日韓問題(初心者向け)

日韓問題について、初心者でもわかりやすい解説と、日韓問題とマスコミ問題の動画のテキスト版を投稿しています。

韓国で「矛先逸らし」に利用された日産


さて、本日は韓国で排気ガスの不正認定を受けて起訴された日産に関連した内容となります。


先月、日産が韓国で販売しているディーゼル車「キャシュカイ」が、大気環境保全法に違反しているとして販売停止とリコール措置をとられ起訴され、キャシュカイを所有するユーザーなどからも民事訴訟を起こされる事態となった。


韓国政府の言い分では、キャシュカイは設定温度が35度以上になると排ガス低減装置が停止する仕組みとなっており、これが不正操作にあたるとしてあたかもこの仕様が隠されていたかのように報じられた。


が、実際にはこの仕様は韓国で販売するにあたり「元々公開されていた情報」なうえに、同じ仕様でも他国では不正となっていない、また韓国政府からは「なぜ35度で停止すると違法になるのか」の明確な説明すらもされていない。


こうした背景には、先々月から韓国で問題になっていた空気清浄機を巡る不正問題において、韓国政府の対応の杜撰さが問題になっていた事に対する矛先そらしとの見解が多いが、実はもう一つ年々悪化する大気汚染の問題が関係しており、恐らくそちらのほうが「主な矛先そらしの動機」となっている。



※一部を除き、引用記事が日本語の場合には文中にリンク用アドレスとタイトルのみ表記、韓国語のものやリンク切れで参照不能な記事のみ文末にまとめて本文を引用します。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはインターネットアーカイブウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。


1:理不尽な理由で不正認定を受けた日産


まずはこちらの記事から

「排ガスを不正操作」 韓国環境部が韓国日産社長を刑事告発
聨合ニュース 2016/06/07
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2016/06/07/0400000000AJP20160607001900882.HTML

【世宗聯合ニュース】韓国環境部は7日、日産自動車ディーゼル車「キャシュカイ」に排ガス不正があるとして、輸入、販売した韓国日産の菊池毅彦社長を大気環境保全法違反の容疑でソウル中央地検に刑事告発した。同法に違反した場合、7年以下の懲役または1億ウォン(約930万円)以下の罰金刑に処される。

 キャシュカイの新車の販売禁止、韓国国内で販売された814台のリコール(無料の回収・修理)、課徴金3億4000万ウォンの支払いも韓国日産に命じた。

 環境部は先月、エンジンの吸気温度が35度以上になるとキャシュカイの排ガス低減装置が停止する設定になっていたことを排ガス量の不正操作と指摘していた。

 先月26日の聴聞会で、韓国日産はこれについて「エンジンを過熱から保護するため」と説明し、不正を否定したが、環境部は一般的な走行条件下で排ガス関連部品の機能を低下させることを禁じた大気環境保全法に違反すると判断した。

 車はエンジンで燃料を燃焼させるため外部の空気をエンジンルームに吸入させる。通常、車を気温20度の条件下で30分程度走行させただけでもエンジンルームの吸気温度は35度以上に上昇する。


関連記事
韓国環境部、韓国日産社長を告発…「キャシュカイ」販売停止・リコール命令 中央日報 2016年06月07日



上記記事のように、現在韓国では日産が排ガスの不正操作をしたとして刑事告訴されているのですが、「排ガス不正」というとフォルクスワーゲンや三菱の事例のように仕様書と実際の機能が別であり、「数字をごまかしていた」とする問題が一般的でしょう。


しかし日産の場合は違います。
元々エンジンの設定温度が一定を超えると排ガス低減装置が停止する仕様は大抵どの車種にもついているのですが、韓国側の言い分は「日産の設定温度が他の車種より低いから」というものであり、その仕様は最初から公開されており韓国側もその仕様を確認したうえで販売許可をしていたのです。


しかもこの仕様は他国では合法とされており、たとえば中央日報はイギリスは韓国政府と同じ仕様で実験を行い、日産の低減装置を「合法」としているとの報道をしています。


日産ディーゼル車、同じ実験で韓国は「不正」、英国は「合法」(1) (2) 中央日報 2016年05月18日
韓国で販売中のディーゼル車、大半は排ガス基準超過=韓国環境部調査 朝鮮日報 2016/05/17 (1/2ページ)(2/2ページ


