日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

好意が続けばそれを権利だと思い込む


さて、本日は中央日報に先日掲載された記事と同名タイトルの内容となります。

初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。

ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由

注意
・このブロマガは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています

・当ブロマガのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです

・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません

・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらど
う思うか」という客観性を常に持ちましょう

・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください


先日韓国三大紙のうちの一つ、中央日報に「好意が続けばそれを権利だと思い込む」というタイトルのコラムが掲載され、韓国政府による対北政策を批判していたが、そこに書かれている内容はそっくり日韓関係にも当てはまる。


記事では、「信頼できない相手とゲームをする場合「しっぺ返し戦略(tit for tat)」が効果的だ」としており、好意には好意を、悪意には不利益を、模擬実験ではこの手法が最も高い得点を得たとしているが、文政権はこのルールに従わず北が何をしようと「好意」で返そうとしていると指摘している。


これは日本における韓国への対応にもそっくりそのままあてはまり、本来韓国側が問題行動を起こした場合、それに「見合った態度」をとることが最も重要であるが、日本では往々にして問題行動に対して「好意」で返すことが多く、結果彼らはその「好意」を権利と受け取りより態度がエスカレートしていく事例が多い。


※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。


1:好意が続けばそれを権利だと思い込む


まずはこちらの記事から

【コラム】好意が続けばそれを権利だと思い込む=韓国
中央日報/中央日報日本語版2020.02.03 15:09
https://japanese.joins.com/JArticle/262136
スマートフォン
https://s.japanese.joins.com/JArticle/262136

2010年に公開された映画「不当取引」で腐敗した検事役を演じた俳優リュ・スンボムは「好意が続けばそれを権利だと思い込む」と話す。映画で彼の役割は公憤を買ったが、このセリフは共感を得て「好意を続ければ『カモ』になる」などさまざまなパロディを生んだ。映画『ダークナイト』(2008年)で、ジョーカーは「うまくできることがあっても決してするな」という助言をした。

日常生活で無条件の好意はリスクもある。相手がこれを当然のことだと思い込み、全く感謝しなかったり無視したりして悪意で返す可能性もある。個人の関係もそうだが、国の関係で無条件の好意は国の生存まで脅かすこともある。

米国の政治学者ロバート・アクセルロッドは信頼できない相手とゲームをする場合「しっぺ返し戦略(tit for tat)」が効果的だと述べた。この戦略は簡単だ。「まずは協力する(善意)。相手が裏切れば裏切る(報復)。相手が協力すれば再び協力する(寛容)」。模擬実験の結果、この戦略はほかのどの戦略よりも高い点数を受けた。常識的で現実的なしっぺ返し戦略は実際、国家間の関係を規定する基本戦略として広く使われている。

こうした常識が通用しないのが文在寅ムン・ジェイン)政権の対北朝鮮政策だ。北朝鮮が韓国を無視して脅かしても、文政権は対話と協力を前に出す。北朝鮮金正恩キム・ジョンウン)国務委員長は昨年末、労働党全員会議の報告で、米朝非核化交渉のために暫定中断した核兵器大陸間弾道ミサイルICBM)の試験を再開する可能性もあるとし、2018年6月12日の米朝首脳会談で合意した「核兵器モラトリアム(猶予)」の破棄を事実上宣言した。

これに対し文在寅大統領は7日の新年の演説で「金委員長の答礼訪問のための環境が一日も早く整うよう南北が共に努力していくことを望む」とし「開城(ケソン)工業団地および金剛山(クムガンサン)観光の再開に向けた努力も続けていく」と明らかにした。南北関係の改善を今年の国政目標の優先順位にするという点を明確にしたのだ。北朝鮮核武装と新しい戦略武器で韓国の生存がさらに危険になったが、文大統領が南北協力に言及すると「本当に韓国の大統領なのか」という反応が出てきた。

