さて、今回従軍慰安婦問題の話題となるわけですが、まず大前提として知っておくべき予備知識を簡単に
・韓国政府の主張
従軍慰安婦は軍命令により女性を拉致・監禁した実質的な強制連行であり女性の性奴隷化だ
・日本政府の主張
本人の意思に反した慰安婦は存在したが、軍命令で女性を拉致や監禁したという事実は存在しない
つまり、軍命令による強制の有無が日韓の間で外交問題となっているというのが、従軍慰安婦問題の本質です。
他に戦後補償問題に関する懸案もあるのですが、今回そちらは言及しません。
従軍慰安婦問題と戦後補償に関してを知りたい方はこちらを。
これを踏まえたうえで以下をどうぞ
前回までのあらすじ
先月、日本政府は河野談話の再検証を行うと発表、それに対抗し韓国政府は「河野談話を損なう検証結果を発表する場合、韓国政府は同問題の歴史的真実と責任に関する国内外の権威ある立場や資料を積極的に提示する」との公式声明を行います。
しかし、いざ日本政府が再検証結果を発表し改めて軍命令による強制の存在を否定すると、今度は「16人の元慰安婦女性の証言こそ、慰安婦問題の強制性を立証するいなかる文書よりも強力で明確な証拠だ」と証拠が無いと取られてもしかたのない公式声明を行いました。
まるで北朝鮮の「無慈悲シリーズ」のようなオチでした。
ここまでが以前紹介した日本政府の河野談話検証に関する韓国政府の動きです。
ここからが今回のお話。
その後、先月末に動きがあり韓国政府が具体的な「対抗措置」を講じます。
どんな対抗策だったのでしょうか、あれだけ事前に大見得を切った挙句にあんなオチで恥を晒したわけです、流石に相応の事をやってくるものと普通は考えます。
元慰安婦の証言映像掲載=河野談話検証に対抗-韓国外務省
時事通信 2014/06/27-20:37
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014062700988
【ソウル時事】韓国外務省は27日、従軍慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話の検証に対抗し、同省ホームページ(HP)に、元慰安婦の証言を収録したドキュメンタリー映像2編を掲載した。
いずれも、これまでに海外で上映されたことがある映像で、韓国、中国、フィリピン、オランダの元慰安婦の証言が登場。河野談話検証を受けた国際的な宣伝強化の一環で、英語でも視聴できる。
HPには、韓国政府の声明や海外メディアの記事を紹介する河野談話検証を批判する特設ページが設けられており、そこに映像も掲載した。
同省は「慰安婦問題についての歴史的真実を国際社会に広く知らせる努力を引き続き展開していく」と強調している。
「河野談話を損なう検証結果を発表する場合、韓国政府は同問題の歴史的真実と責任に関する国内外の権威ある立場や資料を積極的に提示する」という話はどこへ行ってしまったのでしょうか?
これでは過去の主張でお茶を濁しているだけに過ぎません、この有様では他に証拠は無いと断定して問題ないでしょう。
まあ…毎度の事なのですが韓国は完全にネタ切れのようです。
そして更に、日本では全くニュースになっていませんが、実はこの裏でもう一つの動きが韓国内で起きていました。
実は去年、韓国で朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授が「帝国の慰安婦」という本を出版、韓国で大論争となり朴教授はこの本を出版した事で韓国の従軍慰安婦問題支援団体から告訴されました。
なぜこんな事になったのでしょうか。
この本で朴教授は、日本政府と全く同じではないですが、ほぼ同じ内容の「軍命令による強制はなかった」との主張をしたのです。
要するに、従軍慰安婦問題とは軍命令による強制では無く、殆どが軍から募集の依頼を受けた朝鮮人たちが女性を騙したり前借金で働かせていたと。ただしこれには続きがあり、しかし募集を依頼したのは日本政府なのだから一番の責任は日本政府にあるとの結論の内容です。
以下が該当のニュース。
慰安婦被害者ら出廷 教授を告訴
聯合ニュース 2014/7/9
http://app.yonhapnews.co.kr/YNA/Basic/ArticleJapan/new_ArticlePhoto/YIBW_new_showArticlePhotoView.aspx?contents_id=PYH20140709089800882
旧日本軍の慰安婦被害者らが朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授の著書「帝国の慰安婦-植民地支配と記憶の闘争」の販売差し止めを求めた仮処分申請の初審尋がソウル東部地裁であった。
慰安婦被害者は朴氏が「基本的に日本の軍人と同志的関係を結んでいた」などと記述したことに反発し、朴氏を名誉毀損(きそん)で告訴した。地裁に入る慰安婦被害者ら=9日、ソウル
この問題で重要となるのは、朴教授がこういった本を出版した事や告訴された事ではありません。
韓国人にとって、「慰安婦は軍命令により強制連行された性奴隷」とはそれだけ絶対的なものであり、一切の異論が容認されないという事です。
なぜ韓国人は軍命令による強制にここまで拘るのでしょうか。
それは非常に単純な理由です。
1:同胞の女性を我々が日帝に売り飛ばすわけがない
2:慰安婦のおばあさん達は売春婦ではない
そこに根拠があるわけではありません、単純に「感情的に受け入れられない」という、ただそれだけのことです。
理論や客観性よりも感情が何よりも優先され、自己の絶対的正義を信じて疑わない韓国人らしい結論です。
また、これに関連し以下のようなニュースが今月11日に掲載されます。
