さて、本日は日韓友好を訴える人々にとって韓国は高価なブランド品に似ているという件について書いていきます。
初めて来られた方はまずこちらを先に読む事をお勧めします。
ブロマガ『日韓問題(初心者向け)』を始めた理由 - 日韓問題(初心者向け)
注意
・このブログは「日韓の価値観の違い」を初心者向けに扱っています
・当ブログのスタンスは「価値観に善悪や優劣は存在しない」というものです
・相手が不法を働いているからと、こちらが不法をして良い理由にはなりません
・自身の常識が相手にとっても常識とは限りません、「他者がそれを見たらど
う思うか」という客観性を常に持ちましょう
・日常生活で注意する程度には言動に注意を心がけてください
いわゆる日韓友好論者の韓国観を観察していると、「日本に比べて韓国はこんなに優れている」等の比較が多く、一見すると韓国人のマウント取りをそのまま受け売りしているだけに見える。
しかし実際には、そうした人々の語る韓国には「負の部分」の全てが抜け落ちており、たとえば近年の平均賃金などの事例では、若者の失業率や雇用形態の悪化、統計方法の違いなどが無視されている場合が多く、実態と大きくかけ離れている事が多い。
また他の日韓問題においても、韓国に好意的な人ほど「問題点」を語らない場合が多く、調べてみると「知識そのものがない」あるいは「知っていてもブランド価値を維持するために隠す」事例が殆どであり、こうしたことから彼らは韓国自体にはほとんど関心がなく、ただ「リベラルで寛容な自分」を演出する道具として韓国を「着用」しているだけという印象が極めて強い。
※本文中のリンクは引用の元記事、或いはウェブアーカイブやウェブ魚拓(別サイト)へのリンクです。
1:日韓友好論者の韓国論
まずはこちらの記事から
韓国に抜かれた日本の平均賃金 上がらぬ理由は生産性かそれとも…
朝日新聞 2021年10月20日
https://www.asahi.com/articles/ASPBM54P1PBCULFA023.html
この30年間、日本は賃金が変わっていないと聞いた。しかも、海外と比べると、さらにぎょっとする。いつの間にか、先進国でも平均以下となり、差が大きかったお隣の韓国にも追い越された。どの国も上がっているのに、置き去りの日本の状況は異常とも言える。なぜ日本は賃金が上がらない国になってしまったのだろうか。
まず、日本の現状を確認してみた。経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査(物価水準を考慮した「購買力平価」ベース)によると、1ドル=110円とした場合の日本の平均賃金は424万円。35カ国中22位で、1位の米国(763万円)と339万円も差がある。1990年と比べると、日本が18万円しか増えていない間に、米国は247万円も増えていた。この間、韓国は1・9倍に急上昇。日本は15年に抜かれ、いまは38万円差だ。日本が足踏みしている間に、世界との差はどんどん開いていた。
賃金はほとんど上がらなかったこの間、社会保険料や税金がひかれた後の手取りはどうだろう。
大和総研の調査でみてみた。2人以上の勤労者世帯では、手取りは97年をピークに減少が続いていたが、12年以降は女性の社会進出の影響もあり、緩やかに伸びている。給料から引かれるものとしては、社会保険料の負担が増している。17年までの30年間で月額2万6千円の負担増だ。主任研究員の是枝俊悟さんは「少子高齢化の中、医療や介護分野の社会保険料負担はさらに増す可能性があり、可処分所得の下押し要因になりかねない」と話す。
こちらの記事では、韓国の平均賃金が日本を抜いており、日本の購買力ベースの平均賃金があがっていない事を問題視しています。
そして「1990年と比べると、日本が18万円しか増えていない間に、米国は247万円も増えていた。この間、韓国は1・9倍に急上昇。日本は15年に抜かれ、いまは38万円差だ。日本が足踏みしている間に、世界との差はどんどん開いていた」と書いています。
また次の事例では
「日本経済」が韓国に追い抜かれた納得できる理由
東洋経済 2022/03/07
https://toyokeizai.net/articles/-/536058
同じ構造的問題を抱えながら何が差を生んだ?
日本経済研究センターが2027年には韓国が名目GDPで日本を上回りし(原文ママ)、台湾も同年に上回ると予測したとき、大きなニュースとなった。しかし、国際通貨基金(IMF)によると、韓国はすでに2018年に日本を追い抜き、台湾は2009年に追い抜いている。
さらに、韓国は2026年までに日本より12%リードするとみられている。 IMFは、購買力平価(PPP)と呼ばれる基準を用いており、これは、実際の生活水準を比較するために、価格と為替レートの変動を均衡するものだ。
「逆転」が日本について語ること
しかも、韓国は日本とは異なり、その成長成果を労働者に与えてきた。1990年から2020年までの30年間、平均的な日本の労働者は年間実質賃金(付加給付を除く)の上昇を享受しなかったが、韓国の労働者の賃金は2倍になっている。現在、韓国の労働者は日本の労働者よりも高い実質賃金を得ている。
この「逆転」は、韓国よりも日本について多くを語る。健全な新興工業国は、経済的に裕福な国の技術レベルに追いつくペースが早く、経済的にも富裕国より早く成長する。日本と韓国も同様に先進国の技術に追いつき、経済成長を果たしてきた(そして日本については、奇跡の成長が終わった後も、技術的な進化は続いた)。
1970年には日本の時間あたりの労働生産性は、アメリカのそれの40%に満たなかったが、1995年までに71%にまで上昇した。が、その後、失われた10年の間に日本が後退したことで、この数字は63%にまで低下している。
https://toyokeizai.net/articles/-/536058?page=2
一方、韓国はアメリカに追いつき続けた。1970年の時間あたりの労働生産性アメリカの10%に過ぎなかったが、2020年までに58%に急上昇。まもなく、韓国はこの指標でも日本を追い抜くだろう。
韓国の成長が特に際立つのは、韓国が日本と同じ構造的欠陥を有しているにもかかわらず、これを軽減する方法を見出したからだ。日本と同様、韓国は「二重経済」である。すなわち、韓国経済は、国内製造業の一部と多数のサービス業という、極めて効率的な輸出部門、そしてひどく非効率的な部門で成り立っている。韓国における中小企業と大企業間の生産性格差はOECDで3番目に悪い。
一方、労働力の3分の1以上は、低賃金の非正規労働者で構成されている。 経済が非常に不均衡なため、2019年の韓国の全輸出は、驚くべきことにサムスン電子だけで2割を占めている。これは非常に危険である。
「韓国の未来は日本を見ればわかる」と警告
