さて、本日から一連の梨泰院事故に関する内容を3回にわたって扱っていきますが、内容的にそれぞれが関係はしているのですが、同時にそれぞれ独立した事例でもあるため、partではなく「編」としています。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブログ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらどう思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
10月末に発生したいわゆる「梨泰院事故」では、多数の犠牲者が出ているが、その中で公的機関による対応の不備が多数取り沙汰され、根本的に事故等の発生時に対応できる準備そのものができていなかったことがわかる。
このため、現在韓国では他国の事例などを参考に「責任追及より先に安全対策の見直しを」という声が挙がっているが、実際には問題点の洗い出しがほとんど行われず、小手先の対応が続いている。
更には、「自分は常に正しい選択をしている」という認識から、「悪いのは他者」という考えで責任逃れと犯人探しが活発化しており、これが安全対策の足枷となっている。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
以下から本文
1:梨泰院事故
まずはこちらの記事から
梨泰院雑踏事故:「圧死しそう」…発生4時間前から通報、韓国警察は放置
朝鮮日報 2022/11/02
https://web.archive.org/web/20221102033125/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/11/02/2022110280057.html
韓国警察には先月29日、ソウルの繁華街・梨泰院でハロウィンを祝う人々が次々と転倒する大惨事が発生する3時間41分前から「圧死しそうだ」「人が多いので規制してほしい」という11件の通報が寄せられていたことが1日までに分かった。韓国
警察庁は同日、112番通報(日本の
110番に相当)の録音記録を公開し、当時の措置が適切だったかについて、徹底した監察に着手すると表明した。
警察が公開した事故当日の112番通報録音には、圧死事故の危険性を知らせ、警察に速やかな対応を求める内容が含まれていた。最初の通報は午後6時34分で、事故が発生した午後10時15分の4時間近く前だった。通報者のAさんは「路地を人が下りていくことができないのに、登ってくる人が押し寄せ、圧死しそうだ。警察は規制すべきではないか」と訴えた。
群衆事故の危険性を指摘する通報は午後8時ごろ再び10件続いた。午後8時9分、2番目の通報者Bさんは「人が多すぎて滞り、突き倒したり、転倒したりして騒ぎになり、けが人が出ている。取り締まるべきだと思う」と話した。午後8時53分、4番目の通報者Cさんは「人が多くて圧死寸前だ。修羅場だ」と叫んだ。同様の通報は事故直前の午後10時11分まで続いた。
警察に一方通行の交通規制を求めた通報者もいた。午後9時7分、7番目の通報者Dさんは「ここは今人が多すぎ、圧死の危険がある。一方通行となるように規制してほしい」と話した。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は1日、関連報告を受け、「当時、通報がどこまで報告され、どのように処理されたのか徹底的に真相を究明し、少しの疑惑もないよう国民に告知してもらいたい」と指示した。大統領室関係者は治安責任者の責任論に関連し、「大統領は真相調査結果によって、法と原則に従い処理すべきとの考えだ」と話した。
一方、李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官、尹熙根(ユン・ヒグン)警察庁長、呉世勲(オ・セフン)ソウル市長、朴熙英(パク・ヒヨン)竜山区庁長、ナム・ファヨン消防庁長職務代理は一斉に謝罪した。李長官は「国民の安全に責任を負う担当部署の長官として、深い謝罪の言葉を申し上げる」と述べた。呉市長は「市民の生命と安全に責任を負うソウル特別市長として無限の責任を感じる」とし、尹庁長は「結果が出れば、相応しく身を処する」と発言した。
金承材(キム・スンジェ)記者、李海仁(イ・ヘイン)記者
記事によると、事故発生4時間前から事故発生の危険性を訴える通報が多数あったにもかかわらず、警察が殆ど何も対応をしていなかったことが書かれています。
また次の記事を読むと
梨泰院雑踏事故:前日にも通報があったのに…警察の責任論が浮上
朝鮮日報 2022/11/01
https://web.archive.org/web/20221101043955/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/11/01/2022110180067.html
【TV朝鮮】アナウンサー:これまでお伝えしましたように、抑えがたい後悔の理由は幾つかあります。そのうちの一つ、既に前日、梨泰院には大勢の人が集まり、危険に見えるという通報もあったことが分かりました。
主催者が存在しない自発的な集まりだという理由で、行政当局は手をこまぬいていたのではないか。キム・チャンソプ記者が探ってみました。
■キム・チャンソプ記者リポート
29日の夜、梨泰院の路地。人波が通りを埋め、人々はまるで波のようにこちらへ、あちらへと押し流されています。
ところが惨事の前日にも、同じ場所が人波でいっぱいでした。路地を通り抜けようと思ったら、少しずつ歩いていかなければなりませんでした。
近所の店の人:「(事故)当日ほどではないけど、それでも普段よりは多かったです。地下鉄の駅まで行くのにちょっと時間かかったほどなので…」
商店の人々は「事故のリスクは前日から既に感知されていた」と語っています。
近所の店の人:「押されながら歩いてましたよ、(事故前日の)金曜日も。壁に絵を描いてる子たちが、狭いのにずらっといて、危ないなと…」
