さて、本日は2月9日に行われた日韓首脳会談に関連し、韓国側の態度がもたらした「大きなツケ」について書いていきます。
今月9日に韓国で安倍首相と文大統領との会談が行われたが、その中で安倍首相が米韓合同演習の重要性や慰安婦合意に関する確認などを行ったが、文大統領は前者には「内政干渉」と反発、後者に関しては後に青瓦台が「日本政府の発表は事実と異なる」と反発していた。
この件、後の日本とアメリカの反応を見ると韓国に対して「一体どちら側なのか」と踏み絵をしていた事がほぼ間違いなく、文大統領や青瓦台はその事に気付かず「いつもの反応」をしていた事になる。
その後アメリカ側による韓国GMの群山工場閉鎖や通商圧力が加速した事を見ると、この日韓首脳会談の韓国側の反応が「決定打」になった可能性が高い。
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1:勢いよく日本に反発
まずはこちらの記事から
文大統領、韓米訓練の進行を主張した安倍首相に「内政干渉」と一針
ハンギョレ新聞 2018-02-10
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/29759.html
9日の会談で「主権であり内政に関する問題」強い遺憾表明
慰安婦問題、北朝鮮核解決法に対しても顕著な見解の相違
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9日、韓米合同軍事演習問題に言及した安倍晋三首相に「内政に干渉するのは困る」として強い遺憾を表明したことが10日知らされた。
ユン・ヨンチャン大統領府国民疎通首席はこの日、記者たちと会い、前日の文大統領と安倍首相の非公開会談の内容を紹介した。ユン主席は「安倍首相が『オリンピック以後が峠だ。非核化に対する北朝鮮の真摯な意志と具体的行動が必要だ。韓米軍事演習を延期する段階ではない。韓米合同軍事演習は予定通りに進めることが重要だ』と話した」として「これに対して文大統領は『安倍首相のお言葉は北朝鮮の非核化が進展する時まで韓米軍事演習を延期するなという言葉と理解する。しかし、この問題は私たちの主権の問題で、内政に関する問題だ。首相がこの問題を直接論じてもらっては困る』と話した」と明らかにした。
文大統領と安倍首相は、前日行われた3回目の首脳会談で、日本軍慰安婦問題と北朝鮮の核解決法をめぐり、顕著な見解の差を表わした。「慰安婦合意は国家対国家の合意であり、政権が変わっても守らなければならないというのが国際原則だ。日本はその合意を最終的かつ不可逆的として受け入れ約束を守ってきただけに、韓国政府も約束を実現することを希望する」という安倍首相の話に対し、文大統領は「慰安婦合意により問題が解決されていないという決定は、過去の政府の合意以後に慰安婦被害者と国民が合意内容を受け入れなかったため」と反論した。また「北朝鮮は平昌(ピョンチャン)五輪期間に南北対話をしながらも、核とミサイル開発に注力している。北朝鮮の微笑外交に注意を注がなければならない」とした安倍首相に対し、文大統領は「南北対話が非核化をぼやかしたり国際協力を乱すということは取り越し苦労に過ぎない」と一蹴した。
ソン・ヨンチョル記者
先々週の記事なのですが、この日韓首脳会談で安倍首相が米韓合同演習に触れた件、会談の前日に安倍首相がペンス副大統領と会談していたことも考えると、日本とアメリカが文政権を「ためした」可能性が極めて高いです。
どういう事かといえば、この回答次第で韓国が日本と北朝鮮のどちらを「優先するか」がはっきりするため、今後韓国が日米韓で対北朝鮮の連携を取る事ができるかどうか、文大統領の意思を直接確かめる事が出来るからです。
またもう一つ、合同演習そのものを韓国が「負担に感じているかどうか」もこの質問から推測できます。
なぜかといえば、北朝鮮が韓国に対して何度も「合同演習をやめれば対話とする」といった、主張をしており、これは「中国の意向」でもあるので、北朝鮮や中国と「同盟国」どちらを重視しているかがわかるからです。