こうした状況下、ワシントンに本拠を置く韓国経済研究所は、改革をしなかった場合、「韓国の未来は日本を見ればわかる」と警告した。加えて、世界的な競争力を持つ産業がいつまでも「経済全体を動かすのに十分な大きさのエンジン」であり続けることは両国とも不可能だ、と付け加えた。
実際、韓国の1人当たりの成長率は、1980年代半ばの年間9%から2014〜2019年にはわずか2.5%とすでに低下している。もっとも経済が成熟するにつれて成長は鈍化するものであり、2.5%は同期間の日本の成長率(1.1%)を上回っている。それでもOECDによると、韓国に日本のような構造的欠陥がなければ、年間成長率は1〜2%高くなる可能性がある。
いずれにしても、日本と韓国における1人当たりのGDPは、アメリカやヨーロッパを大きく下回っており、韓国は追いつきつつある一方で、日本はこれに後れをとっている、というのが今の構図だ。しかも韓国は構図的欠陥の少なくとも一部を改善するため、より多くの取り組みを行っている。逆に言えば、日本は韓国から学ぶところがある、というわけだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/536058?page=3
経済がきちんと成長するためには、高い潜在的成長を実現するための生産性向上を実現しなければいけない。同時に、経済がフル稼働するには、需要側の安定性が必要である。
この点で、韓国は日本よりうまく需要側をコントロールしてきた。前述の通り、韓国では労働者の賃金がGDPと並行して上昇している。その結果、韓国の世帯は自国が生産したものを買う余裕がある。正常な経済では、民間需要の不足を補うために、慢性的な政府による支出と、必要以上に大きな貿易黒字は必要ないのだ。
賃金格差については、韓国のほうが日本より状況が悪いが、韓国はこの改善にも取り組んでいる。例えば、最低賃金は中央値は62%に引き上げられており、これはOECDで3番目に高い比率になっている。日本はいまだ45%にとどまっている。
世界的な危機への耐性が高い韓国
韓国の対GDPにおける輸出額は日本の2倍だが、内需が強いことから、韓国は世界的な危機に対して日本より耐性がある。2008〜2009年の金融危機時、日本のGPDが7%減少した一方、韓国のGDPは4%増加した。また、過去2年のコロナ禍において日本のGDPは3%低下したのに対して、韓国のGDPは3%上昇した。一般的にマクロ経済危機の影響を受けにくい国は、長期的に平均成長率が高くなる。
生産性の面では、経済成長に必要な第一要素は最新設備への投資である。1980年当時、韓国の各労働者は日本の労働者の23%の資本しか持っていなかったが、2020年までに韓国の労働者は日本の労働者より12%多く持つようになった。
2つ目の大きな要素は、教育と訓練である。「人的資本」は、1人ひとりがどれだけ学校教育を受け、さらなる追加の学歴が各国の成長に貢献するものだが、1960年、韓国は日本と比べて70%の人的資本しか享受していなかった。これが2019年までに5%増加し、韓国の人的資本は先進国31カ国中5位となり、日本は13位になった。
https://toyokeizai.net/articles/-/536058?page=4
多くの日本人が大学を卒業しているにもかかわらず、日本はなぜ後れをとっているのだろうか。2020年には、24〜34歳の年齢層では韓国人の70%が大卒で、日本は62%と先進国トップレベルにある。ここからわかるのは、日本企業がこうした高い学歴を持つ人を最大限に活用する訓練やテクノロジーを導入できていない、ということだ。
例えば、大卒者であったとしても非正規労働者は正規労働者が普通に受けているような、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)をほとんど受けていない。また、日本企業のオフ・ザ・ジョブ・トレーニング(職場外研修)への支出は1991年以来40%減少している。OJTの費用は総人件費とは別に計算されていないが、非正規の割合が増加しているため、ほぼ確実に減少しているだろう。
政府が教育にかける費用も低い日本
問題は訓練費用だけではない。大学以前の教育に投資する費用(GDP比)で見ても、韓国がOECD26カ国中15位なのに対して、日本は下からなんと2番目。大学教育に関して言えば、日本は公的資金に最もお金をかけていない。 経済的負担は家族に課せられる。その結果、裕福でない家庭の優秀な日本人学生は大学に進学できず、個人にとっても国にとっても損失となっている。
ある国の経済が発展していくうえで最も重要な要素はインフラ、近代産業、および教育にどれだけ投資するかである。しかし、国がある程度経済的に成熟すると、より重要なのは国がどれだけ投資するかではなく、どれだけ賢明に投資するか、つまり、企業が投資した1円や1ウォンからどれだけの利益を得られるか、である。
この点で見ると、サムスン電子はより優れた製品や、賢い労働者を持つからではなく、優れた戦略を実行したことからソニーに取って代わったと言える。
国が物的資本と人的資本の両方からどれだけの利益を得るかを測る尺度は、全要素生産性(TFP)と呼ばれる。 資本と労働の投入量が2%増加し、GDPの生産量が3%増加する場合、その1%の差はTFPである。長期的には、TFPの堅調な成長は、1人当たりGDPの成長を最も確実に保証するものだ。 2014年から2019年にかけて、韓国はOECD 23カ国の中で1位となり、TFPは年間1.5%の成長を遂げた。対照的に、日本は0.6%でわずか10位だった。
https://toyokeizai.net/articles/-/536058?page=5
TFP成長の一部は、アーク式電気炉を備えた製鉄所など、より最新の技術に投資することによってもたらされる。しかし、先進国はどこも同じような技術を利用している。こうした中、TFPの差を生む要因の1つは、その技術をどれだけうまく利用しているか、である。
試しにデジタル技術を見てみよう。日本と韓国はともに、大企業と中小企業間の大きなデジタルデバイドに悩まされているが、情報通信技術(ICT)に投資している韓国企業は、これをより効率的に活用する取り組みをしている。
例えば企業は、ICTを事務作業や工場作業の自動化など、すでに実行している作業のコストを削減するために使うのか、それとも新製品や改良製品を生産するために使うのか、的確に顧客を狙うために使うのがいいのかという選択に迫られる。日本経営開発研究所は、デジタル分野におけるこのような「ビジネスアジリティ」で国をランク付けしているが、2021年に64カ国中、韓国は5位だったのに対し、日本は53位と完全に後れを取っている。
企業は、従業員がICTをうまく使うスキルを持っていない限り、ICTを最大限に活用できない。 世界経済フォーラムが労働力のデジタルスキルで141カ国をランク付けしたとき、韓国は25位だったが、日本は驚くほど低い58位だった。
