今回は最近話が進みだしてきた電波オークションに関連し、放送法とテレビ局の問題についてとなります。
また、今回元記事が多くニコニコ動画の動画説明欄の行数制限に引っかかってしまうため、こちらに元記事のリンクを貼っておきます。
有名無実と化している放送法
http://ooguchib.blog.fc2.com/blog-entry-93.html
マスコミと放送法の問題
http://ooguchib.blog.fc2.com/blog-entry-115.html
放送法と電波使用料の問題
http://ooguchib.blog.fc2.com/blog-entry-116.html
「テレビ局停波問題」を巡るマスコミのおかしな論調
http://ooguchib.blog.fc2.com/blog-entry-119.html
youtube版
https://youtu.be/m8DPGXZebsU
以下は動画のテキスト版
レイム マリサ
ゆっくりしていってね
マリサ
さて、今回はマスコミ問題なので私が解説していくぜ
レイム
ところで、今回は時系列順じゃないのね
マリサ
それな、「またかっ!」と言いたいところなんだが、この件に関しては本来1年前にうp主がブログの方でやる予定だったのをど忘れしてな、完全にタイミングを逃してしまって、動画を始めようと考えた頃から「この件で動きがあったら即動画でやろう」と予定していた件なんだぜ。
レイム
そうなのよね、なのでこの件は他の事例と違って突発的ではなくて規定路線なので、ちょっと事情が違うのよね。
そもそも時系列はあまり関係ないし。
マリサ
ちなみに、扱う情報量が多いので今回前・後編の二部構成で後編は来週となるぜ。
レイム
またかっ!
マリサ
そんなわけで本編へいくぜ
電波オークション制と電波利用料
レイム
ところで、今回あった動きってどんなものなの?
マリサ
それなんだが、色々説明する前にまずこちらの記事を紹介するぜ。
電波オークション導入 議論本格化で野田聖子総務相、どうさばく?
産経新聞 2017.11.11
(1/3ページ)(2/3ページ)(3/3ページ)
電波の有効利用を検討する総務省の「電波有効利用成長戦略懇談会」の議論が10日、スタートした。公共用周波数をはじめとする電波を有効利用し、安倍晋三内閣が掲げる成長戦略に反映する方法を探る。一方、政府の規制改革推進会議も周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」の導入を軸に議論を進めており、電波の有効活用をめぐる政府内の意見調整が難航するおそれがある。電波行政を所管する野田聖子総務相がどうさばくのか。その力量が問われそうだ。
野田氏は同日午後、総務省で開かれた懇談会の初会合で「わが国は少子高齢化に伴って最大のピンチを迎える。今こそ情報通信技術の徹底的な活用、とりわけ電波の有効利用を進めていくことが重要だ」とあいさつした。
野田氏は懇談会に先立つ記者会見で、電波オークションの導入に関する規制改革推進会議の議論について「総務省も積極的に議論に協力している」と述べたが、懇談会では出席者から電波オークションの導入に関する発言はなかった。
総務省は「懇談会のメンバーから提起があれば、電波オークションに関する議論は排除しない」としている。しかし、懇談会は警察や消防などが使っている公共用周波数の民間移行の推進や、多様な機器をネットワークでつなぐ「モノのインターネット(IoT)」に対応した電波政策の在り方を主要議題に据える方針だ。
規制改革推進会議でも大きなずれが浮き彫りになっている。9月以降、電波オークションの議論を本格化させた規制改革推進会議は、NHK、日本民間放送連盟、NTTドコモなどからヒアリングを重ねたが、強い反対論に直面した。ヒアリングに呼ばれた総務省も「外資規制ができず、安全保障上の問題が出てくる」などの理由で導入に消極的な姿勢を示した。
現在、日本国内では比較審査方式を採用しており、複数の申請者が存在すれば、総務省が優劣を比較し、より優れている方を選定する。しかし、この方式については「総務省の裁量で決まってしまう」との批判が出ていた。こうした中、菅義偉官房長官が9月13日の記者会見で電波オークションの導入を検討する考えを示したことで一気に議論が熱を帯び始めた。
菅氏のバックアップを受けた格好の規制改革推進会議は設置したワーキング・グループで議論を続けており、「OECD(経済協力開発機構)加盟国の多くで導入済みだ」などと、電波オークションを導入すべきだとの意見が大勢となっている。