この日、付近の派出所では安全上の事故に関連する67件の通報を受理しましたが、「人が数十人、道をふさいでいる」という内容も含まれていました。かかわらず
事故現場は、梨泰院でも人が最も混み合う中心的な地域へ通じる細道です。
当時警察は、事故前日からおよそ200人を事前に投入し、ここを中心に治安維持のため総力対応に出た状態でした。
ところが警察は、安全上の事故への対応よりも麻薬や性暴力犯罪の取り締まりに集中していたのです。
ナ・ヨンスンさん(近所の店の人):「(以前は)警察官が立っていて、ここで誘導もしてたけど、それがなかったって…」
幾つもの事故の前兆にもかかわらず、警察はきちんと対応しなかったのではないか、という指摘が出ています。
テレビ朝鮮、キム・チャンソプでした。
キム・チャンソプ記者
どうも事故の起きた前日にも60件以上の通報があったにも関わらず、問題を認識しておらず殆ど何の対策も取っていなかったようだと問題になっているとしている記事です。
また次の記事を読むと
梨泰院雑踏事故:通報殺到中に状況室ではなく自室にいた状況管理官
朝鮮日報 2022/11/04
https://web.archive.org/web/20221104045840/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/11/04/2022110480068.html
梨泰院雑踏事故の当夜、ソウル地方
警察庁の112番治安総合状況室で状況管理官を務めた柳美真(リュ・ミジン)前同庁人事教育課長(総警=
警視正に相当)は、状況室ではなく自分の事務室にいたという。そのため、柳総警が状況室のチーム長(警正=警視に相当)から事故に関する報告を受けたのも、事故発生から1時間24分が経過した午後11時39分だった。当時自宅におり、午後11時36分に李林宰(イ・イムジェ)竜山署長から報告を受けた金光浩(キム・グァンホ)ソウル地方
警察庁長よりも遅く報告を受けたことになる。
ソウル地方警察庁の幹部が交代で担当する状況管理官は、112番通報の受付をはじめ、ソウル市内の夜間の緊急状況を統括する総合状況室を指揮する役割を担う。当直の状況管理官は午後6時から翌日午前1時まで状況室に待機しなければならないが、リュ総警は状況室がある庁舎5階ではなく、10階にある自分の事務室にいた。
柳総警が梨泰院で事故が起きている状況室チーム長の報告を受け、状況室に復帰したのは午後11時39分だった。梨泰院ではすでに数百人が倒れ、心肺蘇生法が施されていた時間だった。柳総警はその23分後の30日午前0時2分、警察庁に報告し、0時14分に尹熙根(ユン・ヒグン)警察庁長にその内容が伝えられた。柳総警は警察大12期で、ソウル中部警察署長を務めた。
当日の112番通報の受付体制も問題点を露呈した。警察のマニュアルによると、類似する内容の通報が繰り返される場合は、状況室勤務者は、受理段階でチーム長(警正)に報告しなければならない。事故直前、警察に寄せられた通報11件のうち9件が事故現場の路地近くから入電したが、チーム長はそれを直ちには認識できなかったという。警察関係者は「梨泰院からの通報11件は当時状況室に勤務していた数人がばらばらに受け付け、危険シグナルに気づかなかったとみられる。状況管理官が席を外した状況で、マニュアルもまともに機能しなかった」と話した。
李海仁(イ・ヘイン)記者
当日に現場責任者が指揮を行う状況室におらず、そもそも報告を受けたのが事故から1時間半後であったうえに、警察の担当者たちがマニュアル通りに動かず、また通報情報の共有もできていなかったようなのです。
更に次を読むと
韓国警察庁 消防庁からの連絡で雑踏事故把握=報告ライン機能せず
聯合ニュース 2022.11.04
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221104004400882
【ソウル
聯合ニュース】韓国・ソウルの繁華街、梨泰院で150人以上が亡くなった雑踏事故が発生した先月29日夜、
警察庁は直轄のソウル
警察庁ではなく、
消防庁から連絡を受けて状況を把握したことが4日、分かった。
警察と消防当局によると、事故当日の午後10時55分ごろ、
消防庁は
警察庁に緊急電話をかけ、救急車が事故現場に接近できるよう付近の交通規制を行ってほしいと要請した。
この時点まで梨泰院の状況を把握していなかった警察庁は、ソウル警察庁と梨泰院を管轄する竜山警察署を通じて午後11時15分ごろに事故の内容を確認した。
この時、消防当局は梨泰院で既に数十人が心肺停止状態になっていることを確認していた。
報告ラインが正常に稼働していれば、竜山警察署からソウル警察庁、警察庁へと報告が上がるはずだが、この日は逆だったことになる。
警察庁からの連絡を受け、ソウル警察庁状況室のチーム長は午後11時40分ごろ、警察庁の柳美真(リュ・ミジン)状況管理官に初めて状況を報告した。
このような状況を総合すると、ソウル警察庁は事故が発生した午後10時15分以降に現場からの「112番」緊急通報で事故の発生を把握していた可能性が高い。
しかし、約1時間10分にわたりこのような状況を上級機関である警察庁や状況管理官はもちろん、直属の上官であるソウル警察庁長にも報告していなかったことになる。
ソウル警察庁は翌30日午前0時過ぎになって、警察庁に梨泰院の事故で大規模な人命被害が発生したと正式に報告した。
そもそも警察は先ほどの説明したような状態であったため、何が起きているのかを把握することができず、消防庁から連絡を受けて初めて事態の深刻さに気が付いたという状況だったようなのです。
更には次の記事を読むと
梨泰院雑踏事故:竜山署長の現場到着時刻を虚偽報告、ハロウィーン事前対策報告書は削除
朝鮮日報 2022/11/08
https://web.archive.org/web/20221108042032/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/11/08/2022110880067.html