大統領の新年の演説以降、政府は対北朝鮮個別訪問など独自の南北協力事業推進意志を前に出したが、当事国の北朝鮮と同盟国の米国の双方から無視されている。北朝鮮は韓国に金剛山の施設を撤去すべきだと述べ、ハリス駐韓米国大使は「米国と協議する必要がある」とブレーキをかけた。

シンクタンクブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン研究委員は文化日報のインタビューで「文在寅大統領が非常に危険なゲームをしていて、失敗している。いかなる条件もなく制裁を緩和するのは悪い考えであり、これに反対する」と述べた。

北朝鮮の脅威と挑発にもかかわらず南北経済協力を再開するというのは自国の生存を脅かす行為だ。ソウル大のキム・ビョンヨン教授(経済学)は「今の時点での経済協力推進は、制裁を崩壊させ、北の自力更生を助け、非核化が失敗する可能性を高める」と指摘した。一方、対北朝鮮制裁は北朝鮮を非核化交渉に引き出し、北朝鮮寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄が可能だと提案するほど効果が立証された。

韓国は現在、絶体絶命の瞬間に直面している。北朝鮮の非核化に失敗する場合、韓国は核保有国の北朝鮮の脅威に苦しめられ、生存に戦々恐々とするしかない。文大統領は現世代と子孫の生存のために総力を尽くして北朝鮮の非核化に取り組む必要がある。このような時に対北朝鮮制裁を緩和して南北経済協力を推進するのは、北朝鮮だけに利益となり、韓国の生存には全く役に立たない。米国の反対にもかかわらず南北経済協力を推進すれば、韓米同盟の亀裂が深まるだけだ。

ニューヨーク大のナシーム・タレブ教授は著書『スキン・イン・ザ・ゲーム』で「生存を可能にするのが合理的な判断だ。合理性は破滅を防ぎ、生存を助ける機能性で確認される」と述べた。大統領の最大の任務は国家の生存を助けることだ。北朝鮮に向けた無条件の善意は国の生存に役に立たないだけに、北朝鮮の脅威と挑発には断固対処して韓国の生存力を高める必要がある。

チョン・ジェホン/国際外交安保エディター


この記事なのですが、非常に興味深いことが書かれています。


最初に注目すべきは文中の以下の部分です。

>米国の政治学者ロバート・アクセルロッドは信頼できない相手とゲームをする場合「しっぺ返し戦略(tit for tat)」が効果的だと述べた。この戦略は簡単だ。「まずは協力する(善意)。相手が裏切れば裏切る(報復)。相手が協力すれば再び協力する(寛容)」。模擬実験の結果、この戦略はほかのどの戦略よりも高い点数を受けた。常識的で現実的なしっぺ返し戦略は実際、国家間の関係を規定する基本戦略として広く使われている。

これは本来指摘されるまでもなく当たり前といえば当たり前のことで、相手との信頼が担保されていないならば、本来は利益と不利益の共通化を行う事で協力関係を作り上げる、ただそれだけの事です。


そして記事では国家間の関係としていますが、個人対個人を超えた関係、特に共通した価値観を持たない相手同士での関係の場合には、この手法が非常に有効となります。
なぜなら「善意には善意で返し、悪意には相手への不利益で返す」という、どこでも通じる「ルール」を作ることができるからです。


そしてこれは別にひどい事でもなんでもなく、価値観が異なるもの同士で双方にとって最も分かり易いルールを作り利害の共有化をするわけですから、そこには秩序が生まれます。
異なる価値観や利害を持つ者同士で何かをする場合、この手法が最も「平和的」なのです。


そして記事では、この「ルール」から外れたことをしているのが文政権であり、文政権は北朝鮮による裏切りに対して「好意で応える」という事を繰り返しており、結果北朝鮮は文政権がどんなに北に好意的な態度を取っても韓国への挑発をやめなくなってきたとしています。


まさに「好意が続けばそれを権利だと思い込む」という状態であり、以下の記事にもあるように、韓国が北との五輪共催や個人観光の推進を、ハリス駐韓米大使と対立してまで推進していますが、