そしてこの北朝鮮の意向を受け、韓国政府内では「再延期」の議論が当時始まっていたことも重要です。
【社説】韓米合同軍事演習にあいまいな態度を取り始めた韓国政府 朝鮮日報 2018/02/13 (1/2ページ) (2/2ページ)
韓米合同軍事演習の再開は…?規模・期間縮小の可能性も ハンギョレ新聞 2018-02-13
北朝鮮、1カ月後に迫った韓米合同軍事演習を牽制 ハンギョレ新聞 2018-02-20
韓国統一相「平昌五輪で延期中の合同軍事演習実施に向け米国と協議」 Newsweek/ロイター 2018年2月20日
このような背景のある質問に対して、文大統領は「演習はする」としながらも「内政干渉だ」と突っぱねたわけです。
しかも韓国の多くのメディアはこの文大統領の態度を肯定しました。
その後文大統領は一応アメリカには「演習は重要」とフォローを入れたようですが、これで現在の韓国では日本と対北朝鮮の連携がとれない事、文大統領が合同演習を負担に感じている事がはっきりしたわけです。
文氏の「内政干渉」発言でビンタ食らった安倍氏、トランプ氏に「米韓演習は重要」 中央日報 2018年02月19日
演習に負担を感じていないならば、そもそも安倍首相から「演習は重要」といわれた程度で「内政干渉だ」などと過剰反応する必要が無いからです。
そして韓国側は事の重大さにまだ気付いていません。
2:韓国側からの訪朝問題
もう一つ問題なのが、平昌に金正恩の妹がやってきた事の返礼として、韓国側からも「同格」の人物の訪朝が話し合われているうえに、文大統領の訪朝依頼を金与正氏が伝えた事です。
これに関して、核問題の進展が本来必要にもかかわらず、既に韓国政府内では条件無しの政府高官訪朝に前のめりになっています。
[ニュース分析]南北首脳会談の地均し…対北朝鮮特使?高官級会談? ハンギョレ新聞 2018-02-13
[社説]南北首脳会談、今こそ本当に韓国が朝鮮半島の「運転席」に座る時だ ハンギョレ新聞 2018-02-12
しかも上記記事にもあるように、これら会談で韓国が「主導権を握れる」と考えている人々が韓国政府内にかなりの数存在しており、その中には恐らく文大統領自身も含まれているのです。
ただし、一応韓国の三大紙はこの訪朝に批判的で、例えば中央日報はこんな記事を掲載しています。
【グローバルアイ】金与正の帰還報告 中央日報 2018年02月13日
最近になり、文大統領は訪朝に対して少しだけ慎重になり始めていますが、これは恐らく日本とアメリカが文大統領に何かしらの圧力をかけたからでしょう。
そして先日朝日新聞が、昨年末に平壌で韓国の政府関係者と北朝鮮政府関係者が接触し、平昌参加の協議を行ったという報道に関して韓国側が猛反発しましたが、私はこれを文大統領の上記態度変化が関係していると見ています。
「南北が昨年平壌で接触」 朝日の報道は「誤報」=韓国大統領府 聨合ニュース 2018/02/19
どういう事かというと、訪朝に前のめりになっていた文政権がいきなりその態度にブレーキをかけたため、北朝鮮が恐らく朝鮮総連を通じて朝日新聞に「過去の接触」をリークさせ、更に日米との足並みを乱させると同時に、文政権に「余計な事をするとまた情報を出すぞ」と牽制したのではないかというわけです。
以前から書いているように、朝日新聞は朝鮮総連と「近しい関係」にあるうえに、朝鮮総連の機関紙である「朝鮮新報」は北朝鮮政府の声を代弁する関係にあるほど密接である事は周知の事実だからです。
参考記事
韓経:「南北関係改善期間中は核実験・ロケット発射しない」 中央日報 2018年02月13日
http://japanese.joins.com/article/584/238584.html
北朝鮮の立場を対外的に代弁する在日本朝鮮人総連合会
北朝鮮「関係改善・平和的環境に有意義なきっかけ」 ハンギョレ新 2018-02-13