ベンチャーや起業家育成でも差
韓国は新興企業や起業家育成にも力を入れている。特に研究開発分野への投資は国が生み出す高成長中小企業の数に大きな違いをもたらす。日本では従業員250人未満の企業に対する政府の財政援助は、研究開発分野での政府援助の12%と、OECDで最も少ない。対して韓国では研究開発への政府支援の半分は中小企業に充てられる。これが、韓国のビジネス研究開発全体の22%が中小企業によって行われている理由の1つである(日本ではたった4%である)。
こうしたさまざまな取り組みの結果、2017年時点で韓国には8000を超える高成長企業(従業員が10人以上で、3年間連続で年間20%以上成長した企業)があった。先進国12カ国の中で、韓国は労働者100万人当たりの高成長企業数で5位にランクインしている。残念ながら、日本は起業家の成功に関する重要指標を測定したことがない。これは国が何を重要視しているのかを如実に語るものだ。
さまざまな数字は日本にとって悪いニュースかもしれないが、これはいいニュースでもある。韓国の経験を踏まえて、正しい構造改革を行えば、日本にも明るい未来が待っている可能性を示しているのだから。
少々長い記事ですが、記事によると「日本経済研究センターが2027年には韓国が名目GDPで日本を上回りし、台湾も同年に上回ると予測した」という話から始まり、その後さらに韓国はリードしていくとしています。
また「日本とは異なり、その成長成果を労働者に与えてきた。1990年から2020年までの30年間、平均的な日本の労働者は年間実質賃金(付加給付を除く)の上昇を享受しなかったが、韓国の労働者の賃金は2倍になっている。現在、韓国の労働者は日本の労働者よりも高い実質賃金を得ている」と書いており、日本の生産性の低さと韓国の平均賃金が変わらず上昇し続けている事を指摘しています。
そして韓国も経済発展が鈍化してきているが、それでも日本の成長率を上回っており、「韓国は日本よりうまく需要側をコントロールしてきた。前述の通り、韓国では労働者の賃金がGDPと並行して上昇している。その結果、韓国の世帯は自国が生産したものを買う余裕がある。」と書いています。
つまり、韓国では平均賃金が上がり続けているので労働者に購買力があり、そのため日本のような「鈍化」はしないとしているわけです。
2:肝心の部分を見ない
しかし、最近流行りのこうした「韓国絶賛」記事では、そのどれも重要な部分が抜け落ちています。
それは何かというと、まず一つ目は韓国は日本以上の少子高齢化社会であると同時に、青年失業率が慢性的に高い社会であるという事です。
次の記事を見てもらうとわかりますが
韓国の昨年の大卒者就職率67.1%…5人に1人は1年以内に離職
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.12.28 15:47
https://japanese.joins.com/JArticle/273831
韓国の大学・大学院卒業者の昨年の就職率は67.1%と、前年比で小幅下落した。今年初めて発表された職場移動統計では、大卒就業者の5人に1人が就職後1年以内に離職していることが分かった。
韓国教育部と韓国教育開発院は28日、「2019年高等教育機関卒業者就職統計調査」の結果を発表した。全国の大学・一般大学院卒業者の就職および進学、給与水準、就職準備期間などに関する統計だ。今年は2018年8月・2019年2月卒業者55万354人を対象に2019年12月31日基準で就職細部情報を調査した。
調査対象者のうち就職者数は32万3038人と、大学院進学者と海外移民者を除いた就職対象者(48万1599人)の67.1%だった。前年の調査(67.7%)に比べて就職率は0.6ポイント減少した。
分野別には健康保険職場加入者(会社員)が29万1929人(90.4%)、海外就職者が2853人(0.9%)、1人創業者(事業者)が6137人(1.9%)、自由契約者(フリーランサー)が1万8347人(5.7%)。卒業者のうち進学者は3万5800人で進学率6.5%となり、前年比0.3ポイント増加した。
◆教育大学の就職率、4年間で20ポイント下落
学制別の就職率は一般大学63.3%、専門大学70.9%、一般大学院79.9%などだった。2016年に84.5%だった教育大学の就職率は2017年に72.9%、18年に68.8%と低下したのに続き、昨年は63.8%まで落ちた。初等教員任用規模が減少し、教育大学の就職率に影響を及ぼしたとみられる。
系列別には工学系列(69.9%)、医薬系列(83.7%)の就職率は全体就職率(67.1%)より高い半面、人文系列(56.2%)、社会系列(63.4%)、教育系列(62.7%)、自然系列(63.8%)、芸能・体育系列(64.5%)の就職率は平均より低かった。
地域別には首都圏の大学の卒業者は就職率68.7%、非首都圏就職率は66%と、2.7ポイントの差があった。首都圏と非首都圏の就職率の差は2016年の1.6ポイントから毎年広がっている。17の市・道のうちソウル(68.7%)、仁川(70.1%)、大田(68.9%)、蔚山(69.4%)、京畿道(68.4%)、忠南(68.0%)、全南(69.1%)、済州(67.7%)は平均より就職率が高かった。ソウル・蔚山・全北・全南・済州を除いた12の市・道は就職率が前年比で減少した。
◆男女の就職率の差は拡大
性別の就職率は男性69%、女性65.2%だった。2016年に2.6ポイントだった男女の就職率の差は2017年3.0ポイント、18年3.6ポイント、19年3.8ポイントと毎年拡大している。
就職者の初年度の月平均所得は259万6000ウォンと、前年比で15万3000ウォン増えた。学部卒業生の初任月給は平均241万6000ウォンで、一般大学院卒業者は平均446万2000ウォンを月給を受けている。
今年は高等教育機関卒業者の職場移動統計も初めて発表された。2017年8月・2018年2月に卒業した会社員のうち19.1%は就職後1年以内に離職などの理由で職場を移ったことが分かった。
今回の調査結果は来年1月中に教育部(www.moe.go.kr)と韓国教育開発院(kess.kedi.re.kr)のホームページに掲載される予定。
記事によると、韓国では大卒者の就職率が2020年の時点で7割を切っており、また離職率も高いうえに男女の就職率の差も毎年拡大していると書かれています。
そしてこれはここ数年のことではなく、たとえば次の記事を読んでもらうと
就職活動生・検定試験準備生を合わせると…若者の4人に1人が失業者
ハンギョレ新聞 2017.04.27
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/27184.html
若者の体感失業率