(TV朝鮮アンカー)
ずさんで誤った対応を隠すために警察が組織的に動いた状況も続々と明らかになっています。ソウル・竜山警察署の署長が事故現場に到着した時刻が偽られていたという疑惑に続き、追加人員配置が必要だという情報官の報告書を上層部で削除するよう指示していた状況も確認されました。「これでは警察の捜査が信じられるはずがない」という声が多く上がっています。
報道はイム・ソイン記者です。
【TV朝鮮動画】竜山署長の現場到着時刻を虚偽報告、事前対策報告書は削除
(記者リポート)
梨泰院事故発生から約45分後、死傷者が数十人出ていた時刻。李林宰(イ・イムジェ)前竜山警察署長が後ろ手を組んだままゆっくり歩いていきます。
警察庁監査の結果、李林宰前署長は夜11時05分、ここ梨泰院交番に到着したことが明らかになりましたが、国会に提出した状況報告書の内容とは違っており、虚偽報告疑惑が浮上しました。
(与党・国民の力所属)権垠希(クォン・ウンヒ)議員室に提出された警察の報告書には、李林宰前署長が夜10時20分現場に到着したと書かれています。
ところが、(野党)共に民主党対策本部に提出した資料には、夜10時18分に既に「無線で指示をした」と書かれています。しかし、到着時刻はありません。
警察がずさんな対応だと批判されるのを懸念して、署長の現場到着時刻を追加したため、内容が食い違ってしまったのではないか、という見方が出ています。
これとは別に、「追加で人員配置が必要だ」という竜山署情報官の事故に備え事前に作成された報告書も事故後、削除されていたことが明らかになりました。
特別捜査本部は竜山署情報課長らが「報告書の作成はしなかったことにしよう」として、作成者を懐柔したものとみています。
金雄(キム・ウン)/国民の力所属議員(行政安全委員会)
「竜山署の情報課長がその資料を削除したのはなぜですか?」
尹熙根(ユン・ヒグン)/韓国警察庁長
「その部分はおそらく捜査を通して確認されるでしょう」
責任回避のため警察が組織的に介入したことが事実だと明らかになれば、波紋はさらに広がりそうです。
テレビ朝鮮イム・ソインでした。
イム・ソイン記者
(2022年11月7日放送 TV朝鮮「ニュース9」より)
責任を問われる可能性のある竜山警察署の署長が、あたかも迅速に対応していたかのように現場到着時刻を虚偽報告していたうえに、署の情報官が事故前に作成した「追加で人員配置が必要だ」という報告書が削除されていたそうなのです。
つまり、警察が緊急時のマニュアル通りに動くことができていなかったうえに、不手際を誤魔化すために虚偽報告をしていたという事になるわけですが、これは典型的な「ヒムドゥロヨ」です。
過去記事
韓国のヒムドゥロヨ文化 - 日韓問題(初心者向け)
これら情報から解ることとして、韓国や日本のメディア等では「警察がデモの監視や大東慮の警備に人員を割き過ぎていた結果」と報じていた事もありましたが、実態はそれがあろうとなかろうと、「警察は機能しなかった」であろうという事です。
そもそも情報を共有し統括する「システム」自体が機能していなかったわけですから。
2:小手先の対応
当時の現場は上記のような状況だったわけですが、そのうえで次の記事を読んでもらうと
梨泰院惨事のお粗末な対応が明確なのに、またも「制度のせい」か
東亜日報 November. 03, 2022
https://www.donga.com/jp/List/article/all/20221103/3738727/1
梨泰院(イテウォン)
ハロウィーン惨事で政府と
地方自治体のお粗末な対応に対して批判が大きくなっている。しかし、政府は依然として責任は制度にあるとする態度だ。韓悳洙(ハン・ドクス)首相は1日、外信記者会見で、「主催側や
自治体がいない場合、警察が中央統制された方法で群衆を管理することは難しい」と述べた。「警察官や消防隊員を事前に配置して解決できる問題ではなかった」とした李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官の発言と同じ脈絡だ。
災害安全法及び関連マニュアルには、「主催者がいる参加者1千人以上の地域の祭り」は、安全管理計画を立て、警察・消防と協議するよう規定している。韓氏らの発言は、梨泰院ハロウィーンイベントはこれに該当せず、政府の役割が制限されたという趣旨に聞こえる。しかし、主催者がいないイベントも警察と自治体が関与することができる。警察官職務法では、極度の混雑などで国民の安全が脅かされる場合、警告、避難などの措置を取るよう規定している。災害安全法も災害が発生する恐れがあれば、国家と自治体が警報発令、避難指示など緊急措置を取らなければならないと明示している。
それゆえ、警察と自治体が事前に備え、緊急事態が起きた時に積極的に介入しなければならなかった。しかし、警察は事故当日、梨泰院現場で市民が「人が多すぎる」と112に通報した内容のうち8件を危機状況に分類しながら、1件だけに出動した。ソウル警察庁は、「ハロウィーン前、土曜日午後10時以降」に梨泰院に特に人が集まると予想したが、人員を増員しなかった。惨事の3日前には梨泰院の商人らが龍山(ヨンサン)区及び警察との懇談会で圧死事故の懸念を伝えたが、対策は設けられなかった。中央と地方政府いずれも法が定めた最低限の措置も取らなかったのだ。
にもかかわらず、政府と自治体は反省して再発防止を模索するよりも、責任回避に汲々としている。惨事直後、ソウル市は市で主催したイベントではないと線を引き、龍山区は、ハロウィーンイベントは正式の地域の祭ではないため、安全に責任がないという立場だった。政府が、梨泰院惨事関連用語を「惨事」ではなく「事故」に、「被害者」ではなく「死亡者」に統一することにしたのも責任を回避するための意図としか見えない。そうしたからといって責任の重さが軽くはならない。むしろ政府に対する信頼は失われ、犠牲者に対する二次加害を含む惨事の後遺症だけを大きくする結果になるだろう。