つまり、元々その仕様で韓国政府が販売許可を出したうえに、他国では合法とされている「公開されている仕様」を、今回韓国はいきなり「不正操作をしている」として刑事告訴したわけです。


何もかもがおかしすぎるため、さすがに韓国内でも一部批判が起きていますが、以前から書いているように韓国ではその独特の価値観から「被害者になる事ができれば序列の上位になれる」という考えがあるため、キャシュカイのユーザー達は日産に対して民事訴訟を始めています。


日産相手取り集団訴訟へ 排ガス不正疑惑で=韓国所有者  聨合ニュース 2016/05/17
キャッシュカイ所有者ら、ゴーン会長を韓国内裁判所で提訴 中央日報 2016年05月31日


批判もあると同時に、既に韓国内では「日産=加害者」「韓国人=被害者」という構図もできつつあるわけです。


2:日産がターゲットになった動機


ではなぜ日産はこんな状況になっているのでしょうか。


一つはいくつかのニュースでも指摘されているように、少し前に話題になった韓国のいわゆる「殺人加湿器問題」が関係しています。


この問題、確かに加湿器を販売していたオキシー・レキット・ベンキーザーの韓国法人が一番の問題ではあるのですが、韓国政府も問題を知りながらまともに対応しなかったうえに、ソウル大学教授がこの問題でオキシー社に不正に「お墨付き」を与えていた事まで発覚しており、韓国政府に批判の矛先が向いていました。


【コラム】ソウル大学の傲慢と屈辱(1) (2) 中央日報 2016年05月23日
【時論】なぜ加湿器殺菌剤から国民を保護できなかったのか=韓国(1) (2) 中央日報 2016年05月06日


このため、元々失政続きで支持率低下が止まらなかった朴政権としては、何かしら「政府が良い仕事をしたという成果」が欲しく、イラン訪問やアフリカ訪問でも殊更「誇張した成果」を宣伝しており、とにかく継続して更なる派手な成果が欲しかったのです。


そこで、本物の「排出ガス不正問題」を引き起こした、韓国では「戦犯企業」とされている三菱自動車を買収した日産がその矛先として目をつけられた、つまり韓国政府の思惑としてはこれで「悪の日本人を懲らしめてやった(恨を晴らした)」という筋書きだったのでしょう。
(韓国では当時、(恨を晴らすために)三菱を買収し傘下におさめようという世論が強くなっていました)


(※1)
現代車グループはなぜ三菱を取得していないか? オートヘラルド(韓国語)  2016.05.13


しかしこの筋書きによる矛先逸らしそのものは事実上韓国でうまく行っていません。
なぜかといえば、実はもっと大きな「矛先逸らしをしたい動機」があり、その矛先逸らしには見事に失敗しているからです。


3:次々と発覚する大気汚染問題


ここからがこの問題の最重要部分です。


先ほど紹介した韓国の「殺人加湿器」問題を発端として、韓国では元々問題になっていた大気汚染が大きく注目を浴びるようになりました。


そして、過去この問題は中国が原因であるとされていたのですが、近年実は原因の半分が韓国にもあり、「中国から飛来するものが30~50%を占め、残りの50~70%が韓国」という事がわかってきました。


また更に、どうやら韓国で最近問題となっている先天性異常の子供の増加の原因も大気汚染にあるのではないかという研究結果も出てきました。


【萬物相】大気汚染に奪われた韓国の春 朝鮮日報 2016/04/25
[オピニオン]晴れた日の粒子状物質 東亜日報 April. 26, 2016
韓国で先天性異常児出生率が急増、大気汚染が影響か 朝鮮日報 2016/05/10


さすがに韓国でも「直接的な実害」がある問題で「かくあるべき論」は通せず問題化します。
更に、この問題に対して韓国政府がなんら対策を取っておらず、しかも韓国の気象庁は大気汚染の予報を「外し続けて」おり、どちらもかなり批判されていました。


また元々ディーゼル車が問題になったのも、韓国政府によるディーゼル車普及政策にあったという背景もあったのです。
(ただし、「ディーゼル車はクリーンである」という主張を積極的に支持したのは韓国人自身ですが)


【社説】大気汚染対策を怠る韓国政府、予報を外す韓国気象庁 朝鮮日報  2016/04/11 (1/2ページ)(2/2ページ
空気の質、韓国は180カ国中173位=ディーゼル車の普及が原因か 朝鮮日報 2016/05/17