統計庁、「隠れた失業者」反映集計
公式失業率の2倍以上の24%とあらわれる
統計庁が集計した「体感若者失業率」(15~29歳・雇用補助指標3)が先月基準で24.0%に達することが分かった。若者層の経済活動人口の4人のうち1人は事実上失業者という意味だ。
26日、統計庁が国家統計ポータルに公開した若者層の雇用補助指標を見ると、3月に公式若者失業率は11.3%だったが、「雇用補助指標3」を通じて調べられる体感若者失業率は24.0%で、2倍以上高かった。体感失業率は「アルバイト」(時間関連追加就業可能者)、「就職活動者」・「検定試験準備者」(潜在経済活動人口)なども失業者に反映し、公式の失業率調査から抜け落ちた“隠れた失業者”を含めた指標だ。統計庁はこれまで年齢区分なく、すべて体感失業率指標だけを公開していたが、12日から若者層の体感失業率を別途に公開し始めた。
このような違いが発生するのは、公式失業率を算定するとき、失業者の定義が狭すぎるためだ。公式の失業率は就業者と求職に取り組む失業者の合計(経済活動人口)から失業者数を割って計算する。この計算法によると、時間制雇用(アルバイト)を転々とする若者は就業者で計算されるが、彼らは正社員就業を希望して求職活動をしている可能性のある体感失業者でもある。また、就職・公務員試験を準備したり、よりよい働き口を待つためすぐに求職活動に取り組んでいない場合も公式の失業者には含まれていない。
今回公開された指標によれば、明らかになった失業者に比べて隠れた失業者がむしろ多かったと集計された。3月基準で若者失業者は50万1千人に止まったが、時間関連追加就業可能者は8万人、潜在経済活動人口は63万4千人に達した。職探しをあきらめた求職断念者まで失業者に含める場合、体感若者失業率はこれよりさらに高くなる。
韓国労働研究院のベ・ギュシク先任研究委員は「若者失業率が高止まりを続けている理由は、低成長基調の中で産業全般の生産性が落ち、労働市場の二重構造が固定化された構造的な問題によるもの」だとし、「大統領選挙候補らが主張する公共部門の雇用拡大、中小企業に就職する若者に対する賃金の支援などの対策も一定の効果があるだろうが、もう少し根本的に大・中小企業の賃金格差の解消など、労働市場の構造改善に向けた努力が前提とされなければならない」と話した。
ノ・ヒョンウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
■雇用補助指標3=過去4週間の求職活動をした公式失業者のほかに「時間関連追加就業可能者」(週36時間未満の就業者のうち、追加就業を希望し可能な人)と「潜在就業可能者」(非経済活動人口のうち、過去4週間に求職活動をしたが統計庁の調査期間中に就職が可能でない人)、「潜在求職者」(非経済活動人口のうち、過去4週間に求職活動をしなかったが就職を希望し可能な人)など、事実上の失業者まで考慮して計算した失業率。
2017年の時点で若者の4人に1人が失業者であるうえに、「よりよい働き口を待つためすぐに求職活動に取り組んでいない場合も公式の失業者には含まれていない」と書かれていますが、これは韓国では6カ月間就職活動をしないと「失業者」のカウントから外れるという事です。
また記事では、正社員になるためにアルバイトを転々としている青年層の問題なども書かれています。
そして次の記事を読むと
韓国の青年失業率10.7%、過去15年で最高に
朝鮮日報 2015/04/16
https://web.archive.org/web/20150416165130/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/04/16/2015041600915.html
韓国統計庁は15日、3月の青年(15-29歳)の失業率が10.7%となり、前年同月(9.9%)を0.8ポイント上回り、3月としては統計を取り始めた2000年以降で最も高かったと発表した。
同庁関係者は「最近は3月に地方公務員試験の願書を受け付ける自治体が多く、青年の就職希望者が増えたことが原因だ」と分析した。4週間以内に就職活動をしたが、仕事が見つからなかった人を失業者と見なすため、調査期間に就職活動者が増えたことが失業率を押し上げたとの説明だ。
企画財政部(省に相当)は「金融界や大企業など青年が希望する職業の求人が減り、青年失業率が上昇した面もある」と述べた。3月の全体で見た失業率は4.0%で、前年同月(3.9%)に比べ小幅上昇だった。雇用率(15-64歳の人口に占める勤労者の割合)は64.9%で、前年同月を0.4ポイント上回った。職業の有無を問わず、経済活動に参加しようとする人が前年よりも増えたことを示している。
企画財政部関係者は「経済活動人口の数字、雇用率、失業率の一斉上昇は景気回復期に見られる現象だ」と指摘した。
3月の就業者数は2550万1000人で、前年同月を33万8000人上回った。増加幅は13年5月(26万5000人)以降で最低だった。昨年2月に83万5000人を記録して以降は減少傾向が続いている。
金正薫(キム・ジョンフン)記者
2015年の記事なのですが、こちらによると「4週間以内に就職活動をしたが、仕事が見つからなかった人」を失業者と定義した場合でも、青年失業率が1割を超えているという事が書かれています。
そしてそのうえで、現在どうなっているかというと
韓経:韓国の貧困層272万人…文在寅政権で55万人急増
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.12.28 09:29
https://japanese.joins.com/JArticle/273803
基礎生活保障受給者と次上位階層(基礎生活保障受給者の上の
貧困層)を合わせた社会
貧困層が、
文在寅(
ムン・ジェイン)政権の発足から3年6カ月間に55万人以上も増えたことが分かった。これを受け、今年10月に社会
貧困層は初めて270万人を超えた。
最低賃金の急激な引き上げと企業の規制など反市場政策で低所得の雇用が減少したうえ、今年は新型コロナ事態までが重なり、
貧困層が急増したという分析だ。
専門家らは政府が雇用の拡充など根本的な脱貧困政策を軽視し、単純な現金給付に重点を置いているため貧困層の増加は防げないと指摘した。
チョ・ミョンヒ国民の力議員が27日に保健福祉部から受けた資料「基礎生活保障受給者と次上位階層現況」によると、社会貧困層は先月基準で272万2043人だった。昨年末に比べ28万6725人(11.7%)増加した。基礎生活保障受給者は212万3597人と昨年末比で約24万人急増し、次上位階層も59万8446人と約4万5000人増えた。
基礎生活保障受給者は中位所得の30-50%以下で、政府から生計・医療・住居・教育給与などを受けている。生計給与1人世帯基準で見ると、月の所得が53万ウォン以下の低所得層だ。次上位階層は中位所得の50-52%以下の扶養義務者がいる場合をいう。