韓国政府は当初事故に関し、「主催側や自治体がいない場合、警察が中央統制された方法で群衆を管理することは難しい」「政府の役割は制限される」と主張し、主催者がいないイベントだったことを理由に「警察や政府には責任がない」と主張していました。
更には次の記事にあるように
梨泰院惨事、国家・自治警察が責任押し付け合い…混乱深めた自治警察制
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.08 10:37
https://japanese.joins.com/JArticle/297480
ソウル
警察庁の緊急救助支援業務を一次的に指揮・監督するソウル市
自治警察委員会が、ソウル市から梨泰院(イテウォン)圧死惨事に関する報告を遅く受けていたことが明らかになった。
自治警察委が要請するまで警察は惨事について
自治警察委と共有せず、状況の報告を受けた
自治警察委も翌日朝になって関連案件を審議した。昨年7月からの
自治警察制施行で、市・道警察委員会が災難時に警察の緊急救助支援の有無を決定・監督する機能を担当することになった。混雑状況を管理する警備・交通などは
自治警察の業務だが、災難現場と接する可能性が高い地区隊と派出所は国家警察所属であり、混乱したという指摘が出ている。
◆事故発生75分後…警察でなくソウル市が報告受ける
警察などによると、ソウル自治警察委は惨事当日の先月29日午後11時30分、ソウル市安全総括室から梨泰院圧死惨事が発生したという報告を受けた。事故発生から1時間15分後のことだった。報告を受けた自治警察委はソウル庁に状況共有を要請したという。自治警察委のキム・ソンソプ事務局長が惨事現場に到着したのは47分後の10月30日0時17分。自治警察委は30日午前1時34分、ソウル庁112総合状況室長から惨事現場配置現況など措置事項を文字メーッセージで2次通知されたという。ソウル自治警察委が「緊急」と名付けた委員会会議は翌日の10月30日の午前8時に開かれた。現場緊急救助、交通管理、遺族支援案などに関する案件を全員一致で議決した。
市・道自治警察委は自治警察の事務を掌握するために各市・道傘下に設置された常任合議制行政機関。委員長を含む2人の常任委員と残り5人の非常任委員で構成される。
災難安全法(災難及び安全管理基本法)によると、陸上災難管理の3つの主体は中央行政機関・地方自治体(災難管理責任機関)、消防当局(緊急救助機関)、警察・軍部隊など(緊急救助支援機関)だ。警察は119救助隊が円滑に救助活動をするよう交通統制をするなど支援する役割を担う。警察法は「安全事故および災害・災難時緊急救助支援」を自治警察の事務として明示している。自治警察の事務において市・道警察庁長は各市・道自治警察委の審議・議決を通じて指揮・監督を受ける。時間的な余裕がない場合、自治警察委の指揮・監督権を各市・道警察庁長に委任したとみるという警察法の但書条項を考慮しても、災難状況で一種のコントロールタワーの役割をすべきソウル自治警察委が報告体系から抜けたということだ。
国家警察と自治警察は、惨事対応を「緊急救助支援」と見るべきか「112通報処理」と見るべきかをめぐり対立している。ある警察幹部は「ソウル市自治警察委がソウル市長に報告し、ソウル市長が警察に何か必要なら案件を付議できる」とし「ソウル市自治警察委が速やかに審議をしてソウル庁に安全管理などを要請すべきだった」と話した。半面、ソウル自治警察委は梨泰院惨事への対応は国家警察の事務という立場だ。キム・ハクベ・ソウル自治警察委員長は7日、ソウル市議会行政自治委員会の行政事務監査で、「事務分掌には人が密集する行事(通報)に関するものは112総合状況室がすることになっていて、これは国家警察に該当する」と述べた。警察職制によると、112通報など初動措置の指揮は国家警察の112治安総合状況室長の業務に分類されている。地域内の密集行事の安全管理も規定上、自治警察が「支援」だけをすることになっていて、国家警察が担当するとうい説明だ。
こうした混乱は自治警察制施行当時から予想されていた。災難緊急救助支援が自治警察の業務になったが、現場人員の中には自治警察委が指揮できる人員がほとんどいないからだ。半面、警察で真っ先に災難現場に出動する地区隊・派出所職員だけでなく、災難管理業務を総括する警察庁治安状況管理官(2019年職制新設)も国家警察所属だ。現在は国家警察の場合、地区隊・派出所所属の警察が災難状況を一線で112状況室に伝えれば、市・道警察庁112状況室を経て警察庁治安状況管理官に伝えられ、市・道警察庁長は上級機関長にこれを報告するという体系だ。ソウル自治警察委は通常、ソウル庁から報告資料を受けている。
◆「災難時の警察の具体的役割を明示すべき」
専門家らは災難発生時の警察の具体的な役割を明示する必要があると強調する。東国大のクァク・デギョン警察行政学科教授は「国家警察と自治警察の組織構成と担当業務・機能などを明確に区分したり協議を必要となる大型事件がまだなかった」とし「非常任の自治警察委員もいる状況で緊急な危機状況に対応するのは現実的に難しい状況」と話した。そして「今回の件をきっかけに国家・自治警察の業務協力・分担や相互支援案などについて細かな議論を始める必要がある」と強調した。
国立災難安全研究院も昨年の研究で「韓国警察の危機管理は消極的な役割にとどまり、市民の安全な生活を保障する責任が付与された国家機関としての役割をまともに遂行できないのが実情」とし「災難発生時の警察の任務や役割に関する具体的な警察の役割を明確にする法的な制度が用意されるべき」と指摘した。
記事によると、国家警察と自治警察※が事故の責任の所在を巡って対立しており、どうやらいわゆる「縦割り行政」によって、2つの警察機関が事故当時情報の共有をできていなかったことで、自治警察と国家警察がお互いに「相手が対応すべきことだった」と責任のなすりつけ合いをしているようなのです。
※国家警察と自治警察の役割
