日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

徴用工裁判問題と韓国の思惑


さて、本日は事態が動いているようで実際にはここ1年半全く動きのない徴用工裁判問題について扱っていきます。


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日韓問題(初心者向け)
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初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。

ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由
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注意
・このブロマガは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています

・当ブロマガのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです

・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません

・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらど
う思うか」という客観性を常に持ちましょう

・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください



現在、韓国の大田地裁が三菱重工に対し「原告が差し押さえた同社資産に対する売却命令を決定」し、韓国政府はこの件に対し「すべての当事者が同意できる解決策をつくるため、早急に両国間の協議を進めることを期待する」という見解を発表している。


この件、現金化が実際に進んで困るのは韓国政府であり、しかし「協定で解決済み」ともいえない状況にあることから、文政権は「裁判所が決定したこと」と責任転嫁をしつつ、日本側に譲歩を要求するという態度を取り続けている。


また韓国の対日世論にも変化が起きており、一見すると「改善に向かうようにみえる」が、現在の韓国世論は「対中国で日本に味方に付いて欲しい」だけであり、政府と民間双方とも徴用工問題のスタンスは「これ以上は事を大きくしない」というだけで韓国側からの原因解決の意思はない。


※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。



1:全く進展がない徴用工裁判


まずはこちらの記事から

資産売却命令、韓国政府側は「悪材料」「困惑」…日韓関係さらに悪化へ
読売新聞 2021/09/28
https://www.yomiuri.co.jp/world/20210927-OYT1T50249/

 【ソウル=豊浦潤一】三菱重工業に対する賠償命令が確定した韓国人元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟に関連し、韓国の 大田 地裁が27日、原告が差し押さえた同社資産に対する売却命令を決定したことで、日韓関係のさらなる悪化は避けられない見通しだ。

徴用工訴訟をめぐっては、原告の一部が判決の履行を強く求め、「被害者中心主義」を原則として唱えた 文在寅 政権は、身動きが取れない状態となっていた。

 文大統領は、7月の東京五輪開会式に合わせた訪日で問題の妥結を探ろうとしたが土壇場で断念。来年5月の任期満了までに解決する可能性は薄まった。韓国の司法府としてはこれ以上、大法院(最高裁)の確定判決の履行を延期することは困難と判断したとみられる。

 命令に対して同社は即時抗告とその後の再抗告もできる。現金化までには時間がかかるとみられるが、韓国政府関係者は本紙の取材に対し、「今後、北朝鮮と韓国との関係、米朝非核化交渉を進める上で日本の協力が極めて重要な時期に、今回の命令は悪材料でしかない。困惑している。自民党総裁選を控えていることも懸念材料だ」と語った。

三菱重工業は27日、売却命令について「請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されたと理解しており、極めて遺憾だ。即時抗告するほか、日本政府とも連絡を取りつつ適切に対応する」とコメントした。


韓国裁判所、三菱重工の資産売却命令 元挺身隊訴訟、現金化なら関係悪化
時事通信 2021年09月27日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021092701041

【ソウル時事】韓国の大田地裁は27日、元挺身(ていしん)隊員らの訴訟に絡み差し押さえられていた三菱重工業の韓国内資産である商標権と特許権に関し、売却命令を決定した。韓国最高裁は、三菱重工に賠償を命じており、これを受けた措置。原告側支援団体が明らかにした。

 元徴用工訴訟をめぐり売却命令が出されたのは初めて。韓国最高裁の確定判決を「国際法違反」と批判する日本政府は、日本企業に実害が生じる「現金化」に強く反対してきた。命令通りに原告側が売却に踏み切れば、日韓関係の一層の悪化は必至だ。


こちらの2つの記事にもあるように韓国の大田地裁が、徴用工裁判の原告が差し押さえた資産の売却命令を出したという記事です。


この件なのですが、「いったい何度目なのだ」という感想を持つ人もいるでしょうが、時系列を補足しておくと、現状三菱の事例では原告の差し押さえた資産の売却に三菱側が抗告、裁判所が棄却、それに対して三菱が再抗告、そこまでに1年半かかっており、そして現状という流れです。


更にややこしいのが、これと全く同じ流れが新日鉄の裁判でも起きており、そのため実態以上に何度も「売却する」という判決が繰り返されているように見えるわけです。


ただし、韓国の裁判所が引き延ばしによる時間稼ぎをしているのは間違いなく、次の記事を見てもわかるように


<W解説>韓国の徴用工(募集工)訴訟、初の資産売却命令=日本の新政権から抗告が反対されると日韓関係は即刻破綻 wowkorea 2021/09/29


実際に資産の売却をされて困るのは韓国政府であり、しかし「協定で解決済み」という事を認める事もできず、「判決の引き延ばしをするしかできない」という状態になっているわけです。