文在寅政権が発足した2017年5月の216万6294人(161万2893人+55万3401人)に比べ55万人ほど増えた。これは朴槿恵(パク・クネ)政権発足から3年6カ月間(2013年3月-16年9月)に増えた社会貧困層数(23万人)と比較して2.4倍速いペース。
貧困層の急増は、最低賃金の急激な引き上げで臨時日雇い、自営業の雇用などが急減したのが最も大きな影響を及ぼしたという分析だ。文在寅政権に入って最低賃金が30%以上増え、人件費の負担に対応できなくなった中小企業や自営業者が雇用を大幅に減らしたからだ。さらに今年に入って新型コロナ事態までが重なり、貧困層の増加幅が拡大した。また、政府が低所得層支援拡大名目で中位所得を上げる方式で基礎生活保障受給対象者を無理に増やした点も影響を及ぼしたと分析された。
チョ議員は「過去3年6カ月間に社会貧困層が過度に速く増えた」とし「貧困層の増加は社会の二極化拡大による副作用と共に、政府の福祉財政支出増加という二重苦を招く」と指摘した。
成太胤(ソン・テユン)延世大経済学科教授は「貧困層が増えたのは何よりも景気が厳しくなった要因が最も大きい」とし「どのように職場を提供して所得悪化問題から抜け出すかという点を悩む雇用レベルで問題を扱う必要がある」と強調した。
文政権による「所得主導成長」政策によって、急激に最低賃金を引き上げた結果、「文在寅政権に入って最低賃金が30%以上増え、人件費の負担に対応できなくなった中小企業や自営業者が雇用を大幅に減らした」と書かれており、近年韓国では貧困層と失業者が急増している事がわかります。
そして次の記事によると
【社説】住宅価格の悪夢、悲惨な雇用、自営業の地獄が終わる新年に
朝鮮日報 2021/01/01
https://web.archive.org/web/20210102072554/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2021/01/01/2021010180017.html
昨年は
新型コロナウイルスの衝撃などが重なり、民生経済は全般的に厳しかったが、特に不動産問題は悪夢に等しい一年だった。全国の住宅価格が8.4%上昇し、過去14年間で最高の上昇率を記録。ソウルのマンション価格は13.1%も高騰した。
文在寅(
ムン・ジェイン)政権の発足以降24回、昨年1年間だけで7回の不動産対策を打ち出し、全国の市・郡・区の半分を「規制地域」として縛っても、住宅価格の上昇傾向を全国津々浦々に拡大させてしまった。さらに反市場的な賃貸借3法の制定を強行し、賃貸保証金の相場までかき回した。マイホームを持たない層は政府の言葉を信じて待っていたが、住宅価格急騰による最大の被害者になり、住宅を1戸しか持たない罪のない人までもが
保有税爆弾を浴び、健康保険料などをさらに持っていかれる立場になった。全国民を不動産で憂うつにさせた一年だった。
雇用事情は通貨危機当時並みに悪化した。質の良い雇用が消える一方、税金をつぎ込んでつくった偽の雇用ばかり大量に生まれた。特に低所得層の就業が多い飲食・宿泊業の雇用が1年間で32万人消え、臨時雇用が16万人分も減少するなど、庶民の雇用に対する打撃が大きかった。その結果、最下位20%の層の勤労所得は年間で10%も減少し、働いて稼ぐ所得よりも政府から受け取る補助金収入が多い国家依存階層へと転落した。
https://web.archive.org/web/20210101014118/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2021/01/01/2021010180017_2.html
経済成長の主役である企業はさらに強まった規制に苦しんだ。全世界で最も厳しく経営権
を制約する商法改正案、企業が順守すべき安全基準だけで413項目に達する化学物質規制法の制定を強行。産業安全、環境に関する規制を大幅に強化し、企業の意欲をそいだ。それでも足りず、産業災害の死者が出た場合、故意、過失がなくても経営者と大株主まで刑務所に入らなければならない重大災害企業処罰法の制定まで推進している。経済団体は「せめて他国の企業と同等に競争させてほしい」と訴えている有様だ。
特に自営業者、零細事業者は地獄を経験した年だった。2019年に85万人だった自営業者が廃業し、統計作成開始以来最多だったのに続き、昨年の廃業件数は100万件に迫ったとみられている。経済的弱者を守ると言い、最低賃金を無理に引き上げた結果、別の弱者である自営業者を崖っぷちに追い込んだ。
新年は任期5年の文在寅政権が経済政策を取る事実上最後の年になる。過去4年間の失敗を教訓として、理念と独善を捨て、経済のパイを拡大し、経済主体の活力を取り戻す経済運営に取り組むべきだ。市場に逆行する政策では住宅価格の安定は不可能で、企業の足を引っ張る国では良質の雇用も生産的な富も創出されないという経済の常識を思い出すべきだ。国民を不動産の悪夢、悲惨な雇用、市民生活の地獄から解放してくれる新年になることを願っている。
どうやらその自営業者ですら、最低賃金上昇に新型コロナの影響まで重なって、2020年の廃業件数が100万件オーバーという状態となっているようなのです。
アルバイトを雇えないどころか雇用者側が失業の危機という状況なのです。
また次の記事を読んでもらうと
崖っぷちに立たされた韓国の自営業者(前)
NetIB-News 2021年8月2日
https://www.data-max.co.jp/article/43047
韓国は自営業者(※)の国であると言っても過言ではない。全就業者の4人のうち1人は自営業者と、その比率はG7平均の2倍以上である。ところが、
新型コロナウイルスの影響で甚大なダメージを受けた自営業者は、その数が減少しつつある。一方、
ベンチャー企業の起業は増加傾向にあり、韓国では自営業者が減り、
ベンチャー企業に就職する人が増えている。今回は
新型コロナウイルスで大ピンチに立たされている自営業者を取り上げたい。
コロナ禍で自営業者に甚大な打撃
経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2019年の韓国の自営業者の比率は24.6%に達するが、G7平均は12%である。たとえば、米国の自営業者の比率は6.1%で、カナダは8.2%、ドイツは9.6%、日本は10%、フランスは12.1%、イギリスは15.6%に過ぎない。
このように韓国で自営業者の比率が高い背景には、大企業などを辞めると再就職が難しく、生計を立てるため、カフェ、コンビニ、ベーカリー、食堂などを創業することが多いためだ。一方、20年の統計によると、昨年の韓国の月平均の自営業者数は553万1,000人で、一昨年と比べて7万5,000人(1.3%)が減少している。