・国家警察 保安、外事、警備、対北朝鮮捜査などを担当 政府所属
・自治警察 生活安全、交通、雑踏警備、校内暴力などを担当 自治体所属
上記のような役割分担があるため、一見すると自治警察の担当のようにも見えますが、記事ではいわゆる112緊急通報(日本の110番に相当)をうけるのも災難管理業務も国家警察であり、業務分担にミスマッチが起きていた事がわかります。
恐らくですが、国家警察は自治警察の仕事と考え、自治警察は国家警察の仕事と考えていたため、事故前からあった危険シグナルを見逃していたのでしょう。
こうした状況にある事から、次の記事にあるように
韓国警察庁が緊急通報時の指揮体制改善へ 現場に迅速出動=雑踏事故受け
聯合ニュース 2022.11.15
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221115000400882
【ソウル
聯合ニュース】韓国
警察庁は158人が死亡したソウル・梨泰院での雑踏事故を受け、主要市・道の
警察庁の112(緊急通報)状況室の改善に取り組んでいる。
警察庁は15日、112状況室を束ねる状況室長に対し緊急時に機動隊を実質的に指揮する権限を与える方向で検討を進めていると説明した。
梨泰院の事故により、112状況室と機動隊などの現場の人員が有機的に動くことができない制度の穴が露呈した。
警察庁は112状況室の改善として、緊急時に112状況室長が市・道警察庁トップの警察庁長や警察署長のような役割を務め、機動隊を直接指揮・運用できるようにする方策を議論した。迅速な対応に向け、人員運用の手順を簡素化するのが目的。ソウル警察庁は80人前後からなる機動隊1部隊、それ以外の市・道警察庁は20人前後の1隊を待機させ、緊急状況が発生すれば112状況室長の指揮に従って直ちに出動させるようにする。
112状況室長の判断で、刑事、女性・青少年、交通、情報など機能別の当直勤務者を各自の指揮官に事前報告することなく現場の状況管理に投入させる案も検討する。
こうした先手の措置を取ることで発生する問題に対しては、112状況室長に責任を問わない。
梨泰院の事故当時、ソウル警察庁112治安総合状況室の当直者だった状況管理官は112状況室でなく自身のオフィスで勤務に当たっていた。状況把握が遅れ、金光浩(キム・グァンホ)ソウル警察庁長が報告を受けたのは事故発生から1時間21分後で、報告したのは状況管理官でなく、梨泰院を管轄する竜山警察署の署長だった。
これを踏まえ警察庁は、状況管理官に定位置での勤務の原則を徹底するよう指示した。市・道警察庁の状況管理官は112状況室長に代わって市・道警察庁長に治安・安全状況を報告し、緊急事態の発生時には警察庁の状況室にも報告しなければならない。
警察庁は、特定の場所から同じような内容の112通報が繰り返しあった場合、警察内部ネットワークのマップに自動的に表示させ、状況を分析し異常兆候を検知するシステムを構築する方針だ。
国家警察の所属である警察庁が、緊急通報を受けた際の指揮命令系統の見直しと内部ネットワークの改善を行う事で、情報の共有と現場指揮を速やかに行えるようにしたようなのですが、自治警察との縦割り行政はそのままで、分担のミスマッチも改善されていません。
3:犯人探し
ではなぜこんなことになっているかというと、以前から説明しているように、「自分は常に正しい選択をしている」という独特の思考が関係しているため、別の事に注意が向いているからです。
※独特の正しさの概念
彼らの正しさの概念は独特であり、根拠を必要としない。
また「この世には最初から一つの正しさが存在する」と考えられており、自分はその正しさを常に選択していると考える傾向にある。
そして正しさ同士がぶつかった場合には、(曲解でも捏造でもその件と全く関係なくともなんでもいいので)相手の劣等性を指摘する事でそれを自己の正しさの担保とする。
また相手の劣等性を指摘した時点で自身が指摘された問題は相手の問題にすり替わる。
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - ニコニコ動画
【日韓問題】日韓で異なる「正しさ」の概念 前編 - YouTube
関連記事
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
この考え方では、自身は常に正しい判断をしているので、間違いなど起きるわけがなく、「絶対的に正しい」という前提があるため自身が正しいという事を説明する必要すらありません。
なぜなら「正しいから」です。
しかし実際には、完璧な人間などいるわけがないのですから、間違いも判断ミスも勘違いも起こります。
そのため韓国では誰かに責任を取らせてそれで「解決したことにしてしまう」という事が繰り返されており、これが今回の事故の最大の原因です。
実際今回の事例でも
特別捜査本部 警察上層部のオフィスなど家宅捜索=ソウル雑踏事故
聯合ニュース 2022.11.07
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221108001700882
【ソウル
聯合ニュース】韓国
警察庁の特別捜査本部は8日、ソウルの竜山区梨泰院で先月29日に起きた雑踏事故を巡り、
警察庁やソウル
警察庁、竜山警察署など55カ所の家宅捜索に入った。156人が亡くなった同事故では、警察の対応の不備が明らかになっている。
家宅捜索の対象となったのは、警察トップの尹熙根(ユン・ヒグン)警察庁長、金光浩(キム・グァンホ)ソウル警察庁長ら警察上層部のオフィスのほか、ソウル警察庁の情報・警備部長室と112(緊急通報)状況室長室、竜山警察署の情報・警備課長室など。
特別捜査本部は竜山区庁にも捜査員を派遣し、区長室をはじめとする19カ所で関連資料などの押収を進めている。ソウル市の消防災難(災害)本部など消防関連の7カ所とソウル交通公社本部、梨泰院駅も家宅捜索中だ。