政府は今年6月に公共用周波数の民間移行推進を閣議決定しており、成長戦略の一環として公共用電波の有効利用がいずれは政策テーマに上るとはみられていた。しかし、総務省幹部の一人が「寝耳に水だった」と言うように、電波オークションの導入がいきなりこの時期に俎上に載るのは想定外だったようだ。
もともと電波オークションは旧民主党政権時代に導入が検討されている。総務省が1年以上かけて制度設計し、平成24年3月の閣議決定をへて関連法案が国会に提出されたが、当時野党だった自民党の反対で廃案となった。
ワーキング・グループの意見交換でもこうした経緯を踏まえて「一度は閣議決定までしたのになぜできないのか」との指摘がメンバーから出ており、消極論を展開する総務省は痛いところを突かれている。
規制改革推進会議は、年内をめどに結論を出す方針。一方、懇談会は来年夏ごろまでに方向性をとりまとめる予定だが、議論は規制改革推進会議の方針を当然、意識せざるを得ない。ましてや、首相や総務大臣経験者でもある菅氏が規制改革推進会議の結論を支持する姿勢を鮮明にすればなおさらだ。
野田氏は10日の記者会見で「簡単な話ではない。電波は大切なインフラだから、おおざっぱなものを皆さんに提供するわけにはいかない。粛々と進めるなか、皆さんが納得できるようなものを示せるようにがんばりたい」と語ったが、難題に直面する可能性は否定できない。(政治部編集委員 笠原健)
マリサ
記事にもあるように、政府が電波オークション制の導入を進めるための準備を始めたとしているんだが、要するに電波オークション制ってのは、現在のように実質的に新規参入が無い地上波テレビ放送を、新規参加自由な規制緩和をして公共の電波の利用権を定期的なオークションで決めようって事だぜ。
マリサ
そして記事では、全ての地上波テレビ局となぜかNTTドコモが反対しているとなっているな。
レイム
規制緩和ってよくテレビや新聞が「古い利権をなくすためにどんどん進めるべき」と煽っていたのに、自分達の番になると拒否するのね。
マリサ
マスコミ業界が「そういう体質」って事は、これまでの解説を見ていれば充分察しがつくだろ?
レイム
まあそうね。
マリサ
でな、この件って産経の記事では民主党政権から始まったとしているが、実は発端は2008年に遡るんだぜ。
マリサ
最初の記事でもあるように、今世界の殆どの国で電波オークション制が導入されているんだが、日本でも9年前に既にこの議論があって、その口火を切ったのは自民党の現外務大臣の河野太郎氏なんだぜ。
本邦初公開?
河野太郎公式ブログ 2008年02月24日
http://www.taro.org/2008/02/post-363.php
国民の共有財産である電波を使用する対価である電波利用料が不当に低いのではないかという思いで、総務省に、まず、各テレビ局ごとの電波利用料の負担金額を出して欲しいと要求すると、なんと総務省の課長は、個別の負担金額は開示しておりませんときた。
なんで出さないのかとたずねると、テレビ局のプライバシー。
あのね、個人が儲けた金額に応じて支払う所得税がプライバシーだというならばわかるが、国民の共有財産を使用してお金を儲けているときに、共有財産の使用料がいくらかを出さなくて良いということにはならないだろ、と突っ込むと、これまで国会の答弁でも個別テレビ局ごとの負担額は出したことがありません。
じゃ、仕方がない。政調の審議会で電波法の改正案を了承するときの条件が、各テレビ局ごとの収益金額と電波利用料をだすということだったが、出さないんじゃ、あの決定は白紙だね。お宅の局長が自ら出しますといったものを課長がひっくり返すんだねと脅す。
持ち帰って検討します。どうぞ、検討してください。
総務省、園田政調会長代理のところに駆け込んだ。
河野太郎が、個別のテレビ局の電波利用料を出せ、と言ってききません。
出せばいいじゃないか。
ということで、本邦初公開(?)、テレビ局ごとの電波利用料。
営業収益100億円以上のテレビ局、但しNHKは経常事業収入。
営業収益(H18) 電波利用料 (単位百万円)
NHK 675,606 1,215
日本テレビ 288,636 317
東京放送 277,400 318
フジテレビ 377,875 318
テレビ朝日 227,687 318
テレビ東京 111,200 317
北海道放送 13,245 15
