショナリズム」を、国や立場の違いという属性で肯定したり否定したりしていては、当然説得力がありません。
これではただのダブルスタンダードであり、なぜこんな事になるかといえばまず韓国擁護ありきの結論ありきの思考があるからです。
一見中立に見えるよう書いていますが、結局は韓国擁護のための「いいわけ」としてナショナリズムとか「弱者」という言葉をレッテル貼りに利用しているだけです。


次に韓国の事情として


>韓国で言えば、李明博(イミョンバク)大統領のときに、韓国の憲法裁判所が「従軍慰安婦の問題で日本にきちんと要求しない韓国政府は憲法違反だ」という決 定を出した。ここから、韓国の中で、従軍慰安婦問題がぐっと前に出てくるようになった。つまり、朴槿恵(パククネ)大統領は、従軍慰安婦の問題を言わない と支持率が落ちてしまうという構造で、「内なる問題」を抱えている。


これは明らかに本来説明に必要な部分を欠いた説明です。
まず韓国という国は、対馬の仏像盗難事件や先日の産経新聞ソウル支局長起訴事件などを見れば解るように、政治における三権分立が一切出来ておらず、政府が司法に容易に介入できる状態です。


つまり、憲法裁判所の判決の結果李明博政権がああなったのではなく、李明博政権が司法に介入した結果ああなったのです。
しかしここで「なぜ李明博政権は直接反日せずにこんな回りくどい事をしたのか?」と疑問に感じる人が多いのではないでしょうか。
元々反日国家なのですから、本来新たな動機付けなど必要ないはずです。


この疑問の答えは2009年1月に遡ります。
まずはこちらのヘラルドトリビューンの記事を見てください。


South Koreans seek new relationship with Japan
Herald Tribune anuary 10, 2009
http://iht.com/articles/ap/2009/01/10/asia/AS-SKorea-Japan-Relations.php(リンク切れ)
http://web.archive.org/web/20090131070737/http://iht.com/articles/ap/2009/01/10/asia/AS-SKorea-Japan-Relations.php(ウェブアーカイブ
With Japanese Prime Minister Taro Aso arriving in Seoul on Sunday, many South Koreans, including President Lee Myung-bak, say it's time to look beyond the troubled past and build closer ties with Japan.

People "say Korea and Japan are 'close yet distant countries' but we should be 'close and close' countries," the Japan-born Lee told Aso during a private meeting on the sidelines of a first-ever three-way meeting with China's leader last month. "And Korea is ready to become so."

Lee has pledged not to seek a new apology from Japan for the use of forced labor and sex slaves during colonial rule. He also resumed top-level visits, which had been suspended since 2005 to protest former Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi's repeated visits to a Tokyo war shrine.



最後の段を読んで頂ければ一目瞭然ですが、この時点で李明博大統領は外電記者の前で麻生総理に対し「もう韓国は強制連行問題や慰安婦問題で謝罪も賠償も求めない」と約束をしていたのです。
韓国という国は、平気で約束を破りますし嘘もつきますが、流石に第三者立会いで取られた言質をいきなり反故にすることはできません、だから「憲法裁判所から言われたから仕方が無いのだ」という言い訳を考え付いた、それが李明博政権の方針転換の真相です。


元々韓国という国は、政権が中盤以降になると大統領の不正スキャンダルなどでレームダック状態が加速する傾向にあり、その時の支持率回復の手段として反日が良く使われてきたという経緯があります。


2011年のこの時期も、李明博政権は親族に対する不正な利益供与の疑惑や公約に基くソウル周辺の運河開発に絡む収賄疑惑などが浮上してきており、また国内の経済政策などで失策が相次いだことから支持率が急激に下落し批判が高まっていた時でした。
だから支持率回復のカンフル剤として反日が必要であり、外電記者の前で取られた言質が邪魔だったのです、それがあの結果を生んだと、そういう事です。
当然田原氏はこの事も知っているでしょう。


次に安倍政権のナショナリズムから韓国との関係が悪化しているのでしょうか?
その辺りを検証します。
まず現在の日韓関係を考える上で最も重要なのは「韓国が何を望んでいるのか、何をもって解決としているのか」です。
それを知ってもらうために以下の記事を見てください。


「首脳会談を除いてはどんな対話も行う」 政府の対日外交に方向転換を示唆
東亜日報 AUGUST 27, 2014 03:14
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2014082765658
政府が来月、高官級の訪日を推進するなど、対日接近に切り替える方針であることが26日、確認された。

政府関係者は、「韓日首脳会談を除いて、日本といかなる対話であれ行う」とし、このように述べた。日本との対話のドアを閉じていた政府が、攻勢的な対日外交に乗り出す方向転換を予告したのだ。

ただし同関係者は、「日本が責任ある行動を示してこそ韓日の首脳会談を実施するという基調は維持される」と強調した。首脳会談だけは、歴史と日本軍慰安婦問題に対する日本側の責任ある措置がなければならないという前提条件がつけられた。
(中略)
このような方向転換の背景には、韓日対話中断の責任の所在を明らかにするという意図もある。政府関係者たちは、「日本は国際社会で『韓国が韓日対話を妨害している』という枠組みを作っている。このような枠組みを破るために、日本と様々な対話を行う」と説明した。このような方向転換により、最近、韓日外交当局の北米、中東局長が会ったうえ、文化局長間の協議も予定されており、経済省庁間の高官級対話も検討されている。

