日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

韓国の文在寅大統領について(その2)


さて、本日は前回に続き先日当選した文在寅韓国大統領について書いていきます。


前回書いたように、文大統領の所属する共に民主党は、単独では国会で多数派になれない少数与党であり、だからこそ世論の支持が重要となるわけだが、そのために文政権は「空手形の乱発」を行っており、そのせいなのか政治家というより芸能人のような人気の出かたをしている。


更に外交面でも「具体的な実効性が不明」な政策が数多くあり、対日本においては頼りの日韓友好論者(良心的日本人)は慰安婦合意関連の歯切れが悪く、国連傘下の委員会が再交渉要求をしてきたが、これにも拘束力はなく、実際には手詰まりとなっている。


ただし、北朝鮮への融和政策の動きは既に始まっているうえに、日本のメディアは直接擁護できない相手の場合詭弁を使ってどっちもどっち論に印象操作する傾向が強く、特に国外へ向けてこうした印象操作で韓国に有利な国際世論を作り出そうとする可能性があり、更なる東アジア情勢の不安定化に注意しないといけない。


※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。



1:芸能人的な人気の文大統領


まずはこちらの記事から

韓国国民10人中8人「文大統領、国政運営うまくできると思う」
2017年05月12日09時49分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/996/228996.html

国民10人のうち8人以上が「文在寅ムン・ジェイン)大統領が国政運営をうまくできると思う」と予想した。

11日、韓国社会世論研究所(KSOI)の定期世論調査の結果によると、「文大統領が国政運営をどれほどできるか、それともできないか」という質問に対して回答者の83.8%が「うまくできると思う」と答えた。

「とてもうまくできると思う」は35.3%、「ある程度できると思う」は48.5%で、これを合わせた数値だ。一方、「うまくできないと思う」は10.2%に過ぎなかった。

「うまくできると思う」は年齢別に30代が91.1%と最も高く、40代でも89.1%と高かった。

地域別では、大田(テジョン)・忠清(チュンチョン)・世宗(セジョン)が91.6%、光州(クァンジュ)・全羅(チョルラ)が91.2%で、政治理念別では進歩層(95.5%)が、政党支持層別で共に民主党(96.8%)と正義党(93.2%)の支持層が高く評価した。

自由韓国党の支持層(53.0%)でも半数以上が文大統領の国政運営に期待をかけていることが分かった。

また、文大統領の国政運営の評価基準の場合、「国民との約束である公約履行」が30.4%と最も高く、「国民との疎通」は26.9%と2位を占めた。

国政運営の透明性(13.6%)、野党との疎通と協力政治(10.7%)、国政運営の公正性(10.6%)、国政運営の効率性(5.0%)が後に続いた。

KSOI側は「過去の政府で頻繁に起きた公約破棄と不通に対する国民の不信や不満がこのような結果として現れた」と分析した。

一方、今回の世論調査は韓国社会世論研究所の世論調査で、全国の満19歳以上の成人男女1044人を対象に大統領選直後である5月10日の一日間、有無線RDD(無線81.7%、有線18.3%)電話面接調査方式で行われた。標本誤差は95%の信頼水準で±3.0%p水準であり、回答率は19.3%(固定電話面接9.7%、無線電話面接24.8%)だった。より詳しい事項は、中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参考すれば良い。


この調査結果なのですが、得票率のわりにこうした数字が高いのには理由があり、文政権は今ものすごい勢いで「空手形の乱発」を行っているのです。


例えば文大統領は以下のように携帯の基本料金の廃止を公約としています。


携帯電話の基本料金廃止、文在寅大統領の公約は実現可能か 東亜日報 May. 11, 2017


韓国の場合、実はスマホのモバイルアプリの利用時間が世界最長であるため、こうした公約は支持を得易い背景があるわけですが、東亜日報の記事でもあるように実現はほぼ不可能です。


韓国人、モバイルアプリの1日利用時間が200分で「世界最長」 ハンギョレ新聞 2017.05.11


また、現在韓国では若い層を中心に失業率が年々高くなってきており、この事が大きな社会不安となり、いわゆる「ヘル朝鮮」という言葉にはこの失業率増加も関係しています。


韓国の青年失業率11.2%、体感失業率は23.6% 朝鮮日報 2017/05/12


上記のような背景から、文政権はかなり大規模な雇用政策を公約としていますが、それは以前も書いたように公務員や公共事業での雇用を増やすというもので、具体的にどうするのか不明なうえに、そもそもどのように予算を捻出するのかさえわかっていない状態なのです。