新型コロナウイルスが発生してから1年半が過ぎた。自営業者は売上高が減少し、負債が増加して、苦境に立たされている。ワクチン接種が進むにつれて規制が緩和されることを期待していたが、午後6時以降は2人までしか集合ができないという厳しい措置が取られており、商売への大きな打撃を受けている。
日本では、お店の前に「準備中」という札をかけて、食材の準備などを行って営業を中止する時間帯があるが、今まで韓国にはそのようなブレイクタイムはほとんどなく、客が入れば、いつでも対応をする店が多かった。
ところが、猛暑の影響と、新型コロナウイルスのレベル4の規制で客足が途絶えた店では、人件費や電気代を節約するため、午後2時~午後5時までブレイクタイムを設ける店が増えている。加えて、ブレイクタイムがもともと存在しなった本屋、カフェなどの業種でもブレイクタイムを導入する店が出始めている。店によって時間帯は異なるが、このようなブレイクタイムを設けることで、不景気を何とか切り抜けようとしている。
コロナショックで自営業者は売上高が落ち込み、その対応に追われている。食堂、カフェ、学習塾、美容室、クリーニング屋などの自営業者の79%は、今年の上半期の売上高が前年同期比で平均23%減少している。
自営業者の売上高が減少したことによって、自営業者の負債は逆に増加の一途をたどっている。韓国銀行の統計によると、自営業者の借入額残高は昨年5月に初めて400兆ウォン(約38兆1,088億円)の大台を上回るようになった。先月の借入額残高は405兆5,000億ウォン(約38兆6,328億円)で、収入で固定費を賄えない自営業者は銀行からの借り入れで何とか帳尻を合わせていることがわかる。
このような状況のなか、これ以上踏ん張ることができず、閉業するお店も増えている。小商工人市場振興公団の全国17カ所のデータを分析した結果によると、今年の第2四半期の店舗数は222万900店舗と、昨年の第1四半期の267万3,766店舗に比べて約45万店舗が閉業に追い込まれ、1日あたり平均995店舗がなくなった。
とくに、カラオケ、ナイトクラブ、ネットカフェなどの打撃は深刻であり、およそ3万店舗が閉店している。四半期ごとに見た場合、今年の第1四半期の店舗の減少幅が最も大きかった。しかし、かろうじて生き残っていた店舗も、今回のレベル4の規制で甚大な打撃を受けており、先行きが真っ暗である。今年の第1四半期には、毎日2,000店舗が閉業したという統計がある。
韓国の自営業者の比率は24.6%で、日本の10%を大幅に上回っていると書かれています。
これはどういうことかというと、韓国では実質的に40代で定年になって会社を去る人が多いのですが、そうした人々は他の企業で低賃金で再雇用されるか、或いは自営業者になるしか道がないため、日本の2倍以上も自営業者が多いというわけです。
しかもこの40代定年というのも、徹底した序列社会であるため、韓国人は「自分より年下の部下として働くこと」を極度に嫌う傾向にあるので、それを企業側が利用して年下上司を送り込み、「自主的に退職せざるを得なくする」という仕組みになっています。
さて、これが韓国の実態なのですが、このことから「韓国の平均賃金は日本を超えた」という論調は「単なる数字のマジック」であるという事がわかります。
どういうことかというと、韓国では若者の失業率が慢性的に高く、しかもコロナ禍以降は失業率が跳ね上がっているわけですが、失業統計では「数週間から数か月以内に就職活動をした者」でないと失業統計にも、当然賃金統計にも含まれません。
また、40代で定年になったあとは大部分の人々が自営業者になるため、恐らくこれも賃金統計には含まれていません。
つまり、韓国で算出されている平均賃金とは、就職できない若者と40代で「定年という名のリストラ」をされた人々を統計から除外し、そのうえで計算された数字であるという事です。
要するに統計が社会的実態を反映していないため、数字自体に意味がまるでないのです。
最初に引用した朝日新聞と東洋経済の記事は、韓国の実態がまるで反映されておらず、全く無意味な数字を取り上げ「韓国は日本のお手本だ」等と書いているというわけです。
3:韓国はブランド品?
こうした事例は経済関係だけではなく他の事例でも観察でき、例えば次の事例では
「シリーズ・『日韓共同宣言』から20年② 相互競争的な日韓関係へ」(視点・論点)
NHK 2018年10月03日
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/306614.html
東京大学大学院 教授 木宮 正史
1998年10月、韓国のキム・デジュン大統領が日本を訪問、小渕恵三総理との間で日韓パートナーシップ宣言に署名しました。キム・デジュン大統領は、1973年8月の日本滞在中、韓国中央情報部によって拉致された、所謂、金大中事件の被害者でした。この事件は真相が究明されないまま日韓政府間で政治決着が行われました。それをキム・デジュン大統領は批判してきたので大統領は日本に批判的ではないかという危惧がありました。
しかし、パートナーシップ宣言は、植民地支配であった戦前の日韓関係とは区別された戦後の日韓関係の成果を高く評価すると共に、日韓関係を日韓の間の問題に矮小化するのではなく、国際社会に向けた日韓協力の可能性を切り開こうとする内容でした。そして、キム・デジュン大統領の国会演説も、戦後日本の平和憲法に基づく平和と繁栄を高く評価した点で印象的でした。韓国の大統領は、それまで戦前の日本を批判することはあっても、戦後の日本を高く評価することはなかったからです。日韓関係が新たな時代に突入したと私は確信しました。
しかし、その後の日韓関係はある意味で「失われた20年」とも呼べるような状況でした。キム・デジュン政権を継承したノ・ムヒョン政権は、2002年9月の小泉純一郎総理の第1次訪朝に直面して対北朝鮮政策をめぐる日韓協調に期待をかけたのですが、拉致問題の顕在化に伴う日本の対北朝鮮世論の悪化により日韓協調は難しくなりました。その結果、歴史問題や領土問題という対立要因が前面に出て日韓関係は悪化しました。その後、イ・ミョンバク、パク・クネ政権という保守政権の成立により「韓国が保守であれば日韓関係はよくなる」という根拠のない期待が日本では高まったのですが、そうした期待は裏切られます。イ・ミョンバク政権末期の2012年8月には「竹島上陸」という外交上の「禁じ手」が使われました。さらに、パク・クネ政権前半期は慰安婦問題が解決されなければ首脳会談には応じないという頑なな姿勢を堅持しました。