しかも以前から説明しているように、韓国側の判決は「日韓併合は違法」として、「併合が違法なのだからその間の徴用も違法」という解釈なのですが、根本的に韓国の裁判所は違法性の証明ができていません。


なぜこんなことになっているかといえば、「徴用者の証言の検証」を一切行っていないため証言にまるで整合性がなく、それでも「日本の罪」を成立させるために「併合は違法」としているからです。


過去記事
徴用工裁判問題まとめ


そしてもしこのまま事が進んで実際に資産売却となり日韓関係が完全に破綻した場合、日本側は確実に国際司法裁判所に提訴するわけですが、国際司法裁判所は「双方が出廷に同意」しない限り裁判が開かれないという仕組みになっています。


「では韓国側に有利ではないか」と考える人もいるかもしれませんが、そう上手くは行かず、出廷しない場合は韓国側が「出廷しない合理的根拠」を国際社会に提示できないと、国際的に「韓国が日韓関係を破綻させた」と認識されるため、韓国政府としてはどうしてもこの事態だけは避けたいのです。


また、さらに韓国側の釈明を難しくしているのが、これも過去記事で説明していますが、日韓請求権協定では「協定に異議があった場合、仲裁委員を双方の国が指名し協議を行う」と明記されているわけですが、韓国側はこれも拒否してしまっています。


そして日本政府もこの件で公式抗議しているため、なおさら韓国側は「なぜ仲裁委で話し合わないのか」と「なぜICJに出廷しないのか」双方に矛盾のない釈明を(特にアメリカに)しないといけないわけですが、そんな事は不可能であるため時間稼ぎをするしかないわけです。


2:韓国側の思惑


この件なのですが、この状況は韓国にとって完全に手詰まりであり、もはや「いつ妥協するか」の判断を行うのが時間の問題でしかなく、傍から見るとそれしか選択肢がないように見えますが、状況証拠から韓国側はそう考えていません。


まず結論を書いてしまうと、韓国側は恐らく日本との水面下の交渉で「これ以上は追加で提訴をさせないからこれまでの分だけは保証して欲しい」という交渉の仕方をしている可能性が高いです。


元々この件が問題になったのは、「協定で解決済みなので受け入れられない」という理由ともう一つ、これは日本側ではなく韓国側で「関係悪化の不安材料」として語られていた事ですが、「三菱と新日鉄が今回の裁判で賠償してしまうと、次から次へと原告が現れ収集がつかなくなるため、日本側は決して認めないのではないか」という意見がありました。


実際には、そもそも「国家間の協定を一方的に破ることは許されない」というのが日本側の主張で、後者は日本側ではメディア等で言及されていただけなのですが、韓国側は上記のように「想像」し、これが交渉材料になるのではないかと考えている節があるのです。


例えばこの事例


最大規模の強制徴用訴訟 原告の訴え却下=韓国地裁 聯合ニュース 2021.06.07


今年6月の事なのですが、新たな徴用工裁判の原告の訴えを韓国の地裁が却下しました。


理由は「韓日請求権協定やそれに関する了解文書などの文言、請求権協定締結の経緯や締結当時に推測される当事者の意思、請求権協定締結による後続措置などを考慮すれば、被害者の損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれる」と協定で解決済みとしたのです。


また「原告の請求を認める判決が確定し、強制執行まで行われると、国家安全保障と秩序維持という憲法上の大原則を侵害するもので、権利濫用に該当し許容されない」と、韓国側の訴えは国際法違反であるとしています。


ほかにも、個人補償に関しては既に支払われているという判断も行われています。


ここで重要なのは、この判決は明確に2018年の韓国大法院(日本の最高裁判所に相当)の判決と矛盾している事です。


そしてこの判決の結果、「2018年の大法院判決分までは日本に請求できるが、以後の訴えは相反する判決によって「閉ざされた」という事です。


つまり、既に判決の行われた裁判の結果を覆すつもりはないが、これ以上元徴用者が日本を訴えることはできないという事です。


またもうひとつ重要な情報として以下があります


三菱重工資産の売却命令 日本の反発に対話強調=韓国政府 聯合ニュース 2021.09.28


最近の記事なのですが、判決を受けて韓国政府は日本側の「国際法違反」という主張を一切根拠を示さずに「一方的かつ恣意的」「全く事実ではない」としたうえで、「政府としては被害者の権利の実現と韓日関係などを考慮し、すべての当事者が同意できる解決策をつくるため、早急に両国間の協議を進めることを期待する」という公式発表を行っています。


これの奇妙なところは、日本側の「国際法違反」という主張を拒否するのならば、それは以前から韓国政府が主張していたように「法治国家として大法院の判決に従う」というスタンスをとり続ければいいだけであり、「両国間の協議」など全く意味がありません。