札幌テレビ 16,553 15
北海道テレビ 14,369 15
北海道文化放送 13,521 14
仙台放送 10,466 4
テレビ神奈川 6,824 3
中部日本放送 35,815 4
東海テレビ 36,723 4
名古屋テレビ 26,120 4
中京テレビ 32,958 5
テレビ愛知 11,189 1
静岡放送 11,625 7
テレビ静岡 10,132 6
毎日放送 69,514 10
朝日放送 74,192 10
関西テレビ 72,429 10
讀賣テレビ 66,895 10
テレビ大阪 14,494 1
中国放送 11,414 10
テレビ新広島 10,177 8
RKB毎日放送 20,656 6
九州朝日放送 17,643 6
テレビ西日本 16,090 6
福岡放送 14,362 6
テレビ局の電波利用料負担は、ここにあげなかった局を含めて総計で34億4700万円にしかならない。
一方で営業収益は3兆1150億8200万円。
電波を独占して上げる収益に対して利用料が千分の一。
低すぎませんか。
マリサ
記事でもあるように、河野氏は「公共の財産である電波の使用料が、テレビ局だけ不当に低いのではないか」という疑問を提起し、総務省に問い合わせたんだが、元々テレビ業界とのつながりの強い総務省が当初情報開示を拒否、最終的に総務省側が根負けして情報を開示したみたいだな。
レイム
なんか、記事を読むと「電波を独占して上げる収益に対して利用料が千分の一。」とかなっているみたいね。
マリサ
そう、そこが問題なんだぜ、実質的に公共の財産である電波を特定企業が寡占状態で「稼いでいる」にも関わらず、その利用料が極端に低いんだぜ。
次に2013年のこちらの記事を紹介するぜ。
テレビ局の電波利用料負担、携帯会社のわずか10分の1? テレビ局と総務省の利権か
Business Journal 2013.05.07
(1/3ページ) (2/3ページ) (3/3ページ)
テレビやラジオなどの放送局が、国から周波数を割り当てられて行っている許認可事業であることは知られている。しかし、放送局が国に対して「電波利用料」を支払っているということを知っている人は、意外に少ないかもしれない。また、電波利用料の存在を知っていても、それがどのくらいの額なのか知っている人はもっと少ないだろう。
総務省は2月末、この電波利用料の詳細を発表した(文末の別表参照)。前回公開したのは2008年というから、ほとんどの人が知らないのも無理はない。自民党の河野太郎衆議院議員は総務省に「テレビ局ごとの電波利用料の負担金額を出してほしい」と要求したところ、総務省の担当課長は「個別の負担金額は開示しておりません」と答えたらしい。さらに河野氏が「どうして出さないのか」と尋ねると、その課長は「テレビ局のプライバシー」だと答えた。その後、自民党が総務省に強く要請し公開が決まったようだが、今回の発表でわかったのは、テレビ局がボロ儲けしている実態だ。
テレビ局全体の電波利用料負担は、総計で34億4700万円にしかならないのに対し、営業収益は3兆1150億8200万円もある。電波の“仕入れコスト”は、営業収益のわずか0.1%ということになる。
そもそも電波利用料とは何か?
電波法や総務省の資料によると、「電波利用共益費用」、つまり「電波の適正な利用の確保に関し無線局全体の受益を直接の目的として行う事務の処理に要する費用」の財源に充てるため、テレビ局やラジオ局、携帯電話会社など無線を利用する者が支払うものとなっている。要するに、違法電波による混信障害などから電波環境を守るための経費を徴収するという名目でつくられた制度だ。
電波利用料を支払っているのはテレビ局などの放送局だけではない。電波を使っている携帯電話会社も支払っており、全額通話料として携帯電話ユーザーに転嫁されている。具体的には、携帯電話1台につき年200円だが、携帯の支払い明細書に「電波利用料」という記載がないので、利用者が知らないのも無理はない。
12年度の電波利用料収入は約715億円の見通しで、内訳は携帯電話事業者が72.3%なのに対し、放送事業者はたったの7.2%である。NHKは電波利用料を受信料に転嫁しているし、民放は企業が支払うCM料に転嫁している。つまり、電波利用料のほとんどは、携帯電話を使っている消費者が負担しているといってよいだろう。
●テレビ局の地デジ化対策費用を携帯電話ユーザーが負担?
では、その電波利用料を、国は具体的に何に使っているのか?