鍵は、やはり軍慰安婦と歴史問題に対する日本政府の責任ある措置を引き出せるかどうかだ。韓国政府は、慰安婦問題の解決の核心は、日本政府が強制動員の責任を認めることだと見ている。韓日首脳会談の開催に固執する日本政府も、軍慰安婦問題の解決のために韓国に高官級特使を送り、朴大統領との面談を推進しているという。しかし、安倍晋三首相の歪曲した歴史認識が変わっていないという限界も依然として残っている。

一方では、11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、日中首脳会談が開催されるムードであるうえ、米国の韓日関係改善の圧力が強くなっており、政府がやむをえず引きずられるのではないかという観測も流れている。



一見すると韓国が柔軟な姿勢に変わったように見えますが、この2つのフレーズに注目してください。


>首脳会談だけは、歴史と日本軍慰安婦問題に対する日本側の責任ある措置がなければならないという前提条件がつけられた


慰安婦問題の解決の核心は、日本政府が強制動員の責任を認めることだと見ている。


韓国側が首脳会談の条件として提示しているものなのですが、日本による強制動員の責任とはなんでしょうか。
今度はそちらを知ってもらうためにこの記事を見てください。


慰安婦演劇‘鳳仙花’米国で波紋…被害ハルモニら、内容交替要求
newsis(韓国語) 2014-08-05 12:28:43
http://www.newsis.com/ar_detail/view.html?ar_id=NISX20140805_0013090330
問題の場面はある慰安婦女性が派手な着物姿で‘お金(軍票)’をばら撒き、やはり着物を着た他の慰安婦女性たちがそれらをかがんで拾う場面だ。二人のハルモニは日本軍に引きずられて行ってみじめな生活をする間、派手な日本服を着たことも、金を受け取ったこともないとし、事実を歪曲していると批判した。すでに二人のハルモニは初の訪問地カリフォルニアでも演劇に反発、行事不参加を宣言するなど極度の不快感を見せた。

先月27日、グレンデール・アレックス劇場で開かれた演劇‘鳳仙花’で問題の場面に抗議し翌日、慰安婦少女像の前で予定した文化行事に不参加を宣言した。鳳仙花ニューヨーク公演は慰安婦ハルモニが起居する‘ナヌムの家’をはじめ関連団体が内容修正を要求したことに劇団側が反論報道資料で対抗するなど場合によっては衝突様相が憂慮されている。

ナヌムの家と日本国慰安婦歴史館、国際平和人権センターは2日、報道資料を通じて「ハルモニらは‘慰安所'は人が住む所でなく、人を捕らえる屠殺場だ(イ・オクソン)’'慰安所生活中は犬にも劣る扱いを受けた。今でもその時を考えると悲嘆に暮れる(カン・イルチュル)’'慰安所生活が苦しくて、差別と日本軍の殴打に自殺を試みたが、同僚たちの助けで命を救われた(キム・クンジャ)’と生々しい証言をしている」とし、「ハルモニムたちの証言に傷を与えかねない鳳仙花公演の誤った部分を是正して欲しい」と要求した。
(後略)



全体としては単なる韓国の政治団体による内輪もめ記事なのですが、重要なのはここで韓国政府が公式に慰安婦と認定して「証言を確実な証拠」としている慰安婦の主張です。
要するに軍人によって拉致され、性奴隷として金銭も支払われなかったと、そう主張しているのです。


つまり、韓国政府が「慰安婦の証拠」と公式にアナウンスしているものが、まさに先日朝日新聞が否定した吉田証言と全く同じ内容なのです。
田原氏も嘘と認めており、その件で朝日に苦言を言っている吉田証言撤回問題、この嘘をそっくりそのまま韓国政府は日本政府に対し公式に認めろと、そうしないと首脳会談は開かないぞと、そう言っているわけです。


当たり前の事ですが、嘘を認めることなどできるわけがありません。
そもそも交渉ごととして、「こちらの言分を無条件に全て受け入れろ、そうしなければ交渉のテーブルにつかない」との態度の相手に対しては、社会の一般常識として余程相手に有利な材料でもない限り、その時点で交渉は決裂です。
そして当たり前の事ですが、韓国は日本に対してそんな交渉材料は持っていません、ただ無駄に高圧的に要求しているだけです。
前提となる条件がそもそも無茶なのですから、これでは当然始まる前から論外です。


だから現在日韓の首脳会談は全く行われる見込みが無いのです。そして、その状況を田原氏などの日本のジャーナリスト達はナショナリズムだとか右傾化だとか、「個人の不幸を中韓に転嫁している」と「分析」しているのです。
これがどれだけ見当違いかは最早説明する必要もないでしょう。


そもそも冒頭の田原氏の記事の引用で書かれている「日本人は自分達を弱者と考えるようになった」という論調は、要するに以前から突っ込みを入れている「日本人が自信をなくしたから右傾化しだした」という、諸問題を完全に無視した分析の変種に過ぎません。
要するに相手の主張を自身が叩き易い内容にすり替え、それを批判する事で論破したように見せかける、ストローマンと呼ばれる典型的な詭弁です。


結局は田原氏もこの結論ありきの前提の上でしか状況を把握できない、だからこんな詭弁に依存した現実から剥離した記事になっているのでしょう。
そして、日本のメディアからこういった「分析」が行われ続ける限り、余計に日韓の関係改善は遠のいていくと、そういう事です。
まあ、関係改善が出来なくとも現状日本は何も困らないのですが。