特別捜査本部は事故に関する容疑者や参考人の携帯電話、ハロウィーンイベント関連の書類、防犯カメラ映像、パソコンに保存されたデータなどを押収する計画にしている。
同本部は今月2日、雑踏事故に関して初の強制捜査に踏み切り、ソウル警察庁や竜山警察署、竜山区庁などの家宅捜索を行った。
当初現場の警察官などに対する責任追及が行われていたのですが、「トカゲのしっぽ切りだ」と批判されると、この記事にあるように政府の命令で警察上層部が捜査の対象になり、警察庁が家宅捜索を受けます。
更には次の記事にあるように
[梨泰院惨事]「行政安全部長官にはなぜ責任問わぬ」前線の警察官が反発
ハンギョレ新聞 2022-11-10
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/45068.html
「警察を指揮すると言っていた行政安全部、今になって赤の他人のふりか」
「責任を取るのは警察しかいないのか。行政安全部、龍山(ヨンサン)区役所、消防当局の責任はないのか」
警察史上初めて警察庁長とソウル警察庁長の執務室が家宅捜索を受けた中、前線の警察官の怒りが沸騰している。彼らは梨泰院(イテウォン)惨事の警察責任論は認めつつも、警察のみに過度な責任を負わせるのは「トカゲのしっぽ切り」だと反発している。
本紙は8日と9日、警察庁特殊捜査本部が警察庁のユン・ヒグン庁長官とソウル警察庁のキム・グァンホ庁長の執務室を家宅捜索したことについて、全国の幹部級警察官の声を聞いた。ソウルのある警察署の幹部であるA警正(日本の警察の警視に相当)は「梨泰院で156人もの人が亡くなったのに、警察庁長官が辞めないのはおかしい。警察官ではなく国民としての立場から見ると、辞めるのが正しい」と述べた。慶尚南道のB警監(警部に相当)は、特にソウル警察庁長の責任を強調した。同氏は「ソウル警察庁がハロウィーンの人出より大統領室の警備と近隣集会の管理の方を重視したため、このような事態が発生した」と指摘した。
警察首脳部が職責を保ちつつ事態を収拾した方がよいという意見もあった。ソウルの別の署の幹部であるC警正は「ユン長官とキム庁長は今すぐ辞めるべきではない。被疑者でもないではないか。捜査対象となれば辞めるべきだろうが、今は収拾が重要だ」と語った。B警監も「ソウル庁長とは異なり警察庁長官は、辞任するのではなく事態収拾に邁進すべきだ。警察庁長官までいなくなればソウルだけでなく全国が動揺する」と付け加えた。
多くの警察官は、警察庁とソウル警察庁、龍山警察署に集中する責任論に対し「トカゲのしっぽ切りをしているようだ」と不満を表明した。特に、警察局を作って指揮すると述べたイ・サンミン行政安全部長官が責任を取らずに線引きする姿勢には失望したと口をそろえた。
全羅北道のD警正は、「惨事の結果をみると問題の原因は警察のみにあると言って追いつめているようだ。本質的には災害という状況では龍山区役所、消防当局にも責任がある」、「警察の報告体系などを整備すべき行安部警察局の責任はないのか疑問」と吐露した。
B警監は「警察局を設置する際、イ長官は『警察は指揮を受けるべきだ』と言った。だがイ長官は反省の気配もなく、赤の他人のようにふるまっている」と指摘した。また「大きな事件だから言えないだけで、現場の警察官たちは警察ばかりに責任を転嫁するイ長官の処世術に対して怒りや羞恥心、悲しみなどを非常に感じている」と強調した。A警正も「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はまるで検察が捜査するかのように、誰に刑事責任があるのかと
いうことばかりを見ているようだ。政治的責任を取るべき首相、行安部長官に責任を問うべきなのに、刑事的責任がないから問題ないと考えているのか」と語った。
チェ・ユンテ、コ・ビョンチャン記者
このことに警察が反発、「ソウル警察庁がハロウィーンの人出より大統領室の警備と近隣集会の管理の方を重視したため、このような事態が発生した」と責任を政府に持っていき、「(政府の)行政安全部長官が責任を取るべきだ」と言い出しています。
そしてさらに次の記事にあるように
ソウル雑踏事故 区長を出国禁止に=特別捜査本部
聯合ニュース 2022.11.11
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20221111004200882
【ソウル
聯合ニュース】韓国・ソウルの竜山区梨泰院で156人が亡くなった雑踏事故を捜査している
警察庁の特別捜査本部は11日、朴熙英(パク・ヒヨン)竜山区長の出国を禁止する措置を取った。
特別捜査本部は7日に朴氏を業務上過失致死傷の容疑で立件した。ハロウィーンを前に多くの人が集まることが予想された梨泰院の安全対策が不十分だった可能性について重点的に捜査を進めている。また、事故発生前に区庁で開かれた安全対策会議に朴区長ではなく副区長が出席した経緯や、事故当時に朴氏が適切に対応したかも調べている。
同事故に絡み、特別捜査本部が出国禁止措置を取ったのは現場の路地に接するハミルトンホテルの社長と朴氏の2人となった。同ホテルの社長は周辺に構造物を違法に設置し道路を許可なく占用した疑い(建築法違反など)などで捜査を受けている。
梨泰院のあるソウルの竜山区長が安全対策を怠った疑いがあるとして立件、出国禁止措置を行い、更に
【独自】竜山区長、ハロウィーン前に関連部署長を次々と交代させていた /ソウル
朝鮮日報 2022/11/16
https://web.archive.org/web/20221116044117/https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/11/16/2022111680089.html
「不当人事」と物議
(アンカー)
事故当日の行動が物議を醸していた朴熙英(パク・ヒヨン)ソウル市竜山区長をめぐり、また別の問題が取りざたされています。ハロウィーンの1カ月前、関連部署長を次々と交代させたため、非常事態にきちんと対応できなかったのではないかという指摘が出ているもので、警察特別捜査本部がこうした点と事故との関連性などを視野に入れて調べています。