主な内訳は、次のようになっている。
・地上デジタル放送総合対策:45.0%
・研究開発:18.0%
・総合無線局管理システム:9.8%
・電波監視:8.3%
支出の半分近くを占める地デジ対策費は、実質的には放送局などへの補助金であり、とくに地デジ化の資金繰りに苦しむ地方テレビ局を救済するかたちになった。
つまり、携帯電話利用者が支払っている電波利用料で、テレビ局を支えている構図だ。そのテレビ局はといえば、社員の給料が高いのは誰でも知っており、民法キー局の平均年収は軒並み1200万円以上である。公共放送たるNHKの平均年収も1185万円であることが2月に発表された。許認可事業のため事実上新規参入のないテレビ業界が濡れ手で粟というのには、違和感を感じざるを得ない。
●電波オークション導入をやめた自民党
国民の公共財産ともいうべき電波の周波数を競争入札にかける「電波オークション」を導入しようという話が進んでいた。民主党政権では次回の電波割り当てから入札を実施することを閣議決定し、昨年の国会に電波法改正案を提出していた。
しかし、安倍政権に交代するや、新藤義孝総務相は「今国会に(オークション導入の)法案を提出することはない」と言明し、電波オークションを葬り去ってしまった。
現在は総務省が裁量で放送局や通信事業者に電波を割り当てて電波利用料を取っているが、これから利用が進む第4世代携帯電話向け電波などを入札にかければ、数千億円の収入になるとみられていた。また、民主党政権下で電波オークション導入を提言した大阪大学の鬼木甫名誉教授によれば、現在テレビが占拠している帯域も含めてすべてをオークションにかけたとすれば、30兆円近くの価値があるとのこと。安倍政権は国庫に入るはずだった数千億円に上るオークション収入をフイにしてまで、テレビ局などによるタダ同然の電波使用という利権を維持させることにしたのである。安倍政権がオークションを取りやめた理由として、「大メディアに恩を売りたかった」との見方もあるが、真相はわからない。
放送局と通信事業者にすれば、オークションが導入されれば外資など新規業者がライバルとして参入し、新たな脅威になっただろう。それに対抗するには、現在支払っている電波料に加えて、オークションで競り勝つ高額な費用が必要になったはずだ。特にテレビ局は、なんとしてもオークションを阻止したかったはずだ。
総務省も実は、本音ではオークションをやりたくなかったと言われている。電波利用料は税金ではないため、財務省による再分配の対象とはならず、形の上では一般会計の総務省予算になっている。ただ、電波法によって使い道が決められている特定財源であり、全額が総務省によって使われる。総務省の「隠れ特別会計」との指摘もあり、総務省が自分たちの裁量で使える予算なのである。もし、オークションが導入されていたら、総務省はこの貯金箱を失い、財源を財務省に取られていたとの声もある。
先ほど、電波利用料の使途内訳で「研究開発:18%」と書いたが、これなどは天下り先である特殊法人へのばらまきとの指摘もある。これまでのように電波利用料を握っておくことが、総務省にとってもおいしい話なのだ。
電波オークションは世界の常識になりつつある。OECD加盟国の約3分の2はすでに電波オークションを導入しており、欧米諸国はほぼすべての国で導入している。アジアでも一般化しつつあり、導入していないのは、モンゴル、北朝鮮、そして日本などである。
(文=横山渉/ジャーナリスト)
【参考資料:テレビ局ごとの電波利用料】
※営業収益100億円以上のテレビ局、但しNHKは経常事業収入
営業収益(2006年) 電波利用料(単位百万円)
NHK 675,606 1,215
日本テレビ 288,636 317
東京放送 277,400 318
フジテレビ 377,875 318
テレビ朝日 227,687 318
テレビ東京 111,200 317
北海道放送 13,245 15
札幌テレビ 16,553 15
北海道テレビ 14,369 15
北海道文化放送 13,521 14
仙台放送 10,466 4
テレビ神奈川 6,824 3
中部日本放送 35,815 4
東海テレビ 36,723 4
名古屋テレビ 26,120 4
中京テレビ 32,958 5
テレビ愛知 11,189 1
静岡放送 11,625 7
テレビ静岡 10,132 6
毎日放送 69,514 10
朝日放送 74,192 10
関西テレビ 72,429 10
讀賣テレビ 66,895 10
テレビ大阪 14,494 1
中国放送 11,414 10
テレビ新広島 10,177 8
RKB毎日放送 20,656 6
九州朝日放送 17,643 6
テレビ西日本 16,090 6
福岡放送 14,362 6
※出所:衆議院議員 河野太郎氏の公式ブログより
マリサ
さっきの河野太郎氏のブログの情報を引用しながら、同じく公共の電波を使用してビジネスをしている携帯電話会社に比べて、テレビ局は十分の一しか使用料を払っていないそうなんだぜ。
マリサ
しかもなんか、どうやら「地デジへの移行補助金」の大部分がこの電波使用料から出ていたらしく、実質基本使用料に電波使用料が上乗せされている携帯利用者がテレビ局の収益を助けているなんて状態になっていたんだぜ。
レイム
でも、電波って公共のものなんでしょ?