しかし、こうした日韓関係の悪化には、指導者の個性だけには還元できない構造的な原因があったと考えます。一言で言うと「非対称で相互補完的な関係」から「対称で相互競争的な関係」への変化に日韓双方がうまく対応できなかったことです。冷戦期、北朝鮮と対峙する韓国の経済発展と政治的安定を、日米が協力して支えました。ところが、冷戦が終焉し、韓国が持続的な経済発展と政治的民主化を達成することで、北朝鮮に対する体制優位は揺るぎのないものになりました。日韓は、市場経済と民主主義という体制価値観を共有し、しかも国力の面でも相対的に均衡のとれた関係になりました。
そうすると、日韓双方の対応に変化が見られるようになります。
日本は、韓国との力の差が縮まってくると、今までのように韓国に譲歩してばかりいられない、もっとはっきりと主張するべきだというふうに変わってきました。韓国も、日本の支援に頼らなくてもよくなったので、もっと正々堂々と日本に対して主張するべきだというように変わってきました。このように、日韓が対称関係に変わると、相互に競争的な側面が浮上してきます。日本では、韓国に負けないように、国内においてもっとしっかり歴史教育や領土教育をやるべきだということになります。私は日韓がいろいろな局面で競争することが悪いことだとは全く思いません。正々堂々と、共通のルールの下で競争することは、双方にとって望ましいことだと思います。しかし問題は、そうした共通のルールが不在のまま競争が過熱し相互に消耗しているように思います。もう少し賢く競争することはできないものかと思います。
したがって、パートナーシップ宣言20周年と言っても日韓の間には、当初、相当な温度差がありました。ムン・ジェイン政権は進歩・リベラル政権であったキム・デジュン政権の後継であったため、パートナーシップ宣言を元来高く評価していました。さらに、2018年に入って韓国の尽力によって南北首脳会談や米朝首脳会談が開催され、北朝鮮の核ミサイル開発をめぐる軍事的緊張局面から、北朝鮮の非核化を前提とした対話局面へと劇的に転換しつつあります。ムン・ジェイン政権は日本の協力を得るためにも、日韓関係を悪化させないように管理しました。釜山の日本領事館前に新たに徴用工の像を設置しようとした労働組合の現状変更を認めなかったのは、その現れだと見ることができます。
安倍政権はパートナーシップ宣言には特別な思い入れはありませんでした。また、韓国主導の緊張緩和もうまく行かないだろうと冷ややかに見ていました。しかし、対話局面への急展開に対応して、拉致問題を解決するためにも日朝交渉に取り組まざるを得ず、この流れに便乗する機会を探ろうとしています。日本も日韓関係を悪化させることは得策ではないとして、その管理に前向きに取り組むことになります。
最近になって、韓国政府のみならず日本政府もパートナーシップ宣言20周年に関心を持つようになった背景には、こうした日韓政府双方の思惑が作用しています。とすると、やはり日韓関係は周囲の要因によって左右されるものでしかなく、それ自体の関係が根本的によくなることはないのかという落胆の声が聞こえてくるかもしれません。しかし、私は国家間の関係において、相互に必要だからその関係を悪化させないように管理していくという姿勢こそが重要だと考えます。日米関係や米韓関係もそうだと思います。振り返れば、20年前のパートナーシップ宣言も、その直前に北朝鮮が発射したテポドンミサイルが日本列島を越えて太平洋岸に着水したという日本の安全保障上の危機があったからこそ、成立したと見ることもできます。
その意味で、今日の朝鮮半島情勢、そして日韓関係は、対北朝鮮関与政策で日米韓が歩調を合わせて協力するという点で、ちょうど20年前の状況に似ていると見ることもできます。私は、北朝鮮が躊躇しながらも非核化の方向に一歩踏み出そうとしている中で、それを後戻りさせないように、日米韓、そして中ロも協力し、その流れを既成事実にしてしまうことが、問題解決のためには重要だと考えます。非核化をめぐる米朝交渉が漸進的ではあるが進む、そこに韓国が積極的に関わり日本も支持する。そして、中ロも建設的な役割を演じるように説得する。その中で、日朝国交正常化とそれに伴う経済協力を念頭に置き、日韓が協力するためにその関係を管理しようとする。以上のような構図です。
最後に、この「失われた20年」の結果でしょうか。日本では、「韓国は元来反日の国なので、日本が何をしたところで反日は変わらない」という諦めにも似た声をしばしば耳にするようになりました。しかし、それは、日本に対する韓国の多様な見方の一部だけを過大に評価しているように思います。今年、韓国からの訪日者数は800万人に迫る勢いです。訪日者数の増加は円安という要因が作用しているからだと言えますが、全人口の2割近くの人が日本に来ている、あるいは来たことがあるということの意味は過小評価されるべきではありません。他方、日本人の訪韓者数は300万人を下回っていますが、韓国ドラマのブームで絶頂に達した韓流も、形を変えながら今日まで生き続けています。
韓国のアイドルは日本の多くの聴衆を熱狂させています。こうした、お互いに顔が思い浮かぶ関係ができることが、日韓関係を変える大きな原動力になり得るのではないでしょうか。
東大教授がNHKで日韓問題について語っている内容なのですが、今回重要なのはその中の次の部分です
日本は、韓国との力の差が縮まってくると、今までのように韓国に譲歩してばかりいられない、もっとはっきりと主張するべきだというふうに変わってきました。韓国も、日本の支援に頼らなくてもよくなったので、もっと正々堂々と日本に対して主張するべきだというように変わってきました。このように、日韓が対称関係に変わると、相互に競争的な側面が浮上してきます。日本では、韓国に負けないように、国内においてもっとしっかり歴史教育や領土教育をやるべきだということになります。
私は日韓がいろいろな局面で競争することが悪いことだとは全く思いません。正々堂々と、共通のルールの下で競争することは、双方にとって望ましいことだと思います。しかし問題は、そうした共通のルールが不在のまま競争が過熱し相互に消耗しているように思います。もう少し賢く競争することはできないものかと思います。
ここでは、韓国が経済発展をして格差がなくなったことで、お互いに(対等な)競争関係になったことが対立の原因としていますが、実態は大きく異なります。
2018年の10月3日の時点で最も問題になっていたのは文政権が慰安婦合意を機能不全に陥らせたうえに、韓国の裁判所が1965年の日韓請求権協定を反故にするような判決を出そうとしているにも関わらず、文政権が「司法判断に従う」といって何もしなかったからです。
つまり、韓国側が一方的に日本との合意や協定を反故にしようとしていたため、日韓関係がどんどん悪化してきていたのです。
そしてこの悪化には、「日本と韓国では約束の概念に違いがある」という事が関係しており、この問題の根本には韓国の経済発展ではなく、価値観問題があることがわかります。
ただし、厳密にはこの教授の主張とは異なった意味で経済発展は関わっています。