そちらも非常に興味深い内容が含まれているので紹介します。
[チョン・ボングァンの人文学書斎]日本は謝罪しないのに私たちを見て反省しろとするからには…'
朝鮮日報(韓国語) 2014/7/11
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2014/07/11/2014071104040.html?news_Head3
▲チョン・ボングァンKAIST人文社会学科教授
▲パク・ユハ著「帝国の慰安婦」
筆者は日帝強制占領期の文化現象に関する単独著書を五冊書いた韓国近代専門家を自任してきた。しかし、恥ずかしながら出版後1年近い「帝国の慰安婦」という本の存在を知らなかった。本を読んだのは著者、朴裕河(パク・ユハ)教授が慰安婦ハルモニらの名誉を傷つけたと告訴され社会的公憤の対象になった最近だった。
(中略)
請負業者に法的責任はあるが、それをそそのかした当事者は法的責任がないという論理は受け入れがたい。だが、慰安婦問題で朝鮮人もやはり責任を避けられないという指摘は認めるほかない。娘や妹を安値で売り払った父兄ら、貧しくて純真な女性を甘言利説で誘って異郷万里の戦線に連れて行った業者や抱主ら、彼らの不法行為をそそのかした里長、面長、郡守ら、何よりも無気力で無能な男性の責任はいつか必ず問い質さなければならない。そうでなければ同じ不幸が繰り返される。
だが、今はそのような問題を提起する時期ではないようだ。一次的責任がある日本が納得できる謝罪と賠償を拒否する状況で、私たちが先に反省すれば日本に責任を回避する名分を与えかねないからだ。
この本を冷静に読めば韓日間和解のためのパク・ユハ教授の真正性は疑問の余地がない。慰安婦ハルモニらを侮辱したり冒とくする意図がないことも明らかだ。だが、韓日共同責任論を提起することが慰安婦問題をめぐる両国間の葛藤を解決する賢明な代案になるには、一次的な責任を負うべき日本の歴史認識があまりに常識から外れている。
この記事、一見すると軍命令による強制の有無から微妙に論点を逸らしつつ朴教授を遠まわしに擁護しているだけに見えますが、実際のところここには韓国人の真意が見え隠れしています。
それはこの部分です
>だが、今はそのような問題を提起する時期ではないようだ。一次的責任がある日本が納得できる謝罪と賠償を拒否する状況で、私たちが先に反省すれば日本に責任を回避する名分を与えかねないからだ。
もし、本当に韓国人が人権問題として従軍慰安婦問題を捉えているのならば、「両方同時に」責任追及をすればいいのです、どちらか片一方しかできないという二元論の問題ではありません。
しかし韓国人は、「日本が謝罪と賠償をしていないから問題を追及しなくていいのだ」としています。
それがこの朴教授の著書への擁護の大義名分として成り立っているわけです。
まあ要するに、韓国人にとって従軍慰安婦問題とは人権問題ではないのです、韓国人の道徳的正しさを日本人に「教えてやる」ための政治的なカードであり、だからこそ甘言や前借金で女性を働かせていた朝鮮人の問題は二の次という理屈が成り立っているというわけです。
さて、ここまでが韓国における従軍慰安婦問題の実体な訳ですが、ここまで長々と韓国の事情などを書いたのにはわけがあります。
それは以前も問題にした日本のメディアの態度です、今月4日に神奈川新聞に掲載された以下の記事を読んで下さい。
【社説】河野談話検証 性暴力の事実変わらぬ
神奈川新聞 2014.07.04 10:45:00
http://www.kanaloco.jp/article/73999/cms_id/89612
従軍慰安婦問題で日本軍の関与を認めた河野洋平官房長官談話の検証結果をめぐり、保守系のメディアや論客が破棄を含めた談話の見直しを求める従来の主張を強めている。
軍による強制連行を裏付ける証拠がないのに、韓国政府の書き換え要求を受け入れ、結果、根拠のない談話によって日本の名誉が不当におとしめられている-。
代表的な論調はそうしたものだ。
何度強調してもよいが、従軍慰安婦問題の本質は強制性があったか否かにはない。日本軍の戦地、施設で慰安所が設けられ、女性たちが日本軍人の性欲処理のために利用された。その一点に尽きる。
従って、不当な非難との主張は前提となる認識から誤っている。非難の的は女性が受けた性暴力の非人道性にある。強制性をめぐる日韓両政府のやりとりに焦点を当てること自体、ためにする議論ともいえる。
談話の核心は政府としておわびと反省を示した点にある。
(中略)
談話以降も研究者の手で慰安婦に関する公文書の発見は続く。軍のより深い関与を示すもので、強制連行の実態も国内の各裁判で認定されている。今、未来に向かってなすべきことを談話は指し示してもいる。
朝日もそうですが、この人達は何を言っているんでしょうか。
日本政府と韓国政府の間で論争となっているのは「軍命令による強制の有無」であり、河野談話の再検証は日本政府としての公式の見解をはっきりさせようというものです。更に韓国政府は事実上の「証拠はありません」宣言をしている有様です、その状況で何なんでしょうかこれは。
この記事の論調は、韓国で従軍慰安婦団体との間で訴訟沙汰になっているパク・ユハ教授や上で紹介したチョン・ボングァン教授の論調から肝心の部分を消して劣化させただけの代物です。
レースに喩えるのならば、周回遅れの車両が追いついてきた先頭集団に紛れ込んで、道も譲らずドヤ顔しているようなものです、要するにただの「痛い子」です。
この人達は、いつまでこんな論点のすり替えや印象操作を続けるつもりなんでしょうかね。このご時世、そんな小手先の誤魔化しはもう通用しないというのに。
以上です。