ならそれを使って放送をするなら、みんなで負担するのが筋じゃないの?
マリサ
「電波」そのものならな。
テレビ番組を見るか見ないかは視聴者側に選択の自由があるんだから、放送局の運営の負担を携帯電話利用者がするのは筋違いだぜ。
マリサ
そもそも「テレビを見ていない人」だっているんだしな。
NHKの受信料問題と似たようなもんだな。
レイム
でもさ、なんかその記事だと民主党政権時代に当時野党だった自民党が反対していて、安倍政権になってから完全に話し自体がなくなったとなっているようで、「マスコミに恩を売ったのではないか」と書かれているけど。
放送法違反
マリサ
その件なんだが、当時うp主は「これは自民党が仕掛けたトロイの木馬なんじゃないか」と見ていたそうだぜ。
レイム
どういうこと?
マリサ
小泉政権頃から言われていたことなんだが、「テレビが全く放送法を守っていない」って事が問題になっていたんだぜ。
放送法
総務省
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000132&openerCode=1
第二章 放送番組の編集等に関する通則
(放送番組編集の自由)
第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
マリサ
この放送法第二章第四条なんだが、これまでの解説を見てテレビ局が「守っている」ように見えるか?
レイム
見事に一つも守っていないわね。
マリサ
そう、そこが重要なんだぜ。
元々テレビ局って認可制の免許事業で、事実上新規参入が不可能だろ?
レイム
そうね、結局地デジ化して帯域が増えても、新規の放送局って出てこなかったしね。
マリサ
そのうえで、テレビ局って膨大な利益を出しているだろ?
これってさ、本来なら「独禁法」に接触するよな。
レイム
あ、そうか。
公共の電波を利用して利益を出しているのに、新規参入が無いからカルテル化しているものね。
マリサ
しかもだ、前回の解説のTBSがやらかした事例みたいに、同業の不祥事を業界ぐるみで隠したり、談合して報じるニュースを選別したりしているわけだ。
マリサ
でな、本来そうならないために「放送法の第二章第四条」が存在していて、寡占を認める代わりに「政治的中立性や両論併記を必ずしなさいよ」と制限をかけているんだぜ。
レイム
でもそれをテレビ局は一切守っていないわけね。
マリサ
そう。
放送法が完全に形骸化して機能していないわけだ。
ならもう第二章第四条いらないよな?
レイム
言われてみればそうね。
あ、そうか、そうなれば電波事業を自由化した方が良いってなるわけね、寡占状態じゃないなら、別に中立性も両論併記義務もいらないしね。
でも、それと安倍政権の思惑にどんな関係が?
テレビ局の「言質」を取る
マリサ
まずな、民主党政権では電波オークション制導入の議論はされていたけど、文字通り「されていた」だけだったんだぜ。
レイム
どういうこと?
マリサ
テレビ局側からしてみれば、認可制で新規参入が無く、しかも電波使用料が異様に安く利益率が高いわけだから、「美味しい利権」だろ?
こんなもん、普通は手放そうと思わないよな。
レイム
まあそうね。
マリサ
ということは、テレビ局は利権を守るために電波オークション制に大反対するし、放送法を守る気なんてさらさら無いから、両論併記でオークション推進側の意見を報じる意思なんて最初から無いわけだ。
レイム
あ、そういうこと。
つまり民主党側にはそれに対抗する方法が無く、ただ「訴えているだけ」になるわけで、要するに準備不足なのね。
マリサ
そうだぜ。
じゃあどうすれば良いかといえばな、最も良い方法は業界側から「放送法を守る義務は無い」という言質を取ってしまう事なんだぜ。
そうすれば、「放送法改正の名分」ができるだろ?
レイム
で、安倍政権は言質を取れたの?