(※1)リンク切れでインターネットアーカイブにもないため、文末に全文を掲載しておきます。
数兆ウォンかかる南北五輪、妥当性調査なく推進 朝鮮日報 2020/01/22


北朝鮮は韓国を無視し続け、着々と核実験の準備を進めています。
北朝鮮の悪意に対して文政権が好意で返し続けた結果、得られたのはアメリカとの関係悪化だけで、北朝鮮との関係は一切進展しませんでした。


またこれは文政権による対中国での態度でも同じであり、文政権は米国による韓国へのTHAAD配備問題に関連して、経済報復を止めてもらえるよう中国に「お願い」をして、いわゆる「三不約束」を行いました。


THAAD:報復被害に何も言えず追加配備放棄を明言した韓国政府 朝鮮日報 2017/11/01 (1/3ページ) (2/3ページ) (3/3ページ
韓国を操る中国――「三不一限」の要求 NewsWeek 2017年11月30日


三不約束とは「米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない」「韓米日安保協力を三カ国軍事同盟に発展させない」「THAAD(サード)の追加配備は検討しない」というもので、これにより韓国は本来必要のない「国防上の制限」を受けることになりました。


そして肝心の経済制裁はどうなったかといえば


文大統領、首席秘書官・補佐官会議で「中国の困難は我々の困難」 朝鮮日報 2020/02/04 (1/2ページ) (2/2ページ


あれから3年半たった現在もいまだにこの「THAAD制裁」が続いており、韓国は今でも「今度こそ解除される」とぬか喜びを繰り返しています。


まさに「好意が続けばそれを権利だと思い込む」の典型例です。
文政権は中国に対して好意を続ければ制裁を止めてもらえると必死になっていたわけですが、結果明らかにWTOの協定違反のこの経済制裁はずっと続いているわけです。

2:日本でも同じ



さて、ここからが日本の事例なのですが、日本はこの「文政権の失敗」と全く同じことを韓国に対して繰り返し、結果損害を受け続けています。


最も分かり易い事例は慰安婦問題で、


過去記事
慰安婦像問題の原因と日本のマスコミの不可解

過去動画

youtube
https://youtu.be/095qK7m6P0Y


問題は「政府や軍の命令で軍人や官憲が直接的に行った奴隷狩り」という、明らかに事実と異なる慰安婦の定義の下での「法的責任」を、慰安婦団体が日本政府に対し認めろと迫り、韓国政府がそれを支援している事から来ているのですが、これに対して「悪意には相手への不利益で返す」ではなく「悪意に対して好意で返す」を繰り返した結果、状況は悪化し続けることになりました。


また、これも過去記事や動画で何度も紹介していますが、最近やっと変わってきたとはいえ、旭日旗問題でも韓国側の悪意からくる言いがかりに対して明確な拒否をせず、「好意」で返し続けた結果、問題は世界規模で広がってしまいました。


過去記事
『旭日旗問題』に見る韓国人独特の考え方

過去動画

YouTube
https://youtu.be/Uq93x1gIslI


youtube
https://youtu.be/act1XK9Ak7w


悪意に対して好意で返す行為というのは、最初の記事でのロバート・アクセルロッド氏の言葉では「信頼できる相手」にしか通用しない態度であり、これは「価値観の共有化や元からの利害の一致が行われている者同士でしか通用しない態度」という事でもあります。


比較的価値観は近いが利害が異なる中国と北朝鮮に対して、韓国が悪意に対して好意で返し状況を悪化させたのと同様に、価値観が大幅に異なるため基準となるルールに共通点が少ない日韓でも「同じことが起きた」というわけです。


そして現在、また「同じこと」が起きつつあります。


週刊少年ジャンプ『僕のヒーローアカデミア』、登場人物の名前に「丸太」で物議 中央日報 2020.02.05
スマートフォン
https://s.japanese.joins.com/JArticle/262231