以前から説明していますが、韓国は徹底的な序列社会であり、約束の概念が発達せず、その「約束の概念」の空白を「序列」が埋めた社会であるので、「経済発展をして地位が上がったのだから新たに(自分達に都合の良い)約束に上書きできる」と考えている事が、一連の慰安婦合意反故や日韓請求権協定反故に繋がっています。
そもそも韓国社会では対等の概念が希薄であるため、書かれているような「対等な競争」は発想すらないのです。
関連記事
日本人と韓国人とでは「約束・契約」の概念が全く違う - 日韓問題(初心者向け)
韓国社会では「記憶の改変」が起きているわけではない? - 日韓問題(初心者向け)
韓国人の中では韓国の序列がどんどん上がっている - 日韓問題(初心者向け)
この解説の問題は、全てが「問題を認識しても意図して無視して論を構築している」という事です。
以前も指摘していますが、元々韓国が約束を守らないのは、「これまで日本の方が(経済等で)韓国より上であったため、自分達に不利な戦後補償を押し付けられていたのだ、しかし現在は韓国が経済発展をして地位が上がったので、もっと有利な戦後補償の交渉ができるはずだ」という考えに根差しています。
つまり、競争関係云々といった日本の常識の範囲で起きた問題ではないですし、何より日韓パートナーシップ宣言は「アジア女性基金」が韓国政府と挺対協の妨害によって破綻した時点で、有名無実化しています。
ですので既に「韓国側の一方的な反故」が原因で破綻した状態であるにも関わらず、それが「成り立っている」という前提で話を進めています。
このことから解るのは、この解説自体がまるで実態を反映しておらず、(日本の常識で)話し合えば何とかなるという、見当違いの分析の上に成り立っているのです。
現状でもそうですが、この教授の考え方で再交渉を行っても、2015年の慰安婦合意と同じ結末になるだけです。
現在の韓国の望みは、日韓併合が違法であるという前提の下、徴用工問題と慰安婦問題では「軍や国の命令で軍人や官憲の行った組織的奴隷狩り」という定義の下での「法的責任」を日本が認めるべきというものだからです。
当たり前の事ですが、これは話し合ってどうにかなるレベルの問題ではありません。
参考記事
慰安婦問題で日本記者に反論 韓国「強制性の証拠は無数」 | 聯合ニュース
韓国外交部「ゴールポスト動かしたのは日本」 茂木外相の発言に反論 | 聯合ニュース
【コラム】約束の差を理解してこそ韓日葛藤は解消 | Joongang Ilbo | 中央日報
新日鉄住金徴用工事件再上告審判決(大法院2018年10月30 日判決)
http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo
(一部抜粋)
2 上告理由第1 点について
差戻し後の原審は、その判示のような理由をあげ、亡訴外人と原告 2 が本件訴訟の前に日本において被告に対して訴訟を提起し、本件日本判決により敗訴・確定したとしても、本件日本判決が日本の
韓半島と韓国人に対する植民支配が合法的であるという規範的認識を前提に
日帝の「
国家総動員法」と「国民徴用令」を
韓半島と亡訴外人と原告 2 に適用することが有効であると評価した以上、このような
判決理由が含まれる本件日本判決をそのまま承認することは
大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に違反するものであり、したがって我が国で本件日本判決を承認してその効力を認めることはできないと判断した。
このような差戻し後の原審の判断は、差戻判決の趣旨にしたがうものであって、 そこに上告理由が主張するような外国判決承認要件としての
公序良俗違反に関する法理を誤解する等の違法はない。
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これまで私は多くの日韓友好論者とネットを通じて「対話」してきましたが、そうした人々は「韓国に対する基礎的な知識すらない」あるいは上記の事例のように「知っていても意図して見ないふりをする」場合が殆どでした。
(※慰安婦の定義に関しては後者の場合が殆どです)
今回紹介した事例も同じです、知識が無いか、あるいは意図して無視しているからこそこんなことを書けるのです。
ではなぜ知識がない、あるいは知っていても隠すにもかかわらずこんなことを書いているのかといえば、「韓国の事をこんなに認められる寛容な自分」「韓国を受け入れられない非寛容な人々と自分は違うのだ」というマウントをとりたいからであり、実のところ韓国自体には関心がないようなのです。
だから韓国に関する基礎的な知識も、韓国社会の実態や社会構造に関しても、また彼らの価値観に対しても「無知」か、或いは知識があっても意図して無視するような事例が殆どなのです。
たとえるなら、彼らにとっての韓国とは高級ブランドの時計や靴やバッグなどを身に着けるのと同じ感覚なのです。
こうした高級ブランドを身に着けるのは、自身の外見上の価値をあげるためであり、そうした行為自体を否定するつもりはありませんが、中にはそうして着飾ることで他者にマウントをとりたがる人々が存在しています。
問題は日韓友好論者の韓国に対する態度がこの感覚と極めて類似しているという事です。
もし、本当に韓国を知り問題を解決したい、或いは韓国との友好をしたいというのであれば、今回挙げたような問題点は「知っていないとおかしい」ですし、こうした情報は当然ですが誰でも手に入る内容で、特別なツテや知識は必要ありません。
態度としては産経新聞の黒田勝弘氏のようなスタンスになるでしょう。
しかし日韓友好論者はそうした「必須の知識」をもっていない(or隠す)にも関わらず、今回挙げたように「明らかに不十分な情報」で「いかに日本がだめで韓国が優れているか」を語りたがります。
だから中身がなく突っ込みどころだらけになります。
そして自身の意見を否定されると、彼らは決まったように「ネトウヨ」「差別主義者」というレッテルを貼り攻撃しますが、決して「反”論”」はしません。
なぜなら反論をできるだけの知識がないか、あるいはブランドイメージが傷つくような情報を意図して隠すため、真っ当な反論をすると破綻してしまうからです。
そして往々にして、そういった人々は持論の根拠は一切提示しないが、相手には過剰に根拠を求めた挙句、出された根拠は頭から否定するという態度を取ります。
持論の破綻を防ぐにはそうするしか対抗手段がないのです。
だから私は、彼らは「ブランド品を着飾ることで他者にマウントをとりたい人々」と同じような感覚で韓国を語っているのではないかと推測しているというわけです。
私には彼らのこの「どうしようもないほどの軽さ」をそうとしか説明しようがありません。
本気で韓国の事を考えているようにはとても見えないからです。
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