マリサ
取れたぜ。
去年の事なんだが、いわゆる安保法に関連してマスコミ業界は一斉に反対の態度を取ったんだが、その中で多くのテレビ局が安保法反対を訴えて廃案を呼びかけるという、放送法第二章四条を完全に無視した放送を行ったんだぜ。
マリサ
それに対して、当時総務大臣だった高市早苗氏が「四条に違反している」として停波の可能性を示唆したわけだ。
高市氏停波発言、民放労連が公開質問状 根拠求める
朝日新聞 2016年2月16日
http://www.asahi.com/articles/ASJ2J5CJ3J2JUCVL01C.html
https://web.archive.org/web/20160216143048/http://www.asahi.com/articles/ASJ2J5CJ3J2JUCVL01C.html
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)は16日、高市早苗総務相に公開質問状を送った。高市氏が番組編集の「政治的公平」などを定める放送法4条の違反を理由に電波停止を命じる可能性に繰り返し言及していることを踏まえ、4条に「法規範性がある」と考える理由や「倫理規範ではない」と断言する根拠、昨年4月に自民党がNHKとテレビ朝日の幹部を呼んで事情聴取したことを放送法違反で厳重注意する考えはないかなど5項目について、2月末までの回答を求めている。
マリサ
でな、これに対して民放連側は大反発「倫理規範ではない」事を証明しろと公開質問状を出したりしたんだ。
マリサ
更に、「国連関連機関」のデイヴィッド・ケイ教授を呼んで「政府による言論の自由の弾圧である」という大キャンペーンを行い「放送法二章四条を廃止すべきだ」と訴えたわけだ。
<国連報告者>「報道の自由に脅威」…放送法改正勧告へ
毎日新聞 2016年4月19日
https://mainichi.jp/articles/20160420/k00/00m/040/088000c
国連人権理事会が任命した特別報告者(表現の自由担当)のデビッド・ケイ米カリフォルニア大アーバイン校教授が19日、訪日調査を終え「日本の報道機関の独立性が深刻な脅威にさらされていることを憂慮する」として、放送法や特定秘密保護法の改正を求める声明を発表した。
表現の自由を担当する特別報告者の訪日調査は初めて。日本政府への正式な勧告を来年発表する予定という。
ケイ氏は同日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で離日を前に記者会見した。放送事業者に「政治的公平」を求めた放送法4条の規定を根拠に、高市早苗総務相が放送局の電波停止に繰り返し言及した問題について「大いに懸念を抱いている。4条を廃止すべきだ」と述べた。
日本は政府が放送免許を認可し、放送行政を監督していることに関し、政府ではなく独立行政機関が監督すべきだとの考えを示した。
特定秘密保護法を巡っては、特定秘密の定義があいまいで範囲が広がること、報道機関が萎縮する恐れがあることを挙げ「法を根本的に変えるべきだ」と語った。ヘイトスピーチ対策にも触れ、まずは雇用や住居に関する人種差別を禁止する法制定を急ぐべきで、ヘイトスピーチの定義があいまいなまま規制すれば表現の自由に悪影響を及ぼす可能性があると指摘した。
レイム
あ…
マリサ
更にな、TBSや民放連は脊髄反射して、「放送法は努力目標であり倫理規範」だから法的義務ではないとか、番組ではなく放送全体で公平性が担保できていれば良いとか言い出したんだぜ。
高市氏の「停波」発言 ホントの怖さ
毎日新聞 2016年2月18日
https://mainichi.jp/articles/20160218/dde/012/010/060000c
テレビ局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止(停波)を命じることができる−−。高市早苗総務相がそう述べたことに、「報道への介入だ」「言論の自由を脅かす」と反発する声が強まっている。この発言、ホントの怖さとは?【小国綾子、葛西大博】
威嚇?
事の発端は8日の衆院予算委員会。「放送事業者が極端なことをして、行政指導をしても全く改善されずに公共の電波を使って繰り返される場合に、全くそれに対して何も対応しないということは約束するわけにはいかない」。高市総務相が、民主党の奥野総一郎衆院議員の質問に対する答弁で、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返せば、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づき停波を命じる可能性に言及したのだ。
9日の予算委でも「将来にわたって罰則規定を一切適用しないことまでは担保できない」と重ねて答弁。安倍晋三首相は10日の予算委でこの答弁を追認し、「政府や我が党が、高圧的に言論を弾圧しようとしているイメージを印象づけようとしているが全くの間違いだ。安倍政権こそ、与党こそ、言論の自由を大切にしている」と主張した。