週刊少年ジャンプで連載中であり、アニメ化も行われている「僕のヒーローアカデミア」という作品の登場人物に、「丸太」という名前の人物が登場し、それが「731部隊で人体実験の通称であったマルタを連想する」として抗議を受け、作者と集英社が謝罪したという事例です。


そしてこの件なのですが、そもそも731部隊の人体実験なるものは不可解にしか見えないものが多数あり、例えば有名な事例では「真空実験で人体が破裂した」というエピソード、これはそもそも1気圧差で人体が破裂することなどありえません。


実際の事例として、1971年6月30日に旧ソ連ソユーズ11号が空気漏れ事故を起こし、3名の宇宙飛行士が死亡するという事例がありましたが、記録によると約30秒で内部がほぼ真空になったにも関わらず、回収された大気圏突入ポット内の遺体は「破裂」などしていません。
要するに真空実験は明らかなデマなのです。


また、凍傷実験なるものでは人体を完全に凍らせていたとしてますが、凍死した遺体で凍傷の治療の治験などできるわけもないうえに、凍傷に対する治療法は1920年代に確立し、1980年代まで変わっていません。
色々とチグハグなのです。


またほかにも「全身の血液をすべて抜いた」というエピソードがありますが、そもそも別の液体と置換させるならまだしも、人体から完全に血を抜くなど不可能なうえに、これも医学上どんな意味があるのか不明です。


このように、「731部隊の人体実験」には都市伝説並みに怪しげな内容が多数あるのですが、それ以前の問題として朝鮮で731部隊が活動、および人体実験をしていたという記録自体がありません。


それどころか、以下の記事では


30万人が使用する米科学教材に日本の731部隊の蛮行掲載 朝鮮日報 2020/01/16


日本統治時代の独立運動家の尹東柱という人物と李青天という人物が731部隊の人体実験の犠牲となったとしていますが、尹東柱は獄中死しており死因の記録がないだけ、李青天に至っては日本軍につかまって捕虜になったとする記録自体がないうえに、彼の死は1957年1月15日です。


韓国で語られる「731部隊伝説」はどれもこんな状態で何もかもがデタラメであるうえに、1937年に発生した中国軍による日本人租界襲撃事件である「通州事件」の日本人犠牲者の検死写真を、「731部隊の犠牲者」として取り上げている事例すらあります。


当たり前の事ですが、こうしたデタラメな都市伝説じみた歴史観に基づくクレームに対して、安易に「好意に基づく反応」、今回の事例ならば謝罪と登場人物の名前変更などをしていたら、「好意が続けばそれを権利だと思い込む」という状態になるだけです。


ではどうすればよかったかといえば、「この人物の名前は731部隊と一切関係ありません」と答えてそれで終わらせるか、あるいは最初から無視するか、それが最も「妥当な対応」だったのです。


都市伝説に基づくクレームにいちいち反応していたらきりがないうえに、こんなことが続けば彼らはそれを「これを当然のことだと思い込み、全く感謝しなかったり無視したりして悪意で返す」ような状態になる可能性が極めて高いわけです。


一見すると悪意に対しても善意で応えるのが最も効果的なように見えますが、今回紹介した事例のようにそれはさらに悪い結果をもたらすだけであり、その実例は日韓双方に多数あります。


ですから、こうしたクレームは本来「相手にしない」のが一番なのです。



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(※1)
数兆ウォンかかる南北五輪、妥当性調査なく推進
朝鮮日報 2020/01/22
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/01/22/2020012280007.html
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/01/22/2020012280007_2.html

 韓国政府は21日の閣議で「2032年夏季五輪ソウル・平壌共同誘致・開催推進計画案」を決定した。「急ぎ過ぎるな」という米国の警告にもかかわらず、前日の北朝鮮への個人観光旅行推進に続き、五輪推進も政府レベルで公式化した格好だ。総事業費50億ウォン(約4億6900万円)以上の国際イベント開催時に実施が必要な妥当性調査も「国家政策的に事業推進が確定した事案は免除できる」とする例外規定に該当するとして、省略されたことが分かり、拙速過ぎるとの論争が予想される。北朝鮮に一方的にラブコールを送る余り、誘致から開催までに数兆ウォンがかかる五輪共催カードを国民的合意もなしに切ったとする指摘も出ている。文在寅ムン・ジェイン)大統領が任期後に行われる事案に対する「政治的居座り」行為だとする声もある。