任期内に公共部門の非正規ゼロに=文大統領 聨合ニュース 2017/05/12
【コラム】文在寅大統領の雇用創出とサムスン自社株消却(1) (2) 中央日報 2017年05月12日


また前回書いたように、外交政策では具体的な方針も無いまま「東アジア情勢で中心的役割を果たす」などのかなりハードルの高い公約を掲げていますが、現状出てきている具体的な方針は「日米中露に特使を派遣する」といった程度です。


韓国大統領 日本など主要4カ国に特使派遣へ 聨合ニュース 2017/05/12


更に、先日行われた安倍総理との電話会談では、それまで再協議か破棄かといった強気な発言があったにもかかわらず、会談ではそのどちらも主張せず、「国民が納得していない」と原因を国民に転嫁しており、韓国では「日本に強気に出た」と高い評価を受けたようですが、「実態は現状と何も変わらずただ険悪さが増しただけ」だったのです。


文大統領が慰安婦問題で安倍氏に“直球” 専門家の評価まちまち 聨合ニュース 2017/05/11


要するに、文政権は就任当初から明らかに言行不一致な態度が目立ってきているわけですが、彼はとにかく派手なパフォーマンスを繰り返しているため、韓国内では芸能人的に人気が高まってきているのです。


文大統領関連グッズが高値で人気 東亜日報 May. 12, 2017
「人間の文在寅が知りたい」 文大統領関連の本が飛ぶように売れる 東亜日報 May. 11, 2017


芸能人ならば「そういう役だから」で済みますが、政治家は当然そうはいかないわけですから、公約がみな空手形であったと判明すると急速に支持率が落ちる可能性が高く、期待が高いだけに下手をすると、盧武鉉大統領のように就任1年目で弾劾裁判という事になる可能性も充分にありえます。


それほど文政権は不安定なのですが、実は盧武鉉大統領も弾劾後から支持率を回復しようと対日・対米での過激な発言が増えていったという背景があり、前回書いた「一触即発の事態」もそうした流れから起きた事です。


たとえ弾劾まで行かなくとも、文政権が今後空手形乱発の副作用で急速に支持率を落とす事はほぼ確実であり、また少数与党で国民の支持率が何よりも重要だからこそ、文政権では尚更「言動の過激化・先鋭化」が進む可能性が高いのです。

2:中朝と急速に接近


更に問題なのが、言葉では中国にも北朝鮮にも断固とした態度を取るといった発言をしていますが、実態としては文政権がこの2国に急速に接近しつつある事です。


たとえば、先日の各国首脳との電話会談では、日本とは慰安婦合意で対決姿勢を、アメリカとは当たり障りの無いやり取りをしたのとは裏腹に、中国には「(THAAD問題での)中国の関心と懸念についてはよく分かっている。この問題に対する理解を高め、両国間の意思疎通が早期に行われること希望する」と、かなり融和的な対話姿勢だったようなのです。


文大統領の電話外交、習主席とは対話姿勢も安倍首相とは… 朝鮮日報 2017/05/11


現在韓国はTHAAD問題に関連し中国から経済的な嫌がらせを受け、観光業や中国進出企業を中心にかなりの額の損害を出しており、企業によっては中国での営業が不可能な状態にまで追い詰められているにもかかわらずです。


朴政権中期の中国接近で日米から警戒され、不信感払拭のためのTHAAD配備慰安婦合意という側面もあったにもかかわらず、そこからまた更に中国へ接近し始めているのです。


また北朝鮮関連でも、当選前は発言を後退させ続けていた対北朝鮮融和政策が次々と復活してきており、特に朴政権時代に閉鎖された南北共同運営による開城工業団地に関しては、就任2日目にして「再開へ向けて検討に入った」のだそうです。


開城工業団地・金剛山観光「新政府で再開」期待 ハンギョレ新聞 2017.05.10
韓国統一部「開城工団再開、国連決議違反かどうか検討が必要」 朝鮮日報 2017/05/12


そもそも開城工業団地に関しては、北朝鮮側の収益が核開発に使われているとして長年問題となっており、だからこその閉鎖であったはずであり、この問題は当然の事ですが全く解決していません。


また、国連安全保障理事会による新たな対北朝鮮制裁決議により(国連総会の小委員会の勧告等と違い安保理決議は拘束力があります)、最近ドイツが北朝鮮大使館敷地内で運営されている宿泊施設と会議場閉鎖を決定したわけですが、これも収益が核開発などに使われているとみなされたからです。