高市氏は「従来の総務省の見解を答弁しただけ」と強調する。だが質問者の奥野氏は「意図的に踏み込んだ発言」とみる。元総務官僚で放送行政に詳しい奥野氏は「役人なら、ああいう答弁は書きません。放送法違反で停波することはないか、という私の質問には『仮定の質問にはお答えできません』と答えるのが普通。しかし高市さんは紙を見ることなく自分の言葉で答弁していた」と振り返る。
砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)は「安倍政権はこれまでもメディアコントロールに積極的だった。それゆえ今回、従来の政府見解を重ねて示したというが、『停波』への言及は放送事業者への威嚇となり、表現の自由への攻撃になりかねない」と警告する。
萎縮する放送現場
総務省によると、虚偽報道などを理由とした放送法に基づく総務相や総務省局長名などの番組内容への行政指導は、1985年からの約30年間で36件。そのうち最初の安倍政権(2006年9月〜07年9月)の約1年では7件に上る。一方、民主党政権下では一件の行政指導もなかった。
さらに現安倍政権下でも、衆院選を控えた14年11月、自民党は安倍政権の経済政策について街頭で聞いたTBSの報道が偏っていたとして、在京6局に「公平中立」を求める文書を出した。昨年4月にはNHKとテレビ朝日の番組内容について事情聴取し、NHKに総務相が行政指導をした。
「米国で、オバマ大統領に批判的な報道をしたからといって、民主党がテレビの幹部を呼びつけるでしょうか」と砂川さん。「NHKは国会での自身の予算審議、民放は4月の番組改編を決める今の時期に、何度も『停波』の可能性に言及すれば、夏の参院選報道にも影響しかねない」と危惧するのである。
国際ジャーナリストでテレビキャスターも務める蟹瀬誠一さんが打ち明ける。「『停波』発言が出れば現場はどうしても萎縮する。日本は企業ジャーナリズムで会社の縛りが強い。放送局の経営者は権力者側に近い面があり、そのような幹部の下では現場にもプレッシャーがかかる」
放送法4条では「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」など放送事業者が番組編集上守るべき規則を定めている。放送による表現の自由は憲法21条で保障されているため、放送法4条は憲法に抵触しないよう、放送局自身が努力目標として目指すべき「倫理規範」というのが多くの学者たちの解釈だ。しかし93年のテレビ朝日の「椿発言」をきっかけに、総務省は、罰則を科すことのできる「法規範」とする解釈を採用。電波法76条では、電波停止命令の権限が総務相に与えられている。
高市氏が、一つの番組だけでも政治的公平性を欠いたと判断する可能性に言及したことも波紋を広げた。政府は12日、「一つの番組でなく放送事業者の番組全体を見て判断する従来の解釈に何ら変更はない」との統一見解を示したが、高市氏や安倍首相はその後も「『番組全体』は『一つ一つの番組の集合体』であり、一つ一つを見て全体を判断するのは当然」と述べている。
蟹瀬さんは「昔ならともかく、多メディア、多チャンネル時代には、一つの番組を見て判断することは意味をなさない」と批判する。ジャーナリストの江川紹子さんも「さまざまな偏り方をした多様な番組が存在し、放送界全体で公平性が取れている方が国民は多様な情報に触れられます」。
「一つ一つの番組の中でバランスを取れ、両論を扱えとなると、国民に対する情報提供の範囲は狭まってしまう」と憤るのは砂川さんだ。
自由が侵される
高市氏は、民主党政権下の10年11月に、当時の平岡秀夫副総務相が同じ趣旨の答弁をしている、とも主張する。
江川さんが言う。「議事録によれば、平岡氏は総務省見解を述べた上で、罰則については『極めて慎重な配慮の下に運用すべきもの』と強調しています。片山善博総務相(当時)も『表現の自由、基本的人権にかかわること』だから『極めて限定的』『厳格な要件の下』で『謙抑的でなければいけない』と答弁している。高市発言とのニュアンスの違いは一目瞭然です」
市民団体「放送を語る会」と日本ジャーナリスト会議(JCJ)は「言論・表現の自由への許しがたい攻撃だ」と高市氏に辞任を求める声明を発表した。しかし、この問題に対する新聞報道には各紙に温度差がある。
米国のAP通信や「TIME」誌での記者経験のある蟹瀬さんは「欧米メディアならば報道機関が連携し、抗議しているところでしょう。日本では放送局は許認可事業だからどうしても立場が弱い。新聞や雑誌が反対運動を展開する必要がある」と語る。
江川さんは「一般の人々の関心が決して高くない」ことに不安を感じている。「『政治的公平性を守る』『一方的見解ばかりを取り上げない』といった政府の言い分は一見もっともらしいから」と分析しつつ、「安倍政権は、マスコミ不信という世論を利用し、自分たちの権限を拡大しようとしている。政府自身が政治的公平性を判断し、気に入らない報道があったら呼びつける、というのでは言論の自由は守れません」と訴える。
