さて、本日は一連の慰安婦像問題について、以前書いた「韓国人が日本人から嫌われる根本的原因」や「日本と韓国では「協調」と「妥協」の意味が全く違う」に関連した内容を書いていきます。
以前より、韓国社会では他者の劣等性を担保に自己の優越性や正当性を証明するという独特な考え方があると書いてきたが、この考え方が韓国社会の基盤となっていることもあり、彼らはまず相手を「否定する」をコミュニケーションの前提としていることが多い。
一連の慰安婦像問題にしてもそれは同じであり、「協調」を「妥協」と定義する彼らの考え方では、この問題に対して日本との「協調」を示す態度は日本に従属し妥協する態度と取られるため、問題を批判された場合「更に相手を否定する」事が当然の態度となる。
また、これはあくまで彼らの否定を前提とした価値観に根ざした反応であり、韓国が反日だからという理由とは少々性質が違うこと、そしてこうした態度は「これをすれば向こうも変わるはず」というものではなく、彼ら独特の価値観からは当たり前の反応である事に注意しないといけない。
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1:「否定文化」の国
まずはこちらの記事から
「親日・軍部・保守を清算せよ!」 敵をつくる政治手法を批判してきた文在寅氏、新著は敵だらけ
朝鮮日報 2017/01/17
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最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は17日『大韓民国に問う』と題された著書を出版する。文氏はこの本の中で「李明博(イ・ミョンバク)前大統領と朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の最大の過ちの一つが国民を分裂させたこと」と指摘し「嫌悪の政治ではなく和諍(わじょう、韓国の仏教用語で対立をより高い次元で解消すること)の時代に向かおう」と呼び掛け「敵をつくる」形の政治手法を批判した。ただその一方で文氏は「親日勢力」「独裁軍部勢力」「サイバー保守勢力」などを清算すべき対象としているため、結局は「敵をつくる手法」に自らも染まっているとの批判を受けている。
発行前日に配布された同書に関するさまざまな資料によると、文氏は「最も強く訴えたい言葉は、われわれの政治における主流勢力が交代すべきであること」「そのため大清算、大改造、時代の交代、歴史の交代といった表現を使う」としている。文氏は「(1945年の)解放当時、親日の歴史がしっかりと清算され、独立運動の精神をたたえていれば、社会正義がしっかりと定着していたはずだった」「解放された後も独裁軍部勢力や安全保障にかこつけたサイバー保守勢力が登場し、民主化後も韓国社会を支配し、化粧を変えるだけだった」と主張した。
文氏は「親日から反共、あるいは産業化勢力へと、地域主義を利用した保守という名の彼らは本当に偽善的な虚偽の勢力だ」「(大統領直接選挙制が導入された)1987年の6月抗争以降、民主政府が成立していれば、独裁やそれに加担した集団をしっかりと審判し、常識的で健康な国になっていたはずだ」と主張した。この文章から文氏が反共と親日、産業化と保守を一つの勢力と見なしていることが分かる。文氏は「朴槿恵政権はもちろん、李明博政権でも国家権力が私的な目的に使われることは多かった」「これらはできる限り審判し、責任を追及しなければならない」と主張している。
(後略)
こちらの記事なのですが、記事では現在韓国の次期大統領候補最有力となっている文在寅氏が、他の候補の「敵を作る政治」の手法を批判しながら、彼の著書ではまさにその「敵を作る政治」を実践していると批判する内容となっています。
要するに、誰もが「敵を作る政治」=他者の劣等性を指摘する手法しか行っていないという事になるわけですが、以前から書いているように韓国では他者の劣等性の指摘こそ自己の優越性や正当性の証明であるため、自身の政治理念や政策を訴えるよりもこちらの方が支持されやすい傾向にあるのでこうなるわけです。