だから韓国政府は、「政府は大気汚染問題で何一つ仕事をしていない」という批判を逸らすために、多少無理があっても日産を生贄として「成果」にしたかった、そんな背景があるのです。


ここまでが日産が理不尽な告訴をされた動機なのですが、この矛先逸らしは現状を見る限り明らかに失敗しつつあります。


なぜかといえば、韓国の与野党対立や朴政権による与党内の「反朴外し」によって朴政権に不満を持っている人々が増え、大気汚染問題でも政府への批判材料が次々と取り上げられているからです。


たとえば、先ほどの気象庁の問題でも「日本の気象庁のほうが信用できる」という記事が書かれたり、大気汚染の原因となるディーゼルバスに韓国政府が補助金を出していた問題が発覚するなどの問題提起がされたりしているのです。


的中率5割のPM2.5予報に不信感、日本気象協会のサイトで情報を得る人も 朝鮮日報 2016/06/01
PM2.5まきちらすディーゼルバスに韓国政府が補助金 朝鮮日報  2016/05/24


そして興味深いのは、こうした問題提起が「保守系」で「親朴」だった朝鮮日報から次々と出てきていることです。
恐らく何らかの形で与党内の「反朴派」が関わっているのでしょう。


2016年6月12日19時05分訂正
コメント欄で「これは韓国マスコミによるミスリード」とのご指摘がありましたので調べてみたのですが、韓国政府のその後の発表そのものも何か変に言い訳じみており、状況がつかめないため該当部分全てに取り消し線を入れる措置をしました。


背後関係を良く調べずに記事にしてしまい申し訳ありませんでした。


関連記事
韓国のサバ、「大気汚染の主犯」の汚名晴れる Record China 2016年6月8日


また更に、韓国政府は批判が相次いだ結果日産という生贄以外にも対応が必要になり、その対応が更なる批判を生みます。


[オピニオン]環境部とサバ 東亜日報 May. 25, 2016


「原因は焼きサバにある」という、なんとも奇抜な発表を行ったのです。
既に原因は韓国政府の無策とディーゼル政策、そして中国から飛来する汚染物質にあるとわかりきっているにも関わらず、どこにでもいい顔をしようとして見事に失敗したのです。



4:それでも被害を受ける日産


今回書いたように、日産が排ガス不正で告訴された背景は明らかに「韓国内の事情から来る冤罪」なのですが、ではだからといってそれで日産の冤罪が消えてなくなるかといえばそんな事はありません。


韓国政府は「やってしまった」以上もう後には引けませんから、日本の水産物輸入禁止措置や仏像盗難事件のように自分達は正しいとして「突き進む」しかありません。
韓国的価値観では、過ちを認めるという事は自らの劣等性を認めるという事ですので、認めた時点で「何をされても文句の言えない立場」になってしまうからです。


また一般の韓国人にしても、他者の劣等性を指摘できれば自己の優越性が証明できるという価値観がありますので、政府の矛先逸らしには乗らなくとも日産の劣等性の指摘そのものには「乗る」可能性はまだまだあります。


実際、去年までの産経新聞元支局長起訴事件では、元々が韓国の国会で取りざたされていた朴大統領の動向問題を、朝鮮日報やいくつかの雑誌が記事にした内容を引用する形で記事にしただけであり、その事は周知の事実だったにもかかわらず元支局長はかなり長い期間拘束され続け、その事を批判する韓国人は殆どいませんでした。


ですから、今回の日産の事例でも日産が似たような状況に陥る可能性は十分にあるわけです。
そもそも韓国内から日産への措置を批判する公的な声が挙がる可能性はきわめて低いですから。


そしてこの事例は一見すると「反日」に見えますが、実際のところは韓国独特の価値観である「自己の問題は他者の問題を指摘して打ち消す」という価値観があるからこそおきる問題であり、韓国政府が自身の指摘された問題を打ち消すために日産を生贄にした事例なのです。


三菱の件がありますから、動機の一部には勿論「反日」がありますが、それは主要構成要素ではなくあくまで動機のひとつに過ぎず、中心となる原因は彼ら独特の価値観にあるという事です。


私が以前から「韓国の反日問題は枝葉でしかない」と書いているのもこうした理由からです。
このあたりの判断を見誤ると、韓国に対する認識を間違います。


この件、日産としてはとんだとばっちりもいいところですが、韓国で商売をするということは常にこうしたカントリーリスクを伴うという事なのです。
韓国では「私たちの常識」は通用しませんから。