ドイツが北朝鮮大使館の宿泊施設閉鎖へ 賃貸料で外貨取得、安保理決議で制裁強化 産経新聞 2017.5.10


つまり現在文政権の行っている事は、明らかに国際的な対北朝鮮制裁の流れと逆行する行いなのです。


しかも、文政権では文在寅の文(ムン)と金大中盧武鉉政権の太陽政策とかけて月光政策とよばれる対北朝鮮融和政策を準備しているといわれ、その事がアメリカとの亀裂を呼ぶと指摘されています。


文在寅氏当選:米紙「対北『月光政策』がソウルとワシントン間に亀裂もたらす可能性も」 朝鮮日報 2017/05/11
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つまり、内政面だけではなく外交面でもかなり不安定な政権であり、特に現状中国と北朝鮮はあまり良い関係とは言えないにも関わらず、「双方に良い顔をしようとして」結果状況を悪化させる可能性が高いわけです。


3:更なる不安定化の呼び水


これだけでも現状の韓国がどれほど不安定な存在であり、東アジア情勢に悪影響を与えかねない存在であるかがわかるわけですが、問題はこれだけではありません。


それは韓国人達から「良心的日本人(例1 例2)」と呼ばれている、私が日韓友好論者と呼んでいる人々が関係してきます。


その前に、なぜ日本のメディアなどにいる日韓友好論者達が慰安婦合意に肯定的だったのか、それが良くわかる事例がありましたので、丁度良い機会ですし先にそちらを説明します。


韓国政府があす慰安婦報告書刊行 白書でなく民間報告書 聨合ニュース 2017/05/03


文大統領が当選する少し前のことなのですが、韓国政府が政府の公式の慰安婦白書の刊行を断念し、民間の報告書という形で実質的な白書相当を発表しました。


そしてこの記事には非常に興味深いことが書かれているのです。
それが以下の部分です。

報告書は、日本政府が朝鮮人被害者の強制動員に関与し、従って法的な責任もあるという韓国側の従来の姿勢を改めて示した。業者による動員だったとしても日本軍の官憲が要請したとして、「公権力にその最終的な責任があるという事実を否定することはできない」と指摘。日本の軍と政府の加害行為は国際条約に違反し、国際法上の戦争犯罪、人道に対する罪にあたると説明した。

これなのですが、慰安婦とは「国や軍の方針としての命令で軍人や官憲が直接的に行った拉致」の事であるとする韓国側の公式見解と明らかに反しているのがわかります。


そしてこの慰安婦の定義は、いわゆる朝日や中央大学の吉見教授などの慰安婦の定義と全く同じなのです。
恐らくこの報告書に関わった和解癒し財団の関係者に、以前ナヌムの家から提訴された世宗大学の朴裕河教授と同じような考えの人々がいるのでしょう。


しかしこの報告書にも書かれている慰安婦の定義は、韓国世論や韓国最大の圧力団体である慰安婦組織「挺対協」によって完全に否定されており、韓国では「国や軍の方針としての命令で軍人や官憲が直接的に行った拉致」とする定義が絶対視されています。


そして当然の事ですが、この報告書も韓国では大バッシングを受けています。


慰安婦報告書 執筆者の反発受け修正=韓国政府 聨合ニュース 2017/05/05
慰安婦報告書を見てみれば…韓日合意は“外交成果” ハンギョレ新聞  2017.05.07


要するに日韓友好論者達からすれば、慰安婦合意が推進されたほうが少なくとも否定されるよりは「比較的都合が良い」のです。
韓国内の合意推進派は彼らと同じ慰安婦の定義を持っており、積極的に連携していけるからです。


しかし韓国世論は彼らの定義を完全に否定している上に、政治家も保守・革新問わずほとんどが世論に迎合してこの定義を否定しており、それは現在の与党である共に民主党も文大統領も同じです。
だからこそ微妙な反応なのでしょう。


ただ、だからといって彼らが何も韓国に協力しないわけではなく、特に朝日などがそうなのですが、このように明確に擁護できない相手を擁護したい場合、彼らは「燻製ニシンの虚偽」と呼ばれる詭弁を使い、さも「対立する双方に問題がある」と相対化したうえで、問題のない側に責任があるかのようにミスリードします。


(これにプラスして、相手の主張を持論に都合よく歪め、その歪められた主張に反論する事で相手を論破したかのように見せるストローマンや、対立軸のうち反論し易い対象の主張のみを抽出し、「合相手の主張はこういうものだけだ」という印象を与えるチェリーピッキングなどの詭弁とセットの場合もあります。)