 文化体育観光部は同日の閣議で、南北による五輪共同誘致・開催を推進するための政府計画を報告した。文化体育観光部は計画案で「32年五輪南北共同誘致・開催は南北首脳が平壌共同宣言を通じて合意し、国際オリンピック委員会IOC)に南北共同で誘致意向を表明した事項だ」とし、「スポーツを通じた北東アジアと韓半島の平和定着に寄与するための重要な国政課題だ」と位置づけた。同部関係者は「五輪の開催趣旨と基本方向、概括的な必要予算などを盛り込んだ第1次ロードマップだ」とし、「今年上半期中に統一部などと韓国側の合同実務推進団を構成する」と説明した。閣議決定を通じ、五輪共同誘致のための法的根拠ができたことをうけ、本格的にスピードを上げる姿勢だ。結局2018年の平昌冬季五輪と同様、五輪を南北の交流ルートとして利用する構想と言える。

 韓国政府は今回の議決に先立ち、共同誘致・開催推進案の妥当性調査も省略したとされる。企画財政部の訓令である「国際行事誘致・開催などに関する規定」によると、国際イベントの総事業費が50億ウォン以上の場合、主管機関は対外経済政策研究院による妥当性調査を受けなければならない。しかし、「閣議など大統領が主管する会議で国家政策的に事業推進が確定した行事は調査対象から除外できる」とする例外規定を設けている。政府がこの規定を利用し、妥当性調査を省略するため、閣議決定を急いだとの指摘がある。対北朝鮮関係を進展させるため、財政の健全性は後回しにした格好だ。政府関係者は「韓国・東南アジア諸国連合ASEAN)特別首脳会議も閣議決定で妥当性調査が免除された」と指摘した。しかし、韓国政府が単独で推進する国際会議と北朝鮮側の意向も不明で開催に天文学的な費用がかかる南北五輪共催は話が別だとの指摘が多い。

 五輪の共同誘致・開催が国際社会による対北朝鮮制裁への協調の流れに逆行するとの批判も高まっている。米国は最近連日「南北協力は必ず非核化の進展と歩調を合わせて進められるべきだ」と表明している。五輪誘致・開催時に投入される数兆ウォンの予算の大半は韓国政府が負担しなければならない可能性が高い。北朝鮮の誘致費用と施設建設費用などを一部でも負担すれば、財政的負担だけでなく、国連制裁違反の疑いも濃厚だ。韓国政府が「マイウエー」にこわだれば、韓米同盟がぎくしゃくすることもあり得る。

 五輪誘致のための南北鉄道・道路接続を含めれば、韓国政府の費用負担が際限なく増大する。たとえ誘致に成功したとしても、開幕直前まで共同開催の実現は油断できない。政府関係者は「現時点で必要予算を予想することはできず、最近の五輪などを基準とした推定値だけを参考している」と述べた。平昌冬季五輪の施設運営にかかった予算は約2兆8000億ウォンに達し、ブラジル・リオデジャネイロ五輪の場合、開催費用は約5兆ウォンと推定される。

 韓国政府によると、32年五輪誘致戦は文大統領が退任する22年以降に本格化するとみられる。既に4年目に入った文大統領の任期中には目に見える成果が得られないことになる。文大統領は今月7日の新年の辞に続き、14日の新年会見でも「32年南北五輪共催は既に合意した事項だ」と強調した。天文学的な予算が必要な事業を予算検討どころか、国民的合意もなしに「速度戦」で推進すれば、次期政権に大きな負担になるばかりでなく、国民的対立を生むことになりかねない。

アン・ジュンヨン記者