人気ブログランキングに参加中です、もしよかったらクリックをお願いします。


クリックで人気ブログランキングへ



以下は当ブロマガのお勧め記事マイリストです、もしよかったらこちらもどうぞ。











(※1)
現代車グループはなぜ三菱を取得していないか?
オートヘラルド(韓国語)  2016.05.13
http://www.autoherald.co.kr/news/articleView.html?idxno=18793

年間生産量850万台に達する世界4位の企業ルノー-日産アライアンスが年間100万台規模の三菱自動車を取得した。約2兆5470億ウォンを投じて三菱が新規発行する株式を取得する方法で総持分の約34%を取得する。取得が終わっても三菱グループは16%ほどの持分を持っていて経営権はないがグループ間の関連性は残っている。ルノー-日産は三菱の取得で確固たる世界4位にのぼった。
(中略)
-三菱国内再進出の可能性は?
三菱は韓国国内に何回も進出した。2008年9月の進出ではランサーエボリューションアウトランダーなどの代表車種とエクリプスを発売して市場拡大を狙ったが2011年、販売が振るわず撤収した。撤収直前の2011年1分期には販売量が34台に過ぎないほどだった。その後、2012年CXCモータースが再び三菱を持ってきたが、上半期販売量が22台と深刻な不振を記録し、2013年7月に再び門を閉じた。

この様な状況で日産が三菱を取得し、韓国に再進出する可能性は低いと見られる。輸入車業界のある関係者は「国内では三菱ブランドが戦犯企業のイメージを持っているので、ほとんどの商品で販売を増やしにくいだろう」とし、「日産と三菱の提携で日本現地で軽自動車などの開発と生産、販売は活発になる可能性が高いが、国内に及ぼす影響は殆どないだろう」と解説した。

-戦犯企業イメージ、日産に?
1870年に創業し146年に達する歴史を持つ三菱グループの自動車部門は代表的な国民車企業だ。第二次世界大戦朝鮮戦争をたどりながら急成長した航空機、自動車産業を土台に三菱は鉱山、船舶、移動通信、金融、保険、電子、自動車など手を伸ばさなかった分野がないほどだ。特に、私たちがよく知っているキリンビールやカメラ企業ニコンなども三菱の系列会社で日本を含む全世界に広く広がっている。

しかし、韓国国内で三菱は戦犯企業であり、日本軍の戦争を支援したイメージを脱せずにいる。従って日本との関係により不買運動が起きやすく、事業の立場では簡単に抱えることのできない会社だ。こういう三菱のイメージが日産に投影される可能性も考えられる。自動車業界では三菱と日産そしてルノーが同じ釜の飯を食べる状況が演出され、国内にもルノーサムスン自動車がこれらと同じ系列会社となる。従ってきれいに洗い落とせない戦犯企業イメージは日産にとっても毒になるものと見られる。もちろん日産を含む日本企業の中で戦犯論議から自由な会社は多くない。

-現代車グループはなぜ三菱を取得しなかったのだろうか?
日産と三菱の関係を調べれば残念ながら大きな課題が出てくる。それは現代自動車グループと三菱の関係だ。三菱は現代自動車の技術的支援者であった。1990年代まで現代自動車のエンジンと変速機は三菱製品が多かった。グレンジャーなどの高級車もやはり三菱と共有する状況だった。現代自動車が技術的に自立した後、関係は疎遠になったが、年間100万台水準の三菱は魅力的な取得商品だったかもしれない。

今回の取り引きで見れば日産は三菱を安値で買いとった。2兆5000億ウォン余りだ。これは現代自動車が三成洞(サムソンドン)の韓電敷地を取得するのに使った10兆5500億ウォンの1/4にもならない。破格的な三菱持分取得に対して残念さが残る理由だ。反面、日産内部ではカルロス・ゴーン会長がグローバルトップ3会社に跳躍するための一種の賭けという説もある。三菱を合併して日本の小型車市場占有率を引き上げ、全世界生産量規模でも先んじるという意志だ。

しかし、現代自動車グループの路線はこれとは違う。ジェネシス・ブランドで高級化に死活をかけている。三菱が現代車の戦略にあまり役立たないだろうという推測も可能だ。また、もし取得しても、これまでの戦犯企業論議から自由ではなく、技術もやはり今は現代自動車グループがむしろ先んじる状況なので魅力的な商品ではない可能性が高い。
(後略)