キム・チャンソプ記者の独自取材です。
(記者リポート)
竜山区庁でハロウィーンなどの文化イベントを管理してきた部署は文化環境局。
ところが、ハロウィーン事故の1カ月前、文化環境局のA局長が突然辞表を提出しました。
7月に就任した朴熙英竜山区長が「一緒に働けない」として、別の区庁に行くように追い出したということです。
A元竜山区庁文化環境局長の関係者
「新たな区政を行うのに、あなたとは一緒にできない…ほかの所(区庁)に行け、と通告されたんです」
そのポストには文化イベントとは関係のない駐車管理課長が昇進して就きました。
朴熙英区長の就任後、交代させられた幹部は1人や2人ではありません。
就任1カ月でイベントや行事の安全対策などを担当する安全建設交通局長と文化体育課長が交代となり、管内の防犯カメラ映像などを分析して事故時に対策を立てるスマート情報課長と安全災害課長も相次いで代わりました。
このように朴熙英区長就任直後からイベント・行事・安全管理関連の部署長が次々と交代したため、梨泰院雑踏事故の緊急状況にきちんと対処できなかったのではないか、という疑惑が浮上しています。
しかも、A局長の突然の辞任の背景には、朴熙英区長の政治的な利害関係が絡んでいるという疑惑も浮上しています。
A局長の配偶者が区長選挙時、朴熙英区長のライバル候補の選挙運動を手伝って嫌われたということです。
A元竜山区庁文化環境局長の関係者
「秘書室関係者が(地方選挙で)夫が相手候補を手伝ったことが決定的だったのではないだろうか。夫が(局長交代の)決定的な理由だ…」
警察は朴熙英区長による人事異動の背景を調べるとともに、事故対応不備との因果関係も捜査中だとのことです。
テレビ朝鮮 キム・チャンソプでした。
(2022年11月15日放送 TV朝鮮「ニュース9」より)
ハロウィン前に関連部署の責任者を次々と追い出したため、安全対策ができなかったのではないかと追及し始めています。
要するに「魔女狩り」が始まっているのです。
しかし次の記事を読むと
<インタビュー>梨泰院惨事を見た日本の安全専門家、川口教授の注意点(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.11 09:39
https://japanese.joins.com/JArticle/297624
黒のテープで床に描かれた1平方メートルの空間。その前に立った教授はこう話した。「大人の肩幅が50センチ、胸の厚さが普通20センチとしても、この空間に16人が立っているというのはあり得ないことです」。
8日、大阪高槻市の関西大学で川口寿裕教授(56)に会った。川口氏は梨泰院(イテウォン)惨事の状況について説明するため、実験室の床にテープで1平方メートルを表示していた。「このような事故を防ぐために群集安全の研究をしてきたが、これからという若者たちが犠牲になり、研究者として本当につらい」と語った。川口氏は156人の命を奪ったこの事故の原因を「準備不足」と指摘した。「二度とこのようなことが起こらないよう、韓国は考え方から変えなければいけない」とも話した。
川口教授は日本屈指の群集事故専門家だ。2001年の明石花火大会歩道橋事故が川口氏の人生を変えた。当時35歳で物理学を専攻していた川口氏に、原因究明のために警察から科学的に分析してほしいという要請があった。量子研究をしていた川口氏は明石市の事故をきっかけに研究分野を変更した。日本は子どもら死亡者11人を含む258人の死傷者が発生した明石歩道橋事故の調査に基づき、法を改正、雑踏警備制度を整備した。
--なぜ梨泰院惨事は起きたのか。
「準備不足だ。超密集状態になるのを避けるべきだったが、それができなかった。市民から通報があってもすぐに出動しなかったのは警察の判断ミスだ。しかし警察が通報を受けてその場所に行っていれば事故が発生しなかったといえるかは疑問だ」
--なぜか。
「警察が当時の梨泰院でできることはそれほど多くないはずだ。すでに密集状況だったからだ。警察が通報を受けて現場に行ったとしても、人波の分散ができるシステムがなかったため効果がなかったということだ」
--韓国では誰の責任かをめぐり政治論争に向かっている。
「主催者がいなくても日本なら自治体と警察に責任を問うはずだ。今回のような場合、ソウル市、そして地域警察になるだろう。事前に準備しておくべきという点で責任があるとみる。文化が違うからだろうが(責任者が)尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とか、長官という話が韓国では聞かれるが、日本ならそのような話は出ないだろう。龍山(ヨンサン)警察署がハロウィーン行事の危険性を知りながらも対策を準備しなかったのは本当に残念だ。今回の事故を繰り返し見たが、事前の準備の問題だとみている。あらかじめ計画を立てて当日の警備をまともにしていれば防げる事故だった。政治の問題ではない。システムづくりの問題だ」
--今回の梨泰院惨事が明石歩道橋事故と比較されたりするが。
「3つの共通点がある。まず、密閉された空間だ。梨泰院も両側に建物が立ち並んでいて左右に避ける空間が全くなかった。2つ目は一方通行でなかったという点だ。そして事故状況を外部から判断するのが難しかったことだ。明石歩道橋事故では現場に警備人員がいたが、内側が密集していることを認識できず歩行者を通過させた。今回の梨泰院では警備人員が見えなかったうえ、各自が状況を判断して内側に入ることになったが、典型的な事故の形態と似ていた。それで警備人員を事前に配置して状況を判断し、歩行者を統率する体制をつくることが重要だ」
--警察の人員数が重要なのではなく、システムということか。