少々複雑ですが文氏は要するに、対立候補の「敵を作る政治」という劣等性の指摘(相手の否定)をするために、自身も「敵を作る政治」という劣等性の指摘(相手の否定)をしている事になります。
こうした事例から、韓国では他者とのコミュニケーションの方法として「相手を否定する」行為が最も社会に受け入れられやすい一般的手法である事が解るわけですが、これは一連の崔順実問題に関連した「蝋燭デモ」においても同じです。
以下は韓国在住30年になる外国人記者が、一連の蝋燭デモに対して抱いた印象について書いた記事です。
【社説】韓国の脆弱な法治を崩壊させる「国民感情」 朝鮮日報 2017/01/17
記事では日本の日韓友好論者がデモに対して行った評価とは全く異なる評価がされており、韓国の法治が非常に脆弱で、いわゆる「国民情緒・民族情緒」といった感情で簡単に覆されてしまううえに、政府の決定や憲法判断までもこの感情に左右される危うさがあるとしています。
これに関しても、以前から書いているように韓国では根拠や整合性よりも「その時の感情」や「かくあるべき姿」が優先されるからというのもあるのですが、同時に先ほども書いたように「否定する」という行為が何よりも支持されやすい環境にあることが非常に重要な要素となっています。
また、数年前から韓国で若い世代を中心に使用されている「ヘル朝鮮」といった単語も、以下の記事のように自分達の不幸な境遇から国そのものを全否定したり、「若者たちが希望がないという世の中を変えることもできず、変えたくもない」と社会構造そのものを全否定する主張が支持を集めた結果です。
[オピニオン]20代の孤独死の衝撃 東亜日報 DECEMBER 19, 2015
【コラム】「ヘル朝鮮」を「ヘブン大韓民国」に(1) (2) 中央日報 2016年01月13日
このように、韓国ではとにかく「何かを否定する」行為が社会で共感を得易く、「ヘル朝鮮」とはそれが内側へ向かい広く共感された結果なのです。
ある意味で韓国は否定による対話で成り立つ「否定文化」の国といえるでしょう。
日本のように「そんなネガティブな人もいる」とは根本から性質が違うわけです。
2:日本に対しても「否定」で対話
上記のように、韓国では何らかの「否定」を行う事が肯定よりも共感を得易く、そのため誰もが何らかの否定を行い他者と共感しようとする傾向にあるのですが、これは当然日本に対しても同じです。
たとえば、一連の慰安婦像問題に関してみてみると、この件で日本政府は韓国との通貨スワップ協定再開協議を対抗措置として中止したわけですが、すると中央日報から以下のような記事が出てきました。
【時視各角】韓日通貨スワップは政治だ(1) (2) 中央日報 2017年01月12日
記事では「日本は一度も韓国が絶対に必要な時、望む時に助けてくれたことがない。むしろ最初にお金を抜き出し不意打ちを食らわせた」と、過去日本は韓国を支援したことが無く、常に韓国の足を引っ張ってきたとしており、更に「日本が先に手を差し出すようにしなければならない。そうするには米国を動かし、中国をてこに使わなければならない」としています。
要するに、通貨スワップは必要だがそれは日本側から提案するようにしなければならず、そのために中国やアメリカを利用するべきだとしています。
また記事の最後では、むしろ日本よりもアメリカとスワップを結ぶべきであり、そのおまけとして「厳しいときは後頭部を叩く日本の鼻をぺしゃんこにする」と締めくくっています。
色々と書かれていますが、要するにこの記事は結局「日本とのスワップが必要」と主張しているだけなのですが、そのために何重にも日本を否定し、そうする事で自己の優勢を確立しようとしているためこのような内容になっているわけです。
日本からしてみると「なぜ日本との通貨スワップが必要というだけの記事がここまで歪むのか」と、かなり不可解でしょうが、否定を前提とした対話が共感を得易い韓国ではこうしたほうが読者の支持を得られるわけです。
また、最近韓国では日本側が慰安婦像設置への対抗措置をとったことに対して、「更に各地に慰安婦像を建てる」運動が盛り上がりを見せており、日本大使館前や釜山領事館前の慰安婦像の撤去どころではなくなってきていますが、これも反日よりも「否定を前提とした文化」だからこその反応といえます。