たとえば仮に慰安婦合意関連ならば、「国と国との間で結ばれた約束事を安易に破る韓国の態度は問題だが、韓国の世論を汲んだ大統領の言葉を一方的に拒絶する安倍総理タカ派的思考こそ問題だ、対北朝鮮問題での連携のためにも、まず日本側が対話の窓を開くべきだ」といった感じになるのではないでしょうか。


実際、こうした燻製ニシンの虚偽のテクニックを使った論調の記事が朝日系列のdot.というページに最近掲載されました。


古賀茂明「北朝鮮ミサイルで東京メトロが止まって都営地下鉄が動いた理由は忖度?」 dot./朝日新聞 2017/5/ 8


北朝鮮によるミサイル発射実験により、東京メトロが列車の運行を一時ストップした件に関して、日韓双方が煽りあいをしており、それで得をするのは金正恩だけであるとしているのですが、この記事の中で韓国を煽っている日本人を「ネトウヨ」としています。


つまり、一見相対化しているだけのように見えて、実態としては「危機を煽るネトウヨ叩き」がしたいだけの記事という事になります。


しかも実は北の挑発が最も危険域に達するとされた4月25日、韓国ではエアショーに参加した訓練機の音でソウル中がパニックになり、問い合わせ電話が殺到し一部の学校では授業がストップしたのだそうです。


Xデーに戦闘機飛来、「戦争か」ソウル市民騒然 朝鮮日報 2017/04/25



朝日の記事では「今回の対応について、お隣の韓国内では、一部で「過剰反応」だという批判がなされたことも報じられている。彼らは、常在戦場という気持ちで、日ごろから様々な訓練なども行っている。ミサイル発射への危機感も強い。」となっていますが、実態とは大きくかけ離れています。


つまり、そもそも「どっちもどっち論」の前提自体が成り立っていないのです。


こうした印象操作を伴う詭弁はマスコミ業界では良く使われるわけですが、問題はこの手の印象操作のテクニックを使って、日本のメディアが他国に対して「韓国の合意破棄は当然だ」という世論を作り出す可能性がある事です。


そしてこの手の詭弁のテクニックは、そのからくりを知らないと簡単に引っかかってしまう代物であり、また仮に異論があってもそれがどのような種類の詭弁であるかが解らないと、なかなか反論し難いという特徴があります。


そのうえで、なんだかんだと他国の人にとって日本の情報を知る一番の手段は日本のメディアであり、その中でも「リベラル」とされている朝日や毎日の記事は世界的にも各国のメディアでよく引用される傾向にあります。


そしてまた、韓国においても朝日や毎日の記事は保守系の三大紙でさえも肯定的に、また読売や産経の記事は否定的に掲載することが多く、結果韓国人は「日本人も多くの人は”正しい考え”を持っているのだ」とミスリードされ、更なる過激化の原因となっている背景があるのです。


つまり、あらゆる面で現状の韓国世論の先鋭化・過激化は、日本のメディアが積極的に煽っているという背景もあり、また国際社会における日本の国内情勢や世論の主流な考え方も、日本のメディアによってミスリードされる危険性がまだまだ充分に高いのです。


日本もそうですが、現状「自国のメディア」に対する不信感は先進国を中心に各国で高まっていますが、「他国のメディアも同じように問題があるのだ」という認識は殆どの国で共有化されていないからです。


そしてこうしたミスリードによる印象操作は、結果的に「国際世論も韓国を支持している」という大義名分として韓国内で利用され、これもまた韓国による対日本での過激化・先鋭化に繋がるわけですから、日韓友好論者も東アジア情勢の不安定化に影響を与える要因になり得るという事になるわけです。


現状を観察する限り、文大統領が韓国内で比較的早い時期に急速な支持率下落を引き起こすと同時に、盧武鉉大統領と同じように対北朝鮮政策で国際社会から批判されるのは確実であり、国内での「劣等性の指摘」を回避する手段は(日本人からみた)反日の過激化くらいしか文政権には解決策がありません。


韓国では、他者の劣等性を指摘することこそ自己の正しさや優越性を証明する最も効果的な手段だからです。
そしてそれは日韓関係の悪化だけではなく、対北朝鮮での足並みの乱れが東アジア情勢の不安定化を引き起こすわけですが、こうした不安定化には日本の無責任な日韓友好論者達も深く関わっていく可能性が高いわけです。




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