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/29776.html
北朝鮮の立場を対外的に代弁してきた在日本朝鮮人総連合会機関紙
3:アメリカからの警告
このようにして、現在韓国の文政権は北朝鮮の核問題よりも友好を重視している事、日米韓による対北朝鮮の連携が実質不可能である事、米韓合同軍事演習を文政権が負担に感じている事などが、一連の「オリンピック外交」によってはっきりしました。
そして実は、これと似たような状況が過去、文政権と同じく「親北」だった盧武鉉政権(2003年2月~2008年2月)時代に発生しており、その時は日米からの警告で盧武鉉政権が「折れた」のですが、今回文政権は警告があってもそれをほぼ無視しています。
その結果、アメリカが韓国に対して「痛みを伴う警告」をしてきたのではないかと見て取れる反応をしてきています。
例えば、日韓首脳会談の少し前から、韓国GMが稼働率の低い韓国の工場を閉鎖するという「噂」を流していました。
韓経:撤収説流す米国GM…知らぬ振り貫く韓国政府 韓国経済新聞/中央日報 2018年02月09日
そして日韓首脳会談が実質対立のままで終わると、数日後にGMは特に稼働率の低い郡山工場を閉鎖すると発表、更にトランプ大統領が「GMがアメリカに帰ってくる」とこれを歓迎しました。
トランプとGMの挟み撃ちに遭う韓国 朝鮮日報 2018/02/15 (1/2ページ) (2/2ページ)
韓国ではこれによって関連企業も含め数千人の雇用が失われる事になります。
勿論、韓国の過激な労組問題に苦しんでいるGMがもうどうにもならなかったのは事実ですし、トランプ大統領が雇用をアメリカに戻そうとしていたのも事実ですから、原因は「それだけ」ではないでしょうが。
また、今週になると更なる動きがあり、アメリカは韓国の鉄鋼メーカーなどに制裁関税を行うとの発表をしました。
「米国の韓国たたきも度が過ぎる」…文大統領「通商摩擦も辞さず」強く対応 ハンギョレ新聞 2018-02-19
政府「同盟国のうち韓国だけがなぜ鉄鋼制裁を受けるのか明確でない」 中央日報 2018年02月20日
記事にもありますが、他国も制裁対象になっているとはいえ、アメリカの同盟国で韓国だけがこのような措置を取られた事に韓国はかなり不満をもっているようですが、タイミング的にこれはアメリカから「対北でそんな態度を取っているならもう保護はしないぞ」というメッセージでしょう。
(韓国が現在制裁中の中国鉄鋼材の対米迂回輸出ルートになっているという問題もあります)
先ほども書いたように、盧武鉉政権はこうなる前に「気付いて」折れたわけですが、文政権はこの意味に気付かず折れないどころか、アメリカとの対決姿勢を明確にしつつあります。
貿易依存度が高く、その依存先はアメリカと中国であり、その中国にはTHAAD関連で制裁を受け、その制裁の解除もまだ限定的であるにも関わらずです。
米の輸入制限に「決然と対応」 WTO提訴も=文大統領 聨合ニュース 2018/02/19
そしてこの事自体も更に日米の不信となってきています。
なぜなら、中国が制裁したときにはWTOへの提訴を躊躇い、むしろ中国に積極的に接触し「許しを請う」態度を取っていた韓国が、アメリカには即座に「WTOへの提訴だ」と言い出したからです。
そしてここまで事態が悪化したにも関わらず、多くの韓国メディアや文政権は状況の深刻さに殆ど気付いていません。
まだ交渉でどうにかなると思っているのです。
以前書いたように、「韓国は「走り終わってから」考える」からです。
そして多くの韓国人は、平昌で文大統領が日本に対して明確な対決姿勢を示した事が問題の発端である事にまだ気付いていません。
要するに、「友好国や同盟国よりも敵対国を優先すればどうなるか」ということです。
これまでは、こういうときに日本が助け舟を出していたから何とかなっていただけなのです。
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