独島に少女像建設へ 京畿道議会の団体が募金開始=韓国 聨合ニュース 2017/01/16
韓国全域に広がった少女像設置運動、今年70カ所を超える見込み 中央日報 2017年01月16日
首都圏の自治団体、各地に平和の少女像を相次ぎ建設 ハンギョレ新聞 2017.01.13
またこうした反応は韓国起源説でも見ることが出来、たとえば最近韓国最大手紙の朝鮮日報が螺鈿(漆器などに貝殻の真珠層を埋め込む装飾方法)の起源を主張しています。
韓国工芸芸術家協会会長「朝鮮が日本へ螺鈿の技術を教えた」 朝鮮日報 2017/01/15
記事では、「植民地時代に韓国の職人が日本へ渡って螺鈿(らでん)の技術を伝えたのに、逆に『日本から学んできた』と誤って記述している点が特に問題」と主張しているのですが、螺鈿の技術は奈良時代に中国から日本へと伝わり独自発展したものです。
そもそも日本には日韓併合以前から多数の螺鈿細工があります。
更に、以前このブロマガで日本刀の韓国起源説を紹介したときに何度か取り上げた「金地螺鈿毛抜形太刀」は、12世紀に藤原頼長(1120~1156年)が春日大社に奉納したといわれている重要文化財ですが、非常に精巧な螺鈿細工が施されている事で有名です。
要するに時系列がまるで合わないうえに、日本刀の韓国起源説の件で説明しましたが、韓国側は日本刀の原型となった「毛抜型太刀(衛府太刀)」の存在すら知らないわけですから、当然韓国工芸芸術家協会会長の主張はデタラメです。
ではなぜこんなデタラメを唐突に言い出したかといえば、以前から説明している「日本の文化は全て自分達が教えたものだ」という民族主義に根ざした考え以外に、今回のテーマである「否定文化」が非常に深く関わっています。
その理由は先ほども引用した、「植民地時代に韓国の職人が日本へ渡って螺鈿(らでん)の技術を伝えたのに、逆に『日本から学んできた』と誤って記述している点が特に問題」が非常に重要な要素となります。
徹底した序列社会である韓国では、「日本と韓国では「協調」と「妥協」の意味が全く違う」で書いたように、相手と協調するという行為は「弱さ」と解釈されることが多い事から、「日本から教わった」としてしまうと、日本人のように相手を尊重する反応にはならず「韓国の方が序列が下=劣等」と解釈されます。
そのため、韓国社会において「螺鈿技術は日本から教わった」としてしまうと、螺鈿職人が韓国人から低く見られて「下位の序列」と定義され、劣ったものとして存在意義そのものを否定されてしまうのです。
「協調」という対等を前提とした概念のある日本では考えられない事ですが、こうした背景があるので韓国ではなんとしてもそれを否定しなければならず、また起源主張をすることで日本の文化を否定できるため多くの人から共感を得易い事もあり、「日本よりも序列が上だ」と証明するためにも今回のような起源主張をするわけです。
通貨スワップや慰安婦像の件などでもこれは同じです。
韓国側から「折れた」ら韓国の方が「序列が下」となってしまい、韓国的価値観では「否定の対象(=劣等性の指摘対象)」となってしまうので、なんとしても「日本の劣等性を指摘(相手の否定)」をしなければならずあのような記事が出てくるわけです。
これらも「否定を前提とした対話」の社会だからこその反応といえるでしょう。
3:「韓国の態度を変えさせる」は実質不可能
今回書いたように、否定を前提とした対話方法が一般的である韓国に対して、日本側がたとえば慰安婦像の件で「協調」という対応を韓国側に求めたとしても、それは彼らとは捉え方がまるで異なるため無意味です。
もっとはっきり書けば、融和的な態度をとればそれは韓国側から「日本のほうが劣等だ」と認識されるだけですし、逆に強行な態度を取れば日本の劣等性をなんとかして見つけ出そうと、今回の慰安婦像問題のような態度に出ます。
要するに、対策がしっかりしていれば状況が改善されるというわけではない事になるのですが、「ではどうすればいいのだ?」となると、実は対策としては後者のほうが正解です。