しかもこうした背景がある以上、この「両国間の協議」とは仲裁委員の指名と協議ではない事は明らかなので、「では何を話し合うのか」という事になるわけです。


そこで私は先ほども書いたように、韓国側は「2018年の大法院判決だけ受け入れてくれればこれ以上は訴えをさせない」という提案を日本にし続けており、この「話し合いがしたい」もっといえば「首脳会談がしたい」という要求を水面下でしているのではないかと考えたわけです。


これだと、文政権としては「全て裁判所がやった事」と責任を転嫁できつつ、かつ「日本側に賠償をさせた」という実績もできるため、「面子が立つ」からです。

3:民間の動き



またもう一つ、ここにきて韓国側世論に変化が起きている事も注目されます。


韓国人の日本に対する好感度 昨年より上昇=共同世論調査 聯合ニュース 2021.09.29


記事では、日韓の民間団体が行った世論調査で「日本人に対し肯定的な認識を持つ韓国人は昨年の12.3%から20.5%に増加し、否定的な認識を持つ韓国人は71.6%から63.2%に減少した」としており、逆に「韓国人に対し肯定的な認識を持つ日本人は25.9%から25.4%に減少し、否定的な認識を持つ日本人は46.3%から48.8%に増加した。」と書かれています。


これが興味深いのは、徴用工問題をはじめとして、韓国側の望むような状況への進展が一切なく、好転する材料が存在せず、実際日本側の否定的認識は微増しているにも関わらず、韓国人の日本への肯定的認識が1割近くも増加し、逆に否定的認識が1割近くも減少している事です。


実はこれと同じことが廬武鉉政権末期の2007年と、李明博政権末期の2012年にも起きているのです。


これら状況で共通しているのが、韓国側の言動が原因で日韓関係が悪化し、日本人の韓国人に対する印象が大幅に悪化し、好転する材料が一切存在しなかったにもかかわらず、韓国側の日本に対する悪感情が減少したことです。


2007年の事例では、米下院決議以降韓国側の反日活動がどんどん過激化、そのニュースが日本で多く報じられた時期であり、2012年の事例では李明博大統領の竹島上陸パフォーマンスや天皇への謝罪要求発言、ロンドンオリンピックでのサッカー韓国代表選手による「独島パフォーマンス」事件があった時期です。


ではなぜこんなタイミングで韓国の日本に対する悪印象が減るかというと、韓国側は「自分達は正しい事をしているだけ」という認識であるため、日本側が韓国を嫌う状況を想定しておらず、予想外に嫌われている事を知ると「報復を恐れて」一時的に態度を変えるのです。


つまり、韓国側は「日本側が反撃してこないこと」を前提に「こんなことをしている」というわけです。


しかし例えば今回の事例の場合、日本側が一切折れないうえに


日本政府「日本の資産現金化、深刻な状況招く…韓国側に解決策提示要求」 ⓒ 中央日報日本語版2020.12.09 15:14


記事にもあるように日本政府は「日本の資産現金化は深刻な状況招く」と公言しており、事実上の報復を宣言しています。
この状況が韓国人達にとって予想外なのです。


更に韓国側が不安視しているのが


来韓した中国外相「韓国は米国寄りなのか、あなたがたが自分自身に聞いてみるべき」
外相会談後、報道陣に 朝鮮日報  2021/09/16


中国の外相が韓国を訪問した際「韓国が中国よりも米国の方に寄っているという見方をどう考えているか」と記者に質問され「韓国は米国寄りなのか、中国寄りなのか、あなたがたが自分自身に聞いてみるべきだ」と、脅迫ともとれる発言をしてきた事です。


文政権初期のころ、韓国人達は「韓国が日本を叱りつければ、アメリカも中国も同調して味方になってくれる」と考えている節がありました。


しかし実際にはそうならなかったどころか、アメリカには不信感を持たれた挙句、中国からは恫喝を繰り返されたうえに、韓国文化の起源主張までされるようになり、思惑が完全に外れてしまいました。


そして現状、韓国人の対中感情が悪化


米NYタイムズ「韓国20-30代、日本より中国の方が嫌い…来年の大統領選挙に影響」 朝鮮日報 2021/08/23


この記事にもあるように日本よりも中国を嫌う人々が増えるという状況になり、現在韓国では中国脅威論が大きくなってきています。
要するに、韓国人達は「日本に味方になってほしい」のです。


こうした世論の背景もあり、韓国側は「今日本に多少譲歩しても世論は騒がない」と考え、「大法院判決を受け入れればこれ以上原告を増やさない」という要求、つまり「状況をこれ以上悪化はさせないから日本が問題を解決してほしい」という交渉を行いたいのではないか、そういう話が水面下で起きているのではないかと考えています。


もちろん、日本側に韓国の要求を受け入れるメリットはありませんし、これまでの経緯から韓国側が「約束を守る」事はまずないでしょう。



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