砂川さんは警告する。「今回の『停波』発言は、決して『高市&安倍VSテレビ局』という構図じゃない。メディアが規制を受けることは間接的に国民の言論統制につながる。それは戦前の歴史を見れば明らかです」。本当に怖いのは、メディアが政治に屈することで、私たちの「自由」がじわじわと侵されかねないという点なのだ。
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
マリサ
しかもな、記事ではアメリカの事例を出したりしているが、そもそもアメリカは電波オークション制を導入してテレビ放送事業の自由化を行っている国だぜ、認可制で事実上の寡占を容認し、その代わりの義務として「放送法」で政治的中立性や両論併記を課している日本とは全く事情が違うぜ。
レイム
ああ、この言い分通りなら、デヴィット・ケイ氏の主張も含め、「電波オークション制推進の言質が取れた」と言えるわね。
記事でも「認可制だから問題がある」って指摘しているしね。
マリサ
そう、これで準備が整ったんだぜ。
そのうえで民放連は、最近になってこんな事を言い出したんだぜ。
電波オークション「選択肢の一つ」 規制改革推進会議が年内答申の方向 民放連は反対
SankeiBiz 2017.11.17
http://www.sankeibiz.jp/business/news/171117/bsj1711171949013-n1.htm
内閣府の規制改革推進会議は17日、電波の周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」の導入を首相に提言する答申を年内にとりまとめる方向で検討することを明らかにした。会合では電波割当制度の改革について、先月から部会を設けて議論を続けていた。
会合後に東京都内で会見した大田弘子議長(政策研究大学院大教授)は、総務省が審査して免許人を選ぶ現行の「比較審査方式」に加え、「オークションという選択肢があってもいいのではないか」と述べた。「そんなに総務省の裁量が優れているのか」と現行制度にこだわる総務省に苦言を呈した。
会合では、経済協力開発機構(OECD)加盟国35カ国のうち、日本だけがオークションを導入していない点について、委員から強く疑問視する声が挙がったほか、オークション導入の後発となることを逆手にとって、導入国の失敗例を生かした制度設計ができるとの意見も出たという。
一方、日本民間放送連盟(民放連)の井上弘会長は17日の定例会見で、政府の規制改革推進会議で議論が進められている「電波オークション」導入について、「われわれは多かれ少なかれ公共性を担っており、金額の多寡で決まる制度には反対する」と批判した。
その上で、「われわれへの批判はあると思うが、公平性を保ち、ライフラインとしてやってきた自負がある」とも語った。
マリサ
記事にもあるように、これまで散々認可制の根拠となっている放送法二章四条を倫理規定で義務では無いとか言っておいて、、「われわれは多かれ少なかれ公共性を担っており、金額の多寡で決まる制度には反対する」「われわれへの批判はあると思うが、公平性を保ち、ライフラインとしてやってきた自負がある」とか言ってるんだぜ。
レイム
もうここまで来ると利権にしがみついているだけにしか見えないわね。
マリサ
こうして安倍政権は、電波オークション制導入に必要な条件を満たしたわけだ。
今更マスコミ業界が何を言おうと、自分達で「放送法を守る義務は無い」と、事実上の放送法放棄宣言をしてしまったわけだからな。
今回のまとめ
・元々テレビ局の電波利用料が著しく低く、10年以上前から問題にされていた
・問題解決のため政府が推進する電波オークション制にマスコミ業界は反対している
・マスコミ業界は認可制の利権を享受しながら、中立性という義務は無視している
・安倍政権は、マスコミ業界から放送法形骸化の言質を取り、オークション制導入の筋道を立てた
マリサ
そんなわけで今回の本編はこれで終わるぜ。
来週の後編では、認可制度を悪用して「やりたい放題」してきたテレビ業界の問題点について解説していくぜ。
レイム マリサ
ご視聴ありがとうございました
レイム
なんていうか、最早テレビ業界は支離滅裂ね。
マリサ
テレビ局の連中は、要するに現在の寡占状態を維持しながら、寡占の代価としての「放送法二章四条のみ」を政府に放棄させたいだけだぜ。
レイム
だいぶ解り易いご都合主義ね。
大口
いやーおつかれー。
マリサ
なんだ、なんかやけに今日は機嫌が良いな。
大口
だってさ、前も言ったけど前・後編にすると後編が少し楽になるし、なにより一つの動画にまとめる場合に起きる「どう情報を圧縮するか」で悩まなくて良いからね。
レイム
相変わらず「どうやって楽するか」しか考えていないわね。
大口
楽をして何が悪い!楽な方が良いに決まってる。
レイム
で、「分割せず一つの動画におさめる」って話はどこいったの?
マリサ
ま、まあそんなわけで今回はここまでです。
大口
またらいしゅ~
マリサ
あ、勝手に〆て逃げた
レイム
逃げ足だけははぐれメタル並みね…
倒しても経験値少なそうだけど。
マリサ
そんなわけであらためて
レイム マリサ
またらいしゅ~
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