先日日経bpで鈴置氏が記事に書いていましたが、韓国側は日本が韓国に対して「歩み寄る」態度をとった場合、次々と問題を新たに作り出す=劣等性を見つけるために積極的に否定を行うという状態になる傾向にあります。
「中国側に寝返る韓国」にスワップは追い銭 日経bp 2017年1月17日
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では強行に出た場合、つまり現状安倍政権がやっていることはどうかといえば、俯瞰的に問題を見た場合「声が大きくなった」だけで実は新たな問題は何も発生しておらず、少なくとも「今以上に悪くはなっていない」のです。
この法則性から、いずれ韓国は次の大統領の就任後に慰安婦合意を何らかの形で反故にするでしょうが、恐らくそれ以上何もできません。
なぜなら現状韓国に出来る事は、アメリカか中国を頼って日本に圧力をかけるという手段しかなく、実質そんな事は現在の情勢から見て不可能だからです。
しかしここで日本が何らかの譲歩をしてしまうと話は別で、それをやった時点で韓国は今回の慰安婦像設置と同レベルかそれ以上の新たな何かを仕掛けて来るでしょう。
彼らは日本側の譲歩を弱さと判断し、更なる「否定」やそれに伴う「要求」ができると考えるからです。
そしてここからが問題なのですが、実際のところ実はここまで消極的な対応をしなければいけないわけではなく、こうなる以前にこの慰安婦像や慰安婦合意を巡る問題は終息へと向かう道もありました。
韓国側にしても、以前書いたように期待していたアメリカからの支援が見込めず、かといって中国にこれ以上依存するわけにも行かず、「折れるしかないはず」だったからです。
しかし現状そうなっていない要素の一つとして、いわゆる韓国人達から「良心的日本人(例1 例2)と呼ばれている、私が便宜上「日韓友好論者」と呼んでいる人々が関係しています。
元々この慰安婦合意は、今後の東アジア情勢における日米韓の連携のために、実質的に日本が譲歩する形でアメリカが提案し、今後韓国が連携の弊害となる歴史問題を外交に持ち込まないと約束させるために行われた合意です。
そして韓国側には特にそうせざるを得なかった理由があり、アメリカとの関係がギクシャクしたというのもあるのですが、それ以上に中国が露骨に韓国に対して尊大な内政干渉をしてくるようになってきたため、日米の側に戻らないと文字通り中国の属国になってしまいそうだったのです。
そして現在、また中国による干渉が露骨になってきており、その事に気付いた韓国の一部の人々は戦々恐々としています。
【コラム】新たな袁世凱を自ら生み出す韓国政府の低姿勢外交 朝鮮日報 2017/01/15 (1/2ページ) (2/2ページ)
要するに、慰安婦合意にはこうした中国からの干渉をこれ以上させないようにする予防策という、韓国にとってかなり切実な問題と関係していたのです。
記事を読んでもらうと解りますが、記事を書いた記者が中国外交部の副局長を「現代版袁世凱」と呼ぶのには相応の理由があります。
にもかかわらず、日本のいくつかのメディアを含む日韓友好論者は、一応慰安婦合意継続を表面的には支持しながら、実質的に韓国側の態度を擁護するような主張を続けており、実はその事が韓国側の過激な「否定文化」の世論を後押しすることになっています。
こうした無責任に韓国を煽る態度は、上記で書いたように日米韓の連携を崩し中国による韓国への干渉を結果的に強める事になり、それは韓国の独立国としての立場すら危うくするものであるにも関わらず、その事を知ってか知らずか日韓友好論者は韓国世論に「自分達の行いは日本でも支持されている」という誤ったメッセージを送り続ける事になっています。
こんな事を続けていたら、いずれ韓国は中国の属国となってしまい、独立国としての地位を事実上失うことになるわけですが、日韓友好論者はお構いなしに韓国側を煽り続けています。
ある意味で、彼らは韓国を本物の「ヘル朝鮮」へと導いているとも言えます。
韓国の現状は完全に自業自得ではありますが、それを差し引いても日韓友好論者のやっていることは最低です。
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