「何人いても、そのようなシステムがなければ意味がない。ただ、事故が発生した道は直線形態で幅が3.2メートル、長さ40メートルのところだ。事前に周囲を20メートル間隔で人員を1人ずつ配置して混雑状況をチェックし、道の両端の入口にいる人員に連絡して一時的にでも歩行者を入れないようにコントロールする形だったなら、犠牲者を減らすことができたと思う」
--今回のハロウィーンで大勢の人々が集まった渋谷ではDJポリスも出て統制したが、日本は普段からこのようにしているのか。
「渋谷のハロウィーンは主催者がいない。自治体と商店側が警察と相談して計画を立てたと聞いている。DJポリスは明石歩道橋事故後にできたもので、車の上で警察が誘導するが、人が集まる行事に必ず出てくる。高い位置で人波の流れを見ながら誘導し、警察の制服を着た人がマイクで指示をするのが群衆に効果的な印象を与えることができる。最近は俳優の木村拓哉が参加した岐阜市の祭りに46万人が集まったが、ここにもDJポリスが出てきた。日本では人波ができる時、常に基本は一方通行だ」
--一方通行が重要ということか。
「明石歩道橋事故当時、一方通行ではなかった点が原因一つに挙げられた。事故が発生した梨泰院の路地は幅3.2メートルだが、大人の肩が約50センチとすれば6人ほどだけが通過できる。一方通行ではなかったため、片方に3人ほどしか通過できない。この道を一方通行にすべきだったと考える」
<インタビュー>梨泰院惨事を見た日本の安全専門家、川口教授の注意点(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.11 09:40
https://japanese.joins.com/JArticle/297625
--最近のように技術が発展した世の中で発生し得ることなのか。多くの人が衝撃を受けている。
「日本の場合も1950年代から群集事故が多かった。1956年に新潟県で124人が死亡する事故があった。それで事前に計画を立てようという考えを抱くことになった。しかし2001年に明石市で大事故が発生し、日本の事故対応は十分でなかったという深い反省があり、徹底的に再整備しようという声が高まった。兵庫県警は事故の翌年「雑踏警備案内書」を作成し、現在も誰でも見ることができるようにホームページに公開している。(※案内書は密集事故を体験した人たちの証言で始まる。兵庫県警は各大学との研究結果などに基づいて計120ページの指針を作成した。群衆誘導時には「平易な言葉で、短文で、結論を先に」などの内容からマイクの使用、突発状況時の語調まで詳細に記録されている)このような影響で行事の数カ月前から人波の方向、規模、時間帯などを徹底的に分析する。例えば道と道が交差するところは危険だが、このような場合には進入禁止にするか、一方通行にするかポイント別に徹底的に分析して対策を立てる形でしている」
--話は変わるが、密集状況になってしまえばどうするべきか。
「率直に言うと、できることはあまりない。人波が生じれば誰か一人でも転倒すれば危険だ。したがって絶対に落とした物を拾おうとして腰を曲げたりしてはいけない。隙間が少しでも生じれば、周囲の人たちが一斉にその方向に倒れることがあるからだ。1人でも倒れれば連鎖的に隣の人が次々と倒れることもある」
--梨泰院惨事で多くの犠牲者が出た。
「一般的に人々が共に倒れながら圧死するケースが多い。体重の2倍の力を加えれば1時間以上持ちこたえることができるが、3倍の力の場合は1時間程度、5倍の力なら10分程度で窒息死するという動物実験研究がある。実際にシミュレーションをしてみると、65キロの人に5倍ほどの300キロの力が加えられる場合、10分ほどで死亡する可能性がある。梨泰院の場合、1平方メートルに16人ほど、1人あたり300キロ近い力がかかるが、この状態が10-20分続けば窒息してもおかしくない。事故の映像を見ると、人々が左右前後に押されているが、瞬間的により大きな圧力が加わった可能性が高い。このため超密集状態を作ってはいけないということだ。自ら抜け出すのが難しいからだ」
--最後に話しておきたいことがあれば。
「日本も明石歩道橋事故をきっかけに警備体系に対する認識が劇的に高まった。起きてはいけないことが韓国で起きたが、今回の事故をこのまま済ませてはいけない。雑踏警備がどれほど重要か、自分自身にも起こり得る群集事故の恐ろしさを忘れてはいけない。考えから、意識から、徹底的に変えなければいけない。10代、20代の未来のある若者たちが犠牲になった。20代の子がいる父親の立場としても今回の事故は本当に胸が痛む」
雑踏事故の専門家で関西大学教授の川口寿裕氏が中央日報のインタビューを受け、警察の判断ミスがあったとしたうえで「しかし警察が通報を受けてその場所に行っていれば事故が発生しなかったといえるかは疑問だ」と答えています。
まただれが責任者だとかそういった話ではなく「あらかじめ計画を立てて当日の警備をまともにしていれば防げる事故だった。政治の問題ではない。システムづくりの問題だ」と答えており、「誰が」という個々の問題ではなく、事故を防ぐシステムを作ってこなかった韓国社会の問題であると指摘しています。
そして、通報を無視せず動いていたとしても組織の運用そのものに問題があった以上事故は防げなかったのだから、責任追及よりも重要なことがあり、「意識から、徹底的に変えなければいけない」と指摘しています。
ここで重要なのは、こうした外部からの指摘はセウォル号事故(2014年)、大邱地下鉄放火事件(2003年)の時にもありましたし、韓国内でも大きな事故があるたびに「責任追及をして満足するのではなく、安全対策を改善しなければいけない」という声が出てきますが、今回も同じことが起きています。
そしてその原因こそが「自分は常に正しい選択をしている」と考え、「自身に間違いがないのだから別の誰かが間違ったはずだ」という考え方により「システムを作ってこなかった自分達にも責任がある」という意識がない事が関係しており、この価値観は日本との歴史問題や戦後補償問題にも影響を与えています。
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